清水 利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com
米国のカレッジフットボール・ファンにとって、「11月の最終土曜日」は特別な意味を持っています。多くのチームがレギュラーシーズンの最終戦を迎え、各地で強豪校同士が最後に激突して雌雄を決する日なのです。「一年でカレッジフットボールが一番面白い日」とも言われています。
今年は11月27日が最終土曜日でしたので、その日の模様を速報でお届けします。なお、ここで紹介する試合は You Tube「College Football 2021」でダイジェスト版をご覧いただけます。
<アラバマ大vsオーバーン大>
※OT:オーバータイム
伝統の「アイアンボウル(アラバマvsオーバーン定期戦)」は、ここまで10勝1敗のアラバマ大に対し、オーバーン大は今季6勝5敗と絶不調。大差がつくかと思われましたが、地元での最終戦にオーバーン大が意地を見せました。開始早々から両軍選手同士のケンカ・小競り合いが起こり、アラバマ大選手がターゲティングで退場になるなど波乱含みの展開です。
いやあ、すごい試合でした。
第4Q、残り9分までオーバーン大が10-0とリードしていたのですが、アラバマがFGで3点返し、更に試合終了24秒前にTDパスを決めて10-10の同点に追いつきました。
タイブレークを2回繰り返しても勝負が決まらず、3回目からは敵陣3ydから2ポイントコンバージョンを交互に繰り返す形式の延長戦に入りました。結局4回目のオーバータイムでオーバーン大が力尽きました。オーバーン大にとっては悔やんでも悔やみきれない試合でしょう。
「首の皮一枚残して生き残った」感じのアラバマ大は、これでSECリーグ西地区の首位となり、12月4日にSECリーグ優勝決定戦で、12戦全勝のジョージア大と対戦します。ランク1位のジョージアと直接対決できるため、アラバマ大が自力で全米王座に着くチャンスが出来ました。
<ミシガン大vsオハイオ州立大>
かつてスポーツイラストレイテッド誌が「カレッジフットボール対校戦・熱狂度ランキング第1位」に選んだ伝統の一戦は、両者とも10勝1敗で「勝った方がBig10優勝決定戦(vsアイオワ大)に進む。負けた方はシーズン終了(マイナーボウル出場)」という状況でした。
15点差がついていますが、試合内容としては点差が示すよりも緊迫した接戦だったと思います。試合終了前2:20まで、8点差をオハイオ州立大が追うという展開でした。
ミシガン大がオハイオ州立大に勝ったのは2011年以来の事で、8連敗で食い止めました。(※2020年はコロナ禍で対戦なし)ミシガン大のヘッドコーチ、ジム・ハーボ―は就任7年目でオハイオ州立大に嬉しい初勝利を挙げました。これで両校の対戦成績はミシガン大の59勝51敗6分となりました。
<オクラホマ州立大vsオクラホマ大>
オクラホマ大がフットボールの名門であることは誰でも知っていますが、オクラホマ州立大(OSU)と言うと、「へえ、そんな大学もあるんだ」という程度の反応しか返ってこないのではないでしょうか?
両校は創立が同じ1890年で、どちらも立派な歴史を持ちます。ただしオクラホマ州立大は設立当初、Oklahoma Agricultural and Mechanical College、つまりオクラホマ農工大と呼ばれていた農業近代化のための専門学校でした。のちに総合大学となり、1958年にOklahoma State University と改名しています。体育会としてはレスリング部が超強豪で、五輪金メダリストを21名輩出しています。
キャンパスも田舎の大学によくある、「めちゃくちゃ広くて、立派で、美しい」もののようですね。
この両校の対戦は「べドラム・シリーズ」という名前の対校戦となっています。Bedlam とは「大騒動、大混乱」という意味を持ち、「頭のおかしい人たちが集まる場所」というニュアンスもあるようです。過去に両校がどんな試合を展開してきたか、なんとなく想像できますね。(笑)戦績はオクラホマの通算90勝19敗7分と一方的になっていました。
オクラホマ大が全米王座7回を誇り、リーグ優勝は30回以上、874勝311敗47分、勝率.728と栄光にあふれる歴史を築いているのに対し、OSUは全米王座経験なし。創部108年の歴史でリーグ優勝は1回だけ(2011年)。通算586勝524敗41分、勝率.527と常に「まあまあの戦績」に終始してきました。ただし現在のマイク・ガンディ・コーチ就任以来148勝68敗、勝率.685とレベルを一挙に上げ、近年はボウルゲームの常連校となっています。
試合は第4Q、残り9分でOSUの鮮やかな逆転勝ちとなり、7年ぶりにオクラホマ大に勝利しました。きっと地元スティルウォーターは大騒動・大混乱になったことでしょうね。これでOSUは11勝1敗となり、12月5日、2回目のBig12リーグ優勝をかけてベイラー大と対戦します。レギュラーシーズン中にOSUは24-14で一度ベイラー大に勝利しています。OSUはごくわずかですが、初の全米王座の可能性も残しています。
オクラホマ大は10勝2敗で、レギュラーシーズン終了となり、マイナーボウルに出場となります。
<今後の展望>
これらの試合結果により、12月5日の各リーグ優勝決定戦は次のようになりました。
※ランクはAP
- SEC:ジョージア(12勝0敗、ランク1位)vsアラバマ大(11-1、4位)
- Pac-12:オレゴン大(10-2,11位)vsユタ大(9-3、14位)
- Big12:オクラホマ州立大(11-1、5位)vsベイラー大(10-2、9位)
- Big Ten:ミシガン大(11-1、2位)vsアイオワ大(10-2、15位)
- ACC:ピッツバーグ大(10-2、17位)vsウエイクフォレスト大(10-2、18位)
- American:シンシナチ大(12-0、3位)vsヒューストン大(11-1、16位)
この他にノートルダム大(6位)が11-1でレギュラーシーズン全日程を終えています。
正月以降におこなわれる全米大学選手権は4校しか出場できませんので、来週終了後ランク4位に入っていなければなりません。現在の上位4校は勝てば出場は確定ですが、5位6位は他力本願となります。SECの優勝校が今後の本命になるのは間違いないでしょう。判官びいきの私はオクラホマ州立大かノートルダム大がなんとか4位までに食い込んで、大学選手権に出場して欲しいと願っています。
いよいよ大詰めを迎える今年のカレッジフットボール、どのような結末になるのでしょうか。
「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
https://footballquotes.fc2.net/
「今週の名言・迷言」を木曜日ごとに更新しています