清水 利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com
全米カレッジについては、昨年12月24日号に「全米大学選手権の準決勝の組み合わせが決まりました」というところまでご紹介しました。今日はその後の結果をお知らせします。
<準決勝>どちらも接戦で、特にジョージア大vsオハイオ州立大は手に汗握る好試合となりました。まだご覧になっていない方はYou Tubeのダイジェスト版をどうぞ。
ジョージア大(1位・赤)42-41オハイオ州立大(4位・白)10分
(1) #1 Georgia vs #4 Ohio State Highlights (Normal Broadcast & Camera Angles) | College Football Playoff – YouTube
テキサス・クリスチャン大(3位・白)51-45ミシガン大(2位・紺)15分
(1) NCAAF 2022 CFP Semifinal Fiesta Bowl – TCU Horned Frogs vs. Michigan Wolverines – YouTube
<決勝>テキサス・クリスチャン大の「84年ぶりの王座復帰」が見られるかと期待していたのですが、肝心な決勝戦は、一方的なつまらない試合となってしまいました。「清水が応援するチームはコロコロ負ける」というジンクスが繰り返されています。
ジョージア大 65-7 テキサス・クリスチャン大
ジョージア大は14戦全勝のパーフェクトシーズンで、2年連続3回目の全米王座です。
※カービー・スマートはジョージア大を率いて7年目。現役時代はジョージア大でDBとして活躍した「はえ抜き」コーチです。これまで81勝15敗(.843)と圧倒的に勝ち続けています。かつてスマートはアラバマ大ニック・セイバン・コーチの下で守備コーディネーターをしていました。フランク・ブロイルズ賞(全米最優秀アシスタントコーチ賞)を獲得していますので、極めて優秀なアシスタントコーチだったのでしょう。
決勝戦の結果を見ますと、「うーん、ランク5位のアラバマ大がファイナル4校に残っていたら、結果は変わっていたかもしれないな。こんな一方的な決勝戦にならなかったのでは。」と考えてしまいます。ジョージア大とアラバマ大は同じSECリーグ所属ですが、東地区(ジョージア大、テネシー大など)と西地区(アラバマ大、オーバーン大、ルイジアナ州立大など)に分かれているため、今年はレギュラーシーズンでの両校の対戦がなかったことも、ジョージア大独走の大きな要因でした。
このような疑問を解消するためなのでしょうが、実は2024年から全米大学選手権は今の4校から、なんと12校に拡大されます。1回戦を5位vs12位、6位vs11位、7位vs10位、8位vs9位でおこない、2回戦(準々決勝)から上位4校が1回戦勝者と対戦する、という方式になるようです。レギュラーシーズン終了時点でランク12位までに残っていれば、全米王座に着けるチャンスがあるということですね。たしかに、この方式で優勝が決まれば、そのチームが全米チャンピオンであることには、誰も文句は言わないでしょう。
ただし、これを採用すると、最も多いケースで、大学チームがレギュラーシーズン12試合+リーグ優勝決定戦1試合+全米大学選手権4試合=合計17試合を戦うことになり、プロとほとんど変わりません。勉強しているヒマなんか無い、という話になり、ますます「カレッジフットボールのプロ化が進む」と感じます。カレッジフットボールがいかに「ビジネスとして旨味があるか」の証明とも言えます。
<その他のボウルゲーム結果から>
ボウルゲームの数は昨年度43試合(ただし5試合がコロナ禍で中止)、今年は41試合ということで、「ボウルゲームの粗製乱造」という傾向は変わりません。出場した82校のうち、12校は最終負け越してシーズンを終えています。(6勝7敗11校と、5勝8敗のライス大)
オクラホマ大の今季6勝7敗には驚きました。オクラホマ大が負け越したのは1998年以来24年ぶりの事です。ネブラスカ大のように、「過去に黄金時代はあったが、今は凋落」になってゆかなければ良いですがね。ネブラスカ大は今季で6年連続負け越し。スコット・フロスト・コーチはこの秋、無名のジョージアサザン大に不覚を取り、1勝2敗となった時点でクビになっています。
フロリダ大(6勝7敗)も、1980年から2020年の41年間に1回しか負け越しがなかったのに、昨年度と本年度2年続けて負け越すなど、名門校の中でも浮き沈みが激しいですね。
<驚きのコットンボウル & チュレーン大学とは>
今季のボウルゲームで最大のサプライズは、コットンボウルでの
チュレーン大 46-45 USC でしょう。
USCはレギュラーシーズンを11勝2敗で終え、5年ぶりの二桁勝利を挙げていました。QBカレブ・ウイリアムスがハイズマン賞を受賞し、久々に強いUSCが復活して、「相手がチュレーン大とは物足りないな」と思いながらコットンボウルに臨んだのではないでしょうか。ところがUSCが負けてしまい、本当に驚きました。
一方のチュレーン大は、「そんな大学名、聞いたことがないよ」という方が多いと思います。American Athletic Conferenceという、こちらもあまり聞いたことが無いリーグに所属しています。旧リーグ名称がBig East と言えば「ああ、それなら知っている」という方もおられるかも知れません。
チュレーン大(Tulane University)は、正式名称をThe Tulane University of Louisianaと言い、規模は小さいですが伝統名門校です。
1834年(慶應義塾の創立が1858年。慶應義塾大学の設立は1920年)ルイジアナ医科大学として設立されました。南部では二番目に出来た医科大学でした。当時の医大は、天然痘・黄熱病・コレラ等の伝染病対策を取る為に設けられたもので、学ぶ学生も命がけでした。
1847年に法学部等も加え、ルイジアナ大学と改称した州立の総合大学となりました。南北戦争(1861-65年)の時に一時閉鎖されましたが再開しています。ところが1885年に大学が財政危機に陥ってしまい、それを救ったのがポール・チュレーン氏という大富豪でした。結局、チュレーン氏は大学の経営を引き受け、州立大学を私立大学と改め、チュレーン大学として存続させたのです。
ルイジアナ州立大(Louisiana State University)はあるのに、なぜルイジアナ大学(University of Louisiana)がないのだろうと不思議に思っていましたが、実はチュレーン大学が、元はルイジアナ大学だったのです。州立大学が私立大学に変換された極めて珍しい例です。
ニューオーリンズの街なかに所在しており、学生数は14000人と少ないですが、医学部と法学部が有名で学業レベルの高い大学です。今でも白人学生の比率が圧倒的に高く、しかも富裕層の子女が多いことで知られています。
チュレーン大フットボール部(Tulane Green Wave)は1902年創部。今年で121年目という歴史を誇ります。ただし、通算戦績は528勝649敗35分(.449)と芳しくありません。強いリーグに所属していたわけではないのに、この勝率では「かなり弱いチーム」ということができます。
昔からずっと弱かったわけではなく、1930年代はシュガーボウル2回、ローズボウル1回の出場を果たすほどの強豪でした。1934年の第1回(!)シュガーボウルで、テンプル大を20-14で下して最初の優勝校になっています。ところが、その後はぱっとしない戦績が続き、特に2003年から昨2021年の19年間で、77勝153敗(.335)という不調ぶりでした。昨季も2勝10敗で終わっています。
その弱いチュレーン大が、突然強くなり今季は12勝2敗、コットンボウルでUSCを破りました。同大学にとって1934年のシュガーボウル以来、メジャーなボウルゲームの勝利という88年ぶりの美酒を味わったわけです。
今季のコットンボウルは、USCが圧倒的有利と言われていたため、不人気なカードとなりました。開催地のAT&Tスタジアムは収容能力が8万人で、大イベントの際には10万席まで増設できるという巨大施設ですが、今回の入場者数は55000人。空席がいくらでもある状態でした。
試合開始早々、USCがTD2本で14-0とリード。この差をずっと保つ形で第4Qに入ります。
残り4:30で、USC45-30チュレーン大と15点差がついていました。それなのに何故USCが1点差で負けることになったかは、下記You Tubeでご確認ください。チュレーン大ファン達の歓喜の様子もご覧いただけます。(10分)
「チュレーン大は知らなくても、チュレーン・スタジアムは知っている」というオールドファンの方が多いのではないでしょうか。8万人収容できる当時としては最大級のフットボール場で、1935-74年、40年間に渡る「シュガーボウルの会場」として有名でした。1970,1972,1975年の3回、スーパーボウルの会場にもなりましたが、ニューオーリンズにスーパードームが完成したため1980年取り壊されています。
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