【清水利彦コラム】1800号記念「清水のスタジアム論」 2021.12.23

清水利彦(S52卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

私がUnicorns Net事務局をしておりました頃は、発行100号ごとに記念号として、「清水の持論」を展開するという、わがままを通させていただいておりました。1998年から23年間かけて、1800号に到達した喜びに免じて、今回も私の勝手な「スタジアム論」を述べますので御笑覧ください。

12月5日、西日本代表決定戦として関学vs立命戦が行われましたが、この試合の会場は「ヨドコウ桜スタジアム」でした。これを聞いて、筆者は「え?それ、なに?聞いたことがないよ」と思わずつぶやきましたが、TVで関学vs立命戦を見ていると、素晴らしい試合会場でした。

  • 人工芝ではなく、天然芝のスタジアムであること
  • 収容人数24500名と、大試合に向く、立派な収容能力のスタジアムであること
  • 球技(サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール)に特化した専用スタジアムであること
  • JRとメトロの長居駅から徒歩わずか5分と近いこと

等々、良いことづくめでした。そこで、ヨドコウ桜スタジアムって一体どんなものか調べてみることにしました。

1987年に完成したこのスタジアムは、もともとは長居球技場と呼ばれており、2010-18年は「キンチョウ(金鳥)スタジアム」という名称でした。今年からネーミングライツ契約が新しくなり「ヨドコウ桜スタジアム」という名前になったのです。「ああ、それなら知っている」という方は多いでしょう。

すぐ隣にあるヤンマースタジアム長居(旧名 長居陸上競技場、収容47800名)とは異なります。

ヨドコウという会社は関東の方には馴染みがないかもしれません。正式には株式会社淀川製鋼所で、東証一部上場の大企業です。ヨドコウは知らなくても「ヨド物置」なら聞いたことがあるでしょう。鋼板の他に、大規模建築物の金属屋根(例えばJR大阪駅)や金属製の倉庫・物置などを扱っています。

1990年代に筆者はここでアメリカンフットボールの試合を観たことがあります。人工芝は美しかったけれど、スタンドは片側が申し訳程度しかなく、ビジターチームに疎外感があり、ちっとも感心しませんでした。ところが今は改修を重ね、素晴らしい両面スタンドを持つ天然芝球技場に変身しており驚きました。サッカーのセレッソ(桜)大阪の本拠地になっているので桜スタジアムと言うのでしょう。

ドローン画像がありますので是非観て下さい。(6分間の動画ですが、最初の2分だけでもOKです)

メインスタンド側は、後ろがすぐ幹線道路で拡張しづらいという制約があるため、すごく傾斜のきつい2層構造になっており、その分フィールドから近く、大迫力のプレーが楽しめます。(高所恐怖症の方にはちょっと厳しいかも)ここでフットボールの試合が出来るのは最高です。

サッカーのワールドカップを機に、日本にも素晴らしいサッカー専用スタジアムが出来ました。

一番立派なのは浦和レッズの本拠地、埼玉スタジアム(63700人収容)。そして次がカシマスタジアム(40700人)でしょう。埼玉スタジアムは全世界でもプロサッカー本拠地20位以内に入るという巨大サッカー場なのに、本当にプレーが見やすそうでうらやましいです。ただし残念ながら、これらのサッカー専用スタジアムではアメリカンフットボールの試合がおこなわれたとは聞いていません。

さいたまスタジアム 出典:ウィキペディア

ノエビアスタジアム神戸(ヴィッセル神戸、29600人)では、かつてウイングスタジアム神戸と呼ばれていた時代に、関学vs京大戦やジャパンXボウルがおこなわれましたが長続きしませんでした。芝の育成状態に問題があるようで、激しいフットボールの試合に使用するのは難しいのでしょう。

さて、皆さん。もし私が「甲子園ボウルは、その大会名称だけそのまま残して、試合場はヨドコウ桜スタジアムに移すべきだ」と提案したら驚かれるでしょうか?

驚くどころか、「清水!お前はいつも『慶應よ、甲子園へ』とか言っているくせに、腹の中ではそんなけしからんことを考えていたのか!」と先輩方の罵声を浴びそうです。笑

しかし正直な話、私は野球場(甲子園球場、横浜スタジアム、東京ドームなど)でフットボールの試合を観るのが嫌いなのです。その理由は二つあります。

  • とにかく観客席からフィールドまでの距離が遠い。50ydライン上の席は、通常は一番見やすい席だが、野球場だとものすごく遠くなる。「見やすい席」がどこにもない。バックネット裏は野球ならば一番良い席だが、フットボールの試合だと全く使用に値しない。実際には野球の時の収容能力の半分以下しか、「まともに見られる席数」はないと思われる。
  • 「見やすい席」が定まらず、観客がいろいろな場所にバラバラに座るので、「応援する者達の一体感」が全然感じられない。(特に横浜スタジアム)チアリーダー達もすごくやりにくいはず。

皆さんは、「5万人以上収容できるアメリカンフットボール専用スタジアム」で試合をご覧になった経験がありますか?もちろん日本にはそんな試合場は存在しませんので、米国での観戦経験があるかどうかという事になります。

コロラド大学は、人口12万人のボルダー市にあり、学生数35000人ですが、5万人収容のフットボール専用スタジアム「Folsom Field」を持っています。全米カレッジ一部校としては特に優れたスタジアムというわけではなく、平均的な規模で、質素な作りの球技場でした。私はこの学校に3シーズン在籍し、ホームゲーム18試合を全て観戦しました。(ただし結果は3勝15敗・・・とほほ)

安い学生用シーズンチケットを購入していたため、良い席には座れず、いつもゴールラインの延長上あたりの、なるべく上段の席に座りましたが、フィールドが近い為、とにかく見やすいのです。敵陣(反対側ゴールライン方向)の攻防になった時も、ちゃんと見えてストレスは全く感じませんでした。そして観客全体がひとつのパックになっている感があり、応援席の盛り上がり・一体感がすごかったです。専用スタジアムだと、こんなにもプレーの迫力があり、全ての人がフットボールを楽しめるのかと感動しました。日本のファンにもこの感激を味わってほしいと痛切に思います。

だから甲子園ボウルを球技専用スタジアムでやるべきと申し上げます。

ロッキー山脈のふもとにあるコロラド大のFolsom Field 出典:Wikipedia

「たった24500名しか入れないヨドコウ桜スタジアムに、47500名収容できる甲子園球場でやっていた試合を移せるわけがないだろう」というのは一見正論ですが、甲子園ボウル時の甲子園球場にはいつも相当な空席があります。満席になる阪神タイガースの野球試合の時とは大違いなのです。

今年の甲子園ボウルは、コロナ禍の影響もあり、観客12000名と発表されています。(毎日新聞より)

秩父宮ラグビー場は25000名収容出来ますが、(昔はもっと少なかったかも)慶應蹴球部が強い年の早慶戦には満員になっていました。私の父は蹴球部OBでしたが、「大阪から応援に駆け付けたいのだが、チケットが手に入らない。日吉の合宿所に電話をかけて蹴球部主務に頼んでも、チケットはありませんという返事しかもらえない。」と嘆いていました。父には気の毒でしたが、私はこういう「入場券が足りない」状態こそが「ラグビー早慶戦の素晴らしい価値・魅力」だと考えていました。

「好カードの試合には満席になり、入場券の争奪戦が起こる」のはNFLでもカレッジでも当たり前の話です。「入場券に対する渇望感こそが試合の価値を上げる」と私は考えるのです。ヨドコウ桜スタジアムで甲子園ボウルをやって、いつも満席になるのならば、ノエビアスタジアム神戸や、パナソニックスタジアム吹田(ガンバ大阪本拠地、収容4万人)等の専用球技場から「だったらウチでやりませんか?」という声が向こうからかかる日が来るかもと、考えております。

まあ、私が生きているうちにはちょっと難しい、夢の話かもしれませんが。

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