【清水利彦コラム】連続企画「フットボールの歴史を彩る一枚の写真」第2回:寒さと闘う選手たち 2022.09.22

清水利彦(S52年卒)

shimizu.toshihiko2@gmail.com

全米カレッジフットボール速報

先週末は上位ランク校が順調に勝利。特にジョージア大の圧倒的強さが目立っており、アラバマ大と交替してランク1位となりました。

その中で私が注目したのは、オクラホマ大(6位)49-14ネブラスカ大という一方的なスコアです。

ネブラスカはこれで今シーズン既に1勝3敗。ジョージア・サザン大という格下の無名校にも負けています。下手をするとBig10リーグで最下位になる恐れがあります。

かつてオクラホマ大vsネブラスカ大と言えば、カレッジフットボール最高のライバル対決でした。そんなネブラスカ大の凋落を見るのは寂しいです。「ネブラスカ大の黄金時代」については、いつかコラムを書きたいと思っています。

コラム 寒さと闘うフットボール選手たち

さて、アメリカンフットボールは、人間と人間が激しくぶつかり合う勇壮なスポーツですが、一方で、「自然との闘い」あるいは「悪天候との闘い」もフットボールの魅力における非常に重要な要素になっていると感じています。このようなスポーツは、ラグビーとアメリカンフットボールしかないと、私は考えています。

だから私は天候の要素が全くないドームスタジアムでの試合があまり好きではなく、屋外の試合場と比べると10%ほど、その魅力を割り引いてしまうのです。

グリーンベイ・パッカーズの本拠地(ウイスコンシン州のランボーフィールド)は、11月中から雪が降り始め、極寒の天候になることが多いのですが、このスタジアムをドーム球場にしようという案は聞いたことがありません。こんなに寒い場所なのだから、ドーム球場にすれば、選手も観客もずっと楽だと思うのですが、「全米一フットボール通のファンが集まる試合場」と言われるこの場所では、「悪天候の中で試合をすることの魅力」を失うなんて絶対に許せないことなのでしょう。

※1967年12月に史上最悪の極寒の中、グリーンベイでおこなわれたNFL選手権の模様については、筆者ブログ https://footballquotes.fc2.net/ にて、長編物語→「アイスボウル 零下27度の死闘」をお読みください。

そこで今回は、写真集の中から「寒さと闘う選手達」の写真を選んでみました。

最初の一枚は、1945年12月6日クリーブランドでおこなわれた、クリーブランド(現ロサンゼルス)ラムズvsワシントン・レッドスキンズのNFL選手権の模様です。この写真はかつてコラムで「ラムズの歴史」として紹介済ですね。15-14でラムズが勝っています。

1945年NFL選手権 クリーブランド・ラムズ 出典:”Best Shots” DK Publishing Inc.

私が所有する写真の中で、サイドラインに藁を敷き詰めて暖を取っている様子はこの一枚しか存在せず、貴重な写真です。風が吹けば藁がフィールド上に飛んで行ってしまうわけで、決して良いアイデアとは思いませんが、とにかく「寒くて寒くて、背に腹は代えられない」という状態だったのでしょう。

もっと寒そうな写真はないかと探しましたところ、ありました。

1948年12月19日、シカゴでおこなわれた、シカゴ(現アリゾナ)・カージナルスvsフィラデルフィア・イーグルスのNFL選手権です。7-0でイーグルス(写真)が勝利しています。

1948年NFL選手権 イーグルス 出典:”Best Shots” DK Publishing Inc.

本当に寒そうで、これなら藁でも敷いてある方が、まだ少しマシかと思います。

選手たちの着ているコートが皆同じデザインなので、防寒用にチームで用意したものなのでしょう。せっかくお揃えで作るなら、もう少しスポーティなデザインに出来なかったのかなと思います。

当時はヘルメットに、フェイスガードが付いている選手と、フェイスガード無しの選手が混在して試合をしていたことがわかります。フェイスガード無しの選手にとって、怖いし危険だと思うのですが、平気で試合をしていたのでしょうかね?

最近は温風噴射機などのデバイスが導入されて、ベンチに座る選手達はずいぶん楽になっているのでしょう。近代では寒そうにする選手の写真はあまり見あたりません。私が見つけたのは、1962年12月30日にニューヨークでおこなわれたNFL選手権、パッカーズ16-7ジャイアンツのジャイアンツ側ベンチ風景です。

1962年NFL選手権 NYジャイアンツ 出典:The Football Book, Sports Illustrated

この日の気温は零下4度との記録が残されています。60年前にはバケツに炭を入れて、火を焚いて暖を取っていたのですね。サイドライン際に選手が飛び込んで来た時はとても危険だと思います。

寒さのせいか、負けているせいかわかりませんが、ジャイアンツの選手は意気消沈しているように見えます。

最後に「寒さと闘う観客」の写真をご紹介します。最初に述べた、1967年NFL選手権「アイスボウル 摂氏マイナス27度の死闘」(パッカーズ21-17カウボーイズ)の際のスタンド風景です。

1967年NFL選手権 アイスボウル 出典:The Football Book, Sports Illustrated

当時の新聞には「観客の吐く息が白く凍り付いて、まるで霧のサンフランシスコのようであった。」との記事が残されています。

この試合中に、観客の一名(高齢の男性)が心臓麻痺のため死亡しています。

「審判がくわえているホイッスルが唇に凍り付いて、無理に剥がそうとしたため、審判の唇が血だらけになった。」との記述もあります。この試合に参加した誰もが、命がけだったのです。

「悪天候は、フットボールの魅力の一部」という考え方にご賛同いただけますでしょうか?

今日の試合に勝つためには、

 諸君はまず天候に勝たねばならない。

──ビンス・ロンバルディ (グリーンベイ・パッカーズ ヘッドコーチ)

1967年、のちに「アイスボウル」と呼ばれることになるNFL選手権の試合前、ロッカールームに選手達を集めて

 

「清水利彦のアメフト名言・迷言集」

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