清水利彦(S52年卒)
shimizu.toshihiko2@gmail.com
2024年度のユニコーンズは、新制度となった全日本大学選手権に関東3位として初めて出場するという画期的な一年になりました。全日本大学選手権(以下、選手権)で実現した関西学院大学vs慶應義塾大学の試合については、Unicorns Net1911号に山田健太さん(H7卒)が優れたゲームレポートを書いておられますので、そちらをお読みください。
私は選手権の新制度そのものの評価や今後の影響について述べてみたいと思います。
新制度により「12校によるトーナメントで大学王座を争う」、「決勝となる甲子園ボウルが、関西vs関東の東西対決ではなくなる可能性がある」と聞いて最初は本当にびっくりしました。
この新制度については、「3年くらい前から全国各地域の学生アメリカンフットボール連盟の方たちが何度も集まって、喧々諤々の議論を繰り返す中で作り上げたもの」と伺っています。
まずは、新制度発足にあたり、長期間に渡ってご苦労・ご尽力をいただいた多くの方々に、心から御礼を申し上げます。本当に有難うございました。
新制度発足の目的は、「各地域におけるアメリカンフットボールの普及・振興」と「日本全体のアメリカンフットボールの人気拡大」の2点であると伺っています。
私は、新制度がこの二つの目的に、将来的には大きく寄与していくだろうと考えています。
アメリカンフットボールの人気拡大について
フットボールの人気について「慶應の試合の有料入場者数」を例にとって確認してみましょう。
2024年、慶應は関東TOP8で7試合おこない、一試合当たりの平均入場者は739人でした。ただし、この数字には東京ドームでおこなわれた立教戦の1888人が含まれており、ドームの試合を除くと平均548人に下がります。
2005年は一部14校がA・B両ブロックに分かれてリーグ戦をおこなっていました。慶應は一部Bブロックで6試合おこない、平均入場者数は701人でした。(データは全て関東連盟HPより)
つまり、20年前と比較しても、入場者数はほとんど増えておらず(701→739)、東京ドームでの試合がなければ、むしろ観客は減って(701→548)しまっているのです。3000人収容できるアミノバイタルフィールドが、多くても1000人程度しか観客が入らず、ガラガラの状態であることは、20年前も今も変わりません。
観客数が増えない事を嘆くのではなく、「どうやったら観客数が増えるか」を真剣に考え、実行しなければなりません。
私は、観客数を増やすためには、「ハイレベルにあるチーム同士が激突し、手に汗握るような大接戦を展開し、来場してくれた方々が、『アメリカンフットボールって凄いな!こんなに面白いスポーツなんだ!また次の試合も観たい!』と感じながら帰ってもらうこと」に尽きると考えています。単純なことですが、このことを何度も繰り返してゆくしかない、と思っているのです。そのために今回の新制度は極めて有効であると考えます。
2024年度の大学公式戦全試合の中で、私が「面白かったな!すごい試合だったな!」と感じたのは次の2試合です。
11月23日 早大31-28関大 於味の素スタジアム
11月30日 法政17-17関学(延長法政3-0) 於スピアーズえどりくフィールド
特に法政vs関学の試合が最高でした。強いチーム同士ががっぷり四つに組んで、手に汗握るゲームを展開し、延長戦の醍醐味まで味わえました。関学の方々にとっては連覇を止められた苦い試合であったとは思いますが、まさに「Game of the Year」であったと確信します。
この上記2試合とも、「新制度の全日本大学選手権だからこそ実現した試合」であることを忘れてはいけないと考えます。
法政vs関学戦の舞台となったスピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場、スピアーズはクボタのラグビー部名称)は座席数4800。ここに5000人の観客が集まり、立ち見客が出ました。
「もっと広いスタジアムでやるべきだった」というご意見もあるかもしれませんが、私は「満席・立ち見」の状況の中で、最高の試合がおこなわれたことを高く評価しています。
「ガラガラのスタジアムよりも、超満員のスタジアムで観る方が、同じ試合でも興奮度はずっと高い」というのが私の持論です。「試合チケットに対する欠乏感がある方が、試合の価値は高まる」と思っているのです。
関学vs慶應戦も観衆3000人と、慶應の公式戦として今期最も多い人が集まりました。2025年もユニコーンズが大学選手権出場を目指して頑張って欲しいと心から願います。我々卒業生はまずTOP8試合場に足を運んで、アミノバイタルフィールドを満席にする努力をいたしましょう!
地方におけるアメリカンフットボールの普及・振興
大学選手権新制度は、各地域におけるフットボールの普及・振興にも役立っていくと確信します。
11月24日の法政vs中京大戦をオンラインで観ました。法政の最初2回の攻撃権を中京ディフェンスが3&Outに抑え、その間に中京オフェンスは4回ファーストダウンを獲得しました。一瞬法政が肝を冷やした事と思います。最後は法政30-6中京と力負けしましたが、中京大の実力はかなりのものと見ました。関東TOP8下位校と対戦したら面白い接戦試合になるのではないでしょうか。
中京大ヘッドコーチは、Xリーグの元指導者であると伺っています。本気で「打倒関東・関西」を狙っているなと感じました。
ただし、スケジュール的には中京大(在愛知県名古屋市)は大変気の毒でした。
11月9日 中京大64-0北海学園大(在札幌市) 於岐阜市長良川球技場
11月16日 中京大38-9九州大(在福岡市) 於福岡県春日市春日公園
11月24日 法政大30-6中京大 於久留米総合スポーツセンター(福岡県)
2週続けて名古屋から福岡まで遠征したわけで、中京大は多額の遠征費負担だったでしょう。特に、法政と中京大が両校にとって地元ではない福岡県久留米市で試合したのは、両校と各連盟にとって非常につらい事だったと思います。でも、前もって日程を決めて試合場を確保しているので仕方ありません。
これは私の提案ですが、「(2025年度から)関東・関西の1位校は準々決勝(初戦)をそれぞれの地元で行うこととする。これにより1位校の遠征費がかなり省けるので、そのかわり翌年(2026年)春に関東・関西1位校は、連盟の指定する地域に遠征してオープン戦をおこなうことを約束とする」という取り決めをするアイデアはいかがでしょうか?
こうすれば「関東前年1位校vsオール東北選抜軍の交流戦を、春に宮城県仙台市でおこなう」等の企画が可能となり、地域振興にもつながるのではないかと思います。
その他、気が付いた事(1)
法政vs関学戦をオンラインで観ていて、「法政のテント3基が、サイドラインに非常に近い場所に建てられており、観客の視界をかなり妨げている」ことに気付きました。
解説者の方も、「(テントによって)サイドライン際のプレーが見えません」と嘆いておられました。
一方、関学もテントを設置していますが、サイドラインから離れた、観客席のすぐ手前にあるため全く視線を遮りません。関学は「観客の眼」を意識してテント設置場所を決めていると感じます。
法政を批難しているのではなく、「慶應も含め、全てのチームがこの点に気を付けて試合をしましょう」と申し上げます。関東では、大学も高校もサイドラインに近すぎるところにテントを張る傾向を感じます。
将来、アメリカンフットボールの試合に大観衆を集めたいのであれば、今からこういうことを改めてゆかねばならないと思います。本場米国の試合で「テントが邪魔になってプレーが見えない」等と言う話は聞いたことがありません。
その他、気が付いた事(2)
甲子園ボウル(12月15日、立命館45-35法政)の翌朝、16日の毎日新聞朝刊に「9年ぶりの全国優勝。ご声援ありがとうございました」という、立命館による全面広告が出たので驚きました。
おそらく近畿版のみとは思いますが、いずれにせよ多額の費用がかかっていることは間違いないでしょう。アメリカンフットボール部による広告ではなく、立命館大学全体の意志としての出稿と推察します。立命館のフットボールチームは、学校から多大なる支援を受けているなと感じました。
Unicorns Net1914号で、今年度新主将の横手謙太朗君が「今年は日本一を達成します」という力強い抱負を語ってくれて大変頼もしく、また嬉しく思っております。
「日本一になる」ということは当然、立命館や関学にも勝つ、ということになります。そのためには、「関西の超強豪校たちを、どのような点で上回り、何を武器として、どうやって勝つか」という明確な戦略・方針を春のうちから持ち、対策を準備しておかねばならないと考えます。
指導者の皆さんや部員諸君はそこのところを是非考え抜いて、頑張ってもらいたいと思います。そして、私たち卒業生はチームに対する全力の応援・支援を続けましょう!!!
次号では2024年度全米カレッジフットボールの総まとめをお届けする予定です。
このコラムが掲載されるのは、おそらくスーパーボウルの寸前になりますね。(日本時間2月10日月曜8:30am開始)今回のスーパーボウルの最大の焦点は「チーフスの3連覇なるか」ですね。
これまでに7つのチームが3連覇に挑戦しましたが、3年目はスーパーボウルに駒を進めることも出来ませんでした。(パッカーズ、ドルフィンズ、スティーラーズ、49ers、カウボーイズ、ブロンコス、ペイトリオッツ)その点で3年連続決勝進出のチーフスは、既に新たな次元に駒を進めています。
※厳密に言いますと、第1回と第2回スーパーボウルのチャンピオンであるパッカーズは、スーパーボウルが開始される前年(1966年)にもNFL選手権で優勝していますので、第2回優勝の時点で既に3連覇を達成していたと言えます。その他パッカーズは1929~31年、まだNFL選手権試合が実施される前の時代に、「年間勝率1位チーム」として3連覇を果たしたことがあります。
「清水利彦のアメフト名言・迷言集」
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