清水 利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com
前号でお知らせしました通り、全米カレッジの王座は
- ジョージア大(1位)vs オハイオ州立大(4位)
- ミシガン大(2位)vs テキサス・クリスチャン大(3位)
の2試合を準決勝として、勝者が全米大学選手権に進むことになりました。
この中で一番、皆様に馴染みが薄いのが、テキサス・クリスチャン大だと思います。そこで今回はこの大学について述べてみます。
テキサス・クリスチャン大(TCU)は1873年に設立され、今年で149年目を迎えるキリスト教系の歴史ある私立大学です。この学校の特徴としては、大都会のテキサス州フォートワース市(ダラス市と隣接している)にある街なかの大学であること。そして学生数が12000名と少ないことが挙げられます。ちなみに日本で言えば、立教大学には学生数約20000名居ますし、関東学院大学11000名、桜美林大学10000名あたりが似たような規模となります。テキサス・クリスチャン大は全米のフットボール強豪校の中では際立って規模の小さい大学と言えるでしょう。
フットボール部の創立も1903年と古く、今年で118年目です。通算戦績658勝546敗50分、勝率.546と立派な実績を残しており、1935年、1938年には全米王座に輝いたことがあります。ただし、その後は一時不調の時期が続き、1974~1980年の7年間で9勝67敗、勝率.118と地獄の暗黒時代を経験しました。
2001年にゲーリー・パターソンという名コーチが就任し、21年間で181勝79敗 .696という強豪校に復活させました。ただし2010年にローズボウルに出場して勝ち、最終ランク2位となったのが頂点で、王座復帰は果たせていません。
サンディエゴ・チャージャース等で活躍したRBラデイニアン・トムリンソンはTCUの卒業生です。
同じ宗教系大学であるベイラー大とは毎年激しいライバル争いを展開しており、両校の対戦成績はTCUの54勝52敗7分と拮抗しています。
TCUのニックネームはHorned Frogs(ツノガエル)。米国南部からメキシコにかけての乾燥地帯に生息する動物で、その風貌から「恐竜の生き残り」と言われています。実際にはカエルと言うよりはトカゲに近い生き物のようです。TCUのヘルメットには、Horned Frogが描かれているのですが、カエルの絵がデカ過ぎて、何が描いてあるのかよくわかりませんね。笑
ゲーリー・パターソン・コーチが昨年で引退し、今年からソニー・ダイクスをTCUのヘッドコーチに招きました。そうしたらいきなり12勝1敗の好成績をあげて、全米王座を狙える位置を確保したわけです。
ソニー・ダイクスの父親は、スパイク・ダイクス。かつてテキサス工科大で82勝67敗1分の戦績を残し、SWCリーグの優勝経験もある有名なコーチです。
ところがソニー・ダイクスの経歴を見て驚きました。大学でフットボールをプレーした経験がないのです。高校時代は野球とフットボール両方を競技していましたが、父親がフットボール・コーチをしているテキサス工科大に入学(つまり超有名人の息子だった)。ソニーはフットボールをやらずに野球部に入部し、一塁手として活躍しました。
大学卒業後は、高校で野球部のコーチになりましたが、一年後には野球部とフットボール部のコーチを掛け持ちするようになりました。その翌年からはフットボール部のコーチに専念し、短大フットボール部などを渡り歩いて長い下積み時代の苦労を味わっています。現在53歳ですから30年近い豊富なコーチ歴があります。
大学のヘッドコーチとしてもルイジアナ工科大、カリフォルニア大、サザンメソジスト大での経験をもち、今年TCUコーチとして、ついに花開いて各Coach of the Year賞を総なめにしました。(通算83勝64敗で既に父親の勝利数を抜きました)
下の写真をご覧ください。これは今年春にTCUとヘッドコーチ契約を結んだ、ソニー・ダイクスとその一家を歓迎するセレモニーの様子です。TCUの学生やファン達が大勢待ち受ける大学のフットボールスタジアムに、ソニー・ダイクス家族が大学の所有するヘリコプターで降り立ち、手を振って歓呼に応えています。日本ではとても考えられないド派手な演出ですね。
ダイクス・コーチは初年度から見事にファンの期待に応えたことになりますが、私は「わずか12000名しか学生のいない小さな大学で、こんなハデなことをしていて良いのか!?」と叫びたくなります。
米国の大学にとって、「フットボールがいかに大きなビジネスであるか」という証明でもあります。
TCUのプレーをご覧になりたい方は、下記のYou Tube画像をどうぞ。12月3日におこなわれたBig12リーグ優勝決定戦、テキサス・クリスチャン大(紫)vsカンザス州立大(白)の模様です。私はTCUのQBマックス・ダガン(4年)のファイトあふれるプレーぶりが気に入りました。ダガンは今年の「ジョニー・ユナイタス・ゴールデンアーム賞」を受賞しています。手に汗握る結末ですので、結果は書かないでおきますね。(18分)
<あとがき>
今年一年間、コラムをお読みいただきありがとうございました。
「歴史を調べて、文章を書くこと」が趣味の私ですので、大変楽しみながら担当させていただいておりますが、私一人でコラムを担当し続けることが決して良い事とは思っておりません。
「清水さん、私にもコラムを書かせてください。Unicorns Netの読者に聞いてもらいたい想いがあるのです」というようなご希望を大歓迎します。一回分だけを受け持っていただくこともOKですし、また、一回の配信に複数のコラムが掲載されていても何ら問題の無いことと考えております。
最後に、今年一年「原稿締め切り後の、清水による修正・訂正希望」により、迷惑をかけまくっていたのに快く応じてくださった、Unicorns Net編集者の皆様(アメリカンフットボール三田会・広報部会情報発信担当)の皆様方に心から感謝を申し上げます。
Unicorns Net編集担当者 山田健太さん(H7年卒)、高木慶太さん(H7年卒)、中橋正博さん(H9年卒)、林健司さん(H10年卒)、横田孝さん(H11年卒)、岡田大行さん(H12年卒)、松元竜太郎さん(H17年卒)、松田達さん(H18年卒)、河野一哉さん(H23年卒)、三津谷郁磨さん(H27年卒)、田淵咲輝さん(H30年卒)
ユニコーンズを愛する皆様方、来年もどうぞよろしくお願い申し上げます!
「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
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