2025/1/25
昭和52年(1977年)卒 清水利彦
shimizu.toshihiko2@gmail.com
今年度の全米大学選手権決勝は、1月19日(日本時間20日午前)に、マイアミ大vsインディアナ大という新鮮な組み合わせにておこなわれました。「おこなわれました」と書いていますが、今(1月18日)の執筆段階では試合前であり、コラム原稿締め切りの1月20日と決勝戦が全く同時のタイミングとなり、筆者としてはトホホの状態です。
どちらが勝っても良いように、両校の概要や歴史を述べ、最後に試合結果を添えて、大急ぎで原稿提出という綱渡りをさせていただきます。うまくいきますことやら・・・
今季の決勝戦に進出する両校の最大の相違点は、次の2行で言い尽くされます。
マイアミ大 創部99年目 通算637勝358敗 勝率.640 全米王座獲得過去5回
インディアナ大 創部127年目 通算509勝691敗 勝率.424 全米王座獲得経験なし
つまりマイアミ大が「勝利の歴史」を持つ学校であるのに対し、インディアナ大は「敗北の歴史」を持つチームなのです。
マイアミ大の「勝利の歴史」
マイアミという市の名前は、先住民であるマヤイアミ族に由来します。
マイアミ市から、キューバの海岸まではわずか300kmしか離れておらず、市内には移民してきたキューバ人が大勢居り、人口の半分以上はスペイン語を話すと言われています。
キューバ人だらけのマイアミ市内は、白人達にとって決して住みやすい街ではなかったのでしょう。ジョージ・メリックという不動産開発業者であり大富豪の人物が、「マイアミ市の外側に新しい街並みを開発する。その町はスペイン風の豪邸が立ち並ぶ、(富裕な)白人たちの理想郷にする」という計画を立ち上げました。その街はコーラル・ゲイブルスと名付けられ、1925年に完成しました。
新たな市街開発の一環として、市の誕生と同時に設立されたのが私立大学であるマイアミ大です。当初は白人富裕層や海軍関係者など、「恵まれた家庭の子女のための学校」として設立されたものと推察します。現在はあらゆる人種の学生が入学していますが、全米大学学力ランキングで100位と非常に高いレベルにあり、学生数約2万人の大学となっています。
コーラル・ゲイブルス市内の様子を画像でご確認ください。一度こんなところに住んでみたいです。
Coral Gables | Coral Gables
大学設立の翌年(1926年)にはフットボール部が創部されています。当初からNFLコーチ経験のある人物を雇ってヘッドコーチにさせるなど、お金をかけてチーム強化をする方針がとられ、どんどん戦績を上げてゆきました。創部初期はどのリーグにも所属せず、独立校の立場を取っており、1945年には初めてオレンジボウルに招待され勝利しています。(現在はACC所属)

1941年マイアミ大vsテキサス工科大。白ヘルメットがマイアミ大で、今のユニフォームと良く似ています。 出典:Wikipedia
1978年、チームに初めての危機が訪れます。大学当局内に「フットボール部に金がかかりすぎる」という批判の声が起こり、「自主的に二部降格を申請するか、もしくは廃部とするか」という案が出されました。この時はフットボール部関係者の尽力により、かろうじて一部校のまま存続させています。
1979年、ハワード・シュネレンバーガーがヘッドコーチに就任しました。彼は、伝説の名コーチ、ポール・ベア・ブライアントの教え子であり、アラバマ大学においてベアの部下としてアシスタントコーチ経験のある人物です。シュネレンバーガーがマイアミ大選手たちに、ベア・ブライアントと同じような猛練習を課したであろうことは容易に想像できます。
そして就任5年目の1983年、ついにマイアミ大は初の全米チャンピオンに輝きます。当時無敵と呼ばれていたネブラスカ大を、オレンジボウルにて大接戦の末31-30で下しての快挙でした。
シュネレンバーガー・コーチは王座獲得後、すぐに退任しますが、後を継いだのがジミー・ジョンソンです。1987年驚異的な攻撃力で全勝し、2度目の全米王座に輝きました。ジミー・ジョンソンはその後、NFLダラス・カウボーイズのコーチに転身し、スーパーボウルで2回優勝しました。カレッジとプロの両方でチャンピオンになったコーチは、ジミー・ジョンソンとバリー・スイッツアー(オクラホマ大とカウボーイズ)の二人しかいません。当時のお笑い迷言(ブジョク編)が残されています。
(ジミー・ジョンソン・コーチ率いるマイアミ大が、圧倒的攻撃力でいつも高得点を取っていることについて)
「ジミー・ジョンソンが低い得点しかできなかったのは、今から27年前、彼が大学の試験を受けたとき以来、一度もありません。
ジム・ナンツ(ブロードキャスター)

1987年度、全米王座獲得後、マイアミ大選手とともにホワイトハウスを訪れて、ロナルド・レーガン大統領に同校のユニフォームを贈るジミー・ジョンソン・コーチ 出典:Wikipedia
1983年から1992年の10年間、マイアミ大は黄金時代を満喫しました。116勝13敗、勝率.899という驚異的な勝ちっぷりで4回全米王座を獲得しています。卒業生には、テッド・ヘンドリックス(レイダースLB)、ジム・ケリー(ビルズQB)、ビニー・テスタヴァーディ(ハイズマン賞QB)、レイ・ルイス(レイヴンズLB)等、そうそうたる顔ぶれが並んでいます。
その後2001年にも5度目の王座獲得を果たしましたが、それ以来24年間チャンピオンになっていません。優勝できなかった24年間でも負け越しはわずか4回だけと、決して弱いわけではないのですが、いつもランク10~20位程度に甘んじているという印象があります。
今季もCFP(College Football Playoff)ランク10位となり、12校出場できる大学選手権に際どく駒を進めました。13位となって出場を逃したノートルダム大から「うちの方がマイアミ大より順位が上でないのはおかしい!」とイチャモンを付けられており、大モメとなりました。
これで逆に発奮したのか、マイアミ大は大学選手権で (丸囲み数字はシード順位)
一回戦 マイアミ大⑩ 10-3 テキサスA&M大⑦
準々決勝 マイアミ大⑩ 24-14 オハイオ州立大③
準決勝 マイアミ大⑩ 31-27 ミシシッピ大⑥
と、ランク上位校を接戦の末、次々に撃破し、決勝まで進んだわけです。準決勝ミシシッピ大戦の最後の5分間映像をご覧ください。
(47) Miami vs. Ole Miss – WILD Final 5 Minutes | College Football Playoff – YouTube
かつては「勝って当たり前」のチームではありましたが、24年間も王座から離れており、マイアミ大関係者の「優勝への渇望感」は大変なものだと想像します。
インディアナ大の「敗北の歴史」
勝利に満ちたマイアミ大の歴史と比べて、インディアナ大の歴史は敗北に満ちています。
突然強くなったのは昨年(11勝2敗)と今年(決勝前まで15勝0敗)の2年だけです。1994年~2023年の30年間で105勝226敗、勝率.317と負け続け、特にBIG TENリーグ内の対戦成績は、59勝182敗、勝率.244と完全に「リーグのお荷物」状態でした。もちろんリーグ優勝など一回もありません。
今季のBIG TENリーグ優勝は58年ぶり3回目のことでしたが、加盟以来125年間で3回しかリーグ優勝できなかったのです。
もともとインディアナ州にはパデュー大という州立の伝統名門校があり、歴史・規模・学力などにおいて一般的には「パデュー大がインディアナ大より格上」と言われています。本来ならば、パデュー大がUniversity of Indianaを名乗り、農業教育を中心として設立されたインディアナ大はIndiana State Universityを名乗るのが普通と考えられます。しかしパデュー大が、創立に貢献したJohn Purdueという人物の名前に固執したため、Indiana Universityを名乗れるようになりました。
※フォーブス誌の2025全米大学学力ランキングによると、パデュー大51位、インディアナ大67位と、少しだけパデュー大が上なのですが、どちらも極めて優秀な学校であることがわかります。
インディアナ大は正確には、「インディアナ大学ブルーミントン校」と呼ばれ、インディアナ大学群は州内の9か所にキャンパスがあります。ブルーミントン校が規模・学力レベルで最上位にあるため、インディアナ大学と言えば、ブルーミントン校を指すことになっています。
ブルーミントン市は、インディアナ州南部にある人口8万人ほどの田舎町で、ここに学生数48000人のインディアナ大学があり、典型的な大学町と言えます。

インディアナ大があるブルーミントン市の中心街。田舎の景色ですね 出典:Wikipedia
インディアナ大フットボール部が弱い一方で、バスケットボール部は超強豪として知られています。全米大学バスケットボール選手権に過去5回優勝しており、「フットボール部が弱いのは、バスケットボール部が強すぎるから」という言い方も出来そうです。ただしバスケットボール部の最後の大学王座は1987年で、42年間優勝から遠ざかっており、「ウサギとカメの競走のように、カメ(フットボール部)がじわじわ追いついてきた」とも言えます。
フットボール部は、2024年度最終ランキング8位という高い評価であったにもかかわらず、今季(2025)のプレシーズンランキングは20位と決して高くありませんでした。「昨年は出来過ぎ。今年はそんなに勝てないだろう」という印象がアナリスト達の中にあったと推測します。ところが、あれよあれよという間にレギュラーシーズンを12戦全勝で乗り切り、その後は更に、
インディアナ大② 13-10 オハイオ州立大① BIG TENリーグ優勝決定戦
インディアナ大① 38-3 アラバマ大⑨ 大学選手権準々決勝
インディアナ大① 56-22 オレゴン大⑤ 大学選手権準決勝
と破竹の勢いを見せています。試合ごとに益々強くなっているという印象があります。
準決勝、オレゴン大戦の映像をご覧ください。QB#15フェルナンド・メンドーザは今季のハイズマン賞を獲得しています。もちろんインディアナ大にとって初のハイズマン受賞でした。
127年前(1899年)からずっとフットボール活動を続けており、BIG TENというレベルの高いリーグの中で戦い続けているのに、インディアナ大は一度も全米チャンピオンになったことがありません。
インディアナ州民の中には、「いっぺんインディアナ大が王者に輝いた姿を見てから死にたい」と思っているオールドファンもたくさん居ることでしょう。
大学選手権決勝の下馬評は、インディアナ大やや有利のようですが、試合場はなんとマイアミのハードロック・スタジアムです。マイアミ大が地元で戦えるアドバンテージを考慮すると、両校は全くの互角であろうと私は推測しています。
と、ここまで書いたのが1月19日月曜11pmでした。決勝戦は日本時間20日9:30am開始です。
全米大学選手権 結果速報
大学選手権はつぎのような結果となりました。
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 | |
| インディアナ大 | 3 | 7 | 7 | 10 | 27 |
| マイアミ大 | 0 | 0 | 7 | 14 | 21 |
3分間の短いYou Tube映像がありますのでご覧ください。
(48) Indiana vs. Miami – 4th Quarter Ending 🍿 CFP National Championship – YouTube
お時間のある方には、30分の長尺映像もあります。

大学選手権決勝、インディアナ大QBメンドーザ(ハイズマン賞受賞)のダイブTD
インディアナ大は1899年の創部以来、127年目で初の全米チャンピオンとなりました。敗北の歴史にまみれていたチームが、ついに勝利の栄冠を手にしました。感動の瞬間でした。
実は30年近くに渡って、新しい大学王者の誕生は無かったのです。
1996年にフロリダ大学という新しいチャンピオンが生まれましたが、それ以来、過去に優勝経験のある16校が交代しながら、29年間に渡って学生王座を奪い合ってきたわけです。新たにチャンピオンになるということは、それほど難しいことなのです。
1936年にAP(Associated Press)が全米王座を選んで発表して以来、今年でちょうど90年になりますが、その間優勝経験のある大学は30校だけ。今回のインディアナ大が31校目の王座経験校となりました。
今回のインディアナ大の快挙に対する賞賛は、カート・シグネッティ・ヘッドコーチと選手たちに向けられることでしょう。ただし、その陰には、インディアナ大が弱かった時にもチームを支え続けた関係者たちや、負けても負けてもスタジアムに足を運んで応援を続けたファンたちがおられたはずです。
支援をし続けたこれらの方々に心からのお祝いを申し上げたいと思います。
「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
https://footballquotes.fc2.net/
「今週の名言・迷言」を木曜日ごとに更新しています
左下の「三田会コラム」という黒い小さなバーをクリックして
いただくと、これまでのコラムのアーカイブがご覧いただけます






