NEWS – University

【秋リーグ戦】vs中央大学

11月9日(日)慶応大―中央大@横浜スタジアム
    
       1Q	2Q	  3Q	  4Q	   TOTAL
慶応大学	7      7	 10	   0	   24
中央大学	3        7        0      7      17

【得点経過】
1Q8:23 中央 K#95 29yd FG成功 <K0-3C>
1Q10:26 慶應 #18(QB4年高木翼)→#19(WR2年田邊) 15yd Pass
     TFP成功(K#15 2年手塚) <K7-3C>
2Q3:35 中央 #12→#11(15yd Pass)TFP成功(K#95) <K7-10C>
2Q7:23 慶應 #29(RB2年李) 2yd Run TFP成功(K#15 手塚) <K14-10C>
3Q2:16 慶應 K#15(手塚) 29yd FG成功 <K17-10C>
3Q6:56 慶應 #18(QB高木翼)→#19(WR田邊) 26yd Pass
     TFP成功(K#15 手塚) <K24-10C>
4Q0:06 中央 #12→#3(1yd Pass)TFP成功(K#95) <K24-17C>


【STARTING MEMBER】
Offense
RT#75 鶴長 伸之(4年)
RG#78 小野島 洋輝(2年)
C#77  浅原 宏太郎(2年)
LG#51 清野 武尊(3年)
LT#71 高瀬 智正(3年)
QB#18 高木 翼(4年)
TE#88 岩澤 忠尚(4年)
WR#7  志水 秀彰(4年)
WR#19 田邊 翔一(2年)
WR#86 柴田 源太(1年)
RB#1  高木 康貴(4年)
K#15  手塚 太陽(2年)

Defense
DL#90 金子 陽亮(3年)
DL#97 長塚 大(2年)
DL#99 望月 洸(4年)
LB#4  工藤 勇輝(1年)
LB#26 松下 慶太郎(4年)
LB#54 ライト 太一(4年)
LB#56 江川 輝(4年)
DB#1  兵頭 宣俊(2年)
DB#6  大倉 夏輝(4年)
DB#9  三津谷 郁磨(4年)
DB#13 杉山 慶(2年)
P#10  弘世 頌一朗(2年)


【戦評】
関東TOP8の第6節で、慶応大が中央大と対戦し、慶大が24―17で勝った。
慶大のリーグ戦成績は4勝2敗となり、早大と並んで3位につけている。
慶大は最終節で早大と対戦。この試合に勝てば3位、負ければ4位で今シーズン
を終える。

慶応のキックオフで試合開始。前節の日体大戦同様に守備が好調な立ち上がりで、
中大オフェンスをパントに追い込む。慶応の攻撃は#18QB高木翼のパスで
ゴール前に迫るが、中大のLBにインターセプトされて自陣まで返される。この
ピントを守備がFGでしのぐが、中大に3点を先制される。

続く慶応オフェンスは高木のパスが好調。最後は#19WR田邊にTDパスを
通して逆転する。第2Qには両チームがTD1本ずつを決めて、14―10で
前半を折り返す。

後半に入ると、慶応は#15K手塚のFGで3点を追加、さらに高木から田邊へ
この日2本目のTDパスが決まり、中大を突き放す。追いすがる中大は粘り強く
ドライブすると、4Q開始早々にTDパスを決めて1本差に迫る。

ここから慶応はラン主体の攻撃に切り替えるが、中大ディフェンスがこれをシャッ
トアウト。#44LB菅原ら慶応守備も粘ってパントの応酬が続く。中大はツー
ミニッツオフェンスでレッドゾーンに迫るが、最後はゴール前1ヤードでタイム
アップ。慶応が接戦を制して4勝目をあげた。


■エースの条件
#19WR田邊が帰ってきた。2つのTDパスをキャッチするなど、勝利に大き
く貢献した。2本ともが縦のロングパスで、DBを置き去りにして決めたものだ。

決勝点となった3QのTDパスを振り返ってみたい。敵陣26ヤードまで攻め込
んだ慶応オフェンス。ここでQB高木はケイダンス(セット、ハット、ハットと
言ってプレーを始めようとする)により、中大守備がブリッツを入れることを察
知する。WRが1対1になることが分かると、すぐに作戦を変更して、田邊にT
Dパスを通した。

この素早いオーディブルには高木の田邊への信頼が見て取れる。「1対1できっ
と勝ってくれるだろう」。こういうWRがいると、QBは自信を持ってプレーを
組み立てられるし、思い切って奥に投げ込める。つまり、このTDパスは田邊の
スピードと春から積み上げてきた勝負強さによる信頼が生んだのだ。彼は高校で
はフットボール未経験の2年生だが、既にエースWRの条件を兼ね備えている。


■ディフェンスの驚異的な粘り
14点差がついた3Q終盤、中大オフェンスがゴール前に迫る。何としても
TDを決めたい中大は、ランで押し切ろうとする。ゴール前1ヤードの攻防を
慶応ディフェンスは5プレー連続で制し、最後は6プレー目に中大がプレー
アクションパスでTDを決めた。

中大OLと慶応の守備フロントにそれほど力の差があるわけではない。守備全員
が一丸となって、気迫で止めたという感じだった。1ヤードの状況を何回も連続
で止めるということは、簡単ではない。最後はフェイクパスを決められたが、
中大のオフェンスコーディネーターに「ランではTDを取れそうもないな」とあ
きらめさせたということだ。この場面での守備の気迫と集中力は賞賛に値するだ
ろう。

この日のオフェンスは高木が2つのインターセプトを奪われたのをはじめとして、
決して調子が良くなかった。特に7点差に迫られた4Qは、2連続で3rdアウト
となるなど、守備に負担がかかった。この日活躍した2年生の#97DL長塚を
筆頭に、若いディフェンス陣がこの試合を最後まで守りきったのは、大きな自信
につながったのではないか。


■見たかった「幻のラストプレー」
最後まで守りきったと書いたが、実を言うと最後は少し消化不良でゲームセット
となっている。

試合時間残り14秒。7点差を追う中大オフェンスは、第4ダウンのギャンブル
を3回成功させて、ゴール前19ヤードまで前進した。ここでハドルを組んでい
る最中に時計が動き出す。中大は残り1秒でかろうじてプレーを開始したが、
ポストパターンのパスをキャッチしたWRを、慶応のSFがゴール前1ヤードで
タックルして、試合が終わった。

なぜこのような事態が起きたのか。中大は直前のプレーがアウトオブバーンズだ
と思ったのだ。だから、ゆっくりとハドルを組んでいた。審判の判定はインバー
ンズで、レディ・フォー・プレーの合図と共に時計が動き出して、ラストプレー
トなった。試合終了後に中大は審判の出したシグナルについて抗議をしたが、判
定はくつがえらなかった。

つまり、中大は最低でもあと2回はプレーできると考えていたのだ。結果的にラ
ストプレーとなったサインは、必ずしもTDを狙ったものではない。中大のQB
はロングパスの精度は低かったが、ミドルパスを必死につないでドライブしてきた。
何度もギャンブルをクリアした勢いがあった。このモメンタムをつかんだオフェ
ンスに対して、慶応の若い守備陣が守りきることができるのかをとても興味深く
見守っていた。中大がゴール前1ヤードでファーストダウンをとって、スパイク。
本来はあるはずだった最後の勝負のプレーの行方を見てみたかった。勝負の世界
に「たられば」は禁物だが、そんなことを考えた。

【秋リーグ戦】vs日本体育大学

10月26日(日)慶應大―日体大@アミノ

1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
慶應大学 21 14 14 0 49
日本体育大学 0 0 0 9 9

【得点経過】
1Q 4:11慶應#18(QB4年高木翼)→#7(WR4年志水) 5yd Pass
TFP成功(K#15手塚)<K7-0N>
1Q7:42慶應#18(QB高木翼)21yd Run TFP成功(K#15手塚)<K14-0N>
1Q11:16慶應#6(RB3年田中英)34yd Run TFP成功(K#15手塚)<K21-0N>
2Q11:17慶應#18(QB高木翼)→#23(WR4年畑)8yd Pass
TFP成功(K#15手塚)<K28-0N>
2Q11:48慶應#18(QB高木翼)→#16(WR3年坂本健)4yd Pass
TFP成功(K#15手塚)<K35-0N>
3Q2:51慶應#29(RB2年李)28yd Run TFP成功(K#15手塚)<K42-0N>
3Q11:37慶應#29(RB李)31yd Run TFP成功(K#15手塚)<K49-0N>
4Q10:06日体SAFETY<K49-2N>
4Q11:43日体#16→#19(8yd Pass)TFP成功(K#12)<K49-9N>

【STARTING MEMBER】
Offense
RT#75    鶴長 伸之(4年)
RG#78   小野島 洋輝(2年)
C#77       浅原 宏太郎(2年)
LG#51    清野 武尊(3年)
LT#71     高瀬 智正(3年)
QB#18    高木 翼(4年)
TE#88    岩澤 忠尚(4年)
WR#17   姜 勝大(3年)
WR#81   八木 雄平(3年)
WR#86  柴田 源太(1年)
RB#1      髙木 康貴(4年)
K#15   手塚 太陽(2年)

Defense
DL#53  萩原 周平(1年)
DL#95  佐藤 寛哲(2年)
DL#97  長塚 大(2年)
LB#26  松下 慶太郎(4年)
LB#50  染矢 優生(1年)
LB#54     ライト 太一(4年)
LB#56  江川 輝(4年)
DB#1    兵頭 宣俊(2年)
DB#21  金野 雄一郎(3年)
DB#22    松崎 泰光(3年)
DB#24    吉村 奬太(3年)
P#10     弘世 頌一朗(2年)

【戦評】
関東TOP8の第5節で、慶応大が日体大と対戦し、49―9で勝った。これで
慶大のリーグ戦成績は3勝2敗となり、早大と並んで3位につけている。

慶応のキックオフで試合開始。慶応ディフェンスは日体大の最初の攻撃を3つで
パントに追い込むと、オフェンスは#18QB高木翼が確実にパスを決めて前進
する。最後は#7WR志水にアクロスパターンのパスを決めて先制。

その後、ディフェンスはこの日初めてスターターに起用されたスピード派の
1年生DL萩原らフロントがプレッシャーをかけ続け、4シリーズ連続で
ファーストダウン更新を許さない。

オフェンスも#29李、#1高木康、#6田中の3人のRBが走りまくって、
TDを重ねる。高木は1Qに投じた11本のパスを全て成功させる完璧な立ち上
がりを見せる。

その後は不用意なパスをインターセプトされる場面があったが、3Qまでは攻守
共にほぼ完璧な出来で49―0と大量リードを奪う。4Q終盤にオフェンスのミ
スからセーフティーで2点を献上。試合終了間際にもTDを許して、最後はやや
後味の悪い展開になったが、49―9の大勝で3勝目をあげた。

■途切れなかった集中力
法政と日大に敗れて、甲子園ボウルへの道が絶たれたユニコーンズ。モチベーショ
ンが心配される試合だったが、選手たちは最高の集中力を見せてくれた。

まずディフェンスについて、日体大の攻撃で最も警戒すべきは#16QB辻の
オプションだった。法政、日大相手にもかなりゲインを奪い、TDランも決めて
いる。しかし、法政相手に既にオプション対策を実行している慶応ディフェンス
は、これをきっちり止める。DLが押し込み、#54LBライトをはじめとした
LB陣が次々にタックルを決める。#1DB兵頭の上がりも素晴らしかった。兵
頭はこの試合インターセプトも決めるなど、ボールへの嗅覚も鋭い。まだ2年生
だがこれから守備の中心選手になっていくだろう。前回ご紹介した#4工藤と#
50染矢の1年生LBコンビに加えて、慶応高校でベストアスリートとして活躍
したルーキーのDL萩原も上々のデビューを果たした。萩原については、「太り
にくい体質だから、大学ではDBをやったらいいんじゃないか」と言う高校コーチ
がいた。DBとしてもプレーできるほどのスピードを持ったDLなのだ。彼の今
後の成長に期待したい。

この日のディフェンスは終了間際にTDを決められたこと以外は、完璧な出来だった。
交代選手も自分の役割をしっかり果たして、層の厚さも見せた。各ポジションで
若手が多く活躍していることからも、ディフェンスの未来は明るいだろう。

■不安残る「ポスト翼」
4Q、ディフェンスがゴール前1ヤードで日体大の決死のギャンブルを阻止して、
完封をキープした。続くオフェンスは#18QB高木翼に代わって、3年生の#
4江守が出場。そのファーストプレーでエクスチェンジミスが起こり、セーフティー
の2点を献上することになった。

この時のスコアは49―0。試合は既に決まっている。しかし、もしも接戦であ
れば、このミスはきっと致命的なものになっていただろう。フットボールはオフェ
ンスとディフェンスの信頼関係で成り立っている。この日初めて迎えたゴール前
のピンチを、ディフェンスが必死に凌いだ。オフェンスとしてはこの奮闘に応えて、
最低でもパントはきっちり蹴らなければならない場面だ。しかし、結果は1プレー
目でミスによるセーフティー。最悪の結果だ。この後、終了間際にTDを奪われ
たが、これはオフェンスのミスがもたらしたと言っても過言ではないだろう。

このエクスチェンジミスが誰のせいなのか分からないし、そこは重要ではない。
問題は今年のチームは春からずっと、QB高木が抜けた瞬間に全く別のチームに
なってしまうということだ。ランが出ない、パスが決まらないのはしょうがない。
それよりも、ファンブルをはじめとした初歩的なミスを犯して、自滅する光景が
続いている。今年のチームは高木という学生界トップレベルのQBがいて、彼の
能力で局面を打開してきたことも多い。一からチームを作り直す来季、自分たち
を見つめ直して大きく成長しなければ、再び甲子園を狙えるチームはできないだ
ろう。

■ロスを突破さえすれば
法政戦、日大戦と完璧に封じられたRBの李。彼はここまで5試合で360ヤード
を稼いでいるが、そのほとんどは立教戦と日体大戦で走ったものだ。明治、法政、
日大相手にはほぼ完封されている。日大戦のゲームリポートで「李は壁に向かって
ぶつかり続けた」という表現をした。つまり、どんなにRBが素晴らしくても、OL
が走路を切り開いて、ロスを突破させなければその走力は生かされないのだ。残念
ながら法政、日大相手にはそれができなかった。

この日は違った。彼は一度ロスを抜けることさえできれば、素晴らしい走りがで
きるランナーであることを再び証明した。40ヤード4秒4の快足を生かして、
ロングゲインを連発する。1対1では負けないし、当たりにも強い。何より、ボール
セキュリティーがしっかりしているところが、RBとして最も信頼できる理由だろう。

先週末の関東高校大会、早慶戦を見ていて、明るい兆しを感じた。慶応高校のO
Lがかなりサイズアップしているのだ。結果として試合には僅差で負けてしまっ
たが、力強いブロックを連発して、ランナーの走路を切り開いていた。
彼らが大学に入ってさらに成長してくれれば、エースの李を生かす力強いランオ
フェンスが出来上がる。そう思った。(共同通信社 松元竜太郎・平成17年度
卒)

【秋リーグ戦】vs日本大学

10月11日(土)慶應大―日本大@アミノ

1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
慶應大学 14 14 14 21 63
日本大学 0 7 0 13 20

【得点経過】
1Q4:11日大#18→#22(7yd Pass)TFP成功(K#11)<K0-7N>
1Q11:46日大#34(1yd Run)TFP成功(K#11)<K0-14N>
2Q3:06慶應#18(QB4年高木翼)→#7(WR4年志水)11yd Pass
TFP成功(K#15 2年手塚)<K7-14N>
2Q5 :39日大#46(2yd Run)TFP成功(K#11)<K7-21N>
2Q7:01日大#18→#22(13yd Pass)TFP成功(K#11)<K7-28N>
3Q4:29日大#18→#89(24yd Pass)TFP成功(K#11)<K7-35N>
3Q8:57日大#18→#89(5yd Pass)TFP成功(K#11)<K7-42N>
4Q2:03日大#10→#11(16yd Pass)TFP成功(K#88)<K7-49N>
4Q5:04日大#10→#11(2yd Pass)TFP成功(K#88)<K7-56N>
4Q6:08慶應#18(QB高木翼)→#84(WR3年寺園)15yd Pass
TFP成功(K#15 手塚)<K14-56N>
4Q9:40日大#10→#87(12yd Pass)TFP成功(K#88)<K14-63N>
4Q12:00慶應#18(QB高木翼)→#19(WR2年田邊)14yd Pass<K20-63>

【STARTING MEMBER】
Offense
RT#75    鶴長 伸之(4年)
RG#78   小野島 洋輝(2年)
C#77    浅原 宏太郎(2年)
LG#51    清野 武尊(3年)
LT#71     高瀬 智正(3年)
QB#18    高木 翼(4年)
TE#88    岩澤 忠尚(4年)
WR#7     志水 秀彰(4年)
WR#19   田邊 翔一(2年)
WR#86  柴田 源太(1年)
RB#1       髙木 康貴(4年)
K#15       手塚 太陽(2年)

Defense
DL#69  岸 佑亮(1年)
DL#95  佐藤 寛哲(2年)
DL#97  長塚 大(2年)
DL#99  望月 洸(4年)
LB#4    工藤 勇輝(1年)
LB#26  松下 慶太郎(4年)
LB#54     ライト 太一(4年)
DB#1    兵頭 宣俊(2年)
DB#9    三津谷 郁磨(4年)
DB#22     松崎 泰光(3年)
DB#24  吉村 奬太(3年)
P#10      弘世 頌一朗(2年)

【戦評】
関東TOP8の第4節で、慶応大が日本大と対戦し、20―63で敗れた。この
結果、優勝候補は全勝を守っている日大と法大に絞られ、2勝2敗となった慶大
が優勝する可能性はなくなった。

日大のキックオフで試合開始。反則により慶応は敵陣からの攻撃開始となるが、
日大守備の出足が鋭くパントに追い込まれる。続く日大オフェンスは最初のプレー
でQB高橋からWR岩松へのロングパスが成功。その後も順調にドライブして、
最後も岩松へのパスでTDを決める。

1Q終盤に追加点を奪われ0―14となった慶応は、2Qに反撃開始。この日も
ランが全くでない状況が続くが、#18QB高木翼が次々にパスを決め、最後は
エンドゾーン右隅に投げ込んだパスを#7WR志水がダイビングキャッチ。1T
D差に迫る。

しかし、守備に立ち直る気配がない。オフェンスが自陣でインターセプトを決め
られたこともあり、2TDを追加され28―7となる。前半終了間際にゴール前
まで前進した慶応オフェンスは、第4ダウン8ヤードの状況で早くも勝負のギャン
ブルに出る。しかし、このプレーがゴール前1ヤードで止められて前半終了。

後半になっても流れは変わらず、日大オフェンスは次々に得点を重ねる。結局ディ
フェンスは9シリーズで9TDを奪われた。オフェンスも日大の堅守に攻めあぐ
み、日大守備が2本目に後退した4Q終盤に2TDを返すのがやっとだった。

■攻守に完敗
完敗。それ以外の言葉が出てこない。負け試合ではたいてい、「あそこでこうし
ていれば」とか、「なんであんな戦術を使ったんだ」とか「たれらば」がつきま
とうものだが、ここまで完璧に打ち負かされると、そんな感情は一切沸いてこな
い。

選手やコーチが日大戦に向けてどのような見通しで臨んだのかは知らないが、私
は法政戦以上にいい試合ができると考えていた。現に試合前の見どころでは、慶
応のランはある程度出る、守備も終盤までは十分に持ちこたえられると書いてい
た。

その見通しは完全に甘かった。ランは13回でー5ヤード。守備も全シリーズで
TDを奪われ、大量63点を失った。敗因は何だったのか。ビデオを分析したわ
けではないので細かいことは分からないが、最大の理由は「1対1の勝負」に勝
てなかったことだ。そして、これはスタントHCが日頃から選手たちに言い続け
てきたことでもある。

まず、攻守のライン戦が完敗だった。オフェンスラインは法政戦と同様にロスを
コントロールされ、#29RB李は、常に壁に向かってぶつかり続けるしかなかっ
た。パスプロテクションはかなりがんばっていたが、前半ラストのパスなど、勝
負どころのプレーであと一歩のふんばりが足りなかった。

守備ラインも同様だ。この日は4-3(4DL・3LB)体型で臨んだたが、ラン
をずるずると出されて、パスでもほとんどプレッシャーをかけられなかった。

実はこの日のLBは想定できる最高の布陣だったと思う。法政戦で1対1の状況
でキャリアーをタックルし続けた、#54ライトを常にランが展開されやすいス
トロングサイドに置き、WRが多いサイドにはこの日が復帰戦となった元DBの
#26松下慶太郎を配置した。日大のパスを守る上で、彼以上の適任者はいない。
中央にはスピードのある1年生の#4工藤と#50染矢がローテーションで出場した。

しかし、ロスを支配されているので、ランでもパスでもLBがうまく機能しなかっ
た。スキルポジションの攻防でも日大が勝っていた。WR陣は志水を中心にQB高木
とのコンビネーションで対抗していたが、日大の#9CB森の個人技にやられた。
その証拠に、慶応が4Qに奪った2本のTDは、森に代わって出場した選手が守る
ゾーンに、次々にパスを通してドライブした結果だった。

DB陣も日大WRのスピードについていくことはできなかった。しかし、DBは
攻められるべきではないと思う。パスを通されながらも、最も警戒すべき一発T
Dはよく防いでいた。ドライブされることは分かっていたので、辛抱しながらど
こかでフロントがプレッシャーをかけて止めなければならなかったのだ。最後ま
でその光景は見られなかった。

この試合で唯一の収穫は、工藤と染矢の1年生LBコンビの活躍だろう。まず秋
からMLBの先発を務めている工藤は、まだまだ荒削りでミスも多い。しかし、
ディフェンスが勝負をかけるブリッツのサインで、ことごとくロスタックルやサッ
クを決めているのだ。この日も後半最初のドライブ、日大の第3ダウンショート
の場面で、ロスタックルを決めてFGに追い込んだ。

染矢は春にも少し紹介したが、U19日本代表に選ばれた期待のホープである。
LBとしてはサイズがないのを懸念していたのだが、高校時代と比べて一回り大
きくなっていた。さらにスピードには磨きがかかっている。4Q、日大WRのジ
ェットモーションからのランプレーに対して、ものすごい勢いでタックルに仕留
めたプレーは秀逸だった。LBというのは40ヤード走の速さより、瞬間的
に加速して、トップスピードでキャリアーに襲いかかる能力が要求される。染矢は
その能力が抜群に優れている。このまま順調に成長すれば、慶応史上に残る
ラインバッカ―になるかもしれない。残りの3試合、この二人のプレーが楽しみだ。

今季の慶応の目標であった、「日本一」への道は絶たれた。64年ぶりの甲子園
ボウル出場を期待して応援していたファンやOBの方々は、さぞがっかりしてい
ることだろう。しかし、最も悔しいのは当然ながら選手たちである。春先から本当
に厳しい練習を乗り越えてきたのだ。さらに言うと、スタントHC体制でも1年目
より2年目の今季の方がはるかに厳しくなっている。それらは全て、日本一という
目標を達成するために行ってきたのだ。その目標が途絶えてしまった。

しかし、大敗翌日の法大―早大のスタンドには、早稲田をスカウティングする慶
応の主力選手たちの姿があった。おそらくこれは強制されたものではなく、「残
りを全勝して、最後に早稲田に勝ってシーズンを終わろう」という彼らの心意気
だと思っている。期待が大きかっただけに落胆するのも仕方ないのだが、そんな選
手たちを見ていると、今季は最後まで彼らの戦いをしっかり見届けなければなら
ないと思った。(共同通信社 松元竜太郎・平成17年卒)

【秋リーグ戦】vs法政大学

9月27日(土)慶應大―法政大@アミノ

1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
慶應大学 10 0 0 13 23
法政大学 7 7 0 14 28

【得点経過】

1Q6:31慶應K#15(2年手塚)20yd FG成功<K3-0H>
1Q9:30法政#4→#86(17yd Pass)TFP成功(K#6)<K3-7H>
1Q10:21慶應#18(QB4年高木翼)→#19(WR2年田邊)72yd Pass
TFP成功(K#15 手塚)<K10-7H>
2Q 3:17法政#12(76yd Run)TFP成功(K#6)<K10-14H>
4Q 1:50法政#4→#87(22yd Pass)TFP成功(K#6)<K10-21H>
4Q5:30慶應#18(QB高木翼)→#17(WR3年姜) 6yd Pass
TFP成功(K#15 手塚)<K17-21H>
4Q10:49法政#29(12yd Run)TFP成功(K#6)<K17-28H>
4Q12:00慶應#18(QB高木翼)→#17(WR姜)11yd Pass<K23-28H>

【STARTING MEMBER】
Offense
RT#75   鶴長 伸之(4年)
RG#59  長戸 慧介(4年)
C#77      浅原 宏太郎(2年)
LG#51   清野 武尊(3年)
LT#71    高瀬 智正(3年)
QB#18   高木 翼(4年)
TE#88   岩澤 忠尚(4年)
WR#7    志水 秀彰(4年)
WR#19  田邊 翔一(2年)
WR#86  柴田 源太(1年)
RB#1      髙木 康貴(4年)
K#15   手塚 太陽(2年)

Defense
DL#93  渡辺 雄策(4年)
DL#97  長塚 大(2年)
DL#99  望月 洸(4年)
LB#4    工藤 勇輝(1年)
LB#5    志茂 雅史(3年)
LB#54     ライト 太一(4年)
LB#56  江川 輝(4年)
DB#1    兵頭 宣俊(2年)
DB#9   三津谷 郁磨(4年)
DB#22    松崎 泰光(3年)
DB#24    吉村 奬太(3年)
P#10     弘世 頌一朗(2年)

【戦評】
関東TOP8の第3節で、9月27日に慶応大が法政大と対戦し、23―28で
敗れた。ここまで2連勝中だった日大、法大、慶大、早大の「4強対決」は日大
と法大が制して、優勝争いで一歩リードした。慶大が優勝戦線に踏みとどまるた
めには、残り試合を全勝することが最低条件となる。

慶応のキックオフで試合開始。慶応はオフェンスのファーストシリーズで、#18
QB高木を中心に、パスでテンポよく前進してゴール前へ。#7WR志水へTD
を狙ったパスは惜しくも通らず、#15K手塚のFGで3点を先制する。法政に
逆転のTDを許した直後のオフェンスでは、高木から#19WR田邊にスクリー
ンパスがヒット。田邊が72ヤードを駆け抜け、再逆転に成功する。2Qに入ると、
法政のQB鈴木に独走のTDランを決められ、10―14で前半を折り返す。

後半に入ると両チームの守備が粘り、パントを蹴り合う展開が続く。4Q、法政
が多彩な攻撃でじわじわと前進し、QB近藤からWR奥津へのTDパスが決まり、
10―21と均衡が破れる。2ポゼッション差を追う慶応オフェンスは、ランを
完全に封じられ苦しいドライブが続く。高木が第4ダウンのギャンブルを含めて
勝負所で立て続けにパスを決めて、最後は#17WR姜にTDパスをヒット。6
分半を残して再び4点差に追い上げる。ここでふんばりたい守備だったが、5分
以上の時間を使われてTDを許し万事休す。慶応オフェンスは残り1分からドラ
イブを始めて、試合終了と同時に5点差に迫るTDを奪うのがやっとだった。

■最後に表れたフィジカルの差
オフェンスが苦労の末にTDをもぎとり、17―21と追い上げた直後の守備。
4Q、残り6分半。タイムアウトも2回あり、多少ドライブされても2分を残し
てオフェンスに渡してやることができれば、十分に逆転が期待できる状況だった。
実際、オフェンスはこの後わずか1分でTDを決めて見せた。しかしこの場面で
守備はずるずると前進を許し、タイムアウトを使う間もなく時間と得点を失った。

試合を見ていた方からすれば、「パスはほとんどないんだから、もっと前がかり
でランを止めろよ」と思ったことだろう。当然、サイドラインからは攻撃的な
サインが入れられているし、フィールドの選手たちも決死の覚悟でランを止めよ
うとしている。それでも止まらなかったのだ。

なぜか。理由は二つあると思っている。一つは法政が長年培った伝統のオプショ
ン攻撃だ。あの状況で法政オフェンスはこう考えていただろう。「ここで時間を
使ってドライブをしなければ、逆転される」。だから時間を消費するだけの単純
なランではなく、オプションピッチやQBランも交えた第1ダウンを更新し続け
るためのプレーコールを入れ続けた。よって、ほぼランしかないと分かっていて
も、攻撃の選択肢が多いので的を絞りづらく、止めるのは簡単ではないのだ。
守備が必死にRBを止めにいったところを、裏をかかれてQBにロングゲイン
された場面がそれを象徴していた。

もう一つの要因は、最後にフィジカルの差が出たと思っている。この日、慶応守
備は法政のランオフェンスをよく止めていた。#99DL望月らが中央でふんばり、外に
走ってきたランナーを#54LBライトがことごとくタックルで仕留めた。法政
も手を替え品を替えプレーを展開してきたが、その度にLB陣がうまくアジャス
トして、粘り強く守った。

しかし、試合が終盤に入ると、今まで2ヤードで止まっていたプレーが4、5ヤー
ドと出るようになった。4Qに奪われた2つのTDは、それら一つ一つのプレー
の積み重ねだ。

Xリーグで全盛期の鹿島(現LIXIL)の試合を見ていた時、こういう場面が
よくあった。試合終盤で時間を使うために、鹿島オフェンスは100%ランで来
ると相手の守備は分かっている。それでも鹿島のランが出続けてタイムアップ。
ここぞという時のオフェンスラインの馬力が桁違いなのだ。

法政OLと慶応の守備フロントが対峙したとき、わずかな差ではあるが、まだ彼ら
の方が一枚上手だったということを認めざるをえないだろう。ユニコーンズの
メンバーはスタントHC流の厳しいトレーニングを乗り越えて、間違いなくフィジ
カルアップを果たした。好守ラインのサイズを数年前と比較しただけでも、それは
証明できる。だが、さらにこの壁を乗り越えるには、オールユニコーンズ体制での
継続した取り組みが必要になるだろう。

■高木とWRの驚異的な集中力
ライン戦で負けたのは、オフェンスも同じだった。法政ディフェンスが後ろに引
いて守ったときに生まれたロングゲインを除くと、20回走ってわずか20ヤー
ド。1回あたりのランで1ヤードほどしかゲインしていない計算になる。この日
の法政Dのゲームプランは、とにかくランを止めることだったのだろう。それを
完璧に遂行されたばかりか、パスラッシュでも2回のQBサックに8回のロスタッ
クルを喫した。けがから復帰したオフェンスラインの大黒柱、#75鶴長が右Tに
入った慶応OLの布陣はだいぶ厚みをました。しかし、関東最強の法政フロントを
止めることはできなかった。

それではなぜ慶応オフェンスは42回投31回成功、381ヤードを稼ぐパス攻
撃を展開できたのか。ずばりQB高木の冷静な判断力とWRの集中力だ。高木は
パスプロテクションが持たない苦しい状況の中でも、最後まで最善の選択をし続
けて、空いているWRにパスを投げ続けた。WR陣も決して集中力をきらさない。
明らかなキャッチミスは0で、捕れる可能性があったパスも2本程度。31本の
パスを1年生から4年生まで11人のレシーバー(RB含む)がキャッチし続け
た。特に17時に開始されたこの試合、前半は十分に明るいが、ハーフタイムを
はさんで一気に暗くなりナイターとなった。試合会場のアミノバイタルフィール
ドでは4機の照明がフィールドを照らすが、かなり暗いなという印象だ。試合中
に環境が変わる状況でも、集中をきらさずパスを撮り続けた慶応WR陣は賞賛に
値するだろう。

法政戦ではほぼスキル陣の能力だけで、23点を奪った。これにラインの力がかみ
合ったとき、慶応オフェンスの真の力が発揮されるだろう。

■最高のパンター弘世、KCに未だ不安
前回、K手塚のキックの正確性を取り上げたが、パントチームにも正Pの弘世が
戻ってきた。春にも書いたが、彼が入ると本当にパントカバーは安心して見てい
られる。特に右に走りながらのパントキックは、相手の陣形が乱れる上に、リター
ンもしにくい。リターンを警戒した上で、ロング50ヤードを含むアベレージ3
6ヤードという記録は、十分に合格点だろう。

一方でキックカバーにはまだ不安が残る。実際に大きくリターンされる場面はな
かったが、相手のブロッカーに多くの選手がつかまっているシーンが何度かあっ
た。春の関学戦で鷺野にリターンTDを許したプレーでは、明らかに多くの選手がブ
ロッカーに処理されて、リターンされるべくしてされたプレーだった。この2試
合では結果オーライになっているが、日大との大一番でその課題が露呈しない保
証はない。さらなる改善を求めたい。

優勝争いでは一歩後退したが、64年ぶりの甲子園ボウル、日本一への道はまだ
閉ざされていない。残り4試合負けられない戦いが続く中で、次節の日大戦に向
けて選手たちには最善を尽くしてもらいたい(共同通信社 松元竜太郎・平成1
7年卒)

【秋リーグ戦】vs明治大学

9月20日(土)慶應大―明治大@川崎富士見球技場

1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
慶應大学 3 3 8 10 24
明治大学 0 7 7 0 14

【得点経過】
▽1Q 9:37 慶應 K#15(2年手塚) 29yd FG成功 <K3-0M>
▽2Q 3:58 慶應 K#15(手塚) 24yd FG成功 <K6-0M>
▽2Q 11:10 明治 #22 6yd RunTFP成功(K#89) <K6-7M>
▽3Q 4:22 明治 #22 2yd RunTFP成功(K#89) <K6-14M>
▽3Q 9:10 慶應 #18(QB4年高木翼)→#81(WR3年八木) 14yd Pass
TFP成功(2 point Conv. QB#18高木→WR#86柴田) <K14-14M>
▽4Q 6:46 慶應 K#15(手塚) 29yd FG成功 <K17-14M>
▽4Q 9:45 慶應 #1(RB4年高木康) 1yd RunTFP成功(K#15 手塚) <K24-14M>

【STARTING MEMBER】
Offense
RT#78   小野島 洋輝(2年)
RG#59   長戸 慧介(4年)
C#77   浅原 宏太郎(2年)
LG#51   清野 武尊(3年)
LT#71    高瀬 智正(3年)
QB#18   高木 翼(4年)
TE#88   岩澤 忠尚(4年)
WR#7    志水 秀彰(4年)
WR#19  田邊 翔一(2年)
WR#86  柴田 源太(1年)
RB#1    髙木 康貴(4年)
K#15    手塚 太陽(2年)

Defense
DL#69   岸 佑亮(1年)
DL#90   金子 陽亮(3年)
DL#97   長塚 大(2年)
DL#99   望月 洸(4年)
LB#4     工藤 勇輝(1年)
LB#40   小紫 雄祐(3年)
LB#54   ライト 太一(4年)
DB#1     兵頭 宣俊(2年)
DB#9    三津谷 郁磨(4年)
DB#22     松崎 泰光(3年)
DB#24     吉村 奬太(3年)
P#79      簗瀬 武史(1年)

【戦評】
関東TOP8の第2節で慶応大が明治大と対戦し、24―14で勝った。
慶応大は開幕から二連勝。明治大は二連敗で早くも優勝戦線から脱落した。

試合は最初の攻撃から慶応が押し気味に展開するが、ゴール前の反則などでTD
を奪えず、前半は#15K手塚のFG2本の6点のみにとどまる。一方、守備は
明治のラン主体の攻撃をよく止めていたが、前半終了間際にTDを決められて6
―7で後半へ折り返す。

3Q、プレー展開を変えてきた明治オフェンスに追加点を許し、6―14とリー
ドを広げられる。ここで慶応オフェンスが奮起。#18QB高木がパスで
2回の第4ダウンギャンブルをクリアして前進し、最後は#81WR八木にTD
パスを決める。2点コンバージョンも決めて同点。4Qには手塚が決勝のFGを
決めて、勝利をたぐり寄せた。
守備は勝負所でターンオーバーを奪うなど、攻撃的なゲームプランが成功。明治
のオフェンスをトータルで153ヤードに抑え込む好守で、勝利に貢献した。

■「パッシングポケット」が生命線

明治戦のオフェンスのポイントは、「WRとDBの1対1の勝負」だと思っていた。
結論から言うと、慶応のWRは勝った。3Q、同点に追いついた2つのTDパス
は、#81八木と#86柴田がそれぞれDBに競り勝って生まれたものだ。トー
タル獲得ヤードの348ヤード(パス142・ラン206)も合格点だろう。
しかし、獲得ヤードのわりに得点が24点と伸び悩んだ。直接的な理由はゴール
前の反則(OLのホールディング)とエンドゾーンでの被インターセプトだが、もっ
と深刻な課題が露呈した。

相手守備の圧力でパッシングポケットが急激にせまくなると、高木のパスは威力
が半減するということだ。この日、明治のフロントの圧力はすさまじかった。被
QBサックは4つ。さらにノックダウン(投げた後にQBが倒されること)や高
木がかろうじてかわしたプレーを含めれば、23のパスプレーの内、半分近くで
プレッシャーを受けたことになる。
試合後に高木に話を聞いたが、ポケットが潰れるのが早すぎて、ほとんど思うよ
うなタイミングでパスを投げられなかったそうだ。彼は走力はあるが、決して動
きながらパスを投げるタイプではない。オフェンスラインが築いた壁の中で投球
する、典型的な「ポケットパサー」だ。今季はOLがレベルアップしたので、あま
り意識する場面がなかったが、やはり彼らがしっかり高木を守るという前提の下
に慶応のパスオフェンスは成り立っているのだ。

初戦で明治と対戦した早稲田は攻撃がほとんど機能しなかったが、これも明治フ
ロントのプレッシャーによるものだ。TOP8の全チームを見た印象で言うと、
守備フロントは法政、明治、中央が強い。次節で対戦する法政の守備陣は、明治の
対応を見て、慶応オフェンス攻略に自信を深めているのではないか。昨年日大に
負けた理由もOLが高木を守れなかったから。法政戦はオフェンスラインの真価が
問われる試合になるだろう。

■明治のランアタックを完封

立教戦のリポートで、守備が素晴らしかったと書いた。やはり、春とは見違える
ほど強力なディフェンスが出来上がりつつある。春は関学、早稲田にやられて苦
しんだが、厳しい夏の練習を乗り越えて、見事な守備へと成長を続けている。

この試合では5-2体型(5DL、2LB)をベースに、明治のラン攻撃をこと
ごとく跳ね返した。ロスタックル9回にQBサック5回。もちろん#24CB吉
村のサックなどはサインによるところが大きいが、ベースとなる個の力で相手を
上回っていなければ、いくらブリッツやスタンツを駆使してもこの数字はありえ
ない。3Qに唯一ロングドライブを許したシリーズは、QBランやタイミングを
変えたプレーなど、守備の目先を変えてくるものだった。筒井守備コーチは、
「サイドラインに戻ってからではなく、選手たちがフィールド上でもっとアジャ
ストできるようになってほしい」と課題を挙げていた。

順調にレベルアップしている守備だが、最大のテーマは「エンドゾーン死守」だ
ろう。チーム事情にもよるが、一般的にディフェンスは相手の攻撃を200ヤード
以内に抑えれば合格点とされる。立教戦の195(ラン86・パス109)ヤード、
明治戦の153(ラン77・パス76)ヤードという数字は見事だ。ただ、レッド
ゾーン(自陣20ヤード以内)に進入された後に、TDを決められてしまっている
確率がかなり高い。これからの試合では、ドライブされてもFGの3点に抑えられ
るかどうかが重要になってくる。レッドゾーンでは奥行きがないため、DBはロング
パスを気にせず思い切ったプレーができる。成長を続ける慶応守備陣のさらなる奮起
に期待したい。

■K手塚の安定感

初戦の立教戦で、慶応はTD10本で70点を奪う猛攻を見せたため、FGの場
面はなかった。春の試合を振り返ってみても、強力なオフェンスが次々にTD
を決めるので、FGのシーンはほとんど記憶にない。しかし、明治戦ではK手塚
が3本のFGを決めて、貴重な得点をたたきだした。この選手、キックにとにか
く安定感がある。Xリーグで優秀なキッカーを見ていて共通しているのは、とに
かく動きに無駄がなく、体の軸がぶれないということだ。

普段あまり意識されることはないと思うが、FG時にキッカーが行う動作をおさ
らいしてみよう。まず、ボールが置かれた地点から7歩(7ヤード)後ろに進む。
その場所にホルダーがセットし、キッカーはそこからさらに助走地点へと向かう。
縦に下がってから横に移動する選手もいれば、ななめに動く選手もいる。この後
に腕を上下させて、ゴールポストへの軌道を確認するのもキッカーの定番の動作
だ。そして呼吸を整えて、ボールがスナップされた瞬間に通常3歩の助走をとっ
て蹴り込む。

優秀なキッカーは例外なくこれらの一連の動作に無駄がないのだ。そして、蹴り
終わった後にも体制が崩れない。もちろん手塚の動作も無駄がなく、軸がぶれな
い。彼がどれくらいの飛距離を狙えるのか分からないが、40ヤード以内のキッ
クならほぼ確実に決めてくれるだろう。法政戦、日大戦ではキックの1点、3点
が勝敗を分ける。手塚の安定感抜群のキックにも注目だ。
(共同通信社 松元竜太郎・平成17年度卒)

【秋リーグ戦】vs立教大学

9月7日(日)慶應大―立教大@アミノバイタルフィールド

1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
慶應大学 21 14 14 21 70
立教大学 14 7 14 7 42

【得点経過】

1Q0:21慶應#1(RB4年髙木康)69yd RunTFP成功(K#15 2年手塚)<K7-0R>
1Q4:03立教#30(2yd Run)TFP成功(K#17)<K7-7R>
1Q 4:50慶應#18(QB4年高木翼)3yd RunTFP成功(K#15 手塚)<K14-7R>
1Q 11:11慶應#18(QB高木翼)→#86(WR1年柴田)89yd Pass
TFP成功(K#15手塚)<K21-7R>
1Q11:23立教#45 69yd Kick Off ReturnTD TFP成功(K#17)<K21-14R>
2Q6:10立教#56 Punt Block Recover TD TFP成功(K#17)<K21-21R>
2Q 8 :34慶應#18(QB高木翼)11yd Run TFP成功(K#15 手塚)<K28-21R>
2Q11:39慶應#18(QB高木翼)→#29(RB2年李)19yd Pass
TFP成功(K#15手塚)<K35-21R>
3Q4:50慶應#18(QB高木翼)→#21(RB4年日笠)6yd Pass
TFP成功(K#15手塚)<K42-21R>
3Q6:38立教#4→#11(45yd Pass)TFP成功(K#17)<K42-28R>
3Q9:07立教#4→#82(8yd Pass)TFP成功(K#17)<K42-35R>
3Q9:44慶應#1(RB髙木康)48yd Run TFP成功(K#15手塚)<K49-35R>
4Q5:33 慶應#1(RB髙木康)2yd Run TFP 成功(K#15手塚)<K56-35R>
4Q7:35立教#30(6yd Run)TFP成功(K#17)<K56-42R>
4Q9:26慶應#1(RB髙木康)5yd Run TFP成功(K#15手塚)<K63-42R>
4Q10:23慶應#29(RB李)43yd Run TFP成功(K#15手塚)<K70-42R>

【STARTING MEMBER】
Offense
RT#72   犬飼 和真(1年)
RG#59  長戸 慧介(4年)
C#77      浅原 宏太郎(2年)
LG#51   清野 武尊(3年)
LT#71    高瀬 智正(3年)
QB#18   高木 翼(4年)
TE#88   岩澤 忠尚(4年)
WR#7    志水 秀彰(4年)
WR#19  田邊 翔一(2年)
WR#86  柴田 源太(1年)
RB#1   髙木 康貴(4年)
K#15   手塚 太陽(2年)

Defense
DL#69   岸 佑亮(1年)
DL#90   金子 陽亮(3年)
DL#97   長塚 大(2年)
DL#99   望月 洸(4年)
LB#4      工藤 勇輝(1年)
LB#40   小紫 雄祐(3年)
LB#54      ライト 太一(4年)
DB#1     兵頭 宣俊(2年)
DB#9     三津谷 郁磨(4年)
DB#22      松崎 泰光(3年)
DB#24   吉村 奬太(3年)
P#30      嶺岸 佑樹(1年)

【戦評】
立教のキックオフで始まった試合。慶応の1プレー目は#1RB高木が69ヤー
ドを独走して先制TDを決める。立教も好リターンから、最後はRB茂住が
エンドゾーンに飛び込み同点に追いつく。慶応は#86WR柴田へのTDパス
などで21━7と突き放すが、立教はキックオフリターンTD、パントブロック
からのTDとキッキングゲームで同点に追いつく。
第2Q終盤、#18QB高木がオーディブルを多用して、相手守備の隙を巧みに
突いていく。#29RB李へのTDパスなどで14点を追加して、35━21で
前半を折り返した。

後半に入っても慶応オフェンスの勢いは止まらない。第3Q、#21RB日笠へ
のTDパスを決めると、#1RB高木が再び48ヤードを独走して点差を広げた。
立教は第3Q、パスで2TDを奪い、4QにはQBを代えてキャッチアップを
狙う。しかし、慶応オフェンスの勢いは止まらず、その後も#29RB李の独走
TDランなどで最後までスコアし続け、70━42で「TOP8」の初戦を制した。

■進化したディフェンス
9月6日に関東学生リーグ「TOP8」が開幕した。そして、日本一を目指すユニコーンズ
のシーズンが、7日の立教戦でスタートした。70━42という試合のスコアだけをご覧
になった方は、こう思ったのではないだろうか。「オフェンスは前評判どおり好調だな。
ディフェンスが問題だな」。

しかし、この日のディフェンスは、結果こそ4TD(キッキングを除いて)を奪われたが、
内容は素晴らしいものだった。大型の立教OLに対してDLが押されない。そして、
スピードあふれるブリッツとスタンツでオフェンスのスキームを次々に破壊していく。
立教オフェンスに許したのはわずか195(ラン86・パス109)ヤードだった。
※ちなみに慶応オフェンスは567(ラン224・パス343)ヤード

選手起用にも筒井守備コーチの意図が表れていた。インサイドのLBに#5志茂と
#4工藤を起用したのだ。二人はサイズはないが、DB並みのスピードと思い切り
のよさを持っている。彼らのようなスピードのあるLBがブリッツでかき回すこ
とによって、DLによる2つのQBサックも生まれた。

「スピードでオフェンスを破壊する」。慶応ディフェンスが目指してきた守備の
コンセプトが遂にフィールドで体現され始めた。筒井コーチは「やっとスタートライン」
と試合後に言ったが、このスピードディフェンスがさらに成長し、強力なオフェンス
と組み合わされば、悲願の甲子園ボウル、日本一への距離がぐっと近づくだろう。

■選手層の厚みとフィジカルアップ
あるチームの監督がこんなことを言っていた。「慶応は選手層が厚いので警戒し
ている」。他チームと比べて、慶応がそれほど選手層が厚いとは思っていなかったが、
試合が始まるとそれを実感した。

後半に入ってばたばたと倒れていく立教の選手たち。慶応は試合を通して痛んだ選手
は3人ほどだったが、立教は10人近くが負傷していた。もちろん、オフから続けて
きたスタントHC流の厳しいトレーニングによる、選手のフィジカルアップが要因に
あるだろう。だが、一番の決め手は慶応の選手層の厚さだった。主力がほぼ出続けて
いた立教に対して、慶応は複数の選手を交代で起用していた。例えば、DBは4つの
ポジションを6人で、RBは1つに対して3人という具合で、出場する選手が常に
フレッシュだった。

ローテーションに参加できるのは、当然相手の戦力と比較した上で、一定以上の
レベルに達している選手。明治、法政、日大と厳しい戦いが続く中、1本目が
出ずっぱりになるようだと、今回の立教のようにけが人が続出する可能性も
否めない。2本目の選手たちがいかにレベルアップするかが勝敗のかぎをにぎって
いると言えるだろう。

■C浅原の安定感
70点を奪ったオフェンスの破壊力は素晴らしかった。ランは#29李と#1高
木の2枚看板に加えて、#18QB高木の走力も際立った。パスも19回投げて
14回成功と文句ない。#86柴田ら若手のレシーバーも安定したプレーを披露して、
ミスらしいミスはほとんどなかったように思う。

試合前に唯一オフェンスで心配していたのが、4年生のC鶴長の欠場だ。オフェンス
ラインは昨季に比べて格段に良くなったが、182センチ120キロと素晴らしい
サイズを誇る鶴長がけん引してきた部分が大きかった。彼の抜けた穴を埋める選
手がいるのかどうかに注目していた。

代わりに出場した2年生の#77C浅原は、常に安定したスナップとブロックを
供給し続けた。タイムアウト時にはサイドラインでOLコーチとコミュニケーション
をとって、試合を通してOLユニットをリードしていた。QBサックを許したの
も、1度だけ。そのプレーも#18QB高木がターゲットが見つからずに、やや
ボールを持ちすぎた感じだった。

これから対戦する強豪チームは、さらに高木へのプレッシャーを強めてくるだろ
う。若いオフェンスラインの成長が、慶応オフェンスの成否の鍵を握る。
(共同通信社 松元竜太郎・平成17年卒)

【試合写真】中央大学戦試合写真を更新致しました。

【お知らせ】HPリニューアル

この度、UNICORNSの公式HPがリニューアルされました。
今後は試合結果やスケジュール等をこのページからお知らせ致します。
今後ともご声援の程宜しくお願い致します。