9月27日(土)慶應大―法政大@アミノ
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | TOTAL | |
慶應大学 | 10 | 0 | 0 | 13 | 23 |
法政大学 | 7 | 7 | 0 | 14 | 28 |
【得点経過】
1Q6:31慶應K#15(2年手塚)20yd FG成功<K3-0H>
1Q9:30法政#4→#86(17yd Pass)TFP成功(K#6)<K3-7H>
1Q10:21慶應#18(QB4年高木翼)→#19(WR2年田邊)72yd Pass
TFP成功(K#15 手塚)<K10-7H>
2Q 3:17法政#12(76yd Run)TFP成功(K#6)<K10-14H>
4Q 1:50法政#4→#87(22yd Pass)TFP成功(K#6)<K10-21H>
4Q5:30慶應#18(QB高木翼)→#17(WR3年姜) 6yd Pass
TFP成功(K#15 手塚)<K17-21H>
4Q10:49法政#29(12yd Run)TFP成功(K#6)<K17-28H>
4Q12:00慶應#18(QB高木翼)→#17(WR姜)11yd Pass<K23-28H>
【STARTING MEMBER】
Offense
RT#75 鶴長 伸之(4年)
RG#59 長戸 慧介(4年)
C#77 浅原 宏太郎(2年)
LG#51 清野 武尊(3年)
LT#71 高瀬 智正(3年)
QB#18 高木 翼(4年)
TE#88 岩澤 忠尚(4年)
WR#7 志水 秀彰(4年)
WR#19 田邊 翔一(2年)
WR#86 柴田 源太(1年)
RB#1 髙木 康貴(4年)
K#15 手塚 太陽(2年)
Defense
DL#93 渡辺 雄策(4年)
DL#97 長塚 大(2年)
DL#99 望月 洸(4年)
LB#4 工藤 勇輝(1年)
LB#5 志茂 雅史(3年)
LB#54 ライト 太一(4年)
LB#56 江川 輝(4年)
DB#1 兵頭 宣俊(2年)
DB#9 三津谷 郁磨(4年)
DB#22 松崎 泰光(3年)
DB#24 吉村 奬太(3年)
P#10 弘世 頌一朗(2年)
【戦評】
関東TOP8の第3節で、9月27日に慶応大が法政大と対戦し、23―28で
敗れた。ここまで2連勝中だった日大、法大、慶大、早大の「4強対決」は日大
と法大が制して、優勝争いで一歩リードした。慶大が優勝戦線に踏みとどまるた
めには、残り試合を全勝することが最低条件となる。
慶応のキックオフで試合開始。慶応はオフェンスのファーストシリーズで、#18
QB高木を中心に、パスでテンポよく前進してゴール前へ。#7WR志水へTD
を狙ったパスは惜しくも通らず、#15K手塚のFGで3点を先制する。法政に
逆転のTDを許した直後のオフェンスでは、高木から#19WR田邊にスクリー
ンパスがヒット。田邊が72ヤードを駆け抜け、再逆転に成功する。2Qに入ると、
法政のQB鈴木に独走のTDランを決められ、10―14で前半を折り返す。
後半に入ると両チームの守備が粘り、パントを蹴り合う展開が続く。4Q、法政
が多彩な攻撃でじわじわと前進し、QB近藤からWR奥津へのTDパスが決まり、
10―21と均衡が破れる。2ポゼッション差を追う慶応オフェンスは、ランを
完全に封じられ苦しいドライブが続く。高木が第4ダウンのギャンブルを含めて
勝負所で立て続けにパスを決めて、最後は#17WR姜にTDパスをヒット。6
分半を残して再び4点差に追い上げる。ここでふんばりたい守備だったが、5分
以上の時間を使われてTDを許し万事休す。慶応オフェンスは残り1分からドラ
イブを始めて、試合終了と同時に5点差に迫るTDを奪うのがやっとだった。
■最後に表れたフィジカルの差
オフェンスが苦労の末にTDをもぎとり、17―21と追い上げた直後の守備。
4Q、残り6分半。タイムアウトも2回あり、多少ドライブされても2分を残し
てオフェンスに渡してやることができれば、十分に逆転が期待できる状況だった。
実際、オフェンスはこの後わずか1分でTDを決めて見せた。しかしこの場面で
守備はずるずると前進を許し、タイムアウトを使う間もなく時間と得点を失った。
試合を見ていた方からすれば、「パスはほとんどないんだから、もっと前がかり
でランを止めろよ」と思ったことだろう。当然、サイドラインからは攻撃的な
サインが入れられているし、フィールドの選手たちも決死の覚悟でランを止めよ
うとしている。それでも止まらなかったのだ。
なぜか。理由は二つあると思っている。一つは法政が長年培った伝統のオプショ
ン攻撃だ。あの状況で法政オフェンスはこう考えていただろう。「ここで時間を
使ってドライブをしなければ、逆転される」。だから時間を消費するだけの単純
なランではなく、オプションピッチやQBランも交えた第1ダウンを更新し続け
るためのプレーコールを入れ続けた。よって、ほぼランしかないと分かっていて
も、攻撃の選択肢が多いので的を絞りづらく、止めるのは簡単ではないのだ。
守備が必死にRBを止めにいったところを、裏をかかれてQBにロングゲイン
された場面がそれを象徴していた。
もう一つの要因は、最後にフィジカルの差が出たと思っている。この日、慶応守
備は法政のランオフェンスをよく止めていた。#99DL望月らが中央でふんばり、外に
走ってきたランナーを#54LBライトがことごとくタックルで仕留めた。法政
も手を替え品を替えプレーを展開してきたが、その度にLB陣がうまくアジャス
トして、粘り強く守った。
しかし、試合が終盤に入ると、今まで2ヤードで止まっていたプレーが4、5ヤー
ドと出るようになった。4Qに奪われた2つのTDは、それら一つ一つのプレー
の積み重ねだ。
Xリーグで全盛期の鹿島(現LIXIL)の試合を見ていた時、こういう場面が
よくあった。試合終盤で時間を使うために、鹿島オフェンスは100%ランで来
ると相手の守備は分かっている。それでも鹿島のランが出続けてタイムアップ。
ここぞという時のオフェンスラインの馬力が桁違いなのだ。
法政OLと慶応の守備フロントが対峙したとき、わずかな差ではあるが、まだ彼ら
の方が一枚上手だったということを認めざるをえないだろう。ユニコーンズの
メンバーはスタントHC流の厳しいトレーニングを乗り越えて、間違いなくフィジ
カルアップを果たした。好守ラインのサイズを数年前と比較しただけでも、それは
証明できる。だが、さらにこの壁を乗り越えるには、オールユニコーンズ体制での
継続した取り組みが必要になるだろう。
■高木とWRの驚異的な集中力
ライン戦で負けたのは、オフェンスも同じだった。法政ディフェンスが後ろに引
いて守ったときに生まれたロングゲインを除くと、20回走ってわずか20ヤー
ド。1回あたりのランで1ヤードほどしかゲインしていない計算になる。この日
の法政Dのゲームプランは、とにかくランを止めることだったのだろう。それを
完璧に遂行されたばかりか、パスラッシュでも2回のQBサックに8回のロスタッ
クルを喫した。けがから復帰したオフェンスラインの大黒柱、#75鶴長が右Tに
入った慶応OLの布陣はだいぶ厚みをました。しかし、関東最強の法政フロントを
止めることはできなかった。
それではなぜ慶応オフェンスは42回投31回成功、381ヤードを稼ぐパス攻
撃を展開できたのか。ずばりQB高木の冷静な判断力とWRの集中力だ。高木は
パスプロテクションが持たない苦しい状況の中でも、最後まで最善の選択をし続
けて、空いているWRにパスを投げ続けた。WR陣も決して集中力をきらさない。
明らかなキャッチミスは0で、捕れる可能性があったパスも2本程度。31本の
パスを1年生から4年生まで11人のレシーバー(RB含む)がキャッチし続け
た。特に17時に開始されたこの試合、前半は十分に明るいが、ハーフタイムを
はさんで一気に暗くなりナイターとなった。試合会場のアミノバイタルフィール
ドでは4機の照明がフィールドを照らすが、かなり暗いなという印象だ。試合中
に環境が変わる状況でも、集中をきらさずパスを撮り続けた慶応WR陣は賞賛に
値するだろう。
法政戦ではほぼスキル陣の能力だけで、23点を奪った。これにラインの力がかみ
合ったとき、慶応オフェンスの真の力が発揮されるだろう。
■最高のパンター弘世、KCに未だ不安
前回、K手塚のキックの正確性を取り上げたが、パントチームにも正Pの弘世が
戻ってきた。春にも書いたが、彼が入ると本当にパントカバーは安心して見てい
られる。特に右に走りながらのパントキックは、相手の陣形が乱れる上に、リター
ンもしにくい。リターンを警戒した上で、ロング50ヤードを含むアベレージ3
6ヤードという記録は、十分に合格点だろう。
一方でキックカバーにはまだ不安が残る。実際に大きくリターンされる場面はな
かったが、相手のブロッカーに多くの選手がつかまっているシーンが何度かあっ
た。春の関学戦で鷺野にリターンTDを許したプレーでは、明らかに多くの選手がブ
ロッカーに処理されて、リターンされるべくしてされたプレーだった。この2試
合では結果オーライになっているが、日大との大一番でその課題が露呈しない保
証はない。さらなる改善を求めたい。
優勝争いでは一歩後退したが、64年ぶりの甲子園ボウル、日本一への道はまだ
閉ざされていない。残り4試合負けられない戦いが続く中で、次節の日大戦に向
けて選手たちには最善を尽くしてもらいたい(共同通信社 松元竜太郎・平成1
7年卒)