9月20日(土)慶應大―明治大@川崎富士見球技場
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | TOTAL | |
慶應大学 | 3 | 3 | 8 | 10 | 24 |
明治大学 | 0 | 7 | 7 | 0 | 14 |
【得点経過】
▽1Q 9:37 慶應 K#15(2年手塚) 29yd FG成功 <K3-0M>
▽2Q 3:58 慶應 K#15(手塚) 24yd FG成功 <K6-0M>
▽2Q 11:10 明治 #22 6yd RunTFP成功(K#89) <K6-7M>
▽3Q 4:22 明治 #22 2yd RunTFP成功(K#89) <K6-14M>
▽3Q 9:10 慶應 #18(QB4年高木翼)→#81(WR3年八木) 14yd Pass
TFP成功(2 point Conv. QB#18高木→WR#86柴田) <K14-14M>
▽4Q 6:46 慶應 K#15(手塚) 29yd FG成功 <K17-14M>
▽4Q 9:45 慶應 #1(RB4年高木康) 1yd RunTFP成功(K#15 手塚) <K24-14M>
【STARTING MEMBER】
Offense
RT#78 小野島 洋輝(2年)
RG#59 長戸 慧介(4年)
C#77 浅原 宏太郎(2年)
LG#51 清野 武尊(3年)
LT#71 高瀬 智正(3年)
QB#18 高木 翼(4年)
TE#88 岩澤 忠尚(4年)
WR#7 志水 秀彰(4年)
WR#19 田邊 翔一(2年)
WR#86 柴田 源太(1年)
RB#1 髙木 康貴(4年)
K#15 手塚 太陽(2年)
Defense
DL#69 岸 佑亮(1年)
DL#90 金子 陽亮(3年)
DL#97 長塚 大(2年)
DL#99 望月 洸(4年)
LB#4 工藤 勇輝(1年)
LB#40 小紫 雄祐(3年)
LB#54 ライト 太一(4年)
DB#1 兵頭 宣俊(2年)
DB#9 三津谷 郁磨(4年)
DB#22 松崎 泰光(3年)
DB#24 吉村 奬太(3年)
P#79 簗瀬 武史(1年)
【戦評】
関東TOP8の第2節で慶応大が明治大と対戦し、24―14で勝った。
慶応大は開幕から二連勝。明治大は二連敗で早くも優勝戦線から脱落した。
試合は最初の攻撃から慶応が押し気味に展開するが、ゴール前の反則などでTD
を奪えず、前半は#15K手塚のFG2本の6点のみにとどまる。一方、守備は
明治のラン主体の攻撃をよく止めていたが、前半終了間際にTDを決められて6
―7で後半へ折り返す。
3Q、プレー展開を変えてきた明治オフェンスに追加点を許し、6―14とリー
ドを広げられる。ここで慶応オフェンスが奮起。#18QB高木がパスで
2回の第4ダウンギャンブルをクリアして前進し、最後は#81WR八木にTD
パスを決める。2点コンバージョンも決めて同点。4Qには手塚が決勝のFGを
決めて、勝利をたぐり寄せた。
守備は勝負所でターンオーバーを奪うなど、攻撃的なゲームプランが成功。明治
のオフェンスをトータルで153ヤードに抑え込む好守で、勝利に貢献した。
■「パッシングポケット」が生命線
明治戦のオフェンスのポイントは、「WRとDBの1対1の勝負」だと思っていた。
結論から言うと、慶応のWRは勝った。3Q、同点に追いついた2つのTDパス
は、#81八木と#86柴田がそれぞれDBに競り勝って生まれたものだ。トー
タル獲得ヤードの348ヤード(パス142・ラン206)も合格点だろう。
しかし、獲得ヤードのわりに得点が24点と伸び悩んだ。直接的な理由はゴール
前の反則(OLのホールディング)とエンドゾーンでの被インターセプトだが、もっ
と深刻な課題が露呈した。
相手守備の圧力でパッシングポケットが急激にせまくなると、高木のパスは威力
が半減するということだ。この日、明治のフロントの圧力はすさまじかった。被
QBサックは4つ。さらにノックダウン(投げた後にQBが倒されること)や高
木がかろうじてかわしたプレーを含めれば、23のパスプレーの内、半分近くで
プレッシャーを受けたことになる。
試合後に高木に話を聞いたが、ポケットが潰れるのが早すぎて、ほとんど思うよ
うなタイミングでパスを投げられなかったそうだ。彼は走力はあるが、決して動
きながらパスを投げるタイプではない。オフェンスラインが築いた壁の中で投球
する、典型的な「ポケットパサー」だ。今季はOLがレベルアップしたので、あま
り意識する場面がなかったが、やはり彼らがしっかり高木を守るという前提の下
に慶応のパスオフェンスは成り立っているのだ。
初戦で明治と対戦した早稲田は攻撃がほとんど機能しなかったが、これも明治フ
ロントのプレッシャーによるものだ。TOP8の全チームを見た印象で言うと、
守備フロントは法政、明治、中央が強い。次節で対戦する法政の守備陣は、明治の
対応を見て、慶応オフェンス攻略に自信を深めているのではないか。昨年日大に
負けた理由もOLが高木を守れなかったから。法政戦はオフェンスラインの真価が
問われる試合になるだろう。
■明治のランアタックを完封
立教戦のリポートで、守備が素晴らしかったと書いた。やはり、春とは見違える
ほど強力なディフェンスが出来上がりつつある。春は関学、早稲田にやられて苦
しんだが、厳しい夏の練習を乗り越えて、見事な守備へと成長を続けている。
この試合では5-2体型(5DL、2LB)をベースに、明治のラン攻撃をこと
ごとく跳ね返した。ロスタックル9回にQBサック5回。もちろん#24CB吉
村のサックなどはサインによるところが大きいが、ベースとなる個の力で相手を
上回っていなければ、いくらブリッツやスタンツを駆使してもこの数字はありえ
ない。3Qに唯一ロングドライブを許したシリーズは、QBランやタイミングを
変えたプレーなど、守備の目先を変えてくるものだった。筒井守備コーチは、
「サイドラインに戻ってからではなく、選手たちがフィールド上でもっとアジャ
ストできるようになってほしい」と課題を挙げていた。
順調にレベルアップしている守備だが、最大のテーマは「エンドゾーン死守」だ
ろう。チーム事情にもよるが、一般的にディフェンスは相手の攻撃を200ヤード
以内に抑えれば合格点とされる。立教戦の195(ラン86・パス109)ヤード、
明治戦の153(ラン77・パス76)ヤードという数字は見事だ。ただ、レッド
ゾーン(自陣20ヤード以内)に進入された後に、TDを決められてしまっている
確率がかなり高い。これからの試合では、ドライブされてもFGの3点に抑えられ
るかどうかが重要になってくる。レッドゾーンでは奥行きがないため、DBはロング
パスを気にせず思い切ったプレーができる。成長を続ける慶応守備陣のさらなる奮起
に期待したい。
■K手塚の安定感
初戦の立教戦で、慶応はTD10本で70点を奪う猛攻を見せたため、FGの場
面はなかった。春の試合を振り返ってみても、強力なオフェンスが次々にTD
を決めるので、FGのシーンはほとんど記憶にない。しかし、明治戦ではK手塚
が3本のFGを決めて、貴重な得点をたたきだした。この選手、キックにとにか
く安定感がある。Xリーグで優秀なキッカーを見ていて共通しているのは、とに
かく動きに無駄がなく、体の軸がぶれないということだ。
普段あまり意識されることはないと思うが、FG時にキッカーが行う動作をおさ
らいしてみよう。まず、ボールが置かれた地点から7歩(7ヤード)後ろに進む。
その場所にホルダーがセットし、キッカーはそこからさらに助走地点へと向かう。
縦に下がってから横に移動する選手もいれば、ななめに動く選手もいる。この後
に腕を上下させて、ゴールポストへの軌道を確認するのもキッカーの定番の動作
だ。そして呼吸を整えて、ボールがスナップされた瞬間に通常3歩の助走をとっ
て蹴り込む。
優秀なキッカーは例外なくこれらの一連の動作に無駄がないのだ。そして、蹴り
終わった後にも体制が崩れない。もちろん手塚の動作も無駄がなく、軸がぶれな
い。彼がどれくらいの飛距離を狙えるのか分からないが、40ヤード以内のキッ
クならほぼ確実に決めてくれるだろう。法政戦、日大戦ではキックの1点、3点
が勝敗を分ける。手塚の安定感抜群のキックにも注目だ。
(共同通信社 松元竜太郎・平成17年度卒)