清水利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com
前々号のコラムで、筆者は自分が「スタジアム応援席フェチ」であることを暴露してしまいました。
フットボールの試合を私よりも多く観ておられる方は大勢居られると思いますが、全米カレッジの応援席を、私ほどじっくり眺め続けてきたユニコーンズ卒業生は他に居られないだろうと自負しています。
本場米国の、特にカレッジフットボールの応援席をたくさん観ていますと、「スタジアムを色で埋め尽くして応援すること」に関する原理原則といいますか、セオリーのようなものが次第に見えてきたと感じております。
また私はメンズファッションアパレル企業に20年以上勤務したため、その間「色についての勉強」をかなり強制的にやらされました。カラーアナリストと称する講師による「色のセミナー」を何回も受けていますので、そこが応援席の色に興味を持つ土台となっているのかもしれません。
そこで今回は、スタジアム応援席フェチの清水による、「ユニコーンズの色による応援の考察」というコラムを書いてみます。私の考えを皆さんに押し付けるつもりは全くありません。チームの指導陣の方々も苦労して応援体制を考えておられると思いますので、どのような体制・方針に決まっても喜んで従い、一生懸命応援します。
今秋は久しぶりに有観客によるTOP 8リーグ戦が見られそうで本当に楽しみです。兵庫県から駆け付けますので全部はとても無理ですが、1試合でも2試合でも観られたら嬉しいです。
私が普段考えている事をご紹介します。まずは2枚の写真をご覧ください。撮影はいずれもコロナ前であり、撮影者は当時チームカメラマンの秋本宗一さんです。
「スタジアムを赤で染めて下さい!」との依頼により、横浜スタジアムに集まったファン達の姿です。実際には赤い服を着て協力してくださっている方は全体の半数以下だと思いますが、これだけ赤い服が揃えばスタンド全体に一つの「意志」が感じられます。部員の父母(お母様方のことをママコーンズと言います)が多数協力し応援してくださっているのがわかります。
「我々はユニコーンズを応援しているぞ!」「我々はチームと共に闘うぞ!」という思いを、相手校の反対側スタンドからもハッキリ見てとることが出来ます。
さすがにウイスコンシン大のような赤の大迫力ではありませんが、色の応援の効果は充分出ていると感じます。あと2割くらい多くの方が赤い服を着てくださったら、色の迫力は更にアップするでしょう。
「スタジアムを紺で染めて下さい」との依頼により、早慶戦に集まった姿です。うーん、誠に申し訳ないのですが、色の統一感が感じられないのです。赤の応援の時のような「色の迫力」がありません。
協力してくださった人の数が少なかったわけではありません。よおく写真を見て下さい。非常に多くの方が紺やブルーの服を着て下さっています。赤の応援で赤い服を着る人数より、多くの方達が「紺の応援席」に協力してくださっているのですが、それでもその効果は表れないのです。スタンド全体が暗く沈んだ印象なので、チアリーダーが着ている赤と白のジャンパー姿や、数人いる赤い服の女性の姿が、逆に目立ってしまっています。
いったい、なぜなのでしょうか?
その理由は次の通りだと考えます。
1.色にはそれぞれ特徴があります。赤い色は「明るく目立つ色、浮き上がる色、派手な色」であるのに対し、紺色は「暗い色、沈み込む色、地味な色」であると言えます。ですから赤い服を着た人がたくさん集まると、どんどん目立ち、浮き上がっていきますが、紺色の人が大勢集まると、逆にどんどん暗く沈み込んだ印象になってゆきます。「皆さん紺色の服で集まってください。スタジアムを紺色に染め上げましょう!」というのは、最初から非常に難しい話ということになります。全米カレッジフットボールの試合をたくさん観ましたが、スタジアムを紺で染めるという方針のチームを私はこれまで知りません。難しいからやらないのです。紺一色のユニフォームを着るペンシルバニア州立大やブリガムヤング大は、スタジアムを「白で染める」方針ですし、紺ジャージに朱色の袖ラインが入るオーバーン大は「朱色で染める」作戦をとっています。
2.色にはそれぞれ「役割や用途」があると、カラーアナリストの先生から聞いたことがあります。例えば、赤には「情熱や、激しい闘志」を表わす役割があり、一方、紺は「知性や分別、冷静さ」を表わすのだそうです。ですから、「今日の役員会議では、私の提案するプロジェクトのプレゼンをさせてもらえるから、絶対頑張って通してみせるぞ!」というような時に、真っ赤なネクタイをして出席し、闘志や覇気を表わすのは理にかなっています。ところが、納期遅れが発生して、取引先にお詫びに行くときに真っ赤なネクタイをするのは、相手を更に怒らせるだけの大バカ者ということになります。お詫びの時はぜひ紺色系の地味なネクタイでどうぞ。
つまりフットボールの応援席で真っ赤な服を着て、敵に闘志を示すのは、誠に理にかなっていると思うわけです。
3.私が40年前、ファッションアパレル企業に入社した際、先輩から「紺という色は非常に難しい。ミッドナイトブルーと呼ばれる黒に近い紺もあれば、群青色も、ジーンズ用のインディゴブルーもあり、種類が多くて千差万別だ。ひとくちに紺と言っても、聞く人の頭に浮かぶ色のイメージは全くバラバラなので、その点を理解して商品企画しなさい。」と教えられました。
「紺に染まる応援席」がうまくいかないのは、このことも原因の一つと考えます。皆、お揃いの紺を着て集まっているつもりでも、それぞれの服の色が似て非なるバラバラな紺やブルーなので統一感も迫力もないのです。
上記のような理由から、「スタジアムを色で染めましょう」という企画をするなら、私は「赤をアクセントカラーとする応援」しかないと思っているのです。「紺の応援」をしても構いませんが、相手校応援団には意図が伝わらない、応援のプレッシャーがかからない企画となってしまうだろうと考えています。
これまで慶應は、相手校の色に合わせて、「明治や立教、中央戦には赤を着て、日大や早稲田や法政戦には紺や白を着る」という方法を採用していたように見受けました。米国ではこのように「試合ごと、対戦相手ごとに応援カラーを変更する」方針を持つ大学を私は知りません。(ご存じの方がおられたら是非お教えください)全米でもやっていないような難しいやり方を、わずか数百人のユニコーンズ・ファンで実践しようとするのは極めて困難と感じます。たとえ相手が日大や早稲田でも、慶應の応援は同じ一つのカラー応援で良いではないかと私は考えるのです。そして私が提唱するのが「紺・赤コラボ応援」です。このコラムを最後までお読みいただくと私の趣旨がご理解いただけると思います。
「慶應のスクールカラーは赤ではなくて、紺だろう!」とか、「この年齢になって赤い服を着てスタジアムに行くのは勘弁してくれ!」というご意見の方がおられることも重々承知しております。
「夏の赤いポロシャツくらいならばともかく、冬場に赤いコートやジャンパーを着て出かけられるか!第一、そんな服は持っていない!」と思う方はたくさん居られることと思います。
そういう方のために、次のような考え方はいかがでしょうか?
紺は「暗い、目立たない色」ではありますが、一方で紺は「他の色を鮮やかに際立たせることの出来る色」でもあります。例えば紺無地のスーツに、真っ赤などの原色のネクタイを締めれば、ネクタイが実に鮮やかに浮かび上がって見えます。
慶應の三色旗(Blue, Red and Blue)は、「赤の鮮やかさを、両脇の紺が引き立てている」配色であると感じており、大変素晴らしい配色のスクールカラーであると、私は気に入っております。
ですから、
「応援には是非赤い服を着て下さい。赤い服をお召しでない場合はどうぞ紺色の服でご来場ください。紺と赤の慶應カラーでスタンドを埋め尽くしましょう。緑色や黄・茶色など、色の統一感を乱す服は、出来れば着用を避けて下さい。」
という依頼をすべての試合に適用し、統一してはどうかと思うのです。
「観客の5割が赤で、残り5割は紺を着ている」時のほうが、
「観客の5割が赤で、残り5割はいろんな色でぐちゃぐちゃ」の状態よりも
ずっと赤い色が際立って鮮やかに見えると確信しております。
具体的な色の応援を、「初秋(残暑)・秋・冬」とシーズンごとに分けて提案します。
「今日は紺だけの応援。来週は赤だけの応援。」というよりも、「いつも紺と赤のコラボ服装応援」にした方がスタンドは鮮やかに映えると考えます。
「赤い服を着るのはイヤ」という方には、紺の服に赤いサブアイテム(キャップ、ニット帽、マフラー、タオル等)をどれか身に着けていただけないか、という提案も同時にいたします。それだけでスタンドの雰囲気はずいぶん華やかに変わってくると思います。
この3枚の写真は、清水家のワードローブを総動員させて撮影したものです。私は「ユニコーンズ応援用アイテム蒐集フェチ」でもあります。あまり金はかかっていませんが。笑
(この他に、雨の試合用に紺と赤のレインウェア、上下でアマゾンにて3500円、もあります)
「ユニコーンズ・ロゴマークを刺繍したワッペンやアップリケを、部で用意して売ってくれないかな。そうすればワッペンを縫い付けることによって、ユニクロやアマゾンで買った服をユニコーンズ・グッズに変身させることが出来るのだけれど。」と普段から希望していることも申し添えます。
「紺が正しいか、赤が正しいか」という論争ではなく、「慶應の応援なのだから、紺と赤の組み合わせで応援しましょう。そうすれば必然的に赤い色が鮮やかに際立って見えてきますよ。紺の服は赤い服の引き立て役としてうまく機能しますよ。」というのが、私が申し上げたいことなのです。
今年の秋のリーグ戦は、私の知る限り、ここ数十年来で最も厳しい戦いになると感じております。選手たちに頑張ってもらうのは勿論のことですが、テキサスA&M大の伝統的基本思想(※)のように、「選手ではない人達も、チームの勝利を願って、自らを犠牲にし、何らかの努力を積み重ねてゆく」ことを実践いたしましょう。ユニコーンズを応援する者たちの後押しにより、慶應のボールを更に1ヤードでも前に進めましょう!!
※テキサスA&M大の応援基本思想については、コラム・アーカイブより「2021年11月12日付けコラム、A&Mの伝統」をご覧ください。
「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
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