【清水利彦コラム】ノーザン・イリノイ大学(NIU)の奇跡 2024.09.19

2024/9/19
昭和52年(1977年)卒 清水利彦
shimizu.toshihiko2@gmail.com

現役部員諸君、明治戦勝利おめでとう!!ナイスゲームでした!
3TDを挙げた前半よりも、「守り切った」感のある後半の戦い方が、私には嬉しかったです。
この試合で自信をつけてレベルアップする選手が何人もいると思います。特にキッカー#11佐々木君。今後の接戦を勝ち抜くには良いキッカーが欠かせません。期待していますよ!

関西では近大(近畿大学)が京大・関大に連勝して、俄然注目を集めています。特に昨年10-42で負けた関大を35-31で破った試合が素晴らしかったです。近大ヘッドコーチには立命館出身の古橋氏が就任しており、9月21日の立命vs近大が古巣対決となります。

さて、海の向こうでもフットボール・シーズンが始まっています。全米カレッジは既に3週目が終わりました。いろいろと波乱含みの試合が多く、大荒れのシーズンになりそうなので紹介します。

〇昨年度全米チャンピオンのミシガン大が、地元でテキサス大に12-31で敗れました。ただしプレシーズンランキングでは、テキサス大4位、ミシガン大9位だったので「順当負け」という言い方が出来るかもしれません。ちなみに今期テキサス大QBは2年生のアーチ・マニング。アーチは、ペイトン・マニング、イーライ・マニングの甥にあたり、往年の名QBアーチー・マニングの孫にあたります。

〇プレシーズンランキング1位のジョージア大が、楽勝と思われたケンタッキー大戦に13-12と薄氷を踏むような勝利でした。

〇昨年度レギュラーシーズンを13戦全勝で終え、今年もプレシーズンランキング10位と評価が高かったフロリダ州立大が、なんと開幕から3連敗しています。

〇昨年度全米2位のワシントン大が、ワシントン州立大に19-24で負け。今期は、Pac12リーグから「USC、UCLA、ワシントン大、オレゴン大がBIG TENに移籍」、「ユタ大、コロラド大、アリゾナ大、アリゾナ州立大がBIG12に移籍」、「スタンフォード大、カリフォルニア大がACCに移籍」したため、Pac12は、ワシントン州立大とオレゴン州立大の2校だけになってしまいました。2校でリーグ戦ではどうにもなりませんね。ワシントン大に去られて、置いてけぼりを食ったワシントン州立大が、ワシントン大に怒りの鉄拳を打ち下ろしたような勝利と言えるのではないでしょうか。

等々、色々あるのですが、なんと言っても一番の驚きは、ランク5位のノートルダム大が地元サウスベンドでノーザン・イリノイ大に14-16で敗れたことでしょうね。
ノートルダム大は今季初戦、アウェイで強敵テキサスA&M大に23-13で勝利し、全米王座復活を虎視眈々と狙っているものと思われていました。ところが、ずっと格下のノーザン・イリノイ大(Northern Illinois University, 以下NIU)に負けてしまったのです。

この試合のスリリングな終盤を、You Tube画像でご覧ください。(17分)
ラジオ・アナウンサーの興奮極まる語りと、試合終了後ずっと泣きながらインタビューを受けるNIUのトーマス・ハモック・ヘッドコーチにご注目ください。

NIU Radio broadcast of the NIU-Notre Dame ending (Full) | 2024 College Football (youtube.com)

ノートルダム大に勝利し、泣きながらインタビューを受けるノーザン・イリノイ大のハモック・コーチ

 

トーマス・ハモックは43歳、今年でNIUを率いて6年目ですが、26勝33敗とさしたる戦績は残していません。体重が140kgくらいありそうなので、当然元ラインマンだと思っていましたが、元RBと聞いて驚きました。NFLボルチモア・レイブンズで5年間RBコーチを務めていました。ハモックがもっと痩せたらNIUはもっと強くなるかもしれませんね。笑

今回の勝利が、ハモックにとってもNIUにとっても「史上最大の快挙」であることは間違いありません。奇跡の勝利でした。

NIUについてちょっと調べてみました。

1895年に「教員を養成するための学校」として開かれました。来年開校130年を迎えます。シカゴから西へ100kmほどの、デカルブという人口4万人ほどの田舎町にあります。学生数1万5千人ほどです。学力が特に優れているわけではなく「可もなく不可もなし」というレベルではないでしょうか。

フットボール部は1899年に設立されましたが、ずっとNCAA2部の扱いを受けており、一部校として認められたのが1968年とずっと後のことです。MAC(Mid-American Conference)というマイナーなリーグに、トレド大やボーリンググリーン大等とともに所属しています。一部加盟から34年間でボウルゲーム出場はわずか1回だけ。シーズン終了後のAPランキングで22位になったことが一度だけあります。そんなNIUがノートルダム大に勝ったので大騒ぎになっているのです。

NIUはチームカラーが黒と赤なのですが、「黒ずくめ応援」をやることで有名でした。3万人くらい入るスタジアムのほぼ全員が上から下まで真っ黒の服を着て応援するのです。スタンドが「闇夜にカラス」状態になり、ブキミな事この上ない応援風景でした。気味が悪いだけで、ちっとも素敵ではありませんでした。笑 今も黒ずくめを続けているのか存じません。

ノーザン・イリノイ大のハスキー・スタジアム。ここのスタンドが試合では真っ黒に染まって不気味です。 出典:Wikipedia

 

それにしてもノートルダム大はどうしてしまったのでしょうか。
ノートルダム大はリーグに所属しない独立校ですので、毎試合、対戦相手のレベルが非常に高く、ハードな日程が続きます。そんな中で、地元サウスベンドの開幕第一戦だけは比較的楽に勝てそうな相手と意図的に試合を組み、快勝しておおいに盛りあがってシーズンに突入する、という習慣を持っています。(近年で言えば、地元開幕戦相手がテネシー州立大・マーシャル大・トレド大・サウスフロリダ大・ニューメキシコ大等々)ところがその「楽に勝てるはずの相手」に負けてしまったのです。

実は2年前、2022年の地元開幕戦もマーシャル大に21-26で負けて、相手に「奇跡の勝利」を与えました。3年に2回も奇跡が起こるなら、奇跡とは言えないのかもしれません。若きヘッドコーチ、マーカス・フリーマンにとって2度目の「奇跡献上」なので、「コーチをクビにしろ」というような厳しい声が出てこないか心配します。マーカス・フリーマンについては下記コラムをご参照ください。

【清水利彦コラム】 ノートルダム大学歴代ヘッドコーチの写真展 2023.10.12 | アメリカンフットボール三田会 (keio-unicorns.com)

今年から全米大学選手権のシステムが大きく変わり、12校によるトーナメント方式になりますので、レギュラーシーズン2敗くらいまでなら、ランク12位以内に残れる可能性は充分あります。
ノートルダム大もまだまだチャンスがありますので、フリーマン・コーチの腕の見せ所ですね。

ユニコーンズも明治戦勝利によって全日本大学選手権への道(今シーズンから関東3位以内)が大きく開けたと言えましょう。ユニコーンズ頑張れ!!


「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
https://footballquotes.fc2.net/

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