【春シーズン総括企画 vol.2】松元竜太郎コラム「洞口一也ヘッドストレングスコーチが語る “ユニコーンズフィジカル”の現在地」 2021.08.12

松元 竜太郎(H17年卒)

今季、関東学生リーグ1部TOP8への昇格を目指すユニコーンズ。春季の試合では格上であるTOP8や関西学生リーグ1部の4チームと対戦し、3勝1敗という結果だった。フットボールについては、結果はもちろん内容も評価できる点が多く、秋に向けて期待の持てるものだった。では、フィジカルストレングスという側面からはどうだったのだろうか?2018年からチームを見ている洞口一也ヘッドストレングスコーチに、これまでの取り組みを振り返ってもらうとともに、選手たちのフィジカルの現在地について話を聞いた。

今回お話をお聞きした洞口一也ヘッドストレングスコーチ

―ヘッドストレングスコーチの役割について教えてください。

チームのフィジカルストレングスを向上させることが私のミッションです。具体的な取り組みとしては、ウェイトトレーニングのメニューの監修や指導、学生ストレングスコーチの教育、(学生主体の)ストレングスワーキンググループへの助言や協力などを行っています。

―2018年、コーチ就任時の率直な感想は?

すぐにスタートを切れるように、2017年の終わりからチームを見学させてもらっていたのですが、全体としてウェイトトレーニングに対する意識が低いと感じました。レギュラークラスの一部の選手だけが一生懸命に取り組んでいて、他のメンバーは積極的でない。トレーニングメニューの意図を理解している選手も少なかったですし、正しいフォームも浸透していませんでした。

―なぜ、フィジカルに対する意識が低かったのでしょうか?

もちろん、当時から監督やコーチは体づくりの重要性について繰り返し話していました。しかし、ユニコーンズにはフットボールがうまければいい、速ければいい、という文化が少なからずあったのではないかと思います。また、当時の染矢主将が改善しようと言い続けていたのですが、1本目と2本目以降の選手のレベルや取り組みの差が激しかった。この課題は、ストレングスについてもそのまま当てはまっていたと思います。

―ストレングス強化のために、どこから着手したのですか?

まず行ったのが、体重やトレーニングメニューの重量など、目安となる明確な数値を設定することでした。5段階の基準を設定して、どのくらいあれば弱くないと言える、これ以上なら強い、ということを可視化しました。これにより、選手たちの目指すものが明確になりました。また、例えば試合でやられた時に、あいまいな根拠で弱い、軽いと判断することがなくなりました。

―2019年はどのようにステップアップしたのでしょうか?

2018年はフィジカルアップへ向けた土台ができたシーズン。全体的な底上げがされて成長はしましたが、まだ強いというレベルには達していませんでした。大きな変化を遂げたのが、2019年シーズンです。この年は、チーム方針で増量に本格的に取り組みました。Aランクの数値に達するか、春にプラス10キロしようと試みたのです。並木主将を中心に、この取り組みをやりきったことによる成長は予想以上のものでした。秋には十分なラインに到達している選手がかなり増えました。

―2020年は活動自粛やコロナなどもあり、満足に活動することができませんでした。そして迎えた2021年、春の試合はフィジカルストレングスの観点から評価するとどうだったのでしょう?

活動自体がまともにできなかった2020年と比較すると、今年は圧倒的に良くなりました。しかし、2019年と比較すると、まだ2年前のレベルに到達できていないというのが正直なところです。春の試合を見ても、試合に勝てたことは良かったのですが、1対1を含めたフィジカル部分の戦いでは、必ずしも勝てたとは言えません。顕著に出たのが唯一敗れた法政戦で、この試合におけるフィジカル的な結果は、重く受け止めるべきだと思っています。

―ウェイトトレーニング、フィジカルに対する意識や文化の面で、この3年半でどんなところが変わりましたか?

体重やウェイトの重量など、数値に対するスタンダードの部分が大きく変わりました。例えば、3年前は90キロ台のLBはほとんどおらず、「重いからラインじゃないか」といじられていました。しかし、現在のLBは90キロ台、100キロ近い体重が当たり前で、逆に80キロ台以下の選手の方が少数派です。チーム平均でみるとまだまだ課題はあるのですが、ストレングスに対する意識は確実に変わってきています。

―現在の課題は何でしょうか?

ディビッドヘッドコーチ、筒井守備コーチともよく話をしているのですが、力をフットボールの動きに生かす部分に課題があります。上半身と下半身の連動や、いかにパワーを腕に伝えて、それを相手に伝えるかという部分です。ベンチプレスやスクワットなどは垂直方向の運動ですが、ブロックやタックルでは角度がついてきます。そこがうまくできていない部分がある。ただ、以前はそもそも力がないというのが課題だったので、問題の中身は変わってきていますし、レベルは低くないと思います。

―秋シーズン、今後に向けての取り組みを教えてください。

今年のチームがTOP8への昇格を目指すことは前提として、3年生以下の選手の目標として、来年TOP8で優勝することを考えようというのは、チーム内で共有されています。そのためには今から準備する必要があります。
フィジカルストレングスにおいては、何を目指すかはもちろん、何をありえないと思うかも大事だと考えています。例えば、70キロのオフェンスラインはありえないと誰もが思いますが、そのようなバーをいかに高く設定することができるか。最低ラインを決めて、文化をつくっていくといった作業も、学生たちが主体となって行っており、ワーキンググループで議論し続けています。私としては彼らに適切にアドバイスをしながら、取り組みをサポートしていきたいです。


前回配信号で投稿しました【春シーズン総括企画 vol.1】では、ODKリーダーに春シーズンを徹底的に総括してもらっておりますので、まだご一読いただいていない方はこちらも是非あわせてご覧ください!

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