【ジュニア】「関東関西チャンピオンズカップ2020」ゲームレポート 2021.04.16

ジュニアユニコーンズ代表 川村 育太郎(S62年卒)

ジュニアユニコーンズ3回目の全国制覇を達成!

日本一に輝いた3年生と清水監督

3月28日(日)@エコパ(静岡県袋井市)

中学生フラッグは例年12月に東西代表4チームによるトーナメントを開催し日本一を決定します。ですが、2020年度は新型コロナの影響により全国大会は実施しないということに決定してしまいました。宿敵・佼成学園を18-12で下し、関東地区を制したジュニアユニコーンズでしたが、全国制覇の夢はストーリー未完のまま終了となりました。

…ですが、神は見放さなかったのです!年明けに関西地区の関係者から「決着戦をやりたい」と打診がありました。これをきっかけに「3月21日(日)に東京の緊急事態宣言が明けることを条件に3月28日(日)にチャンピオンズカップ開催」となりました。

しかし、普通部、中等部の部活動方針もあり試合までに練習ができたのは3月13日、20日、27日だけ。しかも13日は大雨で体幹トレーニングのみ、とぶっつけ本番に近い状態で大一番に臨まざるを得ません。

なお今大会出場の4チームは以下の通りです。

【関東地区1位】慶應義塾ジュニアユニコーンズ(以下『JU』)
【関東地区2位】佼成学園中学校ロータス(以下『佼成』)
【関西地区1位】草津リトルパンサーズジュニア(以下『リトパン』)
【関西地区2位】立命館宇治中学校パンサーズ(以下『立宇治』)

関西地区代表2チームはいずれも立命館ファミリーです。

さて、ゲームレポートに入る前に、レポートをより楽しんでいただけるようにフラッグフットボールならびにこの大会のルールおよび試合進行について触れておきましょう。

  • プレーヤーは、5 VS 5、攻撃チームはすべて有資格捕球者。
  • 4ダウン制(ただし4thダウンで止められても、その地点での攻守交代にはならない。ただしターンオーバーを除く。)
  • 前半/後半 各20分ランニングタイム 10分経過でウォーターブレイク。
  • フィールドは20ヤードハーフ(エンドゾーンは10ヤード)
  • サイドライン幅:25ヤード
  • ブロックは禁止
  • QB(最初にスナップを受け取る選手)はそのままランナーとしてLOSを越えてゲインすることはできない。(誰かに一度渡して、また戻してもらえばOK。)
  • 守備はボールから7ヤード下がった地点から手を挙げて意思表示した選手が(通常1名)パスラッシュ可能(LBのブリッツに近いイメージ)
  • ファンブル(スナップミス含む)は発生した地点でボールデッド。攻撃権保有チームのボール。
  • ボールキャリアからボールを奪い取る行為は禁止。(つまり、ターンオーバーはインターセプトかスナップを自陣エンドゾーン内で落とす(セーフティー)くらいしかありません)
  • キッキングゲームは一切ありません。
  • ターンオーバー後以外は必ず自陣5ydから攻撃開始。ハーフウエーラインを越えたらダウン更新。そこからゴールまでを4回のダウンで攻撃。
    (つまりオフェンス通常シリーズは1st and 15で開始、ハーフウエーラインを越えダウン更新した地点から1st and Goal(最長20yd)となります。)
  • ゴール前5yd以内はランプレー禁止、スクリメージラインより前に投げるパスプレーのみ。
  • 得点はTD:6点、PAT(ゴール前5ydからプレー):1点、PAT(ゴール前12ydからプレー):2点、セーフティー:2点。

さあ、お待たせしました。いよいよここからお待ちかねのゲームレポートです。

【準決勝第1試合】VS 立命館宇治中学校パンサーズ

前半 後半
慶應義塾ジュニアユニコーンズ 20 20 40
立命館宇治パンサーズ 0 13 13

関西地区決勝では強豪・リトパン相手に20-26と接戦を演じたという不気味なチーム。

試合はJUの攻撃からスタート。立宇治はQBにラッシュをかけずに5人すべてでゾーンを守る。だがJUは主将「クールキャプテン」QB佐藤勇太が冷静にショートパスでゾーンの切れ目を狙っていく。3連続コンプリートで敵陣に攻め込むと、最後は「JU攻守の要」木下格へのTDパス。PATも木下へのパスが決まりJUは7-0とリード。立宇治の攻撃はQBの位置に2人入るドラゴンフライ隊形。選手の走力を活かした攻撃を展開する意図か?

だが、ドラゴンフライ隊形対策は実はJUの得意とするところ。JUの練習パートナーであるユニコーンズファミリーの社会人フラッグフットボールチーム・グランドユニコーンズ(GU)の守備陣がドラゴンフライ隊形への対策に長けており、これを清水監督経由で共有しているのだ。

JUはラッシャー「プレッシャーマシン」の異名を持つ福住寿紀がパスをブロックするなどこのシリーズをきっちり止める。

次のJU攻撃では佐藤に代わったQB「スピード&パッション」滝沢徹がラッシュをかわしながらエンドゾーン奥にTDパスを決める。PATも決めて14-0。

「スピード&パッション」滝沢徹から「MR.ストイック」林薫へのパス

前述したように、オンサイドキックもファンブルリカバーもないフラッグフットボールでは、まず2ポゼッションゲームにもっていくことが非常に重要である。

立宇治は次のシリーズで何としてもTDを取りたいところだったが、エンドゾーンへのパスをDB「スピードスター」藤島涼がINT。

返しのオフェンスシリーズでJUはこの1年間でプレーはもちろん、人間的にも大きく成長した、とコーチ陣の信頼の厚い「インクレディブル・ボーイ」井上晄太へTDパスを通す。PATは失敗となったが、このプレーでも井上がボールへの執念を示しチームの士気はますます上がる。

「インクレディブル・ボーイ」井上晄太、魂のTD

続いて残り時間的に前半ラストと思われる立宇治のドライブ。後半は再び立宇治オフェンスのシリーズとなるため、ここで3ポゼッション差のまま終わるか、2ポゼッション差に縮めておくかでは逆転の可能性が大きく異なってくる。

立宇治オフェンスはドラゴンフライ隊形からのスクランブルで前進。前半残り6秒で4th Downながらゴール前5ydまで攻め込む。ここでまたしてもドラゴンフライからのスクランブルだったが1年生DB「次世代のホープ」高木周がゴール前1ydで止め、前半終了。20-0で折り返す。

立宇治の前進を阻むJU守備陣

後半最初のシリーズで立宇治はようやく初TD、6点を挙げる。20-6。

JUは「Mr.ストイック」林薫やオフェンスにも登場した福住に効果的にパスを散らしながら前進。最後は「長身のシュアハンダー」山下敬輔が巧みな体さばきでTDパスをレシーブして見せた。これで再び26-6と20点差をキープ。

背水の陣ともいうべき立宇治は2シリーズ続けて得点。26-13とするが、すでに試合時間は7分を切った。続くシリーズ、JUは敵陣に攻め込むと前半終了間際に好守備を見せた高木が、今度はワンハンドでTDパスをレシーブ。33-13とし実質勝負を決めた。JUはその後も手を緩めず、「フィールドのハヤブサ」作田隼人へのロングパスで加点。ファイナルスコア40-13で立宇治を下し、決勝戦進出を決めた。

「フィールドの隼」作田隼人のTD

【準決勝第2試合】草津リトルパンサーズジュニア VS 佼成学園中学校ロータス

前半 後半
佼成学園ロータス 20 12 32
草津リトルパンサーズジュニア 27 7 34

準決勝第2試合は激しい点の取り合いとなり、34-32でリトパンが佼成を下した。佼成は前半ラストプレーでロングパスをキャッチした選手がエンドゾーンに走りこんだが、キャッチの前にフラッグが取れてしまい、TDとならなかったアクシデントが悔やまれた。(キャッチ成立前に不可抗力でフラッグが取れてしまった場合、ボールをキャッチした地点でボールデッドとなる。)

【決勝戦】VS 草津リトルパンサーズジュニア

前半 後半
草津リトルパンサーズジュニア 7 21 28
慶應義塾ジュニアユニコーンズ 13 27 40

これまでも東西対抗戦で死闘を繰り広げてきたライバル同士の決勝戦。前回の対戦は、2019年大会の準決勝。JUは残り30秒で逆転したものの、残り1秒でリトパンが再逆転。32-37で無念の敗戦を喫している。3年生にとってはなんとしても雪辱を晴らして卒業したい試合だ。

試合はリトパンオフェンスからスタート。しかし、ラッシャーの福住が相手QBにプレッシャーをかけ、さらには山下、木下、藤島らDB陣が素早い反応でリトパンオフェンスを完封。ダウンの更新すら許さずに攻守交替。

なんとしても先制点が欲しいJUだったが、敵陣まで攻め込んだところでイージードロップ、反則と続き、最後は罰退地点からのラストダウンロングからヘイルメリー気味に投げたパスをゴール内でINTされてしまいタッチバック。決勝戦のファーストシリーズとしては理想とは全く正反対の立ち上がりとなった。

リトパンの2シリーズ目。自陣に侵入を許し、ショートパスのフラッグプルをミスすると、そのままエンドゾーンまで走り抜けられてしまう。PATも決められ、0-7。

決勝戦はここまで良くない流れ。JUは続くシリーズで確実に同点にしてリズムを変えたいところ。この大事なシリーズのQBを任された滝沢は左ストリークを走るレシーバーを冷静に見つけ、乾坤一擲のパス。これを「JUのトリックスター」青木健将がドンピシャリのキャッチでTD。PATも決まり7-7の同点。

ゲームチェンジャーの一発が出たところでちょうど前半の折り返し(10分経過)となった。

JUはこの試合、長身の福住、小柄ながらスピードラッシュが売り物の「シューティングスター」中島 亮、バランス型の「ザ・チェイサー」横江 駿と3人のラッシャーを使い分けリトパンQBに揺さぶりをかける。

リトパンQBにプレッシャーをかけ続けた「プレッシャーマシン」福住寿紀

3rd Downでゴール前4ヤードまで攻め込まれるがマンツーマン守備とハードラッシュで相手のタイミングを崩し、2連続パスドロップによる不成功に追い込み無失点で切り抜けた。

ここで一気に攻めて優位に立ちたいJUだがハーフウエーラインまで7ヤード残して4th Down。右サイドライン際に投げたパスはDBの厳しいマークに遭い不成功かと思われた。が、やや遅れて主審からペナルティマーカーが飛ぶ。守備のイリーガルコンタクトの判定。

相手チームの反則に救われる形で敵陣にてダウン更新に成功したJU。この後ゴールまで7ydと迫り3rd Down。ここで再び青木がTD!今度はQB佐藤から中央へのパス。PATが失敗に終わったところで前半終了。後半はJUのオフェンスからで一気に試合を有利な展開にもっていくチャンスだ。

JUの後半第1シリーズは前半に同点のTDパスを決めた滝沢。その再現のような左レシーバーへのロングパス。ハーフウエー付近でキャッチした木下は持ち前のスピードで守備選手を振り切ってTD!PATも決めて20-7となった。

返しのシリーズでリトパンはファーストダウンをなんとか更新するものの、JUのプレッシャーに苦しみ、そこから思うように前進できない。4th Down 15yd以上を残す。ラッシャーに入った中島に追いかけられたQBは体勢をやや崩しながらエンドゾーン左奥にヘイルメリーパス。これを藤島がINT。

エンドゾーン奥だったこともあってほんの一瞬、ああタッチバックか、という雰囲気が発生した。が、そこを見逃さずに藤島は一気にリターンを開始。あっという間に相手QB、レシーバーをかわすと堂々のINTリターンTD「ピック6」!

リトパンのプレーヤーをあっという間に置き去りにしてピック6を記録した「スピードスター」藤島涼

JUは、0-7から一気に27点連続得点。これで3ポゼッション差の27-7と圧倒的優位に立った。

崖っぷちに追い込まれたリトパンだが、簡単にはあきらめない。ミドル~ロングパスを連投。一気にJU陣に攻め込むと久々のTDを決める。これで27-14。

ここでJUは焦らずに時間を使って得点をすることでゲームを再び支配し、終わりにすることができる。だがしかし、最もやってはいけないターンオーバーを許してしまう。

自陣で浮かせたパスをミドルに投げたところを奪われてゴール前10ydまで返される。リトパンはこの機を逃さずTD。27-21となった。

この時点で残り時間は10分35秒。ほんの少し前まで楽勝かと思われていた勝負の行方が全く分からなくなってしまった。

JUはここで踏ん張りを見せる。敵陣に攻め込むとQB滝沢が投じたエンドゾーン内、右サイドライン際のアウトパターンを青木がうまく足を残しながらのスーパーキャッチ。青木はこの試合3つ目のTD。

「トリックスター」青木健将、3つ目のTDレセプション

これで33-21。残り時間を考えると、次のシリーズを止めれば日本一が見えてくる。だが逆転への執念を見せるリトパンはここでもしぶとくTDを奪い33-28。

最大20点差あったのが、ついに5点差にまで縮まった。

さあ、残り2分40秒で運命のJUオフェンス。得点はしなくともいい。とにかく中央までボールをドライブしてダウン更新ができれば時間を使い切ることができるだろう。一方でターンオーバーだけは絶対に許されない。

「クールキャプテン」佐藤勇太

QBは「クールキャプテン」佐藤勇太。主将として栄光のドライブを導けるのか?1st Down、ニアスロットに入った藤島へのハンドオフ。これは1ydほどのゲイン。2nd Down、青木へのショートパス。捕った瞬間にフラッグを奪われる。約6ydのゲイン。3rd Down、ファーストダウンを狙った左サイドライン際のアウトパターン。「攻守の要」木下が見事にキャッチするも、わずかにダウン更新には届かない。

運命の4th Down inches。残りは約15センチといったところか。そして残り時間は30秒。前回対戦時のことを考えたら、残り5秒であっても相手にボールを渡したくない。タイトな右ストロング。右からフランカーの位置に青木。ニアスロットに藤島。センターは滝沢。左のレシーバーは木下。リトパン守備陣は藤島のランを警戒してLOSに3人上がってきた。

スナップ。予想通り藤島へのハンドオフ…。フェイクからショートポストを走る青木へのパス!マンツーマンカバレッジをぶっちぎった10yd先の青木の胸元へ佐藤はストライクを投げ込む。青木はがっちりとキャッチ。そのまま一気にエンドゾーン左隅まで駆け込んだ。

サイドラインで歓喜するJUのチームメイト。反対側のサイドラインではリトパンの女子選手が信じられない、というように頭を抱えている。

PATを決めて40-28となったところでタイムアップ。

この瞬間にJUの3度目の全国制覇が決定した。そして年間公式戦無敗、3年生メンバーは小学生低学年、高学年と3カテゴリーで全国制覇という偉業も同時に達成となった。

勝利の報告

実はこの日、予報では大雨と強風の春の嵐になるとのことだった。実際同時刻の大阪、東京は大雨だったようだが会場の静岡県エコパは試合終了まで雨が全く降らず。終了後2分ほど経って雨が降り出し、その後は予報通りの大雨になった。

天気まで味方につけた史上最強のJU戦士よ、本当におめでとう!
大変に長い報告になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。