【秋リーグ戦】vs日本大学

10月11日(土)慶應大―日本大@アミノ

1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
慶應大学 14 14 14 21 63
日本大学 0 7 0 13 20

【得点経過】
1Q4:11日大#18→#22(7yd Pass)TFP成功(K#11)<K0-7N>
1Q11:46日大#34(1yd Run)TFP成功(K#11)<K0-14N>
2Q3:06慶應#18(QB4年高木翼)→#7(WR4年志水)11yd Pass
TFP成功(K#15 2年手塚)<K7-14N>
2Q5 :39日大#46(2yd Run)TFP成功(K#11)<K7-21N>
2Q7:01日大#18→#22(13yd Pass)TFP成功(K#11)<K7-28N>
3Q4:29日大#18→#89(24yd Pass)TFP成功(K#11)<K7-35N>
3Q8:57日大#18→#89(5yd Pass)TFP成功(K#11)<K7-42N>
4Q2:03日大#10→#11(16yd Pass)TFP成功(K#88)<K7-49N>
4Q5:04日大#10→#11(2yd Pass)TFP成功(K#88)<K7-56N>
4Q6:08慶應#18(QB高木翼)→#84(WR3年寺園)15yd Pass
TFP成功(K#15 手塚)<K14-56N>
4Q9:40日大#10→#87(12yd Pass)TFP成功(K#88)<K14-63N>
4Q12:00慶應#18(QB高木翼)→#19(WR2年田邊)14yd Pass<K20-63>

【STARTING MEMBER】
Offense
RT#75    鶴長 伸之(4年)
RG#78   小野島 洋輝(2年)
C#77    浅原 宏太郎(2年)
LG#51    清野 武尊(3年)
LT#71     高瀬 智正(3年)
QB#18    高木 翼(4年)
TE#88    岩澤 忠尚(4年)
WR#7     志水 秀彰(4年)
WR#19   田邊 翔一(2年)
WR#86  柴田 源太(1年)
RB#1       髙木 康貴(4年)
K#15       手塚 太陽(2年)

Defense
DL#69  岸 佑亮(1年)
DL#95  佐藤 寛哲(2年)
DL#97  長塚 大(2年)
DL#99  望月 洸(4年)
LB#4    工藤 勇輝(1年)
LB#26  松下 慶太郎(4年)
LB#54     ライト 太一(4年)
DB#1    兵頭 宣俊(2年)
DB#9    三津谷 郁磨(4年)
DB#22     松崎 泰光(3年)
DB#24  吉村 奬太(3年)
P#10      弘世 頌一朗(2年)

【戦評】
関東TOP8の第4節で、慶応大が日本大と対戦し、20―63で敗れた。この
結果、優勝候補は全勝を守っている日大と法大に絞られ、2勝2敗となった慶大
が優勝する可能性はなくなった。

日大のキックオフで試合開始。反則により慶応は敵陣からの攻撃開始となるが、
日大守備の出足が鋭くパントに追い込まれる。続く日大オフェンスは最初のプレー
でQB高橋からWR岩松へのロングパスが成功。その後も順調にドライブして、
最後も岩松へのパスでTDを決める。

1Q終盤に追加点を奪われ0―14となった慶応は、2Qに反撃開始。この日も
ランが全くでない状況が続くが、#18QB高木翼が次々にパスを決め、最後は
エンドゾーン右隅に投げ込んだパスを#7WR志水がダイビングキャッチ。1T
D差に迫る。

しかし、守備に立ち直る気配がない。オフェンスが自陣でインターセプトを決め
られたこともあり、2TDを追加され28―7となる。前半終了間際にゴール前
まで前進した慶応オフェンスは、第4ダウン8ヤードの状況で早くも勝負のギャン
ブルに出る。しかし、このプレーがゴール前1ヤードで止められて前半終了。

後半になっても流れは変わらず、日大オフェンスは次々に得点を重ねる。結局ディ
フェンスは9シリーズで9TDを奪われた。オフェンスも日大の堅守に攻めあぐ
み、日大守備が2本目に後退した4Q終盤に2TDを返すのがやっとだった。

■攻守に完敗
完敗。それ以外の言葉が出てこない。負け試合ではたいてい、「あそこでこうし
ていれば」とか、「なんであんな戦術を使ったんだ」とか「たれらば」がつきま
とうものだが、ここまで完璧に打ち負かされると、そんな感情は一切沸いてこな
い。

選手やコーチが日大戦に向けてどのような見通しで臨んだのかは知らないが、私
は法政戦以上にいい試合ができると考えていた。現に試合前の見どころでは、慶
応のランはある程度出る、守備も終盤までは十分に持ちこたえられると書いてい
た。

その見通しは完全に甘かった。ランは13回でー5ヤード。守備も全シリーズで
TDを奪われ、大量63点を失った。敗因は何だったのか。ビデオを分析したわ
けではないので細かいことは分からないが、最大の理由は「1対1の勝負」に勝
てなかったことだ。そして、これはスタントHCが日頃から選手たちに言い続け
てきたことでもある。

まず、攻守のライン戦が完敗だった。オフェンスラインは法政戦と同様にロスを
コントロールされ、#29RB李は、常に壁に向かってぶつかり続けるしかなかっ
た。パスプロテクションはかなりがんばっていたが、前半ラストのパスなど、勝
負どころのプレーであと一歩のふんばりが足りなかった。

守備ラインも同様だ。この日は4-3(4DL・3LB)体型で臨んだたが、ラン
をずるずると出されて、パスでもほとんどプレッシャーをかけられなかった。

実はこの日のLBは想定できる最高の布陣だったと思う。法政戦で1対1の状況
でキャリアーをタックルし続けた、#54ライトを常にランが展開されやすいス
トロングサイドに置き、WRが多いサイドにはこの日が復帰戦となった元DBの
#26松下慶太郎を配置した。日大のパスを守る上で、彼以上の適任者はいない。
中央にはスピードのある1年生の#4工藤と#50染矢がローテーションで出場した。

しかし、ロスを支配されているので、ランでもパスでもLBがうまく機能しなかっ
た。スキルポジションの攻防でも日大が勝っていた。WR陣は志水を中心にQB高木
とのコンビネーションで対抗していたが、日大の#9CB森の個人技にやられた。
その証拠に、慶応が4Qに奪った2本のTDは、森に代わって出場した選手が守る
ゾーンに、次々にパスを通してドライブした結果だった。

DB陣も日大WRのスピードについていくことはできなかった。しかし、DBは
攻められるべきではないと思う。パスを通されながらも、最も警戒すべき一発T
Dはよく防いでいた。ドライブされることは分かっていたので、辛抱しながらど
こかでフロントがプレッシャーをかけて止めなければならなかったのだ。最後ま
でその光景は見られなかった。

この試合で唯一の収穫は、工藤と染矢の1年生LBコンビの活躍だろう。まず秋
からMLBの先発を務めている工藤は、まだまだ荒削りでミスも多い。しかし、
ディフェンスが勝負をかけるブリッツのサインで、ことごとくロスタックルやサッ
クを決めているのだ。この日も後半最初のドライブ、日大の第3ダウンショート
の場面で、ロスタックルを決めてFGに追い込んだ。

染矢は春にも少し紹介したが、U19日本代表に選ばれた期待のホープである。
LBとしてはサイズがないのを懸念していたのだが、高校時代と比べて一回り大
きくなっていた。さらにスピードには磨きがかかっている。4Q、日大WRのジ
ェットモーションからのランプレーに対して、ものすごい勢いでタックルに仕留
めたプレーは秀逸だった。LBというのは40ヤード走の速さより、瞬間的
に加速して、トップスピードでキャリアーに襲いかかる能力が要求される。染矢は
その能力が抜群に優れている。このまま順調に成長すれば、慶応史上に残る
ラインバッカ―になるかもしれない。残りの3試合、この二人のプレーが楽しみだ。

今季の慶応の目標であった、「日本一」への道は絶たれた。64年ぶりの甲子園
ボウル出場を期待して応援していたファンやOBの方々は、さぞがっかりしてい
ることだろう。しかし、最も悔しいのは当然ながら選手たちである。春先から本当
に厳しい練習を乗り越えてきたのだ。さらに言うと、スタントHC体制でも1年目
より2年目の今季の方がはるかに厳しくなっている。それらは全て、日本一という
目標を達成するために行ってきたのだ。その目標が途絶えてしまった。

しかし、大敗翌日の法大―早大のスタンドには、早稲田をスカウティングする慶
応の主力選手たちの姿があった。おそらくこれは強制されたものではなく、「残
りを全勝して、最後に早稲田に勝ってシーズンを終わろう」という彼らの心意気
だと思っている。期待が大きかっただけに落胆するのも仕方ないのだが、そんな選
手たちを見ていると、今季は最後まで彼らの戦いをしっかり見届けなければなら
ないと思った。(共同通信社 松元竜太郎・平成17年卒)