【春シーズン総括企画 vol.1】松元竜太郎コラム「ODKリーダーに聞く!春シーズン徹底総括」 2021.07.29

松元 竜太郎(H17年卒)

今季、1部TOP8昇格を目指すユニコーンズは、以下の通り春シーズンを3勝1敗で終えた。

▽5月15日:○22-14 明治大学
▽5月23日:○13-10 中央大学
▽6月6日:○24-10 同志社大学
▽6月13日:●0-7 法政大学

この春に対戦したのは、関東学生リーグ1部TOP8に所属する3チームと、関西学生リーグDIVISION1の同志社大。秋シーズンをBIG8で戦うユニコーンズにとっては、すべて格上のチームとの対戦となったが、結果的にも内容的にも一定の成果を残すことはできたといえるだろう。

では、選手たち自身は春シーズンの結果と取り組みをどのように捉えているのか。オフェンス(#7RB/P大河原陸)、ディフェンス(#21DB/LB原礼於奈)、キッキング(#23DB/K千葉優介)、それぞれのリーダーに話を聞いた。

オフェンスリーダー大河原(4年RB#7)、ディフェンスリーダー原(4年DB#21)、キッキングリーダー千葉(4年DB/K#23)


―今シーズンの目標を教えてください。

大河原:オフェンスは「ワンオフェンス」というスローガンで取り組みました。
今季はシーズンがスタートした1月から、緊急事態制限の影響でずっと会えない時期が続きました。3月ごろからようやく少しずつ練習ができるようになったのですが、短い期間でいかにオフェンスを作り上げられるかが勝負でした。
具体的には、フィニッシュにこだわる、という部分を強く意識しました。フィールドに立つ11人、サイドラインの選手が一丸となって最後までボールを前に進めようという意識を全員で共有することに努めました。

原:ディフェンスは「TOP8に勝つディフェンス」という目標を掲げました。
具体的な部分では、ターンオーバー奪う、2本以内に抑える、というゴールを設定。メンタル的には、「ハード」というスローガンを置いて、激しい集まりとタックルを意識しました。

中大ボールキャリアーに襲いかかる3年DL#98久保太陽。春シーズンのディフェンスはボールキャリアーへの集まりやタックルといったファンダメンタルを徹底

千葉:キッキングは「全員が活躍するキッキング」という目標の下で取り組みました。
各キッキングユニットの具体的な目標はいくつかあるのですが、数値目標としては、以下の通り設定しました。

  • KC=相手オフェンスの開始地点25ヤード以内
  • KR=自陣25ヤード以上でオフェンスを開始する
  • PC=35ヤード以上の回復、被リターン8ヤード以下
  • PR=被回復35ヤード以内、リターン8ヤード以上
  • FG=成功率100%

オフェンス振り返り

―春シーズン全体を通して、オフェンスの評価は?

大河原:昨年、BIG8で試合をする中で、プレーが完成していなくてもズルズルとドライブ、得点できてしまう部分がありました。しかし、TOP8相手だと通用しません。プレーの完成度を高めて、ブロックであと1ヤード押せるか、パスを取ってからもう1ヤード前に進めるか。そういう細かいところにこだわらないと勝てません。春の試合ではそれができた部分もあったし、特に法政戦ですが、できない部分もありました。

―QBは4年生の#2久保田、2年生の#8又平、#15相馬の3人がローテ―ション起用されていました。狙いを教えてください。また、秋も続くのでしょうか?

大河原:3人のQBはそれぞれまったく違うタイプなので、シチュエーションや対戦相手によって使い分けるということでやっていました。例えば中央戦ではオプションのランが有効だから相馬を中心に、という感じです。
昨年の秋からローテーション起用が続いているのですが、今季の秋までにはエースが決まる予定です。春はローテーションでそれぞれの武器を見極めて、夏から秋にかけて一人に絞っていくという想定です。

―今年のオフェンスはランがベースだが、#77簗瀬中心にOLが例年以上に強いと感じました。ここは自信を持っていますか?

大河原:自分自身、RBとして下級生時から試合に出てきた中で、今年はOLが強いので、今までにない走りやすさがあります。簗瀬がリーダーシップをもってコミュニケーションをとり、OLを一つにしてくれています。また、ユニット間の風通しも良くて、ナロー全体でランを出すという意識があります。

4年OL#77簗瀬真史を中心に、オフェンスラインの底上げが図られている

―OLに限らず、トップ8のチーム相手にも互角以上に戦えていた印象があります。 

大河原:たしかにOLは強いし、RBの層も厚くなったのですが、法政戦の時のように攻撃が出ない時があります。そうなった時の修正力、試合での対応力がまだまだ甘かったです。個の力が強くて、しっかりスカウティングをしてくる相手に対して、こちらも試合中にアジャストできるようにしなければなりません。
1対1の勝負では、フィジカル的には劣っていないと思っています。負けた法政戦では、スタンツ、ブリッツが多くて、そこへの対応力がまだまだでした。それまでの試合ではロスを割られることがほとんどなかったので、混乱してしまった。練習から相手のスカウティングの精度をもっと上げなければと考えています。

―ラン中心の中で、パスアタックの完成度はどうですか?また、3人のQBはみんな高いレベルでパスが投げられると感じましたが、現時点でもっとも信頼感がある選手は誰でしょう?

大河原:ランが中心になりますが、オフェンスとして要所でパスを決めていく自信はあります。法政戦はパスが決まりませんでしたが、パスプロテクションに課題がありました。PPさえ持てば、十分に決まるはずです。パスの精度に限れば、現時点では久保田が抜けていると思います。プレーの理解度が高いことと、経験もあり、久保田なら安定したオフェンスを展開できるという信頼感があります。

―1年生のQB#12松本を起用したトリプルオプションは、オフェンスの中でどういう位置づけなのですか?

大河原:前提として、今年のオフェンスはスプレッドとオプションという2つの攻撃形態を持っています。ディビッドコーチのオフェンスは、これまでずっとスプレッドオフェンスだったのですが、今季はオプションシリーズを使い分けるということで、オフェンスメンバーにとっては新しいチャレンジになります。
そもそもオプションを採用したきっかけが、RBの層の厚さです。RBユニットは20人ほどの選手がいて、スピードランナーからゴリゴリ走る選手、ブロックが得意な選手とさまざまなタイプがいます。スタイルの違う選手がみんな活躍できるようにしたい、それがオフェンスの幅を広げることにもつながる。そんな狙いのもとに今季はオプションを採用しています。

スプレッドオフェンスに加えて、今季は1年QB#12松本によるトリプルオプションという選択肢も加わった

ディフェンス振り返り

―春シーズン全体を通して、ディフェンスの評価は?

原:良かった点、悪かった点がそれぞれありますが、全体としてはディフェンスメンバーが大きく成長できたと思っています。結果だけでなく、内容も悪くありませんでした。一番大きな課題としては、明確に勝ちにいった法政戦で、勝ちきれなかったことです。

―フロントから聞いていきます。LBが積極的にロスにアタックしていくスタッドディフェンスが機能して、アグレッシブなプレーが生まれていると感じます。

原:#33LB橋本を中心にLBが積極的にしかけることで、相手のフロントを混乱させられていたと思います。メンバーのプレーの理解度が上がったことにより、ディスガイズを含めて、頭を使ってプレーできていたのが良かった点です。#9佐藤、#97中尾、#98久保を中心としたDLユニットは常に安定感があって、後ろにいてもプレーしやすかったです。

―DBについては、個々の能力が高くなっている気がします。

原:フィジカルのメニューが増えていて、ファンダメンタルの部分の強化がされている部分はあると思います。また、筒井コーチから常に勝負にこだわろうと言われていて、1対1に対する姿勢は上がっていると思います。例えば、法政戦ではゲームプランのインストール時に、筒井コーチから過去にないほど攻めると言われていました。コーチの思いも伝わって、#7藤田のインターセプトが生まれるなど、アグレッシブなディフェンスができたと思います。

インターセプトを決める千葉(4年DB/K#23)

―#23千葉選手もSFとして、プレーリードが光っていました。 

千葉:自分はフィジカルの部分は自信があるのですが、スピードの部分ではDBとしての能力で劣っていて、フットボールIQの部分でがんばらなければという気持ちはずっと持っています。これまでいろんな人から吸収したり、ディフェンスとして他のポジションを理解したりすることでレベルアップしてきました。試合中も、毎回しゃべりながらコミュニケーションを取ることで、精度の高さを追求しています。

―春の反省点にもつながると思いますが、アグレッシブなディフェンスのリスク管理についてはどうでしょう?

原:ディフェンスの細かい目標の中に「NO BIG PLAY」というものもあるのですが、同志社戦で一発TDランを奪われたり、法政戦でも飛び込んでしまうタックルからロングゲインを許したりしてしまうなど、これが遂行できていない部分がありました。この部分でもっと質にこだわろうという課題は共有しています。

キッキング振り返り

―春シーズン全体を通して、キッキングの評価は?

千葉:春の試合を通して、多くの課題が出ました。最大の反省点は、面子ミスやボールミスなど、プレー外の部分も含めた細かいところのミスでビッグプレーを許してしまったことです。また、人が多いのに選手層が薄いという課題も露呈しました。デプスが構築できておらず、レギュラーと2本目以降の差が大きいので、試合ではメンバーを絞って戦わざるをえなかったのです。

―正キッカー争いはどんな状況ですか? 

千葉:春は2年生の#40山本がFGキッカーを務めていました。他には4年生では自分と#7藤田、1年生にも#96黒沢をはじめ3人ほどの有力なキッカーがいます。みんな横一線という状況で、これからレギュラー争いが熾烈になっていくはずです。

―ここ数年、ユニコーンズにはずっといいキッカーがいた印象ですが、今はキッキングとして再建期ということでしょうか?

 千葉:これまでは廣田さんや山本小次郎さんという日本代表レベルのキッカーがいましたが、そのレベルに比べると現時点で戦力ダウンは否めません。ただ、ポテンシャル的にはいい選手がそろっていて、歴代の方たちに追い付けると思っています。夏の期間にどれだけ成長できるかが、秋の結果を決めると思います。

春シーズン、FGキッカーを務めた2年山本銀次郎

春の反省を生かした、秋に向けての取り組み

―オフェンス、ディフェンス、キッキング、秋に向けてそれぞれ重点的に取り組んでいくのはどんなところでしょうか?

大河原:今年に限った話ではないですが、春を振り返った時に決定力という課題がありました。法政戦で顕著に出たのですが、ディフェンス、キッキングを苦しめてしまった。ここを改善するために、どれだけ日々の練習で試合のような緊張感でできるか、雰囲気作りをリーダー中心に取り組んでいます。

―法政戦の4Qは、メンバー一丸となった気迫のこもったドライブができていたように見えましたが。

大河原:はい、死ぬ気でTDを取りに行くという雰囲気がありました。しかし、あれを試合の最初からやらなければいけないと思っています。自分たちのオフェンスの目標の中に、最初のシリーズから攻めていく、というものがあるのですが、それができていませんでした。途中からエンジンがかかっても遅いので、そこを改善するための取り組みもしています。

―大河原君自身はマルチプレーヤーとして出場していて、大変ではないですか?

大河原:リターナーとしては大学からプレーしているのですが、高校時代からQBとPとして出場しているので、頭の面は整理して切り替えられています。体力面の方が課題で、まだ改善しないといけないです。

法政大ディフェンダーとの駆け引きに臨む大河原(4年RB#7)

原:ディフェンスとして一番やらなければならないことは、デプスの構築です。今年のチームは試合でもメンバーがある程度固定化されていた分、レギュラーとそれ以外の選手との差が開いてしまっています。レギュラーは4年生が中心なので、来季以降のことを考えても、下級生が成長して試合に出られるようにならないといけないです。また、春シーズンにある程度結果が出た中で、油断してしまう選手や緩んだ空気が出たりしてしまうこともあると思います。それを引き締めるためにも、競争を激しくしていきたいです。

千葉:春達成できなかった、全員が活躍するキッキングを体現したいです。
課題ばかりが露呈してしまったキッキングですが、春シーズンを通して良かったことがスカウティングです。スカウティングリーダーを立てたことで、分析の再現力が高まりました。ただ、下級生ががんばってくれたのですが、まだ試合に出場するレベルまではいかなかった、というのが実情です。秋に向けてはスカウティングリーダーに立候補する選手もさらに増えていて、キッキングに対する意識が高まっています。下級生がさらに成長する土壌は整ってきました。キッキングの練習時に、1本目とスカウティングチーム側とで相互に指摘し合う雰囲気もできてきているので、切磋琢磨してより高めていきたいです。
また、夏は全員ファンダメンタルの徹底をしていて、レベルアップを図っています。あとはプレー外のミスを絶対にしないこと。ここを徹底して、秋はキッキングでモメンタムを持ってこられるようにしたいです。

中大ボールキャリアーに迫る原(4年DB#21)

―ユニコーンズだけではないですが、近年はキックオフで当たり前のようにタッチバックキックが見られます。キッカー全体のスタンダードが上がっている理由はなんでしょう?

千葉:スペシャリストの発掘ということにはずっと取り組んでいます。みんなにボールを蹴ってもらって、飛ばすのが得意な選手、FGが得意な選手という具合に適材適所でキッカーユニットを構成しています。こういった環境づくりと、偉大な先輩方に教えてもらったりという、技術の伝承もできています。


昨年から、BIG8で過ごしていること。コロナ禍により、例年に比べて満足に練習ができなかったこと。これらの影響で、チームレベルは下がってしまっているのではないか、というのが私の予想だった。しかし、オフェンス、ディフェンス、キッキングにそれぞれの課題はあるものの、春シーズンを通してかなり高いレベルでプレーしていた。トップ8、DIVISION1のチームに対して3勝1敗という結果にも表れている。個人的には、ディフェンスが1対1で勝負できていること、アグレッシブに仕掛けてボールを奪っていく姿勢が見ていてとても爽快だった。

各リーダーも春の結果に満足することなく、秋に向けた課題が明確になっており、やるべきこともクリアになっている。BIG8のリーグ戦を全勝して、TOP8昇格へ。頼もしい後輩たちの活躍が楽しみだ。