【清水利彦コラム】永遠のライバル・シリーズ第2回 テキサス大vsオクラホマ大(赤い河を挟んだ血みどろの闘い)2024.04.05

 清水利彦(S52卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

スポーツイラストレイテッド誌はかつて「全米カレッジ対校戦・熱狂度ランキング」を発表したことがあります。第1位がミシガン大vsオハイオ州立大。第2位がアーミーvsネイビー、そして第3位がテキサス大vsオクラホマ大でした。

オクラホマ大とテキサス大は1900年からフットボール対校戦を結んでおり、昨年までに119回対戦しています。(テキサス大の63勝51敗5分。初期の頃、数回の休止あり)途中、テキサス大がSWCリーグ、オクラホマ大がBIG8と、別々のリーグに所属していた時期も長いのですが、それでも8万人を超える観客を集めて毎年激突を繰り返しています。第二次世界大戦の時も、コロナ災禍の時も、この伝統の一戦が休止されたことはありませんでした。

今から65年前、1959年の対校戦模様。白ジャージがオクラホマ大。当時オクラホマ大は白いヘルメットを被っており、テキサス大のユニフォームに似ていました。 出典:College Football Book, Sports Illustrated

1900年が両校の初対戦ですが、オクラホマ州がアメリカ合衆国の46番目の州として承認されたのが1907年のことですから、「オクラホマ州が出来る前から、両校の対校戦が始まっていた」ことになります。当時はまだ「ノーマン・テリトリアル大学」という校名で、オクラホマ州が承認されてからオクラホマ大学と改名されました。

対校戦開始当初はテキサス大の方が圧倒的に強く、最初の10回はテキサス大の8勝1敗1分でした。

「オクラホマとの試合なんて練習試合のようなもの」というテキサス大側の談話が当時の記事に残っています。しかしそこからオクラホマがどんどん強くなっていき、全米王座選出制度が出来てから(1950年以降)は、オクラホマ大が全米王座7回、テキサス大が4回と逆転しています。

両校の対戦成績は、まだテキサス大が63勝51敗5分とリードしていますが、2000年以降ではオクラホマ大が16勝8敗と優勢で、その差は縮まりつつあります。

創部以来の戦績は

オクラホマ大       891勝321敗47分 勝率.735

テキサス大          898勝382敗31分 勝率.701

とどちらも極めて高い勝率を誇ります。

両校の対戦の際に、片方もしくは両方が全米ランク10位以内に入っていたことが、119回のうち56回あり、どちらかが全米ランク1位として対校戦をおこなったことが11回あります。

ミシガン大vsオハイオ州立大、ノートルダム大vs USCと並んで、カレッジフットボール界最高峰の「強豪同士の激突」であることは間違いありません。

両校フットボール部の対校戦への意気込みは大変なものですが、双方の州民たちの入れ込み方も熱狂的です。「テキサス州知事とオクラホマ州知事が、対校戦の結果についてしばしば賭けをする」ことでも知られています。「負けた方の州が、勝った方の州に極上の牛肉を贈る」というような他愛ないものですが、両方の州民が試合結果にどれほど注目しているかの証と言えるでしょう。

両校の対校戦は1929年以降、毎年テキサス州ダラスのコットンボウル(スタジアム)で開催されています。このことを私は前から知っていましたが、不思議で仕方ありませんでした。「どうして行ったり来たりではなく、毎年テキサス州開催なんだろう?不公平ではないのか?」と思っていましたが、今回その理由がわかりました。

テキサス大キャンパスのあるテキサス州オースチンと、オクラホマ大キャンパスのあるオクラホマ州ノーマンは約600km離れているのですが、そのちょうど中間点、約300kmの位置にテキサス州ダラス市があるのです。「両校から等距離にある、収容能力の大きな会場で対校戦をおこなう」というのが彼らの趣旨であり、そのためコットンボウルが試合場に選ばれたのでした。

プロでもカレッジでも「試合はホーム&アウェイ形式でおこなう」(ボウルゲームを除く)のが、本場米国フットボール界の常識です。

今年はA大学の地元で試合を行い、観客の9割はA大学を応援する。

来年はB大学の地元で試合を行い、観客の9割はB大学を応援する。

という事が繰り返されてきたわけです。ところが、テキサス大vsオクラホマ大対校戦に限っては、92000人収容できるコットンボウルを真っ二つに分けて、46000人ずつの熱狂的大応援団が互角の声援を送り続けるわけです。ヒートアップするのが当たり前ですね。神宮球場の早慶戦を数倍にスケールアップしたような感じで、素晴らしい伝統だなと思っています。ただし、気性の激しい南部の米国人たちが、すぐ隣にいる敵の応援団とケンカを始めるのではないか、というのがちょっと心配です。

アーミーとネイビーの定期戦が、アーミーの地元(ニューヨーク州ウエストポイント)と、ネイビーの地元(メリーランド州アナポリス)のほぼ中間にあるフィラデルフィア市内で頻繁におこなわれていますが、テキサス大vsオクラホマ大対校戦は他にはほとんど例を見ない、珍しい形式の試合であることを知っておいてください。

両校の対校戦をおこなっているコットンボウル会場 出典:Wikipedia

ちょっと上の写真を見てください。コットンボウルでの対校戦試合場風景です。

スタジアムの上半分が紫色っぽく見え、下半分が赤茶色っぽく見えることに気が付いていただけるでしょうか?50ヤードラインを境界線として、上半分をオクラホマ大応援団(濃いえんじ色)が占め、下半分をテキサス大応援団(赤茶色)が占めているのでこのように見えます。両校のスクールカラーが似ているので違いがあまり鮮明ではありません。ミシガン大(紺と黄)vsオハイオ州立大(赤)のように対照的な色ならば、すごく綺麗にスタジアムが二分されたでしょうね。

テキサス州とオクラホマ州、そして赤い河の地図 出典:Wikipedia

両校の定期戦は、昔「Red River Shootout(赤い河を挟んだ撃ち合い)」と呼ばれていましたが、さすがに銃の撃ち合いでは、今時まずいということになって、現在は「Red River Showdown(赤い河の対決)」と呼ばれています。

上の地図において、①オクラホマ州ノーマン ②テキサス州オースチン ③テキサス州ダラス市コットンボウル会場 を示します。コットンボウルが両校キャンパスのちょうど中間にあることがおわかりいただけますね。ノーマンとダラスの間の線がオクラホマ州とテキサス州の州境ですが、州境が直線ではなくギザギザになっている部分がRed River(赤い河)です。2つの州を隔てているのが赤い河なのです。

映画ファンならば、かつて「赤い河」(主演ジョン・ウェイン)という西部劇の名作があったことを覚えておられる方も居るでしょう。

本当に水が赤っぽく見えるRed River 出典:Wikipedia

テキサスとオクラホマは、長年にわたり血みどろの死闘を繰り返してきました。カレッジフットボールの歴史に刻まれるような名勝負がたくさんありますが、数多いYou Tube画像の中から、2018年と2021年の試合のダイジェスト版を選りすぐってご紹介します。プレーだけではなく、後ろに映るファン達の熱狂ぶりも是非お楽しみください。どちらが勝ったかは書かないでおきますね。

<2018年>18分

The Greatest Red River Showdown EVER 💯 A Game to Remember (youtube.com)

<2021年>16分

#6 Oklahoma vs #21 Texas Highlights (GAME OF THE YEAR!?) | Week 6 | 2021 College Football Highlights (youtube.com)

次号以降では、今回書ききれなかった「テキサス州とオクラホマ州の歴史」について触れてみたいと思います。どうぞご期待ください!

「清水利彦のアメフト名言・迷言集」

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