11月23日(日)慶応大―早稲田大@横浜スタジアム
1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
慶応大学 3 7 7 14 31
早稲田大学 10 7 7 0 24
【得点経過】
1Q4:59 早稲田 K#16 32yd FG成功 <K0-3W>
1Q10:49 慶應 K#15(2年手塚) 23yd FG成功 <K3-3W>
1Q11:48 早稲田 #30 (2yd Run)TFP成功(K#16) <K3-10W>
2Q4:30 早稲田 #7( 7yd Run)TFP成功(K#16) <K3-17W>
2Q8:30 慶應 #26(LB4年松下) 12yd Fumble Return TD
TFP成功(K#15 手塚) <K10-17W>
3Q1:16 慶應 #18(QB4年高木翼) 20yd Run TFP成功(K#15 手塚) <K17-17W>
3Q9:39 早稲田 #7→#28 (25yd Pass)TFP成功(K#16) <K17-24W>
4Q7:58 慶應 #18(QB高木翼)→#86(WR1年柴田) 10yd Pass
TFP成功(K#15 手塚) <K24-24W>
4Q10:06 慶應 #29(RB2年李) 32yd Run
TFP成功(K#15 手塚) <K31-24W>
【STARTING MEMBER】
Offense
RT#78 小野島 洋輝(2年)
RG#51 清野 武尊(3年)
C#75 鶴長 伸之(4年)
LG#57 清水 憲久(3年)
LT#71 高瀬 智正(3年)
QB#18 高木 翼(4年)
TE#88 岩澤 忠尚(4年)
WR#7 志水 秀彰(4年)
WR#19 田邊 翔一(2年)
WR#86 柴田 源太(1年)
RB#1 高木 康貴(4年)
K#15 手塚 太陽(2年)
Defense
DL#53 萩原 周平(1年)
DL#97 長塚 大(2年)
DL#99 望月 洸(4年)
LB#4 工藤 勇輝(1年)
LB#26 松下 慶太郎(4年)
LB#54 ライト 太一(4年)
LB#56 江川 輝(4年)
DB#1 兵頭 宣俊(2年)
DB#9 三津谷 郁磨(4年)
DB#13 杉山 慶(2年)
DB#22 松崎 泰光(3年)
P#10 弘世 頌一朗(2年)
【戦評】
関東TOP8の最終節で慶応大が早稲田大と対戦し、31―24で逆転勝ちした。
慶大が秋のリーグ戦で早大に勝つのは16年ぶり。この結果により、慶大は5勝
2敗の3位でリーグ戦の全日程を終えた。
慶応のキックオフで試合開始。ディフェンスは#97DL長塚などが好守を見せ
るが、反則で前進を許し早稲田にFGで先制される。オフェンスは#18QB高
木翼から#88TE岩澤へのパスなどでテンポよくゴール前に進むが、攻めあぐ
ねてFGの同点止まり。
続くキックオフで早稲田がビッグリターン。これを早稲田がきっちりTDランに
結びつける。2Q、さらに7点を追加されて、慶応は3―17と最大14点のリー
ドを許す。慶応はQB高木のパスを中心に再びゴール前に迫るが、チップしたボー
ルをインターセプトされて追加点を奪うことができない。
ここで守備が奮起。#4LB工藤のタックルでファンブルしたボールを、#26
LB松下がリターンしてTD。10―17と7点差に迫る。
後半に入ると慶応オフェンスはQB高木のパスに#1RB高木康貴のランプレー
を交えて、敵陣に入る。WRの好ブロックもあり、高木のスクランブルで同点に
追いつく。早稲田もテンポよくドライブし、最後はスクリーンパスでTDを決め
て、24―17と慶応を突き放す。
4Q、慶応オフェンスはギャンブルをクリアして、レッドゾーンまで前進する。
最後は第4ダウンのパスを高木が#86柴田に決めて同点に追いつく。さらに守
備が早稲田の攻撃をパントに追い込むと、オフェンスは#81WR八木へのスク
リーンパスなどで敵陣に入る。#29RB李が個人技で決勝のTDを決めて、熱
戦となった「早慶戦」を春に続いて制した。
■危機救ったアグレッシブな守備
2Q、慶応ディフェンスは早くも正念場を迎えた。オフェンスは順調にドライブ
していたが、反則や不運もあって2度のゴール前のチャンスを生かせなかった。
3―17とリードされた状況で追加点を奪われれば、試合の大勢が決まりかねな
い。
第3ダウン5ヤードのパスの場面。空いたWRを見つけられない早稲田の#7Q
B坂梨が、たまらずポケットから逃げる。#4LB工藤が急襲してファンブルを
誘発。#26LB松下がこぼれたボールをリカバーすると、リターンTDを決め
てモメンタムを一気に引き戻した。
試合の分岐点となったこのプレーには、守備全員の力が結集されていた。まず、
DB陣の完璧なカバーでパスを投げさせない。さらにDL陣が圧力をかけてQB
をポケットの外に追い出し、最後はLBが仕留めた。
早稲田のOLは強い。正直に言うと、この試合ではランが止まらなくなる可能性
もかなりあると思っていた。だが、ディフェンスは#97望月らを中心に、LO
S上で力強く対抗した。法政が121ヤード、日大が129ヤード奪われた早稲
田のラン攻撃をわずか99ヤードに抑えて、試合の主導権を渡さなかった。
■「ゾーン」に入ったオフェンス
試合時間残り3分、24━24の同点の場面で早稲田がパントを蹴った。この時
点で慶応の勝利を確信した。
この日のオフェンスは良い面と悪い面が交互に表れた。早稲田の強力なフロント
に対してランは出ないと思っていたが、ОLが予想以上にがんばって#1高木康
や#29李の走路をこじ開けた。一方で不要な反則を犯すなど要所でミスが出て、
得点チャンスで決めきれなかった。肝心のパスプロテクションでは、春季以来の
Cで起用された#75鶴長を中心に、早稲田のDLと一進一退の攻防を続けてい
た。
17━24とリードされて迎えた4Qのドライブでも、早稲田ディフェンスは簡
単に前進を許してくれない。2回のギャンブルをフィールドにいる11人全員が
高い集中力を発揮して、何とか乗り切った。勝負のパスをキャッチしたWRは、
今季最も成長した#19田邊と#86柴田だった。
このドライブを同点TDで締めくくった瞬間、慶応のオフェンスが本当に一つに
なったのを感じた。「もうここから先は彼らの攻撃は止まらないなだろう」。ラ
ストドライブでは繰り出すプレーが次々にゲインを生んで、最後は#29RB李
が緩急をつけた鋭いカットバックで守備を6、7人抜き去り、慶応ファンで埋まっ
たスタンドを歓喜の渦へと変えた。
■二つの「1位」
関東学生リーグは全日程を終了し、リーグの個人記録で慶応の選手が二つの項目
でトップに輝いた。QBの高木翼とPの弘世頌一朗だ。
高木はパスを211回投げて154回成功。1813ヤードを稼いで、16個の
TDを積み重ねた。パス成功率は73パーセントでQBレイティングは164。
どれも素晴らしい数字だが、彼のプレーを見ていて最も優れていると感じたのは、
強いリーダーシップと勝負強さだ。第4ダウンのギャンブルなど、勝負どころの
パスをことごとく決めた。キャッチアップを強いられた、法政戦と早稲田戦での
パフォーマンスは圧巻だった。
一方の弘世は16回のパントを蹴って、陣地を通算で690ヤード挽回した。最
長63ヤードを含む平均43ヤードは立派な数字だ。今後さらに彼に期待したい
のは、「インサイド20」だ。弘世のパントは飛距離、滞空時間ともに素晴らし
いのだが、飛びすぎてタッチバックになってしまうことが多い。コントロールパ
ントの技術を磨いて、敵陣20ヤード以内にボールを止められるようになれば、
慶応はフィールドコントロールで大きな優位を保てるだろう。
さらにランキングは2位だが、Kの手塚太陽もリーグ戦で6本のフィールドゴー
ルを決めて、チームに大きく貢献した。弘世と手塚はまだ2年生。二人が順調に
成長してくれれば、慶応のキッキングチームの未来は明るい。