2028年・LA五輪を目指し今シーズンから国際ルールでプレーすることになったフラッグフットボール。
この時期は例年新チームのケミストリーづくりに腐心している時期であるが、今年はさらにこれまでの「NFLフラッグ」ルールから、フィールドの長さ、ボールのサイズ、計時方法、ベルクロ式からキャップ式へのフラッグ形状の変更と言った基本的な部分から、プレー面では、スピンムーブの解禁など、数多くの変更への対応にも時間を割かなければならない。
そんな中、年度初のビッグゲームが早慶戦である。
LA五輪での中心世代の一つと見込まれている「U15代表」に両チームとも候補選手を送り込んでいる上、どちらにとっても負けられない試合であることから、大変激しい戦いが予想される一戦だ。
先攻は慶應。ビッグゲームで勝つために重要なのは先制点を挙げること。
佐藤オフェンスコーディネーターの指示のもと、3年生QB野口が冷静にドライブを演出。1プレー目の田邊(悠)へのハンドオフこそわずかなゲインにとどまったが、その後早稲田カバレッジを的確に読んでシームを狙ったパスを投げる。大型ながらスピーディーな動きが身上の進(しん)へ連続してパスを決め、敵陣深くに前進。最後はユニコーンズOBで日本代表QB・高木翼君の弟である高木周(あまね)へのTDパス。さらにPATは早慶戦直前の負傷により欠場となった双子の弟・貴一の分まで、と燃える横手一将へのパスが決まり幸先よく7-0とリード。
続く早稲田の攻撃ファーストシリーズ。迎え撃つ慶應守備陣は、ハドルボウル(体育会アメフト部OBによるフラッグフットボール大会)で守備選手ながらMVPを受賞した清水監督、塾高フットボール公式戦ライブ配信でのカラーコメンテイターとして大人気の作田コーチが鍛え上げた自慢のユニット。QBラッシュのエキスパートである田中助監督が育成した長身型、スピード型と様々なタイプのブリッツアー(QBに7ヤード前方からラッシュする選手)によるQBへのプレッシャーとオフェンスに容易に守備スキームを読ませない複雑なアラインメントを駆使した攻撃的な守備である。
この日はブリッツァ―のエース、副将・川崎が学校の部活参加で欠場のため、どこまでQBにプレッシャーをかけられるのか不安の残る試合だったが、長谷川、小川といった3年生たちが積極的なラッシュをかけ、狙った通りのタイミングやコースにパスを投げさせない。
なんとかファーストダウンまでは獲得した早稲田だが、エンドゾーンまでは遠く、無得点に終わる。
続く第2シリーズ。慶應オフェンスは早稲田カバレッジの弱点を攻め続ける。このシリーズは4プレー中、3回のパス成功全てがインサイドレシーバーに入った進へのパスという徹底ぶりでTD獲得。さらにはPATも進がキャッチして14-0と優位に立つ。
返しの早稲田オフェンス。ここで得点を挙げておかないと展開的に苦しい場面だが、早稲田のエース・日本代表候補のQBに余裕を与えない。ファーストシリーズと同じような展開で早稲田はまたしてもエンドゾーンにたどりつけず。
第3シリーズの慶應オフェンスは野口に加えて2年生QBの瀧を投入し、「ダブルQB」で早稲田をかく乱する。この作戦がまたまたハマり、最後は野口から高木へこの日2本目のTDパスが決まり20-0(PATは不成功。)と大きくリード。
時間的に前半最後のシリーズと思われる早稲田の第3シリーズ。ここで無得点に終わると前半で勝負の行方が見えてしまうとあって、早稲田も必死のドライブ。慶應ディフェンスのパスインターフェアランスの反則も利用しながら、ついにこの試合初のエンドゾーントリップを果たす。PAT不成功と同時に前半終了。慶應20-6早稲田。
今回の早慶戦では、両チームの協議のもと、若手の出場機会を作るべく後半開始後の攻守1シリーズをセカンドチーム対決と定めており、早稲田セカンドオフェンス対慶應セカンドディフェンスからスタート。ここでTDを奪われると1TD差となりプレッシャーがかかるいやらしい展開だったがDBで出場のムードメーカー・宮原が相手QBの投じたパスをチップからINT。このモメンタムチェンジャーにチームは大いに盛り上がる。
続くシリーズは小泉、皿澤らにパスが通ったものの、残念ながらTDは奪えず。
だが、20-6と2TD差のリードを詰められることなく時間を消費したセカンドチーム。グッドジョブ!
いよいよ苦しくなってきた早稲田は再びファーストチームが登場すると、シリーズファーストプレーでエースレシーバーを狙ったロングボム!ポストパターンで慶應ディープカバーマンの裏を取るとナイスキャッチから一気にエンドゾーンへ走りこむ。PATも決めた早稲田は20-13とついに1TD差に迫る。
ここで慶應はレシーバーに快足のビッグプレーボーイ、田中を投入。スナップと同時に右ストリークを走るとゾーンカバーのDBがマークを外した。そこを冷静に見逃さなかった野口がきれいな放物線でストライク!やられたらやり返すのは勝負の鉄則。佐藤OCの負けん気爆発のプレーコールが実を結んだ。大事なPATは、主将の丸山がキャッチ。27-13と再び2TD差とする。
まだあきらめない早稲田はミドルパス中心の組み立てですかさず逆襲に出る。しかしシリーズ3プレー目、先ほどTDを挙げた田中が正面からラッシュでプレッシャーをかけるとアンダーゾーンカバーの小川がわずかにチップ。これを高木がINT!
ここで慶應はQBに瀧を投入。進に連続してパスを通しダウンを更新するとノーマークでポストパターンを走る小川にTDパスをヒット!横手一将が今日2回目のPATキャッチで34-13。時間的に見て勝利を確信できる点差だ。
早稲田はハリ-アップオフェンス。だが長谷川のラッシュにパスが浮き気味となる。それをチーム最長身の小川が目いっぱい身体を伸ばしてジャンピングキャッチ。チームとしてこの日3つ目のINTを記録。
慶應は3人目のQB、2年生の曽世田を投入。ゴール前7ydの好機。スナップを受けて右に流れた曽世田はエンドゾーン内サイドライン近くに走りこむ岡にパス。岡は、上手にエンドゾーン内に身体を残しながらダイビングキャッチを決めTD。PATは失敗で40-13。
後半のターンオーバーラッシュで完全に勝負あったという展開になってしまったが、早慶戦だけに早稲田はあきらめない。が、その気持ちをへし折るがごとくフラットゾーンへのパスを皿澤がINTからのピック6。この日、失点につながるパスインターフェアや競り合いの中でボールに手がつかず、とどちらかというとアンラッキーボーイだった皿澤だが、最後にビッグプレーで留飲を下げる。瀧から田邊(惟)へPATも決まり47-13と思わぬ大差となってしまった。
ここでついに早稲田は日本代表候補のQBをベンチに下げ、控えQBを投入。タイムアウトを使いながらなんとか慶應陣内まで攻め込むも、最後はディープカバーマンとして下がり目に守っていた曽世田が無慈悲にINTしたところで試合終了。
ファイナルスコア 慶應 47-13 早稲田。
なお、この試合の最優秀選手には、完璧なクォーターバッキングを見せた3年生QB・野口が選ばれた。
久しぶりの早慶戦。日本代表候補QBを擁する早稲田から5つのINTを奪っての予期せぬ快勝・大勝となったが、あくまでも本番は秋の大会。日本一を目指してチーム一丸となって日本一奪回を目指したい。