田中部長・前田監督によるシーズン終了のご報告と御礼 2021.12.23

最終戦・横浜国立大学戦に勝利し、Unicornsは全勝でシーズンを終えた (写真提供:岡見清隆さん)

部長 田中謙ニ

2021年12月12日の納会・代交代式、2021年12月20日の体育会への再生プロジェクトレポート提出をもって2021年度の行事をすべて終えました。OBOGの皆様からの物心両面の支援・応援のおかげで2021年度を安全に終えることができました。誠にありがとうございました。

「事件の時の1年生が4年生になったときに部がどのように変わったのか評価する」という言葉は、この事件への対応にかかわった山本体育会理事からのお言葉です。2021年度は再生プロジェクトの3年目においては、荒削りの完成を佐藤主将に指示しました。2022年度は再生プロジェクトを完遂させることを目標にしています。再生プロジェクトと一言にいっても、何を目指すものなのか未だに理解されていない方が多いと思いますので、改めて説明させてください。

2019年夏の事件は個人が起こした事件ではありますが、その事件が起きてしまった背景があります。その背景を突き詰めると、以下のようなことが見えてきました。強い個の確立から個人もチームも逃げること、他人にも自分にも関心をもたない部員が多いこと、チームメイトにもチームを支える方々にも敬意をはらわない部員が多いこと、部員同士の信頼が欠けていることの4つです。そこで、強い個の確立、関心、敬意、信頼を行動規範の4つの柱として掲げ、この行動規範に賛同する部員だけを入部させることにしました。

次に、この行動規範をチーム・部員のありたき姿としたときに、どうすれば良いのかという具体を詰め、行動変容にまで結びつけるための取り組みがワーキンググループ(WG)です。Unicorns netにおいてもそれぞれのWGの取り組みが紹介されています。WGの取り組みが再生プロジェクトの根幹をなすものであり、これにより2019年の事件の要因・遠因をなくし、選手スタッフが一丸となって勝利に邁進するチームへと生まれ変わらせます。

もともと再生プロジェクトは部長主導で行うことを塾から委嘱され、私が中心的に行ってきました。私の中では、部長主導の再生プロジェクトは自粛解除された2020年3月までで、それ以降は徐々に学生へと権限を移行していっています。2021年度は私が理念を確認するまでで、佐藤主将と橋本副将(彼は再生プロジェクト統括でもある)に任せていました。2022年度は近藤主将が部の再生の完遂という重役を任されています。近藤主将は、事件の時の1年生で、あのときからの歴史を全て知る人物です。

2023年はどうなっているのでしょうか。塾と体育会には部の変革の過程がどのような段階であれ、2022年12月末にこれまでの取り組みを説明し、評価を受けることになります。より高い評価を塾から受けたいとは思いますが、これまでの取り組みで不安な面もあります。

一番の問題は学生の主体性です。小学受験から大学受験まで、親がひいたレールを何の疑問もなく歩んできているというのが今の大学生ですから(二本足で歩くのならともかく、滑ってくる学生もいます)、大人が準備するのが当たり前という意識でユニコーンズに入部してきます。この18,19才の新入生に、自分の頭を使って、己を己で鍛え、妥協せず、お互いに関心を持ち、時に支え合い、時に衝突し、それでも信頼しあい、部を支える両親・三田会・大学に敬意を払うことを、上級生が教えなければいけません。なぜこれを、この紙面で書いているかというと、まだまだ全然達成できていないからです。

このことは、今後の部の指導体制にも影響を与えます。部の行動規範に賛同するものの、行動に移せない学生を想像してください。この状態で、誰をコーチに迎えてもこのチームは今以上の発展はありません。そういった意味で、再生プロジェクトというのは良い機会でした。強い個の確立、関心、敬意、信頼がすべて100点満点なら、慶應というチームは自然に上位4校に入り続けると思います。

体作りが大事だと分かっているのに、それから逃げる選手とそれを強く言えないスタッフでは、ここにどんな優秀なコーチが来ても、そのコーチの言うことを聞くことができない訳ですから、すべてが馬耳東風・のれんに腕押しです。それを聞かせるのもコーチの仕事だという意見もあると思いますが、私はそれは違うと思います。それはそもそも部員としての資質が足りないわけで、学生自らがコーチの指導を享受できるほどに成長しなければならないと考えています。

4年ごとに部員が入れ替わっていく部に新しい伝統を作り出していく作業は簡単ではありません。再生プロジェクトは変わるための単なるきっかけ。次の8年は土台作りの時期と位置づけています。私自身の考えとしては、コーチ人事も大事だけれども、学生が、部が変わるためにもっと見守る必要がある、というものです。

私は50年後の当部のありたき姿から逆算し、2023年からの8年間(4年 x 2)を土台作り・地固めの時期と定めています。50年後の姿を下に書くと、以下になります。4つめは蛇足です。

50年後の姿

慶應義塾大学において、体育会アメリカンフットボール部の学生が「さすが」といわれる存在になっている

慶應義塾大学体育会において、野球部、蹴球部に並ぶ主要な体育会になっている

関東アメリカンフットボール連盟において、常にトップ4に入る上位校になっている

〇その学生の活動をサポートする三田会が成熟している

三田会からの支援としてお願いしたいことは、安全のための支援になります。この安全にはいくつもの要素が入っています。部員の体にかかわる安全(人工芝改修、筋トレルームの整備、食育)、部員を外圧から守るための安全(コロナ対策、情報リテラシー)がすぐに思いつくところです。前者は金銭的なサポート、後者は大人の知恵になると思います。

また部活動は人格形成のための課外活動だと思っています。この部で人間的成長を遂げると、将来どんな人間になれるのかを皆さん自身が人生の先輩として例示してもらいたいです。それは学生にとっての人生の道標や夢として、彼らの心に刻まれるはずです。

2022年度は、近藤快主将をリーダーとしてチームを運営していきます。再生プロジェクトを完遂させること、大きな怪我なくシーズンを終えること、部員全員が成長すること、チームがTOP10で活躍することなど、期待することが多くあります。引き続きOBOGの皆さんからの関与しながらの観察をお願いしたいと思います。


監督 前田晃(1993年卒)

 平素より大学ユニコーンズに多大なご支援、ご声援をいただき、誠にありがとうございます。12月12日の納会をもちまして、2021年度のチーム活動が終了致しました。

今シーズンは、再生プロジェクト3年目、再びBIG8からの出発、引続きコロナ禍による活動制限、リーグ戦の開幕延期とリーグ分割による試合数減少など、モチベーションをコントロールすることが非常に困難な1年でございました。その様な環境下、主将の佐藤を筆頭に「I DO」をスローガンに掲げ、TOP8昇格を目指し、日々練習に励んで参りました。春シーズン、法政大学には惜敗したもののオープン戦4試合を通じてチーム力を向上させることが出来ました。また、リーグ戦及び順位決定戦については、全て勝利で飾り、TOP8への昇格が実現しました。

部員一人ひとり、そしてチーム全体としても前年を上回る成長を遂げることが出来たと思います。

これもひとえに暖かく大学ユニコーンズを見守って下さったOBOG関係者の皆さまのお陰であり、心より感謝申し上げます。

来シーズンは主戦場がTOP10となり、大変厳しい競争環境での戦いになります。依然コロナ禍もあり、先行きは見通し難い状況ですが、主将の近藤快を筆頭に、部員ひとり一人が目標達成に向け、日々精進して参ります。

引続き、ご支援、ご声援の程、宜しくお願い致します。