【清水利彦コラム】第55回スーパーボウルの見どころ 2021.02.05

清水利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

いよいよ2月8日(月)朝はスーパーボウル中継ですね。今まで毎年、出勤日の朝なので、録画して観戦するしか方法がありませんでしたが、今年は初めてナマ中継での観戦となります。

朝っぱらから、酒とツマミも用意しましょう。年金生活バンザイ!

さて、今年のみどころをまとめてみました。

トム・ブレイディは7回目のスーパーボウル勝利を飾れるか?

9月中旬のコラムで、「トム・ブレイディは何歳まで活躍できるのか?」というタイトルの文章を書きましたが、その時、まさか彼が今季のスーパーボウルまで勝ち進むとは思っていませんでした。

現在43歳のブレイディは、下記の最年長記録を持っています。

  • 39歳でスーパーボウルMVP獲得
  • 40歳で年間最優秀選手賞(NFL MVP)受賞
  •  41歳でQBとしてスーパーボウル先発出場

この中で③は記録更新がほぼ確定。①と②もおおいにチャンスありですね。

NFLの最年長試合出場記録は48歳と3か月のジョージ・ブランダで、他にもアダム・ビナティエリの46歳などありますが、彼らは皆プレースキッカーとしての出場です。常に怪我と直面しているQBにおける、最年長記録の更新は価値が桁違いです。

「10回目のスーパーボウル先発出場QB」という記録もほぼ確定ですが、もう今後永遠に破られない記録続出のスーパーボウルとなるかもしれません。バッカニアーズが勝ったら、私は泣いてしまうかも・・・

ヘッドコーチは、高齢者対決!

バッカニアーズのブルース・アリアンス・コーチは、1952年10月生まれの68歳。年金生活の筆者より2年年上ですが、比較するのが情けないほど、高齢で頑張っています。

ユニコーンズではS50年卒小口主将、柴田副将の代と同期生にあたります。昭和51年卒以降の皆さんがアリアンス・コーチと話をする時は敬語を使うようにしましょう。

アリアンスは、オフェンス・アシスタント・コーチ経験が長く、初めてヘッドコーチになったのは60歳という遅咲きのコーチです。しかも、その時アリアンスは、自ら望んでヘッドコーチになったわけではありませんでした。インディアナポリス・コルツのオフェンス・コーディネーターだったのですが、ヘッドコーチのチャック・パガーノが白血病にかかってしまったため、シーズン途中で突然アリアンスが代理ヘッドコーチに指名されました。ところがチームはそこから9勝3敗と見事な成績を収め、彼はNFL年間最優秀コーチ賞を受賞します。代理コーチがこの賞をとったのはもちろん史上初めてのことで、代理コーチとして9勝を挙げたのもNFL記録です。

この活躍を評価されて、翌年からアリゾナ・カージナルスのヘッドコーチとなり、負け越しの続いていたチームを強くしました。更にバッカニアーズに移って2年目でチームをスーパーボウルに導いたわけです。何がきっかけで人生が変わるか、わかりませんね。

アリアンス・コーチの体型をTVで見て、当然元ラインマンだと思っていましたが、なんと彼はバージニア工科大学で、ウイッシュボーン隊形のQBでした。QBとしてランのTDを11回しており、これは今でも同大学の記録として残っています。怪我を恐れず、闘志むき出しでタックラーにぶつかっていくQBだったようで、今の彼の性格・コーチ哲学に反映されています。

一方、チーフスのアンディ・リード・コーチは1958年3月生まれの62歳。昭和55年卒、石坂主将の代と同期です。両軍のコーチ合わせて130歳という高齢者対決が今回のスーパーボウルの興味深いところです。

リードはブリガムヤング大出身で、長く複数のチームのオフェンスラインコーチを務め、19年目の1999年にフィラデルフィア・イーグルスのヘッドコーチになりました。14年間で130勝93敗1分という好成績をおさめ、9回プレイオフに出場しましたが、いずれもあと一歩で敗れています。2013年からチーフスのコーチになり、91勝37敗(勝率.711)という驚異の常勝軍団を作り上げました。昨シーズン、ついに自身通算15回目のプレイオフ出場で念願叶い、初めてスーパーボウルチャンピオンとなっています。

お互いに高齢で、海千山千の曲者同士。「あいつにだけは負けたくない」と思っていることでしょう。知恵比べで、どちらが勝つか見ものです。

ブレイディの出場するスーパーボウルは、いつも面白い!

トム・ブレイディにとって10回目のスーパーボウルですが、これまでの9回は手に汗握る接戦の歴史です。

2001年 3点差で勝ち(相手ラムズ)ブレイディMVP

2003年 3点差で勝ち(パンサーズ)ブレイディMVP

2004年 3点差で勝ち(イーグルス)

2007年 3点差で負け(ジャイアンツ)

2011年 4点差で負け(ジャイアンツ)

2014年 4点差で勝ち(シーホークス)ブレイディMVP

2016年 延長戦の末、6点差で勝ち(ファルコンズ)ブレイディMVP

2017年 8点差で負け(イーグルス)

2018年 10点差で勝ち(ラムズ)

過去54回の開催で、2ポゼッション以上の差(17点以上)がついてしまった凡戦が18回あるのですから、ブレイディの演じた接戦ぶりは際立っています。今年も最後の1秒までどちらが勝つかわからないような大接戦が見たいものです。

史上最弱のバッカニアーズは、最強になれるのか?

チーム創設以来の通算戦績で、一番勝率が低いのがタンパベイ・バッカニアーズです。

  • バッカニアーズ 278勝429敗1分(.393)
  • カージナルス 566勝771敗41分(.424)
  • ジャガース 177勝239敗(.425)
  • ファルコンズ 369勝473敗(.438)
  • ジェッツ 410勝514敗8分(.444)

とバッカニアーズの勝率の低さが際立っています。

・球団創設の年(1976)、0勝14敗

・球団創設から3年間で、7勝37敗

・球団創設から21年間で、勝ち越しわずか2回

・球団創設から今季まで45年間で、勝ち越しわずか13回

それでも2002年に当時弱冠39歳のジョン・グルーデン・コーチが率いて、初のスーパーボウル王者となったことを覚えておられる方も多いと思います。

68歳のアリアンス・コーチと、43歳QBのトム・ブレイディの高齢コンビが、弱小タンパベイを19年ぶり2回目の頂点に導けるかどうかが、最大のみどころでしょうか。

それでは、スーパーボウル・デイをお楽しみに。

「君はいつも、スーパーボウルの日になると、風邪を引いて会社を休むね」などと上司の方に言われないように気を付けてくださいね!


(バッカニアーズが弱かった頃の思い出について)

「タンパの海岸にたたずんで、沈む夕陽を見ていたら

なぜか泣けてくる。

その時にバッカニアーズのことを考えたら、

もっと泣けてくる。」

タンパ在住のスポーツライター

リチャード・ジェニングス