11月9日(日)慶応大―中央大@横浜スタジアム
1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
慶応大学 7 7 10 0 24
中央大学 3 7 0 7 17
【得点経過】
1Q8:23 中央 K#95 29yd FG成功 <K0-3C>
1Q10:26 慶應 #18(QB4年高木翼)→#19(WR2年田邊) 15yd Pass
TFP成功(K#15 2年手塚) <K7-3C>
2Q3:35 中央 #12→#11(15yd Pass)TFP成功(K#95) <K7-10C>
2Q7:23 慶應 #29(RB2年李) 2yd Run TFP成功(K#15 手塚) <K14-10C>
3Q2:16 慶應 K#15(手塚) 29yd FG成功 <K17-10C>
3Q6:56 慶應 #18(QB高木翼)→#19(WR田邊) 26yd Pass
TFP成功(K#15 手塚) <K24-10C>
4Q0:06 中央 #12→#3(1yd Pass)TFP成功(K#95) <K24-17C>
【STARTING MEMBER】
Offense
RT#75 鶴長 伸之(4年)
RG#78 小野島 洋輝(2年)
C#77 浅原 宏太郎(2年)
LG#51 清野 武尊(3年)
LT#71 高瀬 智正(3年)
QB#18 高木 翼(4年)
TE#88 岩澤 忠尚(4年)
WR#7 志水 秀彰(4年)
WR#19 田邊 翔一(2年)
WR#86 柴田 源太(1年)
RB#1 高木 康貴(4年)
K#15 手塚 太陽(2年)
Defense
DL#90 金子 陽亮(3年)
DL#97 長塚 大(2年)
DL#99 望月 洸(4年)
LB#4 工藤 勇輝(1年)
LB#26 松下 慶太郎(4年)
LB#54 ライト 太一(4年)
LB#56 江川 輝(4年)
DB#1 兵頭 宣俊(2年)
DB#6 大倉 夏輝(4年)
DB#9 三津谷 郁磨(4年)
DB#13 杉山 慶(2年)
P#10 弘世 頌一朗(2年)
【戦評】
関東TOP8の第6節で、慶応大が中央大と対戦し、慶大が24―17で勝った。
慶大のリーグ戦成績は4勝2敗となり、早大と並んで3位につけている。
慶大は最終節で早大と対戦。この試合に勝てば3位、負ければ4位で今シーズン
を終える。
慶応のキックオフで試合開始。前節の日体大戦同様に守備が好調な立ち上がりで、
中大オフェンスをパントに追い込む。慶応の攻撃は#18QB高木翼のパスで
ゴール前に迫るが、中大のLBにインターセプトされて自陣まで返される。この
ピントを守備がFGでしのぐが、中大に3点を先制される。
続く慶応オフェンスは高木のパスが好調。最後は#19WR田邊にTDパスを
通して逆転する。第2Qには両チームがTD1本ずつを決めて、14―10で
前半を折り返す。
後半に入ると、慶応は#15K手塚のFGで3点を追加、さらに高木から田邊へ
この日2本目のTDパスが決まり、中大を突き放す。追いすがる中大は粘り強く
ドライブすると、4Q開始早々にTDパスを決めて1本差に迫る。
ここから慶応はラン主体の攻撃に切り替えるが、中大ディフェンスがこれをシャッ
トアウト。#44LB菅原ら慶応守備も粘ってパントの応酬が続く。中大はツー
ミニッツオフェンスでレッドゾーンに迫るが、最後はゴール前1ヤードでタイム
アップ。慶応が接戦を制して4勝目をあげた。
■エースの条件
#19WR田邊が帰ってきた。2つのTDパスをキャッチするなど、勝利に大き
く貢献した。2本ともが縦のロングパスで、DBを置き去りにして決めたものだ。
決勝点となった3QのTDパスを振り返ってみたい。敵陣26ヤードまで攻め込
んだ慶応オフェンス。ここでQB高木はケイダンス(セット、ハット、ハットと
言ってプレーを始めようとする)により、中大守備がブリッツを入れることを察
知する。WRが1対1になることが分かると、すぐに作戦を変更して、田邊にT
Dパスを通した。
この素早いオーディブルには高木の田邊への信頼が見て取れる。「1対1できっ
と勝ってくれるだろう」。こういうWRがいると、QBは自信を持ってプレーを
組み立てられるし、思い切って奥に投げ込める。つまり、このTDパスは田邊の
スピードと春から積み上げてきた勝負強さによる信頼が生んだのだ。彼は高校で
はフットボール未経験の2年生だが、既にエースWRの条件を兼ね備えている。
■ディフェンスの驚異的な粘り
14点差がついた3Q終盤、中大オフェンスがゴール前に迫る。何としても
TDを決めたい中大は、ランで押し切ろうとする。ゴール前1ヤードの攻防を
慶応ディフェンスは5プレー連続で制し、最後は6プレー目に中大がプレー
アクションパスでTDを決めた。
中大OLと慶応の守備フロントにそれほど力の差があるわけではない。守備全員
が一丸となって、気迫で止めたという感じだった。1ヤードの状況を何回も連続
で止めるということは、簡単ではない。最後はフェイクパスを決められたが、
中大のオフェンスコーディネーターに「ランではTDを取れそうもないな」とあ
きらめさせたということだ。この場面での守備の気迫と集中力は賞賛に値するだ
ろう。
この日のオフェンスは高木が2つのインターセプトを奪われたのをはじめとして、
決して調子が良くなかった。特に7点差に迫られた4Qは、2連続で3rdアウト
となるなど、守備に負担がかかった。この日活躍した2年生の#97DL長塚を
筆頭に、若いディフェンス陣がこの試合を最後まで守りきったのは、大きな自信
につながったのではないか。
■見たかった「幻のラストプレー」
最後まで守りきったと書いたが、実を言うと最後は少し消化不良でゲームセット
となっている。
試合時間残り14秒。7点差を追う中大オフェンスは、第4ダウンのギャンブル
を3回成功させて、ゴール前19ヤードまで前進した。ここでハドルを組んでい
る最中に時計が動き出す。中大は残り1秒でかろうじてプレーを開始したが、
ポストパターンのパスをキャッチしたWRを、慶応のSFがゴール前1ヤードで
タックルして、試合が終わった。
なぜこのような事態が起きたのか。中大は直前のプレーがアウトオブバーンズだ
と思ったのだ。だから、ゆっくりとハドルを組んでいた。審判の判定はインバー
ンズで、レディ・フォー・プレーの合図と共に時計が動き出して、ラストプレー
トなった。試合終了後に中大は審判の出したシグナルについて抗議をしたが、判
定はくつがえらなかった。
つまり、中大は最低でもあと2回はプレーできると考えていたのだ。結果的にラ
ストプレーとなったサインは、必ずしもTDを狙ったものではない。中大のQB
はロングパスの精度は低かったが、ミドルパスを必死につないでドライブしてきた。
何度もギャンブルをクリアした勢いがあった。このモメンタムをつかんだオフェ
ンスに対して、慶応の若い守備陣が守りきることができるのかをとても興味深く
見守っていた。中大がゴール前1ヤードでファーストダウンをとって、スパイク。
本来はあるはずだった最後の勝負のプレーの行方を見てみたかった。勝負の世界
に「たられば」は禁物だが、そんなことを考えた。