【清水利彦コラム】全米カレッジフットボール 後半戦への展望 2023.11.09

清水 利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

全米カレッジに関するこのコラム原稿を、11月1日に書いています。
11月4日土曜(日本時間5日)の試合結果をすべて把握してから原稿を書き始めると、11月7日火曜のUnicorns Net 1870号の原稿締め切りに間に合いませんので、10月28日(Week 9)終了時点でのコラムとし、最後にWeek 10の結果を少しだけ書き添えるようにします。

全米カレッジ第9週(10/28)を終えて

早いもので、フットボールシーズンも既に6割が経過しました。今年はあまりサプライズが多くなくて、「いささか面白味に欠ける前半戦」と呼ぶべきかもしれません。
現在APランキングは、1位ジョージア大、2位ミシガン大、3位オハイオ州立大、4位フロリダ州立大、5位ワシントン大。ここまでがパワー5カンファレンスの全勝校です。(すべて8勝0敗)

3年連続全米王座に挑戦中のジョージア大と、ヘッドコーチのカービー・スマート

今期、ジョージア大(SECリーグ所属)は3年連続の全米王座を目指しており、これを達成できるかが最大の焦点でしょう。2年連続優勝は何度も起こっていますが、「3年連続王座」となると本当に大偉業となります。
昔はエール大学の6年連続王座(1879~1884年)などがあるのですが、なにせ当時はフットボールをやっていた学校が極端に少なく比較になりません。比較的最近では1944~1946年のアーミー(陸軍士官学校)の三連覇があるだけです。18回チャンピオンになっているアラバマ大でも、2年連続優勝は4回ありますが、3年連続は経験していません。

今期のジョージア大の利点は「対戦スケジュールに、あまり強豪校が並んでいない」ことでしょう。このままレギュラーシーズンを全勝で終える可能性が高く、その後はSECリーグ優勝決定戦(おそらく相手はアラバマ大)と、全米王座決定戦の準決勝・決勝、合わせて3試合を勝ち抜けるかどうか、というところでしょう。

BIG TENは毎度おなじみのミシガン大vsオハイオ州立大の最終戦全勝対決となりそうで、全然面白くありません。8月19日付のコラムで、私が「頑張れ!」と応援したパデュー大学は2勝6敗とボロボロに負けています。とほほ、、、

2018~2021年まで4年続けて負け越しという苦渋を味わったフロリダ州立大が復活の兆しを見せています。開幕戦でルイジアナ州立大を下して一気に評価を上げました。残る対戦相手も比較的ラクで、ファイナル4校に残れる可能性が高そうです。

2007年、アラバマ大コーチ着任直後の若々しいニック・セイバン。当時56歳(出典:Alabama Football, Sports Illustrated)

シーズン前半戦での最大のサプライズは、アラバマ大が9月9日土曜に、地元アラバマ州タスカルーサで、テキサス大に24-34で負けた事でしょう。「テキサス大だって強豪なんだから、負けても不思議ではないだろ」とお叱りを受けそうですが、実は「アラバマが9月に地元ホームゲームで負けた」ことがすごく珍しいのです。
アラバマ大は、その時まで地元タスカルーサで21連勝中。9月試合の戦績としては、2015年9月19日にミシシッピ大に地元で負けて(37-43)以来9年にわたってなんと30連勝中でした。アラバマ大ファンにとっては、「絶対起こってはいけない」ことが起きてしまったわけです。
その後連勝して7勝1敗のランク8位と持ち直していますが、アラバマ大が負けるとすぐに「(今年10月で72歳になった)ニック・セイバン・コーチは、もう限界か!?」等とマスコミに書かれるのがつらいところでしょう。

2018年、当時67歳のニック・セイバン 現在は72歳になりました(出典:Alabama Football, Sports Illustrated)

ランク6位~11位には、7勝1敗(オレゴン大、テキサス大、アラバマ大、ペンシルバニア州立大、オクラホマ大、ミシシッピ大)の6校が続きます。
昨年6勝7敗という悲惨なシーズンを送ったオクラホマ大は7連勝で上位5校に食い込む勢いでしたが、10月28日カンザス大に大接戦の末、不覚を取り一歩後退しました。
オクラホマ大vsカンザス大戦のスリリングな結末はこちらで。(7分)

Oklahoma vs Kansas THRILLING Ending | 2023 College Football – YouTube

ここまでの上位11校から全米チャンピオンが生まれるのは、ほぼ間違いないと考えています。
11校の中で私が一番勝ってもらいたいのは・・・名前を出すとコロコロ負けるのでやめておきます。

今季不調組と言えば、クレムソン大(2016,2018全米王座)、オーバーン大(2010王座)、テキサスクリスチャン大(昨年度選手権決勝進出)あたりでしょうか。3校とも4勝4敗と低迷しています。

パワー5カンファレンス以外の学校で注目すべきは、8戦全勝でランク25位に入ってきた空軍士官学校(AFA=Air Force Academy 所属リーグ・マウンテンウエスト)でしょう。これまでAFAがシーズン終了後にランク入りしたのは、過去68年間で2019年の22位(11勝2敗)の1回だけですが、今年はそれを上回る勢いです。

今年で就任17年目となるトロイ・カルホーン・コーチが手塩にかけて育て次第に強くなってきました。過去16年でボウルゲーム出場12回。通算129勝78敗(.623)。有力高校選手をかき集めてくることが難しいと思われる軍人養成学校でこの好戦績は驚異的です。もしも、残り4試合全て勝って12戦全勝となると、創部以来69年の歴史で初の快挙となります。

AFAはロッキー山脈の麓(標高2000m!)コロラド州コロラドスプリングスにあります。空軍らしくファルコンズ(ハヤブサ)というカッコいい名称を持ちます。学生数は全部で4300人と超少数精鋭主義。(慶應義塾は約34000人、ちなみに米国陸軍士官学校、海軍兵学校も学生数は空軍とほぼ同数)
学生が少ないのに、46600人収容できるフットボール専用球技場「ファルコン・スタジアム」を持ち、本当にうらやましいです。
学生達(ここでは士官候補生と呼ばれます)は入学すると毎年3種目以上の運動種目を履修することが義務付けられています。訓練も厳しいものなのでしょうね。

整列するAFAの学生達 後ろに見える建物はキャンパス内のチャペルです(出典:Wikipedia)

ところで、来年度から全米カレッジ選手権が、現在の4校から「12校参加」に拡大されます。
ランキング1位~4位が一回戦シードされ、5位~12位の8校で一回戦。以下、準々決勝・準決勝・決勝となります。12位までに入っていれば誰でも自力優勝できる可能性があるわけで、来年からはレギュラーシーズンで2敗してしまったチームも必死で12位以内を目指し、下剋上を狙ってくるでしょう。
つまりレギュラーシーズン試合は、今後「一部120校の中から12校を選ぶための予選」のような位置づけになると予想します。
全米選手権の試合数がこれまでの3試合から11試合に増えますので、イベントとしての入場料収入や放映料等が格段に増えることになります。なんだかマネーゲームに翻弄されている、というような印象を受けます。昔は元旦のボウルゲームでシーズンが終了したのですが、来年からは間違いなく2週間分シーズンが長くなるので、全米王座が決まるのはおそらく1月下旬にずれこむのでしょうね。NFLとほとんど変わりません。歴史あるローズボウルやコットンボウルが、「単なる準々決勝のうちのひとつ」に格下げとなるようなことが無いことを祈ります。

第10週(11月4日)を終えての最新情報

前週までの上位11校の中で、負けたのはオクラホマ大(24-27オクラホマ州立大)だけでした。
今後は全勝組5校(ジョージア大、ミシガン大、オハイオ州立大、フロリダ州立大、ワシントン大)と、一敗組5校(オレゴン大、テキサス大、アラバマ大、ペンシルバニア州立大、ミシシッピ大)での王座争いとなります。
これら10校の中で、レギュラーシーズンにおいて、ジョージア大vsミシシッピ大、ミシガン大vsペンシルバニア州立大、ミシガン大vsオハイオ州立大の直接対決が残っており注目されます。

私が「今期不調組」と断じた4勝4敗のクレムソン大が、まるでUnicorns Netを読んで発奮したかのように、7勝2敗のノートルダム大(前週15位)を31-23で下しました。

せっかく特集を組んで紹介し、「部史上初の全勝シーズン成るか」と書いた空軍士官学校(AFA)が、今期2勝6敗と不調だったアーミー(陸軍士官学校)に地元で3-23と完敗しました。とほほ、、、

関西学生リーグの動向

関学・関大・立命・京大が4連勝で前半を乗り切り、4強の激突が始まっています。関学は京大に圧勝。立命vs関大は、がっぷり四つの熱戦でしたが、立命館が38-27で勝利しました。これにより11月11日にヤンマー長居でおこなわれる関学vs立命戦が天下分け目の大一番となります。

私はオンライン放送で観戦しています。「アメフトライブ by rtv」というサイトは有料ですが、関東・関西の学生、そしてXリーグの試合も自宅に居ながら観戦できるので、誠に重宝しています。

https://live.amefootlive.jp/

ライブ放送だけでなく、「見逃し配信」という機能があり、後からでも見直すことが出来ますのでオススメです。関西の試合を観ておくことは、慶應にとっても勉強になると思いますよ。


「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
https://footballquotes.fc2.net/
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