【清水利彦コラム】NFLの永久欠番 2021.10.28

清水利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

皆さんはNFLに永久欠番があるのはご存じですか?
この制度はもともと大リーグ野球から始まったものです。1939年、ニューヨーク・ヤンキースの強打者ルー・ゲーリックが、のちに「ルー・ゲーリック病」と呼ばれる筋萎縮性側索硬化症を発症したため、彼の完治とチーム復帰を願って、背番号4を他のどの選手も使用せずに空き番号として保存したことが起源とされています。
初の黒人大リーグ選手としてプレーしたジャッキー・ロビンソンを称えるため、1997年にMLB全てのチームで、ロビンソンの#42を永久欠番と制定しました。日本の野球界でプレーする外人選手が背番号42を希望するケースが多いのは、「米国では絶対に着けることが出来ない番号」だからだそうです。(私は、42が「死に」で縁起が悪いので、その意味がわからない外人選手に無理やり着けさせているのだと思っていました。 笑)

ということで、NFLの永久欠番を調べてみることにしたのですが、ムチャクチャいっぱいあったので疲れました。全部で151個ありますから1チーム平均4.7個です。チーム別に何個の永久欠番があり、どの番号が欠番となっているかのリストをご覧ください。

欠番が「誰がつけていた番号か?」については、英語版ウィキペディアで「NFL retired numbers」と検索すると151人分の巨大なリストが掲載されていますのでご確認ください。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_National_Football_League_retired_numbers

調査をして気が付いたことをまとめてみます。

(1)「NFL殿堂入り」に関しては選定委員会があり、全チーム同じ基準で公平に審査して決められていますが、永久欠番はチームごとの基準で勝手に決めて良いらしく、チームにより方針が全くバラバラであることがわかりました。

(2)欠番数が一番多いのはシカゴ・ベアーズの14個で、以下NYジャイアンツの13個、49ersの12個と続きます。「歴史が長く、チャンピオンになった回数が多い」チームに欠番が多いのはわかりますが、14個の欠番はいくらなんでも多すぎると感じます。番号は0~99まで全部で100個ありますが、欠番14個を引くと残り86個。com のRosterを見ますと、ベアーズの支配下選手が負傷者リストの選手を含めて78名いますので、全員に番号を配ると余りは8個しかありません。ポジション毎に着ける番号の範囲が決まっているNFLルールにおいて、ベアーズは二軍選手に番号を与えるのに相当苦労しているはずです。1960年代までは1チーム36名と制限されていたため、欠番が14個あっても何ら問題にはならなかったのでしょう。ベアーズの欠番は、ほとんどが50年以上昔の選手ばかりです。

(3)一方、同様に「勝利の歴史」を持つ、ダラス・カウボーイズと、ラスベガス(オークランド)・レイダースは永久欠番が皆無。「ウチはそんな制度、必要なし」と宣言しているように見受けられます。カウボーイズは名選手の宝庫で、カウボーイズにドラフトで入った選手の中に殿堂入りが15名います。#12ロジャー・ストーバック、#33トニー・ドーセット、#54ランディ・ホワイト、#74ボブ・リリー、#22エミット・スミス等は、他のチームなら永久欠番となっているのではないかと思います。

(4)スーパーボウル優勝6回のピッツバーグ・スティーラーズも、欠番は#70アーニー・スタウトナーと#75ジョー・グリーンの2名だけ。ジョー・グリーンが永久欠番なら、#12テリー・ブラッドショーや#58ジャック・ランバート等はどうなんだ?と文句を付けたくなります。

(5)シアトル・シーホークスは#12を欠番にしていますが、これは「シーホークス・ファンは12番目の選手」という意味だそうです。このアイデア自体は悪くありませんが、もしトム・ブレイディがシーホークスに移籍入団してきたら、「ブレイディ君、悪いけど13番か14番を着けてくれるかね?うちは12番を着けさせるわけにはいかんのだよ。」と頼むのでしょうか?

(6)カンザスシティ・チーフスの#33が欠番となっています。RBストーン・ジョンソンのための欠番ですが、この選手をご存じの方はいないと思います。五輪ローマ大会の200m走に出場し、当時の世界記録も保持。1963年鳴り物入りで入団した選手ですが、プレシーズンゲームにキックオフリターナーとなり、いきなり首に重傷を負い、10日後亡くなりました。つまりチーフスの公式戦に1試合も出ていません。このように永久欠番には、「優秀な選手を称える」場合と、「不幸なことが起こった番号を避ける」場合という二つの意味合いがあるようです。

1962年ボルチモア・コルツの永久欠番コンビ。#19QBジョニー・ユナイタス、#82WRレイモンド・ベリー 出典:100 yards of Glory by Joe Garner and Bob Costas

野球と違ってチームの選手数が非常に多いフットボールでは、時代と共に永久欠番制度は次第にそぐわなくなってきていると感じます。ダラス・カウボーイズのように永久欠番を持たないのが一番すっきりしますが、もう既にたくさんの欠番を持つチームは困りますね。

私の提案として、「永久欠番制度から、有効期限50年欠番制度に切り替える」のはいかがでしょうか?ある選手の番号を欠番にすると発表した年から50年後に、欠番を終了できるとするのです。欠番を継続しても良いが、誰か優秀な若い選手が現れたら、その選手が番号を受け継ぐことが出来ると定める、という方法です。活躍した永久欠番選手のほとんどがNFL殿堂入りも果たしており、欠番を終了してもその選手が忘れ去られることはない、と考えます。

いつの日か、シカゴ・ベアーズに若手の優秀なRBが入団し、ウォルター・ペイトンの付けていた34番のユニフォームを着て登場する。そんなシーンを想像するだけで、私は涙ぐんでしまうのですが。

ちなみに読売巨人軍は、「#1王貞治、#3長嶋茂雄、#4黒沢俊夫、#14沢村栄治、#16川上哲治、#34金田正一」の6つが永久欠番ですが、黒沢俊夫って誰も知りませんよね。金鯱(こんな名前のプロ野球チームがあったんですよ)、西鉄などに所属した後、1944年巨人軍に移籍して3年間だけプレーしました。3年間で187安打、3本塁打、打率.300 と特筆すべき戦績ではありません。1947年のシーズン途中で腸チフスにかかり巨人在籍のまま死亡したため永久欠番となりました。彼の死後75年が経過しており、巨人軍の背番号4もそろそろ誰かに引き継がせて良いと感じています。

NFL永久欠番表を見ながら、「チーム名」と「番号」で、どの選手の付けていた番号か当てるクイズを自分自身でやってみました。ブロンコスの#7くらいならすぐにジョン・エルウェイと言えますが、結構難しいですよ。私は151個中32個しか当てられませんでした。私より多く当てられた方は、「相当なNFL通」か、「相当な高齢者」かのいずれかだと思います。

「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
https://footballquotes.fc2.net/
「今週の名言・迷言」を木曜日ごとに更新しています

(自らの引退発表記者会見で、
「引退後にファンの方達から、どのような選手として記憶されたいですか?」
と新聞記者から質問されて)

「ホールディング・・・オフェンス・・・ナンバー73・・・」

ダグ・ディーケン クリーブランド・ブラウンズOT