清水利彦(S52卒)
2023-24年カレッジフットボール最終結果
決勝
ミシガン大34-13ワシントン大
決勝よりも準決勝の2試合がバツグンに面白かったです。まだ観ていない方はYou Tubeダイジェスト版で是非どうぞ。
ミシガン大(1位)27-20アラバマ大(4位)延長戦
ワシントン大(2位)37-31テキサス大(3位)
(65) Sugar Bowl: Texas Longhorns vs. Washington Huskies | Full Game Highlights – YouTube
ワシントン大の左腕QB#9マイケル・ぺニックスJrにご注目ください。パスを投げる、というより「レシーバーに向かって手裏剣を投げている」ようなイメージです。
ミシガン大学の全米王座獲得は1997年以来26年ぶり。ミシガン大学は「12回目の全米王座獲得」と主張しているようですが、1936年にAssociated Press(AP)がカレッジフットボールランキングの発表を始めて以来ですと4回目の王座です。1935年以前は、同じ年に5校も6校もが「わが校が全米チャンピオン」と主張するケースが多々あり、古い時代の優勝回数は、いささか価値を差し引いて考えるべきと申し上げます。
今回、ミシガンの優勝を記念して、「ミシガン大学の歴史」というテーマでコラムを書こうかと考えましたが、ちょっと調べただけでも膨大な資料・情報があることがわかりました。3話とか5話のシリーズでお伝えすべき内容ですので、今回はあきらめ、伝統のミシガン大vsオハイオ州立大戦において、史上最悪の豪雪の中でおこなわれ、今も「Snow Bowl」として語り継がれている一戦をご紹介します。
SNOW BOWL: 史上最悪の天候でおこなわれた伝統の一戦
スポーツイラストレイテッド誌が発表した「全米カレッジ対校戦・熱狂度ランキング」で第1位に輝いたのが、ミシガン大(UM)vsオハイオ州立大(OSU)です。
両校はこれまで118回対戦し、ミシガン大が61勝51敗6分とリードしています。BIG TENリーグで言いますと、ミシガン大が126年間に45回優勝、オハイオ州立大が111年間に39回優勝しており、両校以外のBIG TEN加盟校は、「2校のための引き立て役」のように感じられる時があります。
両校の対戦は11月の最終土曜日と決まっており、米国フットボール界で「The Game」と言えば、ミシガン大vsオハイオ州立大の試合を指す言葉です。
二校は永遠に語り継がれるような大接戦を何度も繰り返していますが、その中でも「忘れられぬ試合」として記憶されているのが、のちに「Snow Bowl」と名付けられた1950年の死闘でした。
1950年11月25日、両校はオハイオ州立大の地元コロンバスで対戦しました。(当時のリーグ名はBIG TENではなく、Western Conference)オハイオ州の冬は寒さが厳しいことで知られていますが、この年は11月に寒波が襲い、当日は観測史上まれにみるブリザード(暴風雪)となりました。
フィールド上を猛吹雪が舞い、前が全く見えないような状態であったため、その日の午前中、ミシガン大コーチ、ベニー・ウースターバーン(1948年に全米王座獲得)は試合の中止を提案しました。ただし、両校には再試合をおこなう日程の余裕はありませんでした。決定権を持つ地元オハイオ州立大コーチ、ウェス・フェスラーは中止の申し出を断固拒否し、試合を強行します。なにせ79,868名収容できるオハイオ・スタジアムの入場券は既に完売していたのです。この試合を観るために遠くから訪れる観客も大勢いて、突然中止にしたら暴動のような騒ぎになっていたでしょう。
前日から暴風雪の予想が出ていたため、フィールド上は防水シートで覆われていましたが、シートの上に1メートル以上の雪が積もり、シートを取り除くことも出来ない状態でした。最初は十数名の球場スタッフが除雪作業をしていましたが、どうにもならないことがわかり、地元ボーイスカウトに緊急出動指令が出されました。早くからスタジアムに来ていた大勢の観客も除雪を手伝い、なんとか2時間遅れで試合を開始することが出来ました。
シートを取り除いたあとのフィールドには、一瞬のうちに再び雪が積もり、一面真っ白となりラインを引いても全く役に立ちませんでした。
あまりに酷い天候に、来場をあきらめた人もたくさん居ましたが、5万人を超える観客が試合場に来ました。観客席で暖を取るために焚火を始めた者が何人も出て、球場係員と言い争いになりました。
先が見えないのでパスが通らない、足元が滑って走れない、ボールが滑って手に付かない、という状態で、「攻撃している側が常に不利」な状況となり、「オフェンスチームが第1ダウンからパントを蹴る」というとんでもない作戦が何度も実行されました。この試合で両校は計45回パントを蹴っています。(UM24回、OSU21回)相手のパントをブロック出来るかどうかが勝負の分かれ目という試合になりました。
第1Qに、UMのパントをブロックして好位置で攻撃権を得たOSUがFGで3点を先制しましたが、その後更に暴風雪がひどくなったため、試合終了まで、ひたすら両軍がパントを蹴り合いました。
第2QにOSUのパントをUMが2回ブロックし、1回はセフティ(2点)、もう1回をタッチダウン(7点)に結び付けました。
この試合でミシガンはパスを9回投げましたがすべて失敗。結局ファーストダウンを一度も取ることは出来ませんでしたが、2回のパントブロックにより勝利しています。最終スコア UM9-3OSU
ミシガンとの試合に負けたオハイオ州立大でしたが、混戦のWestern Conferenceでは5勝2敗で1位となりました。ところが当時はリーグに「ローズボウルに同じチームが2年連続して出場することは出来ない」という奇妙なルールがあったため、前年ローズボウルに出ていたOSUは出場できず、4勝2敗1分で2位のミシガン大がローズボウルに出場し、カリフォルニア大に勝利しています。
オハイオ州立大がSNOW BOWLを強行してくれたおかげで、ミシガン大がローズボウル覇者となる、という皮肉な結果となりました。
SNOW BOWLを強行して敗れたウェス・フェスラー・コーチに激しい非難が集中し、フェスラーはリーグ戦で1位になったにもかかわらずシーズン終了後に辞任しました。そして、その後任として選ばれたのが、のちの名将ウディ・ヘイズだったのです。オハイオ州立大コーチ、ウディ・ヘイズについては下記サイトにて、長編物語「ウディ・ヘイズの狂気」をお読みください。
https://footballquotes.fc2.net/
「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
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