【清水利彦コラム】ウィスコンシン大学の「JUMP AROUND」と「色による応援」 2022.06.17

清水利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

私は「他人とは異なる、ちょっと変わった趣味嗜好をいろいろ持つ人間」として(特に同期の中では)有名ですが、変わった趣味嗜好のひとつに、「スタジアム応援席フェチ」というのがあります。フットボールそのものにも、もちろん興味はありますが、実は「フットボールを応援している人たちの様子」の方にもっと興味があるのです。You Tubeでフットボールの試合を観ていても、応援席やマーチングバンド、チアリーダー等の様子が画面に映ると、巻き戻して何度も眺めたりしています。

 

皆さんはウイスコンシン大学の「ジャンプ・アラウンド(JUMP AROUND)」という応援パフォーマンスをご存じですか? これが、スタジアム応援席フェチの私が自信をもってお勧めする「最高に騒々しく、最高にバカバカしく、最高に愉快な応援パフォーマンス」なのです。

ウイスコンシン大学応援席でおこなわれるJUMP AROUND 出典:Wikipedia

 

難しいことは何もありません。誰でもすぐに参加出来ます。

ウイスコンシン大学ホームゲームの学生応援席に、赤い色の服(Tシャツ・パーカ等)を着て入場してください。赤い色の服はマストです。白シャツはなんとか許されますが、緑や青や黄色の服は絶対ダメです。第3Qと第4Qの間になると、電光掲示板に短いアニメ画面が現れます。アニメ画面の終了がJUMP AROUND開始の合図となります。大音量の音楽が始まりますので、とにかく、腕を突き上げながら、その場でぴょんぴょん飛び跳ねて下さい。それだけです。

私は知りませんでしたが、JUMP AROUNDはヒップホップ系で1990年代に流行した曲のタイトルなんですね。その曲に合わせて飛び跳ねるわけです。

百聞は一見に如かず、You Tube映像をご覧ください。↓
https://www.youtube.com/watch?v=jm_vCOoqH5E

 

ウイスコンシン大学のスタジアムは収容能力80300名。全世界でも50位以内に入る巨大なフットボール専用球技場です。5人や10人でJUMP AROUNDをやったら、ただのアホですが、8万人が一斉にやると意義あるパフォーマンスになるということですね。

 

JUMP AROUNDの歴史は比較的新しく、1998年パデュー大学との対戦の際、第3Qまで劣勢であった母校を励ますために、第4Q開始前に水泳部の部員を中心として一部の学生が始めたとされています。この試合に見事31-24で逆転勝利したため、学生応援席でJUMP AROUNDをおこなうことが習慣となり、スタジアム全体に広がってゆきました。

 

JUMP AROUNDの素晴らしいところは、「参加する人が全員すごく嬉しそう、幸せそうに見える」ことでしょう。もともと「嬉しいときには、両手を上げてぴょんぴょん飛び跳ねる」というのが人間の本能に正しくマッチしているのだと思います。学生応援席では全員が参加しなければならないのですが、(一般応援席は自由参加)「やらされている」という感じの人は一人もいません。皆、嬉しくてしょうがない、という表情で飛び跳ねています。

なんと相手チームの選手まで一緒になって嬉しそうに飛び跳ねている映像を見たことがあります。相手選手も相当なアホですね。あなた達をやっつける為に、皆でパフォーマンスをしているのですよ!(不機嫌そうに黙って下を向いて、騒ぎが終わるのを待つ、というのが相手側選手の正しい対応です。)

さすがに審判員が飛び跳ねているのは見たことがありません。公平中立の立場を守っておられます。

 

2003年にウイスコンシン大学当局が、「観客全員が飛び跳ねると、建物の耐久性・安全性に懸念あり」との理由でJUMP AROUNDを禁止しようとしたことがありますが、学生達から膨大な数の抗議や嘆願を受け、「専門家の再調査により、安全性が確認された」として、JUMP AROUNDの継続を認めています。

 

ウイスコンシン大には、もう一つ応援パフォーマンスがあります。「スクールカラーでスタジアムを埋め尽くす」ことです。全体が赤一色になるのは「学生応援席」です。学生たちが安いシーズンチケットで入場できる、ゴールラインより外側の席です。これはどこの大学でもやっていることですね。

 

一方、ゴールラインとゴールラインの間の一般応援席では、セクションごとに「ここは赤(赤い服を着ている人たちが座るエリア)のセクション」「ここは白のセクション」と定められており、数多くの観客がその決まりを厳格に守っているため、遠くから眺めると観客席全体が紅白の横断幕のように見えます。ものすごく多くの人たちが、服装に関して協力しなければ成り立たない応援パフォーマンスなので、見ていて感動します。

ウイスコンシン大の一般応援席はセクションできちんと色分けされており、スタンド全体が紅白の横断幕のよう。

 

応援の時の「色」に関して、もっとすごいのは、南部の強豪テネシー大のスタジアム風景でしょう。テネシー大はスクールカラーが「オレンジと白のチェッカーフラッグ模様」なので、スタジアム全体を服の色で、オレンジと白のチェッカー柄に染め抜くという、大胆なことをやっています。ちゃんと入場券を買って一般席に座るのですから、何色の服を着ようが自由なはずですが、このスタジアムではそんな理屈は通用しません。

 

「米国南部におけるフットボールとは、

『生活の一部』というような、なまやさしいものではない。

南部の人間にとってフットボールとは、

『信仰』であり、『宗教』そのものである。」

マリオ・カセム (アルコーン州立大コーチ)

 

という言葉が、あながち冗談ではないと感じます。何も知らずに、テネシー大の試合に緑色のポロシャツを着て入場しようとしたら、殺されてスタジアムの下に埋められるのではないでしょうか。笑

テネシー大のネイランド・スタジアム。収容能力102,455名。全米で5番目、全世界で7番目に大きい球技専用スタジアムです。左下の、ちょっと青っぽく見えるエリアが、対戦相手校の応援席と思われます。この環境の中で相手方チームの応援をするのは、さぞかし勇気がいるでしょう。
ちなみに世界最大の球技場はインドの「ナレンドラ・モディ・スタジアム」。クリケット競技専用で、132,000名収容できます。

 

さて、我々ユニコーンズの試合でも、何か「参加する人たちが嬉しくなる、幸せになる」ような応援パフォーマンスが出来たらいいですね。

以前から気が付いているのですが、アミノバイタルフィールドは、着席した時に足を置く部分が鉄板で出来ており、足を踏み鳴らすと、まるで太鼓を叩いているように「ぼん!ぼん!ぼん!」と非常に大きな音が出ます。もし応援指導の方が、「クラウドノイズを作るときは、拍手ではなく、足を踏み鳴らしてください」と頼めば、200~300人くらいの協力だけでも「小型JUMP AROUND」となり、相当迫力のあるクラウドノイズを作ることが出来るのですが・・・

 

<追記>お知らせが遅れましたが、NFLワシントン・フットボールチームの新名称が決まりましたね。

Washington Commanders ワシントン・コマンダーズ(指揮者・司令官)です。永年、ワシントン・レッドスキンズに慣れ親しんだ老ファンとしては、まだしっくりこない感じはありますが、時の経過に従って、だんだん慣れてくるのでしょう。かつてワシントン・コマンドスという名前の、アリーナ(屋内)フットボールリーグのチームが存在したそうですから、それがヒントになったのかもしれません。

今秋、ワシントン・コマンダーズがどのような戦いを見せるか、注目しましょう。

日本では略して「トン・コマ(豚肉のコマ切れ)」などと呼ばれることになるのでしょうか。

 

「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
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