【清水利彦コラム】「今期、慶應2勝4敗」に想う 2023.11.23

清水 利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

「今期、慶應2勝4敗」に想う

11月12日の東大戦をオンライン放送で観戦しました。快勝、そして入れ替え戦回避という嬉しいニュースでしたが、この勝利によりユニコーンズの今シーズンは終わってしまいました。

皮肉にもTOP8、BIG8の計17校(今年は特別措置で、TOP8は7校、BIG8は10校で実施)の中で、慶應が一番早くシーズン終了となってしまったわけです。これは日大戦の中止によって最終戦がなくなってしまったことによるものです。

部員諸君も、指導陣も、あと1試合をさぞかしやりたかっただろうと思います。「もう1試合あれば、これまで出番の少なかった最上級生達に、思い切りプレーをさせてやれたのに・・・」等々という思いをお持ちの方は多かったはずです。

「最上級生(4年生)が今、どのような思いをしているか」については、現役のホームページ
慶應義塾体育会アメリカンフットボール部 ニュース (keiouniv-unicorns.com)
の中に、「4年生引退企画 ラストシーズンに懸ける想い」というタイトルで4年生全員が寄稿してくれていますので、是非読んであげてください。(東大戦の前の時点で書かれています)

この中では、やはり主将・DL鎌田泰成君の文章を読んで、万感こみ上げるものがあります。また個人的にはDB宗國元君、OL工藤輝紀君、SC飯塚仁君のコメントに感情移入する部分がありました。皆、真剣に書いてくれています。

今期の(一部リーグで)2勝4敗という戦績は、ユニコーンズの歴史から見ても決して良いものではありません。

しかしながら、戦績ではなく「今年の4年生が、この一年間に経験したこと」を基準に述べるならば、「彼らにとって、これからの人生に必ず活かせる、本当に貴重な素晴らしい経験をした一年間であった。」と、私は自信を持って申し上げます。

今年は春(4月16日)の部則違反により、4年生を中心として20名近い退部者を出すという事態に見舞われました。退部者の中にはチームの中心としてこれまで活躍していた多くの選手が含まれていました。そのため部は次の3つの難題を抱え込んだのだろうと想像します。

  • 多くの主力4年生部員の退部により、4年生同期内での分裂・崩壊の危機
  • 主力選手(特にオフェンス・バックフィールド)を多く失ったことにより、経験の浅い下級生選手多数を早急に試合で起用するレベルに引き上げねばならない緊急事態
  • このような非常事態を抱えながら、7月末日までは部活動を行う事さえ出来ず、8月1日から急ごしらえのチームを仕立てて、9月3日の初戦(0-17早大)以降に臨まなければならなかったという準備不足

まさに八方塞がりの中での今期2勝4敗だったわけです。逆境の中でもがき苦しみ、やっと二つ勝利したわけですが、このもがき苦しんだ経験は4年生達の今後の人生で、必ず糧として役立つと私は考えています。この経験が、残った者たちを大きく成長させたであろうと思うのです。

4年生達のコメントにより、「この春(事件前)、中央大学と練習試合をやって、ボコボコにやられている」ことを私は初めて知りました。春ボコボコに負けた相手に、大量の退部者を出しながら、「首の皮一枚残して耐え抜いた勝利」を秋に挙げたわけです。

写真提供:宗國修治

2021年のユニコーンズ・イヤーブックを見ますと、当時の2年生(つまり今年の4年生)は45名が登録されています。現在の4年生部員は18名です。差し引き27名が部則違反を含めた何らかの理由で退部していったものと見ています。

2勝4敗の戦績を誉めるつもりはありませんが、最後まで部に残った18名に対し、部員として卒業してゆくことを祝福し、彼らの社会人生活のスタートに精一杯の激励を送ってやりたいと心の底から思っています。

18名の4年生部員の氏名を列記します。(データは現役HPより)

<選手部員9名>鎌田泰成、告野諒、赤木陽太、工藤輝紀、壷井耀英、松尾修輔、松本幸大、宗國元、吉元漱

<非選手部員9名>岸本拓巳(学生コーチ)、成木晴哉(学生コーチ)、上野拳聖(マネージャー)、鈴木一平(マネージャー)、飯塚仁(ストレングスコーチ)、唐金卓郎(ストレングスコーチ)、四手慎太郎(高校コーチ)、松田翔(高校コーチ)、菊池睦海(高校コーチ)

不祥事が発生するパターン

さて、話は変わりますが、ユニコーンズにはこの数年来幾度も不祥事が発生し、そのたびにチーム力を大きく低下させています。過去にあった問題発生パターンとして、私は次のようなものがあったと認識しています。

「ほっと一安心パターン」 つらい状況、難しい状況をなんとか克服し、危機を脱出して、気持ちがすっと緩んだ時に問題が発生する。

逆境の真っ只中に居て、もがき苦しんでいるときには問題は発生していないのです。

もし私の観察が当たっているとしたら、現在はまさに「ほっと一安心パターン」の状態であり、問題が発生しやすい状況であると心配しています。指導陣と部員諸君は、そのことを肝に銘じ、気を引き締めてシーズンオフを過ごしていただきたいと願います。

4年生諸君は納会などを経て「自分たちは既に部を卒業した」と感じるかもしれませんが、世間の眼からしますと、「2024年3月31日までは、4年生も現役部員として見做す」という考え方が一般的だろうと思います。どうかそのことを忘れず、今後の行動を戒めていただきたいと願います。

「本年度に起こった良いこと」を挙げるとしたら、「部に残った4年生達の結束」に加え、次の点であろうと感じています。

上級生に退部者が出たため、今期は多数の下級生部員が試合で起用されることを余儀なくされました。本来ならば今年ずっとベンチを温めていたであろう下級生達が、たくさんフィールドに登場し、最初は痛い目にあいながらも経験を積み、シーズン後半には様々な活躍を見せてくれました。例年よりもずっと経験値を積み重ねた若いメンバーで、来シーズンを迎えることが出来ると受け止めております。

前田監督・筒井ヘッドコーチ以下、指導陣の平素のご尽力に感謝し、私は来期以降もユニコーンズに対して期待し、精一杯の応援を続けることを約束する次第です。

最後になりましたが、本年度、田中謙二部長先生と薮内直樹三田会会長(いずれも当時)が退任されました。お二人は不祥事発生後、部の存続のため、部活動の再開のため、血の滲むようなご努力をいただいたと聞き及んでいます。

心から、心の底から、感謝をいたしております。本当に、本当に有難うございました。


「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
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