【清水利彦コラム】NHK朝ドラ「ブギウギ」とユニコーンズの関係??? 2023.12.22

清水 利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

<NHK朝ドラ「ブギウギ」とユニコーンズの関係???>

会社勤めを定年で退き、西宮市の自宅に戻ってからは、NHK朝ドラをずっと欠かさず観ており、楽しみにしています。
今やっている朝ドラ「ブギウギ」(主演は趣里という女優で、水谷豊と伊藤蘭の娘)は、なかなか評判が良いと聞き及んでいます。趣里はドラマの中で「福来スズ子」という役を演じていますが、福来スズ子は、実はかつて「ブギの女王」として一世を風靡した名歌手・笠置(かさぎ)シヅ子のことであり、「ブギウギ」は笠置シヅ子の波瀾万丈の人生を描いたドラマです。(笠置シズ子と表記されている文献もあり)

笠置シヅ子は1914年(大正3年)香川県生まれ。おとなしいメロディの曲を直立不動で歌うソロ歌手しか存在しなかった戦後の邦楽界に、躍動感のあるリズムの楽曲と派手なダンスパフォーマンスを導入したことで革命的な存在になり、超人気歌手となった人物です。1985年70歳で没。

今回は、「笠置シヅ子と、ユニコーンズの間には、多少のご縁がある」という話をご紹介します。

部歌発表会に出演した笠置シヅ子(出典:Wikipedia)

ユニコーンズの部歌「March on KEIO」は、1950年に慶應義塾体育会アメリカンフットボール部・創部15周年記念行事として、当時日本最高峰の音楽家であった平岡養一氏(作曲家・木琴奏者、幼稚舎からの生粋慶應ボーイ)に部から作詞・作曲を依頼し、翌1951年に完成しています。

平岡養一氏は当時の思い出を次のように述べておられます。
※当時の様子は、私のブログ アメフト名言・迷言集 (fc2.net) の中で「部歌の作者 平岡養一物語」として詳しく述べておりますので参照してください。

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昭和25年(1950年)の秋、私(平岡養一)はちょっと変わった作曲の依頼を受けた。
慶應義塾大学体育会アメリカンフットボール部が、自分達の部歌を作ってくれないかと頼みに来たのである。
慶應義塾大学の教授、青木厳さんはかつてコロムビア大学におられた事があり、旧知の仲であった。青木先生がアメリカンフットボール部の部長をしていたため、部の創立15周年記念の行事として、部歌を持つことを企画され、私のところに依頼があったのである。

校歌を持つ大学はいくらでもあるが、部歌を持つ体育会クラブというのはほとんど存在しないだろう。なおかつアメリカンフットボールという極めて特殊なスポーツの部歌を作ってくれと言うのである。逆に言えば、これは米国暮らしの長い、私にしか出来ない仕事であると感じ、私は喜んで引き受けることにした。実際のところ、私はフットボールが大好きで、米国でも妻と一緒に幾度もフットボール試合を見ていたし、日本に帰ってからも、母校慶應のアメリカンフットボールの試合をたびたび観戦していたのだ。

(中略)

製作依頼を受けてから半年して、ようやく部歌が出来上がり、自宅まで部歌の楽譜を受け取りに来たのは、飯田繁治(主将)、菅原甫、永田正夫、そして原田稔(※この物語を私に語ってくださった先輩。故人)という4名の学生服に身を固めた部員だった。部員達は喜び勇んで楽譜を持ち帰った。

その後しばらくして、また私は部員達から連絡をもらった。
「練習後、毎日部歌を歌って習得した。ひいては部歌のお披露目を、日比谷公会堂を借りておこないたい」ので、私に出演してほしいと言うのである。私の他に当時トップスター歌手であった笠置シヅ子や、服部良一氏率いる楽団クラックスターにも出演してもらう」とのことだった。学生達だけで運営するコンサートを、そのように大がかりにおこなって、果たして成功するのだろうかと心配したが、アメリカンフットボール部の若者達の意気軒昂さと行動力にほだされて、私は出演を引き受けた。

1951年(昭和26年)4月25日、「慶應義塾体育会アメリカンフットボール部創部15周年記念・新部歌発表会」が開催された。当時、日本では最大級のホールであった日比谷公会堂に満員の聴衆が集まった。
発表会の演目は次のようなものであった。
応援指導部の演奏による、「若き血」「慶應讃歌」「ビクトリー・マーチ」「オール慶應の歌」。(若き血以外は、私が作った歌である)
笠置シヅ子と、服部良一指揮する楽団クラックスターによる歌と演奏7曲。
途中、アメリカンフットボールの競技に関する説明や、日米アメリカンフットボールの短編映画上映。その後、「部歌の贈呈式と発表、ならびに歌唱指導」があり、最後に私が木琴演奏を6曲おこない、割れんばかりの拍手の中、発表会は大成功に終わった。

服部良一 作曲家・楽団指揮者 当時人気絶頂の作曲家。「東京ブギウギ」など笠置シヅ子の歌を多数作曲。他に「青い山脈」「別れのブルース」「銀座カンカン娘」などヒット曲多数。
日比谷公会堂 1929年に建築された、当時は東京唯一のコンサートホール。収容約2千人。現在も残っているが、耐震性に問題があるため休館となっている。浅沼稲次郎(社会党党首)刺殺事件の舞台として有名。

部歌発表会当日、配布されたプログラムの表紙 故・多田祥太郎先輩から清水へ寄付されたもの

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つまり、新部歌March on KEIOの発表会に、超人気歌手笠置シヅ子さんが出演してくださり、発表会の盛り上げに貢献されたわけです。笠置シヅ子が一緒に部歌を唄ってくれたという記述は、残念ながら見つかりませんでしたので、そういうことはなかったと思います。笑

当時、日本最大級のコンサートホールであった日比谷公会堂に、人気日本一の歌手・笠置シヅ子を招き、満員の観衆を集めて部歌発表会をやる。今なら大手広告代理店に依頼するようなことを、部員だけで企画・運営をやりとげた、そのエネルギーと情熱には頭が下がります。

もっとも昔は、部員がダンスパーティー(ワルツ等を踊る社交ダンスです!)を企画して、会場を借りて大勢の若者を集め、そのパーティー券売り上げで、部活動費を捻出するような事があったという話も聞いたことがあります。昔の先輩方のほうが、ずっと先進的なモダンボーイだったのかもしれません。
(今、こんな事をやっては良くないと思われますので、現役諸君は監督の方針に従ってくださいね。当時はまだOBがほとんど存在していないので三田会補助など一切無く、自分達で活動費を稼ぐしか方法がなかったのです。)

今回「笠置シヅ子と慶應アメリカンフットボール部の関係」についてコラムを書くというアイデアを、私にご提案くださった土井隆史先輩(S46卒)に厚く御礼申し上げます。

<全米カレッジ速報 大学選手権出場校決定!>

毎年、12月の第1土曜(今年は12月2日)は「リーグ優勝決定戦の日」と呼ばれています。
今年のパワー5カンファレンスにおけるリーグ優勝決定戦の結果は以下の通りとなりました。この週の結果を踏まえて、CFP(College Football Playoff)委員会が全米大学選手権に進出する4校を選ぶことになります。

※勝敗数は優勝決定戦後のもの、ランクは優勝決定戦直前のもの

  • SEC アラバマ大(12-1、8位)27-24ジョージア大(12-1、1位)
  • Big Ten ミシガン大(13-0、2位)26-0アイオワ大(10-3、16位)
  • Pac-12 ワシントン大(13-0、3位)34-31オレゴン大(11-2、5位)
  • ACC フロリダ州立大(13-0、4位)16-6ルイビル大(10-3、14位)
  • Big 12  テキサス大(12-1、7位)49-21オクラホマ州立大(9-4、18位)

2年連続王座で、3年連続を狙っていた1位のジョージア大が、アラバマ大に敗れました。ジョージア大が負けたのは2021年12月(やはりアラバマ大戦)以来で、連勝は29でストップしました。この敗戦により、4校を選ぶのが非常に混とんとしてきたわけです。
ミシガン大、ワシントン大は選手権進出がすんなり決まりましたが、あと2校をフロリダ州立大、アラバマ大、テキサス大、ジョージア大から選ぶのが大変難しくなりました。

そしてCFP委員会の出した結論は下記の通りです。
全米大学選手権準決勝(1月1日)組み合わせ

  • ミシガン大(1位、13-0)vsアラバマ大(4位、12-1) 於ローズボウル
  • ワシントン大(2位、13-0)vsテキサス大(3位、12-1) 於シュガーボウル

そして5位フロリダ州立大(13-0)、6位ジョージア大(12-1)となりました。
収まらないのはフロリダ州立大でしょう。パワー5カンファレンス所属のチームがシーズン全勝したのに、選手権出場4校に選ばれなかったことは過去に一度もありません。フロリダ州立大関係者が「我々は、(1敗している)テキサス大やアラバマ大より高い評価を受けるべきだ!」と叫ぶのは当然の事です。
ジョージア大も、「うちはアラバマ大に惜敗しただけなのに、どうして下位のオクラホマ大に負けたテキサス大の方が我々より評価が上なんだ?」という不満を持っていると想像します。

選にもれて全米王座への挑戦権を失ったフロリダ州立大とジョージア大は、12月30日のオレンジボウルで対戦することになりました。私はこの試合を勝手に「残念無念ボウル」と名付けています。(笑)
来年度からは上位12校でトーナメントをやって王者を決める方式に変更されますので、このような騒動は今年限りのものとなるのでしょうね。

<日本の大学選手権システムも、来年から大改革!>

まず下記の報告をお読みください。私は何も知らなかったので、本当にびっくりしました。

KCFA|【日本学生協会】2024年以降の全日本大学選手権の方式について | 一般社団法人 関東学生アメリカンフットボール連盟

これを読んだ私は、「大変な改革だな!来年からはシーズン終盤の盛り上がり方が全然違うぞ!」と感じました。決断した協会・連盟関係者を私は評価しています。大きな変更点は下記のとおりです。

  1. 大学選手権出場校を、関西一部から3校、関東TOP8から3校、北海道・東北・北陸・東海・中四国・九州地区から各1校の計12校とする。
  2. つまり関西一部と関東TOP8は、1位~3位まで選手権に出場できる。(今年までは1位のみ)今年、関西一部リーグでは、関学・関大・立命が三つ巴となり、「抽選により関学が甲子園ボウル出場」となったが、来年からはこのような事態が解消される。
  3. 今年までは、甲子園ボウルの一つ前の「準決勝がいつも一方的な試合になり、シーズン終盤の盛り上がりに水を差す」という大きなデメリットがあったが、これで解消される。
  4. 新方式では「関西1位・3位と、関東2位」、「関東1位・3位と関西2位」がトーナメント表の同じゾーンに分かれて振り分けされる。ということは、準決勝は2試合とも関東vs関西となる可能性が高く、甲子園ボウル(大学選手権決勝戦)が、「関西同士」あるいは「関東同士」の対戦となる可能性がある。東西対決ではなく、「日本で一番強い2校が、甲子園で大学王座を争う」という図式になる。
  5. 甲子園ボウルだけでなく、準決勝も15分クォーターで試合を行う。
  6. 今年の順位を例にとるならば、「明治vs立命館」「立教vs関大」などの新鮮な組み合わせが、準々決勝から実現する。
  7. 3年間この方式でおこない、4年目以降は再度検討する。

この大改革がユニコーンズにどのような影響を与えるかと考えますと、

  • 「なにがなんでもリーグ優勝」から「まずはTOP8で3位以内に入ることを目指す」へと目標設定が変わるのではないでしょうか。これまでは「リーグ戦で2敗したら全て終わり」でしたが、来年からは「星のつぶし合いによっては、リーグ戦4勝3敗でも(3位で)選手権出場の可能性あり。とにかくあきらめずに最後まで戦おう」という考え方に変わるでしょう。
  • 日本一になるためには、10試合(リーグ戦7、選手権3)を戦い抜かねばならず、しかも最後の2試合は15分クォーターです。これまで以上に「鍛え抜かれた体力のあるチーム、選手層の厚いチーム」が有利になると思われます。
  • 両方のゾーンに関東・関西の大学が振り分けられるため、「関西のチームを最低一つは倒さないと、慶應は甲子園ボウルに出場できない」ことになる可能性が非常に高いです。新方式により「甲子園出場への道は更に険しくなる」と見るのが妥当ではないでしょうか。
  • もし慶應が関東3位で選手権に出場すると、「準々決勝でユニコーンズが関西遠征し、関西2位と激突する試合」を、関西在住の慶應卒業生は目の前で観ることが出来る、ということになりますね♪(ごめんなさい、関東1位2位になってほしくない、という意味ではありません!)

新方式のデメリットを多少感じる部分もあります。
例えば北海道地区代表校が勝ち進むと仮定した場合、

11月10日 1回戦 北海道vs東海地区代表 於東海
11月17日 2回戦 北海道vs九州地区代表 於九州
11月24日 準々決勝 北海道vs関東1位  於九州

と、とんでもない遠征を続けなければなりません。ちょっと非現実的ですね。
もし、地区代表6校を「Aグループ 北海道・東北・北陸」と「Bグループ 東海・中四国・九州」の3つずつに固定させて同じゾーンに置き、準々決勝を「A勝者は、東北または北陸で関東1位と」、「B勝者は、東海または九州で関西1位と」やるように決めれば、地区代表校の遠征の距離的負担はかなり軽減すると、私は感じます。

全体の試合数が増えることにより、限られた試合会場でのスケジュール作成に連盟関係者の方々は大変苦労されることと思います。シーズン後半が過密日程になることも十分考えられます。関東と関西にもう一つずつ、フットボール専用球技場があったらなあと、つくづく思います。

学生フットボール界は長らく「西高東低」の傾向がありますので、もしかすると「関東代表が何年間も甲子園ボウルに出場できない」というような可能性もある、ということですね。関東各校は、TOP8リーグのシーズン中でも、関西の強豪チームの動向をつぶさに観察し、研究しておく必要が出てきそうです。

多少のデメリットがあるにせよ、新方式により「新鮮な対戦組み合わせ」、「シーズン終盤の盛り上がり」、「白熱した日本一争い」が見られることは必至だと思います。改革の実施に賛同の意を表し、この改革により日本の学生アメリカンフットボール界が更なる発展を遂げることを祈ります。

<年の終わりに>

さて、本号で今年のコラム掲載は終了です。2023年は27本のコラムを書かせていただきました。
「フットボールのことを、調べて、書く」のが私の趣味ですので、楽しんでやらせてもらっています。(しかも、金がかからない趣味!)皆様に読んでいただけることを感謝しております。更に楽しいページを作っていくのが私の願いですので、来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

最後になりましたが、今年一年間、度重なる原稿修正など様々なご迷惑をおかけしたにもかかわらず、気持ちよくご対応いただいたUnicorns Net編集担当者の皆様に心から感謝し、お名前を列記させていただきます。本当に有難うございました。

Unicorns Net編集担当者 山田健太さん(H7年卒)、高木慶太さん(H7年卒)、中橋正博さん(H9年卒)、林健司さん(H10卒)、横田孝さん(H11年卒)、岡田大行さん(H12年卒)、松田達さん(H18年卒)、新井崇志さん(H18年卒)、田淵咲輝さん(H30年卒)、山村健人さん(R4年卒)


「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
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