【清水利彦コラム】ボウルゲームに腹を立てる2つの理由+全米王座速報2022.1.14

清水利彦(S52卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

読者の皆様、本年もよろしくお願い申し上げます。

この原稿は1月10日に書いておりますが、「1月11日全米カレッジ王座決定戦」、「1月13日Unicorns Net新年号配信」というスケジュールですので、「まだカレッジ王座の行方を知らずに書いているが、配信される時には、読者は結果をご存じ」という複雑な状況であることをご承知ください。

ボウルゲームの中で最も注目すべき、王座決定戦準決勝の結果は次の通りでした。

<コットンボウル> アラバマ大 27 – 6 シンシナチ大

シンシナチ大の王座初挑戦がみどころの試合でしたが、点差以上に両校の実力差があったように感じます。相撲で言えば、「横綱が小結との試合に、一番安全な戦い方をして勝った。がっぷり四つに組んで、小結の仕掛けを許さず、小結が消耗するのを見届けてから、堂々と横綱が寄り切った」というところでしょうか。悔しいけれどもアラバマ大の強さが際立った試合でした。

<オレンジボウル> ジョージア大 34 – 11 ミシガン大

BIG TENリーグの優勝校(ミシガン)対SECリーグの2位校(ジョージア)という組み合わせで、好試合を期待しましたが、ジョージア大の圧勝に終わりました。SECが強すぎる、リーグの実力差がこんなにもあるのかと、愕然とされた方も多かったのではないでしょうか。

これにより全米王座はアラバマ大vsジョージア大というSEC同士の組み合わせとなりました。この両校は昨年12月4日、SEC優勝決定戦で対戦しており、アラバマ大が41-24で勝っています。わずか38日後の再戦となるわけで、関学vs立命と同様に、いささか新鮮味に欠ける決勝カードとなりました。過去12年間で6回全米チャンピオンとなっているアラバマ大と、41年ぶり2回目の王座に挑むジョージア大の対戦であり、判官びいきの筆者がどちらを応援しているかは明らかなのですが、「清水が応援するチームはコロコロ負ける」という伝統もあり、公表は避けておきます。

<この他に筆者が注目したボウルゲーム> セントラルフロリダ大 29 – 17 フロリダ大

2008年から開始された、Union Home Mortgage Gasparilla Bowl というワケのわからない名前のマイナーボウルですが、この結果には驚きました。フロリダ大はSECリーグの古参伝統校であり、過去3回全米王座に輝いている強豪中の強豪です。今年は6勝6敗と低迷したとは言え、アラバマ大に29-31と善戦惜敗するなど相当高い実力レベルにあります。

一方、新興American Athletic Conferenceに所属するセントラルフロリダ大(UCF)は1996年の創部で、わずか26年の歴史しかありません。(ユニコーンズの3分の1以下)最近10年くらいで次第に実力を上げており、今年は8勝4敗でしたが、同じリーグのシンシナチ大には21-56と惨敗したため、さほど高く評価されていませんでした。フロリダ大にも過去2回対戦し完敗しています。そのUCFが初めて格上フロリダ大を下したことになります。今回の勝利が同校の歴史の流れを変える契機となりそうです。

UCFは大学の創設も1963年と新しい学校です。私自身この大学を全然知らなかったのですが、テキサスA&M大について調べていた時に、「A&Mの学生数は69000人で全米第2位。1位はUCFの71000名」と知って大変驚きました。全米最大の学生数を誇るマンモス大学だったのです。もともとはフロリダ工科大という学校名で、米国の宇宙開発計画に人材を送り込む大学として知られていました。
大学自体が急速に成長・発展しており、おそらくフットボール部も豊富な資金にものを言わせて、戦略的な強化を図っているものと思います。2023年にはUCFがシンシナチ大とともに、パワー5のBig12リーグに加盟することが決まっており、今後UCFが益々メジャーなフットボール部となってゆくことが予想されます。UCFという略称を是非覚えておいてください。

UCFのキャンパス風景 医学部校舎 出典:Wikipedia

<全米カレッジ・ボウルゲームに腹を立てる2つの理由>

新年早々からプリプリ怒っていてはいけないのですが、なんとも腹の虫が収まらない事が二つあり、述べさせていただきます。

①「ボウルゲームの数が多すぎる!!」

今シーズンは予定されていたボウルゲームの試合数が43でした。(大学王座決定戦を含まない)そのうち5試合はコロナ禍のため中止されましたが、当初の予定では86チームがボウルゲームに出場出来たわけです。全米一部校(NCAA Division Ⅰ-A)は全部で130校しかないにもかかわらずです。筆者が大学を卒業した1977年にはボウルゲームが全部で11試合しかありませんでした。また、2000年以降だけでも16試合増えています。

今年、勝ち越せていないチーム(6勝6敗か、それ以下)がボウルゲームに招かれたケースが23あり、ボウルゲームに負けて結果的に負け越しのシーズンとなったチームが13あります。ボウル出場校のレベルがひどく下がっているのです。

ラトガース大に至っては、5勝7敗の戦績でゲーターボウルに招かれ、案の定、惨敗して(10-38ウエイクフォレスト大)5勝8敗のシーズンを終えました。これで「我々は今年、ボウルゲームに出場できた」と誇りをもって言えるのでしょうか?あまりにもボウルゲームを粗製濫造しているため、このような事態が起こっている、と私は見ています。

私が大好きなコーチ、ウディ・ヘイズはオハイオ州立大を28年間率いて、26シーズンに勝ち越しの成績を残しました。それなのに、ボウルゲームに出場したのは11回だけです。なぜなら、「BIG TENで優勝するとローズボウルに出場できるが、2位以下のチームはどのボウルゲームにも出場しない」というリーグのルールでやっていた時期が長かったためです。昔はボウルゲーム出場回数が、名コーチの勲章でしたが、今はほとんど意味を持たない記録になってしまいました。

一部校には10個のリーグがありますから、ボウルゲームも最大15試合程度に制限するべきと私は主張します。(それでも各リーグの3位まで出場できます)それならば、ボウルゲーム出場が名誉なことと胸を張って言えるでしょう。ところが実際は43試合あるのです!!

②「ボウルゲームにヘンテコな名称を付けるな!!」

今季、ノースカロライナ大とサウスカロライナ大は、Duke’s Mayo Bowl に出場しました。「メイヨー・ボウルって何だ?」と不思議に思っていましたが、この試合の動画を見ると、フィールドに「Duke’s Mayonnaise」と大きくペイントされていたのでわかりました。「デューク印のマヨネーズ」を売っている会社がスポンサーであり、メイヨー・ボウルではなく「マヨ・ボウル」だったのです。なんだかポテト・サラダのような名前だなと思いました。

デュークのマヨネーズ 出典:Wikipedia

Guaranteed Rate Bowl (ミネソタ大18-6ウエストバージニア大)は「金利確定保証ボウル」と訳せば良いのでしょうか?住宅資金融資の会社がスポンサーですが、なんともフットボールにそぐわないトロい大会名称です。ミネソタ大の選手が20年後、自分の息子に「パパは大学4年のとき、金利確定保証ボウルに出場して勝ったんだぞ!」と自慢しても、ちっともカッコ良くないですよね。Famous Idaho Potato Bowl は名前が可愛いので許せますが、「田舎者しか招待されないボウルゲーム」というイメージがあります。(ワイオミング大52-38ケント州立大)
先ほど出ましたUnion Home Mortgage Gasparilla Bowlも名前が長すぎて絶対覚えられないし、ワケがわかりませんね。
おそらく今は、スポンサーが金さえ出せばボウルゲームに好きな名称を付けられるのでしょう。広告宣伝のためにやっているので、スポンサーがコロコロ変わり、ボウルゲームの名称もコロコロ変わります。商業第一主義に走らず、もっとフットボール試合のワクワク感を増すようなネーミングを考えてもらいたいものです。「ボウルゲームと言えば、ローズ・コットン・シュガー・オレンジの四大ボウル」であった時代が懐かしいです!

「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
https://footballquotes.fc2.net/
「今週の名言・迷言」を木曜日ごとに更新しています
掲載作品数が1400を超えました!


<カレッジ王座決定戦速報!>

王座決定戦の結果が先ほど決まり、Unicorns Netコラム原稿の締め切りにギリギリで間に合いました。

ジョージア大 0 6 7 20|33 ※41年ぶり2回目の全米チャンピオン
アラバマ大  3 6 0  9|18

最後は点差が開きましたが、第4Q残り4分まで1点差(G19-18A)という接戦でした。過去20年間に11回、全米ランク10位以内に入っていたのに、どうしてもあと一勝ができず、涙をのみつづけていたジョージア大に、ついに勝利の女神が微笑みました。

41年前、1980年シーズンのジョージア大は、ヘッドコーチがビンス・ドーリー。1年生で彗星のごとく登場したRBハーシェル・ウォーカーが1616ヤード獲得という大活躍を見せました。シュガーボウルでノートルダム大を17-10で破り、シーズン全勝で初の栄冠を手にしています。

ハーシェル・ウォーカーのプレーにご興味がある方は、You Tubeで「Herschel Walker Career NFL Highlights」と検索してみて下さい。

筆者は特にジョージア大ファンというわけではありませんが、41年間チャンピオンの座を待ち続けた人たちが涙を流して抱き合う姿を見るだけでウルウルきます。自分もいつかはこのような経験をしたいと心から願っています。