【清水利彦コラム】関西学院大学「ファイターズホール」見学レポート 2026.05.28

清水利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com

何年か前に、私は関学OBの方から「KGファイターズの歴史を保存・展示するための施設を新しく作った。施設の名前はファイターズホール」とお聞きしました。

歴史をたどることが大好きな私は、その施設を見学してみたいという思いを強く持ちました。もともと私は、KGファイターズの皆様の「部の歴史や過去の記録を大切にする姿勢」を強く感じており、心からの尊敬の念を持っておりました。

例えば、KGファイターズのイヤーブックを拝見しますと、毎年必ず、創部以来の春・秋の全試合の記録(対戦相手、日付、試合場、スコア)が記載されています。慶應においては春のオープン戦に関する記録は全く保存されていないと理解しており、関学vs慶應東西交流戦の試合結果を残す資料が慶應側にはありません。試合結果一覧表が見たければ、関学イヤーブックをたどるしかない、ということになります。

本年4月19日に関学vs慶應東西交流戦がおこなわれた際に、試合後両校懇親会を開催していただきました。いつも慶應に対して友情の手を差し伸べてくださる関学OBOG会の皆様には心から感謝いたしております。その際、関学OBOG会前会長・竹田行彦様と同席になったため、ファイターズホール見学のお願いをさせていただいたところ、ご快諾をいただきました。通常は部外者には見せることのない施設と理解しております。竹田前会長からは両校懇親会を通じて長年に渡り温かい友情をお示しいただき、御礼の言葉もありません。本当にありがとうございました。

このたびホール見学を実施いたしましたので、その模様をレポートいたします。見学の実現に際しては、竹田前会長の他にも、OB菅野昌知様、OB島野和弘様、ホール管理人前田忠嗣様から多大なご協力・ご尽力をいただきましたことを感謝の言葉とともに報告いたします。

ファイターズホール見学レポート

5月3日、私は兵庫県西宮市上ヶ原山手町にあるファイターズホールを訪問しました。実はこのホールは2代目であり、かつては別の場所にホールがありましたが、1995年の阪神淡路大震災の際に被害を受けて使えなくなり、2015年に悲願が叶い2代目ホールを取得されたとのことです。

立地としては、関学の上ヶ原キャンパスにごく近い住宅街の中の一軒であり、キャンパス敷地の西端から最短距離で100m足らず、フットボールグラウンドや部室からも歩いてわずか数分の距離にあります。「部室から非常に近いが、ホールはキャンパス敷地外にある」ことが重要な意味を持つことが後でわかりました。

ファイターズホール外観(同所開設の際のパンフレットより)

ファイターズホールは、もともとは個人用邸宅として建てられた建物を取得されたものと推察します。二階建て・5LDKほどの立派な居住物件で、建物の前にはクルマ3台が置ける大きな駐車スペースがあります。
玄関入ってすぐの所から、KGファイターズのロゴマーク・サインボードや、米田満先生(※)が現役時代に着用していた試合用ユニフォーム#50の展示などがあり、「関学の歴史」の中に足を踏み入れるようなワクワク感に包まれます。
※米田満先生については、7年前のコラムで詳しく述べていますのでご覧ください。

【清水利彦コラム】関学・慶應高校定期戦誕生秘話 2019.8.23 | アメリカンフットボール三田会

OB会事務局ルームの陳列スペース

玄関右手前にOB会事務局の部屋がありますが、ここが実質的には「ファイターズの歴史展示室」となっています。壁面には甲子園ボウル優勝トロフィーの数々や、歴史を飾る名場面の写真等が所狭しと並べられています。
陳列棚中央の一番目立つスペースに飾られていたのが、「第5回甲子園バウル 慶應大対関学大」の記念ポスターでした。(※1950年12月10日 関学20-6慶應、当時は甲子園ボウルではなく「甲子園バウル」が正式名称)「入場料 一般50円、学生30円」との記載が微笑ましいです。

第5回甲子園バウル 慶應大対関学大の記念ポスター

展示すべき品はまだまだありますが、スペースの関係で箱のまま倉庫棚に格納されているものもたくさんあるそうです。なにせ甲子園ボウル優勝トロフィーだけで30個あるわけですから大変な量の記念品の集積です。(甲子園ボウルにて関学30勝24敗4分。2位は日大19勝14敗2分)

「KGファイターズの栄光の歴史をきちんと残すための施設を持つことが大切」という関学の皆様の熱い思いが、ひしひしと伝わってきました。

見学での最大の驚きは他にあった!!

実は、今回の見学で最大の驚きは、上記の報告以外のところにありました。ファイターズホール設立には、大きく3つの目的があるとのことです。

  1. 関学の栄光の歴史に関する品々や資料を、保存・保管・展示する。
  2. 部員のための学生寮として活用する。
  3. 深夜でもミーティングが出来る場所として活用する。

Aについてはここまで説明したとおりです。
「B.部員のための学生寮」を語るためには、ファイターズ部員たちの生活パターンを知らねばなりません。部員の中には遠い地方の出身者もおり、当然その場合はキャンパス近くで下宿をしたり、アパートを借りたりします。しかし、その他に、部においては、「4回生(4年生)になると、自宅からの通学が可能な者も、家を出てキャンパス近くに住処を確保し、グラウンドに近いところに一年間住む」という習慣があるのだそうです。「片道1時間かけて自宅から通っていた部員ならば、グラウンドの近くに住めば往復2時間分を、毎日フットボールのためにより多く費やすことが出来る。よりフットボールに没入できる。」ということなのでしょう。ファイターズホールには、現在3つの部屋に分かれて幹部を中心に5人の部員が住んでいます。寮費は徴収されますが、一般のアパートや下宿よりはずっと安く住めるとのことです。

「関学においては、4年生になると同期全員がフットボールに全てを賭ける決意をして、フットボールに全てを捧げる生活を一年間送る」という話は過去に聞いたことがありました。4年生になると全員で丸坊主になる、というのも、この決意の表れの一つであると伺っています。今回、「4年生になると自宅を離れ、グラウンドや部室の近くに住む」という習慣を初めてお聞きし、「一年間、自らをフットボール漬けにする」という4年生たちの覚悟を更に深く知りました。

深夜におけるミーティングの場(フリースペース左側)

深夜におけるミーティングの場(フリースペース右側)※会議テーブルの横にはキッチンあり

ホール目的の3番目に「C.深夜でもミーティングが出来る場所」があるということを知ったのが、今回の訪問で最大の驚きでした。
KGファイターズはもちろん立派な部室やミーティング部屋を持っておられることでしょうが、グラウンドや部室はすべて大学構内にあります。大学構内は治安維持のため、夜23時にはすべて閉鎖・施錠され、深夜遅くまで部室を使うことは出来ません。ところがファイターズホールは、部室から歩いてすぐの場所ではありますが、キャンパス外の施設ですので真夜中を過ぎても使用を続けることが出来る、という大きなメリットがあるのです。

一階奥にフリースペースと呼ばれる空間があり、ここが深夜ミーティングの場所になっています。
20畳くらいはありそうな部屋ですが、チーム全体が入れるような広さではありません。十数名も入れば満杯になるでしょう。ビデオフィルムを繰り返し見るためのTV画面があり、ソファーが2脚置かれています。フリースペースの隣には「ケアスペース」と呼ばれる治療用寝台が数台並ぶ部屋があり、ミーティングや練習の合間にも、ここで治療が受けられるとのことです。

私が前田管理人に「シーズン中に、この部屋で夜12時過ぎまでミーティングを行うことは、週に何回くらいありますか?」と質問したところ、「月曜日はオフ(休み)ですが、それ以外の日は毎日誰かが真夜中までこの部屋を使っていますよ。」との返事で本当に驚きました。

真夜中になれば当然帰宅のための電車は動いていませんが、4年生が皆、グラウンド周辺に住んでいるのであれば通学上の問題はありません。全てのことが「一つのことにつながっている」のです。

ファイターズホール設立趣意書であるパンフレットには、当時(2015年)主将であった橋本亮選手が次のようなコメントを載せています。
「今までは家にビデオを持って帰って、一人で見て、翌日に共有するというカタチでやっていたのですが、(ファイターズホールが出来たことにより)その場で共有出来て、問題こうやな、こうやなって。チョット気になったことがあれば、その日のうちに解決が出来て、次の日から新しいステップを踏めるというのは、すごく大きいと思います。(後略)」

また当時監督の鳥内秀晃氏は、設立趣意書に次のような文章を寄稿されています。
「言いたいこと言う、その代わりお互いサボられへん。基本的に我々は教育いうことをより一層打ち出したらええと思う。昔からスポーツを通じた人間形成と、いろんなクラブの人がよく言うけど、どこでやってるのんと。選手同士のいざこざはもちろんある。そうなったときにどうするか。『ほんなら今日ファイターズホールで話しようや』と。ここはそういう場所になったらええ。お互いに思ってること、いちばん言いにくいことぶつけ合って信頼関係って生まれる。意見を戦わせなアカン、あたりまえや。お互いに納得するまで話し合ったらええ。困ったら我々がおるで、と。」

私はKGファイターズ出身の友人の方々から、これまでも様々な形で「関学の強さの根源」を見聞きしてきました。今回また新しい「強さの根源」をひとつ示していただいたような気がしています。関学の方々は、長年に渡り慶應に対して温かい友情の手を差し伸べてくださっています。関学に対し、我々慶應の人間が「こういうことについて教えていただけませんか」と、きちんと頭を下げてお願いをすれば、包み隠さず大切なことを教えてくださると思っています。関学の中では当たり前におこなっていることで、慶應の中では誰もやっていない、誰も考えつかないような事柄がたくさん存在すると確信しているのです。
「もっと関学に学ぶという姿勢を、慶應は持つべきだ」というのが、昔からの私の基本姿勢です。

ファイターズホール、ソファーの上に置かれたホワイトボードに書かれた格言

最後にもう一つ、驚きの発見について申し上げます。ミーティングルームのソファーに、ホワイトボードが何気なく置かれており、そこには手書きの英文が書かれていました。

“The Only Way to Predict Your Future is to Create it”
(君の未来を予測する唯一の方法とは、君が自分自身で未来を創り上げることである)

私はこれを見て本当に驚きました。と申しますのは、私が2021年4月に自分の個人ブログ「アメフト名言・迷言集」に掲載し、公開している名言とほぼ同じものと思われたからです。

(清水のブログより)

「チャンピオンになる人は知っている。
未来を予測するための最も堅実な方法とは
『自分自身が未来を創り出すことだ』ということを。」

マイケル・ゲルブ 米国の文筆家

どちらがどちらの真似をした、と言うことではなく、関学の中に「先人・偉人たちの名言や格言を調べて学び、自分たちの目標設定や行動指針に役立てる」という習慣があるということだと受け止めています。これも「関学の強さの根源」の一つだと考えます。

「チャンピオンになりたかったら、チャンピオンがなすべき行動をおこなえ。
『チャンピオンになってから、チャンピオンがなすべき行動を取る』のではない。
 チャンピオンになりたいと心から願い、
 チャンピオンがなすべき行動を全てやり遂げた者たちの中から、
 真のチャンピオンが、ひと組だけ選ばれるのである。」

ビンス・ロンバルディ グリーンベイ・パッカーズ・コーチ


「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
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