【清水利彦コラム】ノースウェスタン大学の歴史 2026.10.29

10月13日に発表されたカレッジフットボールAPランキングにおいて、「ノースウェスタン大が4勝1敗で第25位」にランクされているのを見つけ、私は「おおっ!」と声を挙げました。

APランキングは、毎回25位まで発表されていますが、私のコラムでは、データが細かくなり過ぎるのを防ぐため、「ランキング第20位まで」を記録として扱い、平素21~25位は割愛して掲載しておりません。その後、更にミシガン州立大、ラトガース大を撃破し、ノースウェスタン大は6勝1敗でランクを20位まで上げています。強豪ペンシルバニア州立大を堂々と破った会心の勝利をYou Tube画像でご覧ください。(8分)

Penn State at Northwestern | Extended Highlights | Big Ten Football | 10/02/2026 – YouTube

なぜ私が「おおっ!」と叫んだかと言いますと、ノースウェスタン大は北西部BIG TENリーグの中でも飛び切り学力が優秀で、「北西部(五大湖周辺)の東大」と私が勝手に名付けている学校だからです。
今回は、このノースウェスタン大がどのような学校かについてお話しします。

2026年10月3日、強豪ペンシルバニア州立大に34-13と圧勝したノースウェスタン大。紫と白の鮮やかなユニフォームが目印です。

BIG TENリーグは、全米カレッジの有力リーグの中でも1896年創設と、最も古い由緒あるリーグです。当初はBIG TENリーグではなくWestern Conference という名称でした。当時は太平洋岸の各地域は未開の地で、「五大湖周辺がアメリカ合衆国文化の西の端」という感覚があったのです。

古くからのリーグメンバーとしては、シカゴ大、イリノイ大、ミシガン大、ミネソタ大、ノースウェスタン大、パデュー大、インディアナ大、ウイスコンシン大、アイオワ大、オハイオ州立大の10校であり、この中からシカゴ大が1946年「学生たちがフットボールに熱中し過ぎて、勉学が疎かになる」との理由によりフットボール部を廃部し脱退。1950年にミシガン州立大が加わったため、再び10校になり、BIG TENリーグを名乗りました。

BIG TENオリジナルメンバーというべき10校の学力ランキングを調べてみました。

全米には約2700校の4年制大学がありますが、オリジナルBIG TENリーグメンバーのほとんどが全米学力70位以内ですから、2700校のうち、全国の上位5%に入るとんでもない学業優秀校だらけと言えます。その中でもノースウェスタン大が学力ランキング15位と、BIG TENリーグの頂点にあるのです。

私が、「バンダービルト大(全米学力ランク10位)=SEC(南部)リーグ」「ライス大(同ランク12位)=テキサス州」「スタンフォード大(同ランク2位)=西海岸」と並んで、「ノースウェスタン大(15位)=北西部(五大湖周辺)」を「各地域を代表する私学の雄」と呼んでいるのは、このランキングに基づくものです。

バンダービルト大、ライス大、スタンフォード大、ノースウェスタン大に共通するのは、「学業が超一流でありながら、フットボール部もNCAA一部に所属し、全米王座獲得の夢をあきらめていない。真の文武両道をめざす大学である」ことです。
例えば、アイビーリーグのハーバード大やエール大も学力超一流であることは同じですが、彼らはNCAA二部に所属しているので、例えフットボールでシーズン全勝優勝を果たしても全米チャンピオンになることは出来ないのです。

私は「真の文武両道を目指す4つの大学」を心から応援しておりますし、慶應義塾大学も同様であって欲しいと心から願っています。

ノースウェスタン大学の歴史

1850年、シカゴに住む9人の名士(実業家、弁護士など)が集まって、イリノイ州にも大学を作ろうではないかとの意見をまとめました。9人が金を出し合い、基金を集めて、翌1851年から、イリノイ州最古の大学としてノースウェスタン大学が創設されています。イリノイ大学(1867年)やシカゴ大学(1890年)よりも歴史が古いのです。
9人は全員が敬虔なメソジスト信者でありましたが、当初から「入学希望者を信教によって差別しない」との方針を掲げ、自由闊達な校風を作り上げました。
シカゴの隣町であるエバンストンにキャンパスがあります。シカゴの中心からわずか20キロの距離にありますが、街中の喧騒から離れた、ミシガン湖のほとりにある、緑の濃い美しいキャンパスです。

ミシガン湖のほとりにある、美しいノースウェスタン大学キャンパス 出典:Wikipedia

私は1982年にノースウェスタン大学を訪れたことがあります。コロラド州に留学中の私は、夏休みを利用して、当時シカゴで勤務されていた元監督・川上洌先輩(昭和41年卒・故人)を訪問し、ご夫妻から歓待を受けました。そして川上先輩がノースウェスタン大学のキャンパスを案内してくださったのです。

ノースウェスタン大のユニフォームは伝統的に紫と白ですが、川上先輩が「この大学のキャンパスには、スクールカラーの花が咲き乱れる」と教えてくださいました。花の種類はクロッカスだったと思いますが、たしかに学内の至る所に、紫と白のスクールカラーの鮮やかな花畑が見られ、「すごく素敵で、むちゃくちゃカッコイイな!」と感動したことを覚えています。川上先輩には改めて感謝の気持ちで一杯です。

紫と白の花をつけるクロッカス

ノースウェスタン大学は経済恐慌の危機も乗り越えて成長・拡大を続け、20世紀当初には、「ハーバード大、ミシガン大と共に、米国の三大総合大学」と言われた時期もありました。
その後は、少数精鋭政策をとり、入学するのも卒業するのも非常に難しい大学として知られます。卒業生や教授陣の中から39名がノーベル賞を受賞しています。一方で体育活動も盛んで、卒業生の中にオリンピック大会でメダルを獲得した人が25名います。
学生数は23000人と小ぶりですが、なんと4年制(Undergraduate)の学生9000人に対して、大学院生が14000人います。「研究者のための大学」と言うことも出来そうです。

ノースウェスタン大学フットボール部の歴史

ノースウェスタン大学フットボール部(ワイルドキャッツ)を一言で表すならば、「かつては低迷を極めた時期もあったが、近年は本当に良く頑張っている」と言えるのではないでしょうか。

なにせミシガン大やオハイオ州立大が居るBIG TENリーグで129年前から戦い続けているのですから、勝つことは容易ではありません。まだ全米王座獲得の経験はありません。
1976~81年の6年間が最悪の暗黒時代で、3勝62敗1分という地獄を味わいました。この間に34連敗という当時のNCAA一部校の最長連敗記録も作っています。1972年~94年、23年シーズン連続負け越しという記録もあります。

ところが1995年、突然強くなり、BIG TENリーグ8勝0敗で優勝し、ローズボウルに出場し、AP最終ランク8位。この時が48年ぶり2回目のローズボウルでした。
この時以来、ノースウェスタン大は高いチーム力を維持しており、31年間でボウルゲーム出場16回と強豪校の地位を守っています。2020年にもシトラスボウルでオーバーン大を35-19で破り、AP最終ランク10位となりました。

ノースウェスタン大は、フットボールで好成績を挙げる一方、選手にきちんと学位を取らせる大学としても知られています。選手たちの卒業率(学位取得率)が他大学に比べて非常に高いのです。米国の強豪大学では、フットボール部で活躍中はほとんど授業に出ず、4年間の部活動が終わると中退の形でチームを去る者が居る学校もあります。「フットボールさえ上手なら、勉学の事はあまり気にしなくていい」という姿勢を見せる大学が多い中、ノースウェスタン大の文武両道の方針は際立っています。

ノースウェスタン大の今後の試合日程には、オレゴン大・アイオワ大・オハイオ州立大と強敵3連戦が控えており、勝ち続けることは容易ではないでしょう。それでもノースウェスタン大に、スタンフォード大、バンダービルト大、ライス大を加えた「文武両道の4校」には頑張ってもらいたいと心から願っています。

(おまけ) 全米カレッジ、中盤までの展開

全米カレッジフットボールは、レギュラーシーズンのほぼ半分を終えましたが、下剋上や番狂わせが相次いでおり、大騒ぎとなっています。
まずはプレシーズンと現在のランキング順位を比較した表をご覧ください。

シーズン前に25位までに入っていたが、現在は脱落しているチームが9つあります。その中には、オレゴン大、オクラホマ大、USC、ミシガン大等の超強豪校が含まれているのです。

上位常連校のアラバマ大、テキサス大は10位・11位に残っていますが、両校とも既に2敗。平年、この時期に2敗しているチームが10位に居るのは考えられないのですが、「他の強豪大学もコロコロ負けているので、辛うじて残っている」状態です。

このような状態の主な理由の一つは、「SECとBIG TENの2つのリーグに強豪校が集中したため、リーグ戦序盤から強豪同士の激突が多々起こっている」ことだと推測します。
アラバマ大やジョージア大の居るSECリーグにテキサス大・オクラホマ大が加盟して16校になり、ミシガン大やオハイオ州立大の居るBIG TENにオレゴン大・ワシントン大・USC・UCLAが加盟して18校の巨大組織になりました。
シーズン前半から次々にリーグ戦の好カードが組まれるので、テレビ局は大喜びでしょうが、選手・指導陣は毎週「胸突き八丁」の状態が続くので大変ですね。

一方、予想外の快進撃をみせているのが、UCLA(7勝0敗、7位)とケンタッキー大(7勝1敗、9位)、そして今回取り上げたノースウェスタン大でしょう。
UCLA(カリフォルニア大ロサンゼルス校)はロサンゼルス市内でUSCと並んで、人気と伝統のあるチームですが、過去20年で負け越し11回と平凡な戦績しか残せない状態に陥っていました。1998年以来、AP最終ランキングでTOP10入りしたことは28年間ありません。今年で創部(1928年)99年目にあたりますが、これまではシーズン10勝が最高でした。歴代最高の11勝を目指して今年は盛り上がっていることでしょう。まだAP認定の全米王座に着いたことはありません。

ケンタッキー大は歴史上、「バスケットボール部は超強豪だが、フットボール部はリーグのお荷物」と言われ続けてきました。フットボール部は全米王座経験がありませんが、バスケットボール部はなんと8回全米チャンピオンになったことがあります。
1915年の創部で、今年111年目という長い歴史を持ち、SECリーグには設立時から加盟している伝統校ですが、リーグ優勝は1950年を含め二回だけ。なんと1950年当時のヘッドコーチは、若き日のポール・ベア・ブライアント(のちアラバマ大伝説の名コーチ)でした。
ポール・ベア・ブライアントは、8年間ケンタッキー大を率いて60勝23敗5分 勝率.730という立派な戦績を残しましたが、1953年に学長と大ゲンカの末、退任しました。それ以来72年が経過しましたが、いまだにケンタッキー大は当時のベアの戦績を超えることが出来ないチームとも言えます。

このように話題満載でフットボールシーズンは後半に突入していきます。
今季これまでのベストゲームとしては、10月10日のテキサス大(当時ランク1位)vsオクラホマ大(ランク外)、10月17日のノートルダム大(当時ランク2位)vsブリガムヤング大(6位)の2試合を挙げます。是非You Tube画像でご覧ください。結果は書かないでおきますね。

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