キックオフは法政のリターンから。自陣30ydsからの攻撃でいきなり最初のハンドオフがロングゲインとなり、一気に慶應陣25yds付近まで進む。その後もオプションピッチやオープンへのランで次々とゲインを奪い、最後はゴール前からFBのダイブで速攻の先制TDを挙げた。(1Q 1:43 慶0-7法)
さていきなりの先制パンチを食らった慶應だが、自陣28ydsからのオフェンスは、エースランナー大河原のランを軸に前進を図る。途中でWR工藤へのパスを織り交ぜながら時間をかけて敵陣に迫り、最後はQB西澤からWR工藤へのコフィンコーナーへのパスが通り、同点に追い付くTDとなる。じっくりと約7分を費やしてのボールコントロールオフェンスは見事なものだった。(1Q 8:51 慶7-7法)
続く法政の攻撃だが、またもや中央のハンドオフが一気に慶應陣12ydsまで迫るロングゲインとなる。そしてあっさりオプションからのQBキープでTD。とにかく法政は徹底したランニングアタック、それもショットガンからの多彩なオプションやアイフォーメーションからのベーシックなパワープレイも合わせて、かつての法政のような強力なランチームとなっている。(1Q 9:35 慶7-14法)
法政の速攻に落ち着かない慶應は、次の攻撃があっさり3&Out。続く法政の攻撃もオプションピッチのファンブルで大きくロスするなどのミスが響いて3&Out。返す慶應オフェンスに痛恨のミスが出た。オプションピッチを受けて前進を狙ったRB大河原がファンブル。法政がリカバーして、敵陣37ydsでFDという好機を得た。このシリーズは慶應ディフェンスが何とか踏ん張り、FGによる追加点に留める。(2Q 2:53 慶7-17法)
続くキックオフリターンでWR工藤が健脚を見せて敵陣34ydsまで返す。ここではTDには至らなかったが、K山本が52ydsのロングFGを決め、スタンドを沸かせる。(2Q 4:27慶10-17法)
続く法政の攻撃を3&Outに追い込んだところで、法政パンターがスナップをファンブル。オウンリカバーしたものの、慶應は敵陣46ydsでの攻撃権を得た。ここでも敵陣ゴールまでは攻めきれなかったものの、再びK山本のFGトライが成功。(2Q 8:18 慶13-17)
前半残り時間4分を切ったものの、法政のラン攻撃が着々とゲイン。最後はFGを成功させ、再度1TDの得点差となった。(2Q 11:33 慶13-20)
ここで前半終了。後半は慶應リターンでのキックオフ。何とかこの最初のシリーズで得点に結び付けたいところだが、」ファーストプレイ時にホールディングの反則で罰退し、あっさり3&Outに追い込まれる。その後の数シリーズは両チーム共に反則が響いてパントの繰り返し。しかし3Q終盤、法政が敵陣深いポジションでFGトライ成功。(3Q 9:59 慶13-23法)
最終Qに突入するが、両チーム共に得点機をものにできない膠着状態が続く。法政はパントフォーメーションからのスペシャルプレイを失敗、慶應はFGを外す。そして法政オフェンスが遂に覚醒。ジェットスイープ、スクリーン、クイックヒッティングのラン等多彩なオフェンスで前進し、最後はTBのオープンランで後半初のTDを挙げた。(4Q 8:03 慶13-30法)
そして残り3分を切っての慶應オフェンスは、WR工藤の好捕のあと、WR佐藤へのストリークパスでTD。(4Q 11:08 慶20-30法)
試合はこのまま終了となり、慶應は10点差で辛酸を嘗める結果となった。
選評
10点差を惜敗と呼ぶか、完敗と呼ぶかは議論の分かれるところかも知れない。ただ前節の立教戦を観戦できていない筆者からすると「力負け」という印象だ。
スタッツを見る限りは、両校に大きな差はない。攻撃総獲得ヤードは慶應258ydsに対し、法政296yds。反則罰退ヤードも慶應18ydsと法政15yds。ボール所有時間は慶應23分24秒と法政24分36秒とほぼ拮抗している。
戦前の予想では、法政はラン主体、慶應はラン・パスのバランスアタックと読んでいた。守備力には両校大差なし。であるならば、オフェンス勝負の一戦だ。ここで残念ながら差が出てしまった。慶應も先制された直後に同点に追い付いたシリーズは非常によかった。時間をしっかり使い、ディフェンスに的を絞らせないプレイセレクトで対抗した。
ところが以降のシリーズでは、法政の多彩なランニングアタックの精度に防戦一方となる場面が目に付くようになる。特にショットガン体形から繰り出されるオプションのスピード、ブロックのうまさにずるずると後退を許すようになると、もう敵のペースである。
ライン戦で劣勢だったとは思わないが、法政RB陣のスピード、セカンドエフォートのレベルはかなり高く、個人技で全くやられてしまった。逆に言えば、これだけランニングゲームの完成に集中してきた法政の戦略は見事なものだったと思う。
逆に慶應オフェンスは絶対的エースランナーの地位を築きつつあるRB大河原が徹底マークを受け、ゲームが進むにつれ、その快脚を封じ込まれるようになった。また出足のシリーズでは調子のよかったQB西澤のパスは、ゲームが進んでキャッチアップオフェンスをリードしなければならい段階で、悪い癖である“ボールを投げ込まず、置きにいくスローイング”となってしまった。ヒッチパスのショートバウンドや、スクリーンパスの失敗で好機を逃したシーンも多かった。ミドルゾーンやディープゾーンへのパスも、レシーバーとの呼吸が合っていない場面が目立ったと思う。
総合的にミスをする事なく、自分達が自信を持てるプレイに絞り込んで優位性を発揮する事が、Topリーグを勝ち抜くためには必要だろう。その部分ではまだまだ改善・上昇の余地はある。
次節は関東の優勝候補筆頭とされる明治大への挑戦だ。2週間弱という短期間で、どの程度チームを高みに上げる事ができるか?この命題にチームが一丸となって取り組んでくれている事を期待したいと思う。