2015年9月20日(日) 慶應義塾大学 対 中央大学
10:45 Kick Off @富士通スタジアム川崎
天候 晴れ
1Q 2Q 3Q 4Q 計
慶應 10 7 6 16 39
中央 3 10 7 0 20
得点経過
1Q 1:47 中央 #19 51yd FG成功 <K0-3C>
7:39 慶應 #29(RB3年李) 12yd Run
TFP成功(K#11 3年手塚) <K7-3C>
10:03 慶應 K#11(手塚) 22yd FG成功 <K10-3C>
2Q 0:54 中央 K#19 44yd FG成功 <K10-6C>
5:41 慶應 #29(RB李) 71yd Run
TFP成功(K#11 手塚) <K17-6C>
9:31 中央 #12→#8 3yd Pass
TFP成功(K#19) <K17-13C>
3Q 7:52 慶應 #6(RB4年田中) 2yd Run
TFP失敗(K#11 手塚) <K23-13C>
10:43 中央 #12→#8 10yd Pass
TFP成功(K#19) <K23-20C>
4Q 1:26 慶應 #29(RB李) 20yd Run
TFP失敗(K#11 手塚) <K29-20C>
9:55 慶應 K#11(手塚) 22yd FG成功 <K32-20C>
11:54 慶應 #29(RB李) 25yd Run
TFP成功(K#11 手塚) <K39-20C>
STARTING MEMBER
Offense
RT#78 小野島 洋輝(3年)
RG#51 清野 武尊(4年)
C#59 浅原 宏太郎(3年)
LG#57 清水 憲久(4年)
LT#71 高瀬 智正(4年)
QB#5 小田 裕太(2年)
TE#85 林 健太(4年)
WR#9 寺園 貴文(4年)
WR#17 姜 勝大(4年)
WR#81 八木 雄平(4年)
RB#29 李 卓(3年)
K#11 手塚 太陽(3年)
Defense
DL#60 河内 宥輝(3年)
DL#70 長野 靖(4年)
DL#90 金子 陽亮(4年)
DL#97 長塚 大(3年)
LB#4 工藤 勇輝(2年)
LB#26 池辺 悠太朗(3年)
LB#41 須永 竜平(3年)
DB#1 兵頭 宣俊(3年)
DB#5 志茂 雅史(4年)
DB#13 杉山 慶(3年)
DB#25 藤井 弦一郎(3年)
P#77 簗瀬 武史(2年)
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<中大戦ゲームレポート>
H17松元竜太郎
【戦評】
9月20日に慶応大のリーグ第2戦、中央大との一戦が富士通スタジアム川崎で
行われ、慶大は39―20で中大に勝ち、開幕から2連勝とした。前半は中大に
先制点を許すなど拮抗した試合展開だったが、後半は#29RB李のランを中心
に攻撃を組み立てて、中大ディフェンスを崩した。守備はドライブされるものの、
#4LB工藤らを中心に要所を締めた。
【試合経過】
慶応のキックオフで試合開始。風下に立った慶応ディフェンスはパスで前進を許
すと、風にも乗った51ヤードのFGを決められて3点の先制を許す。その後は
パントを蹴り合う展開が続くが、パントを中央のリターナーがファンブルして、
敵陣からの攻撃権を得る。このチャンスにQB小田のランなどで前進すると、最
後はRB李のTDランで7―3と逆転に成功する。
2Qに入ると慶応のパントがブロックされゴール前のピンチを迎えるが、#13
CB杉山のインターセプトで無失点で切り抜ける。その後も互いに譲らず1TD
1FGで10点ずつを加えて、前半を17―13で折り返す。
後半に入ると両チームのランが止まらない。慶応は李と田中のアウトサイドのラ
ンを中心に前進を続けて、李のTDランで先に追加点を奪い23―13とするが、
中央も真ん中のランでドライブし、23―20と追いすがる。しかし、4Qに入
り李がこの日3本目のTDランで29―20と突き放すと、終了間際にも李が4
本目となるだめ押しのランを決めて、最終スコア39―20で、開幕2連勝を飾っ
た。
■炎天下で表れたデプスの差
17―13と慶応が4点のリードで前半が終了。この時点で慶応の勝利はほぼ間
違いないだろうと思った。両チームのトップの選手に力の差はほとんどない。し
かし、選手層には圧倒的な差があったからだ。この日は真夏のような日差しが照
りつける暑さで、各クオーターの6分が経過した時点でウォータータイムアウト
が取られていた。ほぼ固定されたメンバーで戦う中央に対して、慶応はQBとO
Lを除く全ポジションがローテーションしていた。特に、守備は11のポジショ
ンに対して、30人以上の選手が交代出場でプレーしていた。
後半開始早々、中央の選手が足をつって倒れた。その後も10人近くがフィール
ドに倒れたが、そのほとんどは疲労と消耗によるものだろう。一方の慶応は試合
終了まで選手たちがフレッシュな状態で戦い続けた。第4クオーター、選手たち
のフィジカルコンディションに比例するように、点差も大きく離れていった。
少し気は早いが、3強との最初の対決となる法政戦は、間違いなく守備のデプス
の完成度が問われる試合になる。法政の”ハイパーオフェンス”は10人のWR、
TEがローテーションで常にフレッシュな状態で攻撃を仕掛けてくる。その内7
人くらいはエース級の能力を持った選手だ。RB、OLすらもローテーションす
る。彼らの攻撃を11人で止めることは難しい。少なくとも交代しても力が落ち
ない20人ほどの守備メンバーが必要になるだろう。筒井守備コーチは春からずっ
と多くの選手を起用して、デプスの構築に努めてきた。その成果が今、確実に表
れている。
■覚醒し始めたOL
ラン、ラン、ラン。この日の慶応オフェンスは後半に李と#6RB田中のランで
押し切って、勝利をものにした。前述したスタミナ面の差はある。しかし、それ
を差し引いても、OLのブロッキングと二人のRBの走りは素晴らしかった。
そもそも私は試合の見どころで、#5QB小田のプレーアクションパスが鍵にな
ると書いた。これほどランが出るとは思っていなかったからだ。しかし、予想は
外れた。慶応のランオフェンス、OL陣の成長は、私の想定をはるかに上回って
いたのだ。まずは#71Tの高瀬、#57G清水の4年生コンビが頑張って、左
サイドのオフタックルのランから崩した。TE、WRのブロックも素晴らしく、
李と田中が何度もオープンを駆けあがった。守備が外に開くと、今度はRBが内
にカットバックを切って突進する。一人のタックルでは倒れない、李と田中のヒッ
トに対する強さも印象的だった。攻撃プレーの70%をランが占め、最終的にラ
ンで399ヤードを稼ぎ、勝利をたぐり寄せた。
ここまでランが出れば、当然パスも決まる。4Q、どとうのランでドライブを続
ける中、小田がLBの裏に走り込んだ#82WR蜂須賀にきれいにPAパスを決
めた場面があった。中央のLBは何とかランを止めようと、完全に前のめりになっ
ていた。ランで守備を前に引き寄せて、裏の空いているスペースにパスを決める。
これは今季の慶応オフェンスが目指すべき理想型だろう。小田は動きながらのパ
スやロングパスの精度は低い。しかし、WRが中に走り込むパターンに対して思
い切り投げ込むタイプの、ショートとミドルのパスはしっかり決めることができ
る。小田には苦手なロングパスやアウトパターンのパスを習得するよりも、得意
なインパターンのミドルパスの精度を徹底的に高めてほしい。攻撃の柱であるラ
ンプレーさえ出ていれば、今の小田のパス能力でも十分にオフェンスは成り立つ。
ランとPAパスで攻めて、第3ダウンロングを作らない。この攻撃を愚直に続け
てほしい。
今後もOLが成長すればするほど、ランの破壊力は増していく。OLがブロック
さえできれば、3強が相手でもエンドゾーンは決して遠くない。なにしろ、ボー
ルを持って走るのは日本代表のRBだ。QB高木君が抜けたことで期待値が低かっ
たオフェンスだが、攻撃の必勝パターンが見えてきた今、自信を持って自分たち
の理想のオフェンスを追求してもらいたい。
(共同通信社 松元竜太郎・平成17年度会員)