清水利彦(S52卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com
オクラホマ大学の歴史
オクラホマ大学University of Oklahomaは1890年に創設されていますが、時系列で見ますと、
1890年、Norman Territorial University という校名にて開校
1895年、同大学フットボール部設立
1900年、テキサス大とのフットボール対校戦開始
1907年、オクラホマがアメリカ合衆国の州として承認され、オクラホマ大学と改名
という順になり、州の歴史よりも、大学の歴史とフットボール部の歴史の方が古いことがわかります。
(州の歴史よりも、オクラホマ大vsテキサス大対校戦の歴史の方が古い)
オクラホマ大学はノーマン市(人口13万人)に所在し、学生数は3万3千人ほど。オクラホマ州の人口が400万人ですから、学生・卒業生・教職員を合わせれば州人口の相当な部分がSooners関係者と言えるのでしょうね。州内の有力大学というと、他にはオクラホマ州立大学(Oklahoma State University,元はオクラホマ大学の一部門であり、農業専門学校でした)と、タルサ大学University of Tulsa(優秀な宗教系私学校だが学生数わずか3700人)くらいしか見当たりません。
キャンパスは南北6km、東西2kmほどありますので、構内を移動するだけでも大変ですね。
大学1年生は一旦全員がキャンパス内にある6つの学生寮に住むことを義務付けられています。
オクラホマ大学はフォーブス誌の全米大学学力ランキングで147位。テキサス大学やテキサスA&M大にはかないませんが優秀な学校であることは間違いありません。(全米のNCAA加盟大学数で約1100校あるので、上位15%以内に入る)
体育会が非常に強い大学としても知られています。フットボール部は全米チャンピオンに7回輝いている超強豪ですし、他にも器械体操・バスケットボール・レスリング・女子ソフトボール等が何度も全米王座に着いています。オクラホマ大学の現役学生が過去にオリンピック大会で通算23個のメダルを獲得しています。
オクラホマ大学フットボール部の歴史
創部は1895年で、戦績891勝321敗47分、勝率.735と全米トップクラスです。
1915年に初めて10戦全勝でリーグ優勝も果たしましたが、この時は全米王座として認定されていません。まだ「田舎リーグのお山の大将」程度に受け止められており、その実力が認識されていなかったと推察します。下の写真は1915年のオクラホマ大学イヤーブックの1ページです。当時既にテキサス大学に対して強烈なライバル心を抱き、ファン達が特別列車を仕立てて応援に駆け付けている様子がわかります。
1947年に伝説の名将バド・ウイルキンソンがヘッドコーチに就任して以来、俄然強くなりました。
オクラホマ大学は合計7回全米王座に着いていますが、バド・ウイルキンソンを含め、3人しかチャンピオン経験のあるコーチはいません。
バド・ウイルキンソン 1947-63 在任17年 全米王座3回 145勝29敗4分 .833
バリー・スイッツアー 1973-88 在任16年 全米王座3回 157勝29敗4分 .844
ボブ・ストゥープス 1999-2016 在任18年 全米王座1回 191勝48敗 .799
この3人がそれぞれ築いた黄金時代を超えるのは容易な事ではないと受け止めていましたが、ボブ・ストゥープスの後継者となったリンカーン・ライリーが勝ちまくりました。
リンカーン・ライリー 2017-21 在任5年 全米王座なし 55勝10敗 .846
ライリーがオクラホマ大学第4期黄金時代を築くかと思われましたが、2021年のシーズン終了前に突然辞任して、USCのヘッドコーチに就任しました。私の知る限り「オクラホマ大学を蹴っ飛ばした」事があるフットボールコーチはリンカーン・ライリー一人だけです。笑
ライリーは当時の1年生エースQBカレブ・ウイリアムス(USCで昨年のハイズマン賞受賞)を一緒に連れ去る形でオクラホマを去ったため、二人が抜けた後2022年は6勝7敗とガタガタに弱くなりましたが、昨2023年は10勝3敗と復活しています。なにせ過去50年間で負け越しは4回しかないので、オクラホマ大のコーチは勝つことが宿命です。115年間でリーグ優勝が46回あります。
ところで私はオクラホマ大学の試合をスタジアムで観たことがある珍しい人間です。
1980年10月4日(私は25歳)、コロラド州ボールダーでおこなわれたオクラホマ大vsコロラド大の試合を観ました。当時オクラホマ大はBIG8(今のBIG12の前身)というリーグに所属しており、当時のリーグ戦の顔ぶれと、その所在地、学力ランキング等は下記の通りでした。
オクラホマ大 オクラホマ州ノーマン 人口13万人、学生数3万3千人、学力ランク147位
ネブラスカ大 ネブラスカ州リンカーン 人口29万人、学生数2万4千人、ランク200位
ミズーリ大 ミズーリ州コロンビア 人口13万人、学生数3万1千人、ランク113位
コロラド大 コロラド州ボールダー 人口11万人、学生数3万7千人、ランク132位
カンザス大 カンザス州ローレンス 人口9万人、学生数2万7千人、ランク182位
カンザス州立大 カンザス州マンハッタン 人口5万人、学生数2万人、ランク271位
オクラホマ州立大 オクラホマ州スティルウォーター 人口5万人、学生数2万5千人、ランク177位
アイオワ州立大 アイオワ州エイムズ 人口7万人、学生数3万人、ランク222位
※人口と学生数は最近の数値であり、昔はもっと少なかったと思われます。
※ランクとは、フォーブス誌による全米大学学力ランキングの直近順位
このようにBIG8(当時)リーグ内に「大都会の学校が一つもない」のが特徴で、試合場は常に極めてローカル。日本人ツーリストや商社マンがオクラホマ大学の試合を観戦する機会は、非常に少ないだろうなと思っています。(テキサス大対校戦のみ大都市ダラスで開催)
私が観た試合は、オクラホマ大82-42コロラド大とバスケットボールのようなスコアでした。OLの平均体重で20kgくらいの差があり、オクラホマ大のQB、J・C・ワッツや、エースRBデビッド・オーバーストリートがウィッシュボーン隊形から自由自在に走り回りました。サイドラインには当時既に2回全米王座に着き、伝説のコーチとなっていたバリー・スイッツアーが立っていました。
この年(1980)オクラホマはオレンジボウルを制して最終ランク全米3位。私がこの目で見たカレッジ最強のチームでした。
ものすごく強いオクラホマ軍に帯同してやって来る、オクラホマ応援団も信じられないくらい熱狂的でした。オクラホマを応援する人たちは、昔から自らをRufneks(=Roughnecks、荒くれ者の意味)と称しているようで、試合にかける意気込み、入れ込み方が全く違うと感じました。
オクラホマ大は伝統的に「ラン攻撃が強いチーム」として知られており、優秀なRBを多数輩出しています。「オクラホマ大学歴代RBベスト10」というYou Tube画像がありましたのでご覧ください。1位~3位は誰なのか、先にあれこれ想像してからご覧になるのも一興かと思います。(15分)
これまでのコラムで、「オクラホマ大とテキサス大が、BIG12リーグを脱退して、今年2024年シーズンからSECリーグに参加する」ことはお知らせしました。SECリーグが16校に拡大し、史上最強の顔ぶれとなります。今秋の試合日程が既に発表になっていますが、オクラホマ大はレギュラーシーズン12試合の中に、テネシー大、オーバーン大、テキサス大、サウスカロライナ大、ミシシッピ大、ミズーリ大、アラバマ大、ルイジアナ州立大とSECリーグ内の強豪ぞろいの8試合が含まれており、強烈なスケジュールです。このリーグで勝ち抜くことは容易ではありません。リンカーン・ライリーがオクラホマ大学コーチを辞めたのも、「同大学がSECリーグに移籍加盟することに不満を持っていた」という理由があると伺っています。
テキサス大の日程は、「アラバマ大との試合が組まれていないので少しマシ」かなと思いましたが、なんと9月第1週に昨年度チャンピオンのミシガン大と激突します。また、テキサス大vsテキサスA&M大という州内のライバル対決が久々に復活します。
毎週のように強豪同士のぶつかり合いがありますので、観る方は楽しみですが、試合するコーチ・選手達は大変です。でも自分たちが望んだことですから仕方ありませんね。
「バド・ウイルキンソン率いるオクラホマ大が、1953年から1957年にかけて作った、とんでもない記録」については別のコラムで述べてみたいと考えています。
(かつてオクラホマ大で黄金期を築き、ダラス・カウボーイズの
ヘッドコーチとしてスーパーボウルも制覇した、バリー・スィッツアー・について)「あいつはフットボールのコーチなんかしていない。
奴のしていることは、試合を見ていて、反則をするべき時と、
するべきでない時の指示を出すだけだ。」スィッツアー嫌いで有名な、バディ・ライアン
(フィラデルフィア・イーグルス・コーチ)
「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
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