【清水利彦コラム】<フットボールの歴史を彩る一枚の写真> 第5回:1957年、オハイオ州立大学応援席 〜オハイオ州立大のママコーンズたち〜 2022.12.01

清水 利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

今回は「スタジアム応援席フェチ」の私にとって、垂涎の写真一枚をご紹介しましょう。

今から65年前の1957年11月16日、オハイオ州立大が地元コロンバスでアイオワ大を17-13で下した時のスタジアム風景です。オハイオ州立大はこの後、アウェイ試合でミシガンを倒してBig10リーグ優勝し、ローズボウルに進みました。翌年正月、パサディナのローズボウルではオレゴン大に10-7で競り勝ち、最終全米2位にランクされています。当時のヘッドコーチは名将ウディ・ヘイズでした。

1957年、オハイオ州立大応援席 この当時、カラー写真というのはまだ貴重であった時代で、私の所蔵する写真の中では、これが一番古いカラー写真です。出典:The College Football Book, Sports Illustrated

写真の背景としてわかっているのは上記の事柄だけなのですが、この65年前に撮られた写真をつぶさに観察していますと、もっと色々な事実が見えてきました。

当時はまだカレッジウェア(大学のロゴマークやスクールカラーをあしらったTシャツやパーカ類)は普及しておらず、観客は日曜日に教会に行く時のような、おしゃれでドレッシーな服装で応援していました。

そこで熱烈なサポーターの一群が、服の上に赤と白のビニールポンチョのようなものを被り、ゾーンで色分けすることによって人文字を描こうとしているのだと気が付きました。おそらく背景を白色で作り、大学のカラーである赤い色でOhio の「O」の文字を描いているのだと推察します

観客席が全員白人というのは現代では異様な光景ですが、当時1957年はこれが当たり前でした。
南部アラバマ大に初めて黒人選手が入部したのが1969年で、それまでは全員白人で戦っていたとの記録が残っています。北部のオハイオ州立大の方が黒人選手起用は早かったでしょうが、数年違い程度だと思われます。米国に公民権法が制定され、バスの座席や公衆トイレを「白人用」と「有色人種用(colored)」に区別することを禁止したのが1964年で、この写真はその7年前に撮影されたのですから、白人だらけで当たり前ということになります。

写真に映っている人たちの年齢特性が極めて画一的です。どう見ても現役学生は一人もいませんよね。その一方で、老人も子供も一人も映っていません。「成長されたお子様を持つ、お父様・お母様」のような人々ばかりの集団です。年齢幅が極めて限定されているのです。
この日偶然ここに集まったわけではなく、もともと顔見知り同士の集団のようで、和気あいあいとした雰囲気があります。爽やかな笑顔を見せている女性が多い一方で、男性は固い表情の人が多いです。これはオハイオ州立大がタッチダウンした後の撮影ではなく、(もしそうなら男性陣も喜んでいるはず)カメラマンが「はい、写真撮りますよ!笑って!」と言ったため、女性の方々は笑顔で、男性は緊張して表情が硬くなったものと推理しています。

これらの状況から推察するに、この写真に写っている一団はオハイオ州立大選手達の父母であろうという結論に達したわけです。オハイオ州立大のパパコーンズとママコーンズの写真と思われるのです。
正確に言うと、オハイオ州立大のニックネームはバッカイズ(Buckeyes橡の実)なので、パパッカイズとママッカイズと呼ぶべきかもしれません。笑
※ちなみにbuckeyeという言葉は、橡(とち)の実の他に、「派手で野暮ったい」という意味のスラングにも用いられているようで、ここから「オハイオ州の人」を指すことになったとも言われます。笑

今から65年前に、オハイオ州立大に既に父母応援団組織が出来ていることに感銘を受けました。「フットボール選手を息子に持つ親の気持ちというのは、何十年経っても変わらないのだなあ。一生懸命応援して、息子たちを盛り上げてやろうと頑張っているのだな。」と受け止めております。

現在はオハイオ州立大のような強豪チームには、全米各地からリクルーティングされた超優秀高校生が集まっていますので、父母で応援組織を作って毎週の試合ごとに応援するなど不可能です。しかし、当時はほとんどの選手がオハイオ州出身者であったため、このように「父母で一緒に集まって応援しましょう」という組織を作ることが可能であったものと思われます。

ところで、皆さん、桜美林大学戦に勝利することが出来て、本当に良かったですね!
桜美林と慶應が3勝4敗で並びましたが、直接対決の結果、「慶應が入替戦出場。桜美林がBig8に自動降格」と決まったわけです。両校にとって天と地ほどの差のある結果となりました。
私はこの結果が生まれたのは、10月8日、日大に1点差で勝った時(1回目の対戦)の、たった一つのプレーに全てが起因していると考えています。

第3Q残り2:20、慶應14-13日大と1点リードした場面、50yd付近から日大がパスを投げ、レシーバーが独走態勢となりました。「やられた、TDだ」と観ている方があきらめましたが、慶應のDB#34があきらめず必死に追いすがり、慶應ゴール前3ydでわずかにサイドラインを割らせます。日大レシーバーが「自分はTDした」と確信して両手を挙げたほどのギリギリのプレーでした。
ゴール前3ydから日大のパスを3回不成功に終わらせ、日大はやむなくFGを蹴ります。(日大16-14慶應)このTD機会をFGに終わらせた守備が、1点差勝利に結びつき、この時の勝利が最後に桜美林との順位をひっくり返すことにつながったと信じています。
まさに100万ドルの価値のあるプレーだったと思うのです。

桜美林戦は私も兵庫県からスタジアムに出向き応援しました。パパコーンズ・ママコーンズの一団のすぐ前に座り、一緒に応援させていただきました。ご父兄の皆様にはいつも変わらぬご支援ご声援をいただき、本当に有難いと思っています。心の底から感謝いたしております。
Unicorns Netは卒業生だけではなく、部員およびご父兄にも配信されているとのことで、「清水さんのコラム、読んでいます!」とおっしゃって下さったご父兄が多数おられ、嬉しく思っています。
ご父兄の方々からも、遠慮なく、コラムに対する感想・意見・ご希望などお聞かせいただきたいと願っております。コラムを書く事の最大のご褒美が、読者の皆様からの反応なのです。必ず返事を書きます!
「 shimizu.toshihiko2@gmail.com 宛て」
これからも一緒にユニコーンズを応援いたしましょう!

入替戦はまだ相手が決まっていませんが、12月17日土曜日13:45アミノバイタルフィールドです。
決して油断なきように!


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