清水利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com
久しぶりに「チャーチル名言集」という本をめくっておりましたところ、12月13日の入替戦に臨む現役部員諸君に、是非贈ってやりたいと思う言葉を見つけましたので、紹介いたします。
第二次世界大戦で、ドイツ軍に何度も手痛い敗北を喫しながら、最後に逆転の勝利を収めたチャーチルさながらの言葉であると受け止めております。
「『最後の勝利』とは、
敗れても、敗れても、なお、
情熱と闘志を失わずに
戦い続ける者のみに与えられるものである。」ウィンストン・チャーチル 英国首相
全米カレッジフットボール、終盤の展望
さて、全米カレッジフットボールも終盤戦を残すのみとなりました。11月の最終週(29日)にはオハイオ州立大vsミシガン大等、ライバル同士の試合が多くおこなわれ、12月第一週(6日)が各リーグの優勝決定戦となり、ここで大学選手権出場校が決定します。昨年からランク上位12校によるトーナメント形式の大学選手権となり、ランキング12位と13位では天国と地獄ほどの差があります。
今シーズンは、上位校リストに大きな変動があり、例年と違う新鮮な顔ぶれになっていますのでご紹介しましょう。
11月22日の試合結果によるランキングは、このコラム執筆時点(11/23)ではまだ発表になっていませんので、11月14日現在でのランキングを掲載します。
1.オハイオ州立大 優勝常連校(昨年度全米チャンピオン)
2.インディアナ大 全米王座獲得経験なし
3.テキサスA&M大 1936年以来89年間、全米王座獲得経験なし
4.ジョージア大 優勝常連校
5.テキサス工科大 全米王座獲得経験なし
6.ミシシッピ大 全米王座獲得経験なし
7.オレゴン大 全米王座獲得経験なし
8.オクラホマ大 優勝常連校ではあるが、2000年以来25年間、王座獲得なし
9.ノートルダム大 優勝常連校ではあるが、1988年以来37年間、王座獲得なし
10.アラバマ大 優勝常連校
11.ブリガムヤング大 1984年以来41年間、全米王座獲得経験なし
12.ユタ大 全米王座獲得経験なし
TOP12校のうち9校が、優勝経験がないか、非常に長い期間優勝から遠ざかっているチームなのです。太字で示した9校の中からチャンピオンが出てほしいと、私は願っています。その中のいくつかを紹介します。
<インディアナ大>11勝0敗 2位
このチームが終盤まで全勝で来たのには驚きました。なにせBIG TENリーグに所属して以来、126年間でリーグ優勝が2回だけ。「リーグのお荷物」と言われ続けたチームなのです。通算戦績も504勝692敗38分 勝率.421と大きく負け越しています。
カート・シグネッティが、昨年からインディアナ大コーチに就任した途端、信じられない快進撃(22勝2敗)を見せています。就任一年目11勝2敗でしたが、同校の歴史で年間11勝したのは初めてでした。シグネッティは64歳で、アシスタントコーチ歴27年、二部校・三部校でのヘッドコーチ歴13年という、下積み生活の長い超ベテランのコーチですが、還暦を過ぎてから突然花開いたことになります。
インディアナ大がBIG TENリーグ優勝決定戦をオハイオ州立大と争うことになるでしょう。(レギュラーシーズンの対戦なし)これに勝てば王座への道が大きく開けます。

63歳でインディアナ大コーチに就任した途端、開花したカート・シグネッティ 出典:Wikipedia
<テキサスA&M大>10勝0敗 3位
私のイチオシのチームです。かつてコラムで詳しく紹介したことがあります。
【清水利彦コラム】テキサスA&M大シリーズ第1回「私がテキサスA&M大を好きな3つの理由」 2021.11.04 | アメリカンフットボール三田会
「強豪校ではあるが、86年間優勝から遠ざかっている」という点に、私はテキサスA&M大と慶應ユニコーンズとの共通点を感じています。
今年9月、ノートルダム大に41-40で勝利して波に乗りました。11月15日のサウスカロライナ大戦には、前半3-30でリードされながら、後半大逆転し31-30で勝っています。27点差をひっくり返したのは、テキサスA&M大の歴史で初めてのことでした。
マイク・エルコという48歳のコーチ就任2年目です。アイビーリーグのペンシルバニア大卒ですから、頭脳明晰な方なのでしょう。
ノートルダム大に勝利した試合のYou Tube画像をご覧ください。すごい試合でした。(22分)
#16 Texas A&M vs #8 Notre Dame College Football Highlights Full Game 2025
<テキサス工科大>10勝1敗 5位
創部以来94年の歴史がありますが、チャンピオン経験がありません。通算584勝461敗24分、勝率.559と決して弱くはないのですが、あと一歩で壁を乗り越えられないチームという印象があります。
ヘッドコーチのジョーイ・マグワイヤは、テキサス州の高校で22年間コーチを続けてきた苦労人です。(テキサス州高校選手権4回優勝)その後ベイラー大のアシスタントコーチになって5年間で実績を上げ、2022年にテキサス工科大のコーチに抜擢されました。4年目にしてついにこれまでの苦労が実を結んだわけです。
テキサス工科大の戦いぶり・強さについては、You Tube画像(対セントラルフロリダ大、9分)をご覧ください。
UCF Knights vs. No. 6 Texas Tech Red Raiders Highlights | FOX College Football
<ミシシッピ大>10勝1敗 6位
ミシシッピ大はかつて、全米最強チームのひとつでした。ジョニー・ヴォートという伝説の名コーチが25年に渡って君臨し、その間190勝61敗12分 勝率.745と勝ちまくりました。特に1959~62年の4年間で39勝3敗1分という圧倒的な戦績を残しましたが、APランキングでは2位2回、3位1回どまりで、全米チャンピオンとは認められていません。(ただし同校自身は、1959,1960、1961年の3回チャンピオンになったと主張しています)
その後、勝てない時代が長く続きました。なんとかして優勝せねば、と焦ったのでしょうか、2016年にリクルーティング(新入部員獲得)に関するNCAA規則を大量に違反していることが露呈しました。そのため「6年間にわたって遡り、33試合分の勝利を没収する(勝利はなかったことにする)」という制裁を受けています。NCAAの歴史でも、最も重い制裁のひとつでした。
現在のヘッドコーチは、50歳のレーン・キフィン。USCでのヘッドコーチ経験もあるベテランですが、ミシシッピ大での直近3年で31勝6敗と急速に強くなりました。
ミシシッピ大のファイトソングは、有名なメロディーですが、「ちょっとユニコーンズ部歌に似ているかな?」と思わせるものがあります。聴いてみてください。(1分)
(9) Forward Rebels – University of Mississippi – YouTube
また、ランク外の14位ですが、大いに注目しているのは、
<バンダービルト大>9勝2敗 14位
これまでにこの学校を、私は自分勝手に「SECリーグの東大」と名付けてきました。
【清水利彦コラム】頑張れ!バンダービルト大学!! 2022.04.28 | アメリカンフットボール三田会
勉学に優れた小規模の大学なので、SECリーグが巨大化し、超強豪だらけになってゆく中、「バンダービルト大が埋没してしまうのではないか、リーグを脱退してしまうのではないか」と心配していましたが、全くの杞憂でした。脱退どころか、あと一歩で大学選手権に出場できるレベルまで戦力を上げています。最終戦テネシー大に勝利すると10勝2敗となりますが、創部122年の歴史で、レギュラーシーズン10勝したことは、まだ一度もないのです。
最終戦の結果次第では12位以内に滑り込む可能性もあります。頑張れ、バンダービルト大!!
おまけ ちょっと言いたい事

オクラホマ大の上下ともグレーのユニフォーム 対ミズーリ大戦
11月22日におこなわれたオクラホマ大vsミズーリ大の試合を観ていて驚きました。オクラホマ大が「上下ともグレーのユニフォーム」を着ているのです。ヘルメットまでユニフォームに合わせてグレーです。上から下まで、まるで「ドブネズミ色のユニフォーム」です。
オクラホマ大と言えば、えんじ色(ヘルメットとジャージ)と白(パンツ)のシンプルなユニフォームで有名で、私はとても好きだったのですが、今回このユニフォームを見て、この大学を応援する気が失せました。
「上下とも濃い色のユニフォームを着る」というのは近年米国で流行っているようで、オハイオ州立大も同じようなドブネズミ色の上下を突然着てきて、アキレたことがあります。
オクラホマは他の試合は伝統のえんじ色を着てプレーしているようなので、この試合だけ何かの意図、または企画があって、このユニフォームを着たのでしょう。(意図をご存じの方、お教えください)
「試合によって、ちょっとユニフォームを変えてみる」というのが米国では一種の流行らしく、ミシシッピ大はヘルメットを3色、ジャージを4色、パンツを2色持っており、試合ごとに変えて来るので「ミシシッピ大は、この色で戦う」とイメージできるものがありません。
色の統一感は、チームを応援する者にとって大変重要であると認識しています。
「伝統を変えない勇気」を大切にするチームになってほしいものです。






