GAME REPORT

【秋リーグ戦】vs 法政大学

2015年10月24日(土)  慶應義塾大学 対 法政大学

13:45 Kick Off  @富士通スタジアム川崎

天候 晴れ
1Q   2Q    3Q    4Q     計

慶應      14   7     7      7      35

法政      14    10     7      14        45
(ゲームレポートは後日お届けします)
得点経過

1Q   1:14 法政 #12→#11 52yd Pass

TFP成功(K#6)                <K0-7H>

2:49 慶應 #29(RB3年李) 19yd Run

TFP成功(K#11 3年手塚)          <K7-7H>

7:21  法政 #12→#81 21yd Pass

TFP成功(K#6)                   <K7-14H>

7:38 慶應 #5(QB2年小田)→#81(WR4年八木)

TFP成功(K#11 手塚)             <K14-14H>
2Q   5:12  法政 K#6 48yd FG成功       <K14-17H>

7:54 法政 #80 9yd Run

TFP成功(K#6)                   <K14-24H>

11:03 慶應  #6(RB4年田中英) 1yd Run

TFP成功(K#11 手塚)         <K21-24H>
3Q  6:31 慶應 #6(RB田中英) 71yd Run

TFP成功(K#11 手塚)         <K28-24H>

8:47 法政 #12→#80 7yd Pass

TFP成功(K#6)               <K28-31H>
4Q    6:15 法政 #21 4yd Run

TFP成功(K#6)                   <K28-38H>

10:07  法政 #21 1yd Run

TFP成功(K#6)              <K28-45H>

11:10  慶應 #29(RB李) 24yd Run

TFP成功(K#11 手塚)         <K35-45H>
STARTING MEMBER

Offense

RT#78   小野島 洋輝(3年)

RG#51   清野 武尊(4年)

C#59    浅原 宏太郎(3年)

LG#57   清水 憲久(4年)

LT#71    高瀬 智正(4年)

QB#5    小田 裕太(2年)

TE#85    林 健太(4年)

WR#9   寺園 貴文(4年)

WR#17     姜 勝大(4年)

WR#81   八木 雄平(4年)

RB#29    李 卓(3年)

K#11    手塚 太陽(3年)
Defense

DL#90   金子 陽亮(4年)

DL#93  岸 佑亮(2年)

DL#97  長塚 大(3年)

DL#99  佐藤 寛哲(3年)

LB#4   工藤 勇輝(2年)

LB#5   志茂 雅史(4年)

LB#41    須永 竜平(3年)

DB#1   兵頭 宣俊(3年)

DB#13  杉山 慶(3年)

DB#22  松崎 泰光(4年)

DB#25  藤井 弦一郎(3年)

P#77    簗瀬 武史(2年)

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【秋リーグ戦】VS日本体育大学

2015年10月10日(土)  慶應義塾大学 対 日本体育大学

15:25 Kick Off  @アミノバイタルフィールド 

天候 曇り

        1Q   2Q    3Q    4Q    

慶應     3    13     7     14     37

日体     8      3      6       8       25 

得点経過

1Q   6:12 日体 #25 1yd Run

               TFP成功(2 point conv.)       <K0-8N>

      9:36 慶應 K#11(3年手塚) 22yd FG成功  <K3-8N>

2Q   2:00  慶應 #29(RB3年李) 1yd Run

               TFP成功(K#11 手塚)       <K10-8N>

    8:47 慶應  #5(QB2年小田) 8yd Run

               TFP失敗(K#11 手塚)       <K16-8N>

    11:00  日体 K#12 55yd FG成功     <K16-11N>

3Q  6:24  日体 #16→#82 4yd Pass

               TFP失敗(2 point conv.)       <K16-17N>

    10:56  慶應 #6(RB4年田中英) 2yd Run

               TFP成功(K#96 4年島崎)       <K23-17N>

4Q    2:26 慶應 #5(QB小田)→#80(WR3年今沢) 19yd Pass    <K30-17N>

     6:53 日体 #10 5yd Run

        TFP成功(2 point conv.)       <K30-25N>

     8:13  慶應 #6(RB田中英) 25yd Run

        TFP成功(K#96 島崎)         <K37-25N>

STARTING MEMBER

Offense

RT#78   小野島 洋輝(3年)

RG#51   清野 武尊(4年)

C#59    浅原 宏太郎(3年)

LG#57   清水 憲久(4年)

LT#71    高瀬 智正(4年)

QB#5   小田 裕太(2年)

TE#85    林 健太(4年)

WR#9   寺園 貴文(4年)

WR#17     姜 勝大(4年)

WR#81   八木 雄平(4年)

RB#29    李 卓(3年)

K#11    手塚 太陽(3年)

Defense

DL#93  岸 佑亮(2年)

DL#94  萩原 周平(2年)

DL#97  長塚 大(3年)

DL#99  佐藤 寛哲(3年)

LB#4   工藤 勇輝(2年)

LB#41    須永 竜平(3年)

LB#42  井本 健一朗(2年)

DB#5   志茂 雅史(4年)

DB#13  杉山 慶(3年)

DB#22  松崎 泰光(4年)

DB#25  藤井 弦一郎(3年)

P#28    新宮 裕也(4年)

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関東TOP8

日大(4-0)75-14 中央(0-4)

法政(4-0)42-14 明治(0-4)

慶應(4-0)37-25 日体(0-4)

早大(4-0)55-0 専修 (0-4)

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日体大戦ゲームレポート

                                       H17松元竜太郎

【戦評】

10月10日に慶応大のリーグ第4戦、日体大との一戦がアミノバイタルフィー

ルドで 行われ、慶大は37―25で勝ち、開幕から4連勝とした。慶大は日体

大に8点を先制されるが、#29RB李のTDランなどで逆転に成功し、前半を

16―11で折り返す。後半に入っても#5小田、#4江守を中心とした攻撃で

得点を重ねる慶大に対して、日体大は2ポイントを成功させるなど追いすがる展

開が続く。守備はランでドライブされるものの、副将の#22DB松崎が要所で

2つのインターセプトを決めて逃げ切った。

第4節を終了して全勝は日大、法大、慶大、早大の4チームのまま。第5節から

はいよいよ全勝チーム同士が激突する。

【試合経過】

慶応のキックオフで試合開始。日体大の最初のドライブで、守備はランとパスを

織り交ぜた攻撃でじわじわ前進を許し、TDランを決められる。2ポイントも成

功して0―8。続く慶応のオフェンスはノーハドルからのマルチオフェンスであっ

という間にレッドゾーンに侵入するが、攻めきれずに#11K手塚のFGによる

3点止まり。2Qに入ると、好調のオフェンスが李、小田の連続TDランで16

―8と突き放し、守備も松崎がエンドゾーンでインターセプトを決めるなど、追

加点を許さない。しかし、前半終了間際に日体大が関東学生記録の56ヤードに

あと1ヤードと迫る55ヤードのFGを決めて、16―11で前半を折り返す。

後半に入っても、ディフェンスがランで前進を許し続けて、逆転のTDを決めら

れる。オフェンスは#6RB田中のTDランで再逆転に成功し、さらに小田から

#80今沢へのTDパスで30―17と突き放す。しかし、守備が日体大のラン

を止められない。4Qに再び1ポゼッション差となるTDランを決められて、3

0―25となる。続く慶応オフェンスは順調にドライブして田中がTDランを決

めると、松崎がこの日二本目のインターセプトで日体大の反撃を断ち、最終スコ

ア37―25で勝利し、開幕から4連勝とした。

■ランを出された理由

今季の慶応ディフェンスは、84ヤードに抑えた初戦の明治戦を除いて、ランで

150ヤード以上を稼がれる試合が続いている。この日も日体大のラン攻撃で1

73ヤードを許した。#93岸は楽しみな選手だが、それ以外のDT陣の選手層

の薄さ、LBの1対1でのタックリングなど原因はいろいろある。しかし、この

試合について言えば、相手のオフェンスラインが素晴らしかった。日体大のOL

は、5人中4人が2年生でほぼ高校未経験の選手たちだ。昨春はパスプロが持た

ないという理由で、5歩のタイミングのパス自体が存在しなかった。そんなユニッ

トを元鹿島&日本代表の井澤OLコーチが鍛え上げて、1年そこそこでサイズは

ないが質の高いコンビネーションブロックをする集団に変えた。力勝負で比較す

れば慶応の守備フロントより明らかに劣っているのだが、絶妙なタイミングのブ

ロックで、効果的なラン攻撃を続けた。相手のプレーに素直に敬意を表したい。

そして、日体大のOLのプレーは慶応オフェンスにも大きなヒントを与えてくれ

たはずだ。次節から対戦する法政、日大、早稲田のフロントは、慶応のOLより

も文句なく大きい。自分たちよりもサイズのあるDLを相手に、どうすれば李と

田中のランを出せるのか。この2週間をフルに使って突き詰めて考えてほしい。

■絶好調の#4QB江守

4年生のQB江守のパフォーマンスが素晴らしい。シーズン開幕を前にエースの

座は2年生の#5小田に譲ったが、ここまで途中出場ながら20回投19回成功

の95%と驚異的なパス成功率を誇っている。江守を起用した理由について、

「日体大戦前の練習のパス成功率が75%を超えていた」と、スタントHCは江

守が練習中から素晴らしいパフォーマンスだったことを明かす。

彼がこのまま好調を維持し続けてくれれば、3強との対決に向けて大きな戦力と

なる。今季の慶応オフェンスが持っている攻撃のカードは、大きく分けて3つだっ

た。①李と田中のラン、②小田のラン、③小田のプレーアクションパス。専修戦

と日体大戦では通常のパスもぽんぽん決まっていたが、3強の守備相手には同じ

ようにいかない。何度でも言うが、ここからは李卓のラン中心の攻撃が機能しな

ければユニコーンズの活路は開けない。そして、ランを出すために重要なのがプ

レーアクションパスに加えて、サイドスクリーンとアウトパターンのパスだ。つ

まり、ランを止めるために中に集まってくるLB、SF陣を、いかに外に広げら

れるかがポイントになってくる。

前述したとおり、小田はスラントやシームなど中に走り込んでくるWRに投げ込

むパスは得意だが、アウトやコーナーなどサイドライン際に落とすパスの精度は

低い。昨年、高木翼君が志水君や#86柴田に何度も決めていたパスと言い替え

ればピンと来るかもしれない。江守はこのタイプのパスが高木君ほどではないに

しろ、ある程度投げられる。④江守のパスが加わることにより、相手守備に的を

絞らせない攻撃の幅ができるのだ。法政戦の見どころでさらに詳しく解説しよう

と思うが、これから彼の出番はもっと増えるのではないかと予測している。

いよいよ10月24日の次節では、慶応と同じく全勝の優勝候補・法政と対戦す

る。来週はここまであえてふれてこなかった不安の残るキッキングも含めて、徹

底的に大一番の見どころをご紹介したい。まずはシーズン開幕前の前評判が低かっ

た中で、全勝で強豪との決戦までこぎづけてくれた現役選手、スタッフのみなさ

んにいちOBとして感謝したい。

(共同通信社 松元竜太郎・ 平成17年度会員)

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【秋リーグ戦】VS専修大学

2015年9月27日(日)  慶應義塾大学 対 専修大学

10:45 Kick Off  @富士通スタジアム川崎 

天候 曇り

        1Q   2Q    3Q    4Q    

慶應     21   20      7   10     58

専修      0     12     0    7       19

得点経過

1Q   1:14 慶應 #34(RB2年國府谷) 4yd Run

                TFP成功(K#11 3年手塚)      <K7-0S>

      3:04 慶應 #34(RB國府谷) 3yd Run

                TFP成功(K#96 4年島崎)      <K14-0S>

      8:22  慶應 #6(RB4年田中) 9yd Run

                TFP成功(K#11 手塚)         <K21-0S>

2Q   1:33  専修 #10→#1 13yd Pass

                TFP失敗(K#83)              <K21-7S>

      3:28 慶應  #4(QB4年江守)→#19(WR3年田邊) 5yd Pass

                TFP成功(K#96 島崎)        <K28-6S>

      7:59  専修 #10→#88 1yd Pass

                TFP失敗(2 point conv.)       <K28-12S>

     10:30  慶應 #4(QB江守)→#22(WR3年井上) 29yd Pass

                TFP失敗(K#11 手塚)         <K34-12S>

     12:00  慶應 #5(QB2年小田)→#81(WR4年八木) 33yd Pass

                TFP成功(K#11 手塚)         <K41-12S>

3Q  3:12 慶應 #5(QB小田)→#86(WR2年柴田) 6yd Pass

        TFP成功(K#11 手塚)       <K48-12S>

4Q    5:58 慶應 K#96(島崎) 32yd FG成功     <K51-12S>

      9:41  慶應 #10(QB4年麻和)→#13(WR2年岡本) 5yd Pass

        TFP成功(K#11 手塚)       <K58-12S>

     11:54  専修 #25 7yd Run

        TFP成功(K#83)             <K58-19S>

STARTING MEMBER

Offense

RT#78    小野島 洋輝(3年)

RG#51    清野 武尊(4年)

C#59    浅原 宏太郎(3年)

LG#57    清水 憲久(4年)

LT#71     高瀬 智正(4年)

QB#5      小田 裕太(2年)

TE#48     黒田 翔太(3年)

WR#9   寺園 貴文(4年)

WR#17       姜 勝大(4年)

WR#81   八木 雄平(4年)

RB#29    李 卓(3年)

K#11    手塚 太陽(3年)

Defense

DL#72   犬飼 和真(2年)

DL#90  金子 陽亮(4年)

DL#93   岸 佑亮(2年)

DL#97  長塚 大(3年)

LB#4   工藤 勇輝(2年)

LB#41    須永 竜平(3年)

LB#42  井本 健一朗(2年)

DB#5   志茂 雅史(4年)

DB#13  杉山 慶(3年)

DB#22  松崎 泰光(4年)

DB#25  藤井 弦一郎(3年)

P#77    簗瀬 武史(2年) 

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【戦評】

9月27日に慶応大のリーグ第3戦、専修大との一戦が富士通スタジアム川崎で

行われ、慶大は58―19で専大に勝ち、開幕から3連勝とした。慶大は#34

RB國府谷の連続TDランなどで第1クオーターに21点のリードを奪うと、

スタートQB#5小田をはじめとして、4人のQBがパス攻撃で専大守備を圧倒

した。ディフェンスは専大のラン攻撃で前進を許す場面もあったが、#18LB

中野のQBサックなどで要所を締めた。第3節を終了して全勝は日大、法大、慶

大、早大の4チームのまま。

【試合経過】

専修のキックオフで試合開始。慶応は最初のドライブでRB國府谷が4ヤードの

TDランを決めて先制する。続く守備が専修の攻撃をあっさりパントに追い込む

と、#9WR寺園が好リターンでゴール前に迫る。ここも國府谷が押し込んで7

点を追加。さらに1TDを加えて、1Qで21―0と大量リードを奪う。守備は

#93DL岸を中心に専大オフェンスに対抗するが、2Qに入るとロングパスと

オプションで前進を許し、2TDを献上。前半を41―12で折り返す。

後半に入っても慶応オフェンスの勢いは止まらない。小田が#86WR柴田にT

Dパスを決めると、4Qには#4江守、#12米内に続いて4人目のQBとして

出場した#10麻和がTDパスを決めて、合計58点を奪った。ディフェンスは

後半に入るとうまくアジャストして、#22DB松崎を軸に無得点に抑えていた

が、ツーミニッツのラストドライブでゴール前に迫られ、試合終了直前にTDを

許す後味の悪い幕切れとなった。慶応は最終スコア58―19で開幕3連勝とし

た。

■ランを生かすための布石

この日は前節の中央戦から一転して、プレーコールの6割近くをパスが占めた。

エースの小田は16回投11回成功で、207ヤード、2TD。4年生の江守も

10回投げて全てのパスを成功させるなど、上々の出来だった。しかし、私が言

うまでもなく選手たちは分かっていると思うが、自分たちの力を過信しないでほ

しい。パスがメインの攻撃では、法政や日大の守備にはおそらく全く通用しない。

なぜなら、両チームの守備は、慶応よりはるかに精度の高い味方のパス攻撃を相

手に、日々練習しているからだ。今年は#29李を中心としたランで勝負できな

ければ勝機はないとしつこく言っておきたい。

試合後、スタントHCに話を聞くことができなかったのであくまでも私の推測だ

が、この試合パスで攻めたのは、3強との対戦への布石の意味もあるだろう。つ

まり、慶応はパスもあるぞということを意図的に印象づけた感じがある。ここま

で明治、中央に対しては怒濤のランで押し切ったオフェンスだが、法政、日大、

早稲田の守備フロントはさらに数段レベルが上がる。ランを軸に攻めながらも、

効果的なパスによりチェンジアップできなければ、手詰まりになるだろう。そう

いう意味で、ランを効果的に出すための自分たちの武器を増やすことと、相手に

パスを印象づけてランに山を張らせないための布石を打つこと。専修戦のパス攻

撃には二つの意味があったと理解している。

ちなみにWR陣は質、量ともに豊富で、1対1でも十分に対抗できる戦力が整っ

ている。副将の#81八木、#19田邊あたりが、勝負どころでメインターゲッ

トになってくるだろう。

■期待されるLBのソロタックル

守備はこの試合のためにどれほど準備していたのかは分からないが、全体的には

不安材料の方が多く目についた。まず、最大の課題は専修のオプション攻撃で何

度もロングゲインを許してしまったことだ。ビデオを見ないと細かい原因は分か

らないが、画的には止まっているけどLBが1対1でキャリアを仕留められなかっ

た印象がある。昨年の法政戦、オプション攻撃に対して、LBのライト君がこと

ごとく1対1の状況をソロタックルで止めていた。今年のチームでは彼ほど信頼

できるタックラーは残念ながらまだいない。フットボールの基本でもあるが、最

後はきっちりタックルできるかどうかに尽きる。もう一度タックルを鍛え直して、

3強との対決に臨んでほしい。

もう1点気になったのが、簡単にロングパスを決められてしまったCB陣だ。特

にやられ方もよくなかった。エースCBの#13杉山は安定していたが、それ以

外の選手には不安が残った。確かに専修のバックフィールドはスピードがあり、

相手QBの調子も良かったが、このままでは法政と日大のパスには全く対抗でき

ないだろう。

いい話題もあった。DLは負傷から戻ってきた岸が中央に入ることにより、安定

感がぐっと増していた。LBでは1年生ながら随時試合に出場している#18中野

の動きがいい。特にQBサックで見せたパスラッシュのスピードは、慶応守備の新

たな武器になりつつある。まだまだ課題の多い守備だが、ぜひチーム内の競争も

含めて、さらに高いレベルを目指してほしい。

ここまで慶応はもちろん、法政、日大、早稲田の3強も順調に全勝で勝ち進んで

いる。特に現時点のチームの総合力としては、法政が頭一つ抜けていて、最も甲

子園ボウルに近いと見ている。慶応はその法政と第5節で対戦する。目の前の日

体大戦はもちろん、法政をどれだけ意識して準備ができているか。決戦の時は近

づいている。(共同通信社 松元竜太郎・ 平成17年度会員)

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【秋リーグ戦】VS 中央大学

2015年9月20日(日)  慶應義塾大学 対 中央大学

10:45 Kick Off  @富士通スタジアム川崎 

天候 晴れ

        1Q   2Q     3Q    4Q    

慶應     10    7      6     16     39

中央      3    10      7      0       20

得点経過

1Q   1:47 中央 #19  51yd FG成功      <K0-3C>

      7:39 慶應 #29(RB3年李)  12yd Run  

                TFP成功(K#11 3年手塚)      <K7-3C>

      10:03  慶應 K#11(手塚)  22yd FG成功 <K10-3C>

2Q   0:54  中央 K#19  44yd FG成功       <K10-6C>

     5:41  慶應  #29(RB李)  71yd Run

                TFP成功(K#11 手塚)      <K17-6C>

     9:31   中央 #12→#8  3yd Pass

                TFP成功(K#19)             <K17-13C>

3Q  7:52 慶應 #6(RB4年田中)  2yd Run

        TFP失敗(K#11 手塚)     <K23-13C>

   10:43  中央 #12→#8  10yd Pass

        TFP成功(K#19)           <K23-20C>

4Q    1:26 慶應 #29(RB李)  20yd Run

        TFP失敗(K#11 手塚)     <K29-20C>

      9:55  慶應 K#11(手塚)  22yd FG成功 <K32-20C>

     11:54  慶應 #29(RB李)  25yd Run

        TFP成功(K#11 手塚)     <K39-20C>

STARTING MEMBER

Offense

RT#78    小野島 洋輝(3年)

RG#51    清野 武尊(4年)

C#59    浅原 宏太郎(3年)

LG#57    清水 憲久(4年)

LT#71     高瀬 智正(4年)

QB#5     小田 裕太(2年)

TE#85     林 健太(4年)

WR#9   寺園 貴文(4年)

WR#17     姜 勝大(4年)

WR#81   八木 雄平(4年)

RB#29    李 卓(3年)

K#11    手塚 太陽(3年)

Defense

DL#60   河内 宥輝(3年)

DL#70   長野 靖(4年)

DL#90  金子 陽亮(4年)

DL#97  長塚 大(3年)

LB#4   工藤 勇輝(2年)

LB#26  池辺 悠太朗(3年)

LB#41    須永 竜平(3年)

DB#1   兵頭 宣俊(3年)

DB#5   志茂 雅史(4年)

DB#13  杉山 慶(3年)

DB#25  藤井 弦一郎(3年)

P#77    簗瀬 武史(2年)

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<中大戦ゲームレポート>

                                   H17松元竜太郎

【戦評】

9月20日に慶応大のリーグ第2戦、中央大との一戦が富士通スタジアム川崎で

行われ、慶大は39―20で中大に勝ち、開幕から2連勝とした。前半は中大に

先制点を許すなど拮抗した試合展開だったが、後半は#29RB李のランを中心

に攻撃を組み立てて、中大ディフェンスを崩した。守備はドライブされるものの、

#4LB工藤らを中心に要所を締めた。

【試合経過】

慶応のキックオフで試合開始。風下に立った慶応ディフェンスはパスで前進を許

すと、風にも乗った51ヤードのFGを決められて3点の先制を許す。その後は

パントを蹴り合う展開が続くが、パントを中央のリターナーがファンブルして、

敵陣からの攻撃権を得る。このチャンスにQB小田のランなどで前進すると、最

後はRB李のTDランで7―3と逆転に成功する。

2Qに入ると慶応のパントがブロックされゴール前のピンチを迎えるが、#13

CB杉山のインターセプトで無失点で切り抜ける。その後も互いに譲らず1TD

1FGで10点ずつを加えて、前半を17―13で折り返す。

後半に入ると両チームのランが止まらない。慶応は李と田中のアウトサイドのラ

ンを中心に前進を続けて、李のTDランで先に追加点を奪い23―13とするが、

中央も真ん中のランでドライブし、23―20と追いすがる。しかし、4Qに入

り李がこの日3本目のTDランで29―20と突き放すと、終了間際にも李が4

本目となるだめ押しのランを決めて、最終スコア39―20で、開幕2連勝を飾っ

た。

■炎天下で表れたデプスの差

17―13と慶応が4点のリードで前半が終了。この時点で慶応の勝利はほぼ間

違いないだろうと思った。両チームのトップの選手に力の差はほとんどない。し

かし、選手層には圧倒的な差があったからだ。この日は真夏のような日差しが照

りつける暑さで、各クオーターの6分が経過した時点でウォータータイムアウト

が取られていた。ほぼ固定されたメンバーで戦う中央に対して、慶応はQBとO

Lを除く全ポジションがローテーションしていた。特に、守備は11のポジショ

ンに対して、30人以上の選手が交代出場でプレーしていた。

後半開始早々、中央の選手が足をつって倒れた。その後も10人近くがフィール

ドに倒れたが、そのほとんどは疲労と消耗によるものだろう。一方の慶応は試合

終了まで選手たちがフレッシュな状態で戦い続けた。第4クオーター、選手たち

のフィジカルコンディションに比例するように、点差も大きく離れていった。

少し気は早いが、3強との最初の対決となる法政戦は、間違いなく守備のデプス

の完成度が問われる試合になる。法政の”ハイパーオフェンス”は10人のWR、

TEがローテーションで常にフレッシュな状態で攻撃を仕掛けてくる。その内7

人くらいはエース級の能力を持った選手だ。RB、OLすらもローテーションす

る。彼らの攻撃を11人で止めることは難しい。少なくとも交代しても力が落ち

ない20人ほどの守備メンバーが必要になるだろう。筒井守備コーチは春からずっ

と多くの選手を起用して、デプスの構築に努めてきた。その成果が今、確実に表

れている。

■覚醒し始めたOL

ラン、ラン、ラン。この日の慶応オフェンスは後半に李と#6RB田中のランで

押し切って、勝利をものにした。前述したスタミナ面の差はある。しかし、それ

を差し引いても、OLのブロッキングと二人のRBの走りは素晴らしかった。

そもそも私は試合の見どころで、#5QB小田のプレーアクションパスが鍵にな

ると書いた。これほどランが出るとは思っていなかったからだ。しかし、予想は

外れた。慶応のランオフェンス、OL陣の成長は、私の想定をはるかに上回って

いたのだ。まずは#71Tの高瀬、#57G清水の4年生コンビが頑張って、左

サイドのオフタックルのランから崩した。TE、WRのブロックも素晴らしく、

李と田中が何度もオープンを駆けあがった。守備が外に開くと、今度はRBが内

にカットバックを切って突進する。一人のタックルでは倒れない、李と田中のヒッ

トに対する強さも印象的だった。攻撃プレーの70%をランが占め、最終的にラ

ンで399ヤードを稼ぎ、勝利をたぐり寄せた。

ここまでランが出れば、当然パスも決まる。4Q、どとうのランでドライブを続

ける中、小田がLBの裏に走り込んだ#82WR蜂須賀にきれいにPAパスを決

めた場面があった。中央のLBは何とかランを止めようと、完全に前のめりになっ

ていた。ランで守備を前に引き寄せて、裏の空いているスペースにパスを決める。

これは今季の慶応オフェンスが目指すべき理想型だろう。小田は動きながらのパ

スやロングパスの精度は低い。しかし、WRが中に走り込むパターンに対して思

い切り投げ込むタイプの、ショートとミドルのパスはしっかり決めることができ

る。小田には苦手なロングパスやアウトパターンのパスを習得するよりも、得意

なインパターンのミドルパスの精度を徹底的に高めてほしい。攻撃の柱であるラ

ンプレーさえ出ていれば、今の小田のパス能力でも十分にオフェンスは成り立つ。

ランとPAパスで攻めて、第3ダウンロングを作らない。この攻撃を愚直に続け

てほしい。

今後もOLが成長すればするほど、ランの破壊力は増していく。OLがブロック

さえできれば、3強が相手でもエンドゾーンは決して遠くない。なにしろ、ボー

ルを持って走るのは日本代表のRBだ。QB高木君が抜けたことで期待値が低かっ

たオフェンスだが、攻撃の必勝パターンが見えてきた今、自信を持って自分たち

の理想のオフェンスを追求してもらいたい。

(共同通信社 松元竜太郎・平成17年度会員)

【秋リーグ戦】VS 明治大学

2015年9月5日(土)  慶應義塾大学 対 明治大学
14:00 Kick Off  @アミノバイタルフィールド
天候 曇り
        1Q   2Q     3Q     4Q     計
慶應     14    7      7      6     34
明治      3      0      0      7       10
得点経過
1Q   9:51 慶應 #5(QB2年小田)→#81(WR4年八木)  6yd Pass
                TFP成功(K#11 3年手塚)  <K7-0M>
      10:29 明治 K#19 27yd FG成功  <K7-3M>
        11:46  慶應 #5(QB小田)  41yd Run
                TFP成功(K#11 手塚)  <K14-3M>
2Q   6:12  慶應 #29(RB3年李)  37yd Run
                TFP成功(K#11 手塚)  <K21-3M>
3Q  2:00 慶應 #29(RB李)   10yd Run
        TFP成功(K#11 手塚)  <K28-3M>
4Q    3:02 慶應 #29(RB李)  1yd Run
        TFP不成功(K#11 手塚)  <K34-3M>
     11:09  明治 #18  3yd Run
        TFP成功(K#19)         <K34-10M>
STARTING MEMBER
Offense
RT#78    小野島 洋輝(3年)
RG#51    清野 武尊(4年)
C#59    浅原 宏太郎(3年)
LG#57    清水 憲久(4年)
LT#71     高瀬 智正(4年)
QB#5     小田 裕太(2年)
TE#85     林 健太(4年)
WR#9   寺園 貴文(4年)
WR#17       姜 勝大(4年)
WR#81   八木 雄平(4年)
RB#29    李 卓(3年)
K#11    手塚 太陽(3年)
Defense
DL#60   河内 宥輝(3年)
DL#93   岸 佑亮(2年)
DL#90  金子 陽亮(4年)
DL#97   長塚 大(3年)
LB#4    工藤 勇輝(2年)
LB#5   志茂 雅史(4年)
LB#41    須永 竜平(3年)
DB#13  杉山 慶(3年)
DB#22    松崎 泰光(4年)
DB#25  藤井 弦一郎(3年)
DB#44   内藤 大地(3年)
P#77    簗瀬 武史(2年)
※チームおよび選手のスタッツ(公式記録)は関東連盟のホームページ
で閲覧できます。http://www.kcfa.jp/
リーグ戦星取り表で、見たい試合の勝ち負け(得点・失点)の
ところをクリックすれば、スタッツが出てきます。
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明治大戦ゲームレポート
                                                       H17松元竜太郎(共同通信勤務)
【戦評】
9月5日に関東TOP8の開幕戦となる慶応大と明治大の一戦がアミノバイタル
フィールドで行われ、慶大は34―10で明大に勝った。慶大は序盤から攻守で
明大を圧倒。新エースの#5QB小田も自らのランとパスで2TDを決めるなど、
上々のパフォーマンスを見せた。
【試合経過】
慶応のキックオフで試合開始。明治の最初の攻撃をパントに追い込むと、慶応は
2シリーズ目のオフェンスで、小田が#9WR寺園にロングパスを通して敵陣に
入る。最後は#81WR八木にTDパスが決まり7点を先制。続くキックオフで
ビッグリターンを許すが、レッドゾーン守備でDB陣が攻守を見せてFGの3失点
にとどめる。続くオフェンスでは#29RB李のランなどで前進すると、最後は
小田が41ヤードを自ら走りきりTD。リードを広げる。2Qに入っても李のT
Dランで追加点をあげて、21―3で前半を折り返す。
後半に入っても慶応オフェンスの勢いが止まらない。最初のドライブでテンポよ
く前進すると、最後は李がTDランを決める。明治はパス中心の攻撃に切り替え
るが、#90DL金子のプレッシャー、#4LB工藤、#41LB須永のインター
セプトなどで反撃の糸口をつかませない。4Qにも李がこの日3本目となるだめ
押しのTDランを決めて、最終スコア34―10で開幕戦を制した。
■希望をもたらすオフェンスラインの成長
後半開始早々の李の9ヤードTDラン。このプレーが今季の慶応OLの成長を象
徴していた。インサイドゾーンで#59C浅原を中心に明治DLをゴリゴリと押
し込む。最後は李がゴール手前からもう一伸びしてエンドゾーンに飛び込んだ。
OLのランブロックが全てと試合の見どころを書いたが、主将と副将を務める明治
の強力な両DTを押し込んでのTDは、ユニコーンズの今季に希望をもたらすも
のだった。
しかし、その実力はまだ確固たるものではないことも明らかになった。3Qの続
くオフェンスからしばらく慶応のランが沈黙した。明治のディフェンスが仕掛け
ている様子もなかったので不思議だったが、慶応OLのメンツが入れ替わってい
た。第1、第2ダウンでランが出ずに第3ダウンロングでパスを強いられる。想
定していた悪いオフェンスのパターンだった。ちょっとメンバーが交代しただけ
で、相手に主導権を奪われてしまう。デプスを含めて、まだOLには真の実力が
ないということだ。
昨年は法政戦をはじめとして、ランが出ずに第3ダウンロングという状況でも、
高木君が何度も何度もパスを決めて局面を打開した。しかし、繰り返しになるが
小田にそれを求めるべきではない。第3ダウンロングを作らないようにすること
がオフェンスにとって最も重要であり、その成否はOLのパフォーマンスが握っ
ている。
■テンポを生み出した新エースの小田
2年生ながら、新たにユニコーンズオフェンスの司令塔を託された小田の出来は
どうだっただろうか。彼の一番いいところは闘争心、攻める姿勢を全面に出して、
テンポよくドライブを展開できるところだ。おそらくスタントHCも彼の攻撃的
なパフォーマンスを評価して、エースに抜擢したのだろう。自ら走れることも魅
力だが、今後はミドルパスの精度に磨きをかけてほしい。
これから対戦するチームは、李をはじめとした慶応のランを止めるために前がか
りのディフェンスを展開してくることは明らかだ。その裏を突くようなミドルパ
スをどれだけ正確に決められるかで、小田の真価が問われてくる。明治のSFに
インターセプトされたLBの裏に投げ込んだシームのパスがあったが、まさにあ
のパスを強豪相手に今後どれだけ決められるか。#19田邊をはじめとしてスピー
ドのあるWRも多いので、どうしても昨年までのロングパスを使いたくなるとこ
ろだが、あえてロングパスは投げない方がいいと思う。あれは40ヤードのパス
を正確にポイントに落とせる高木君の技術があったからなし得た技だ。小田が率
いるオフェンスは、ランとショート、ミドルのパスで着実にドライブする。初戦
でしっかり結果は出したのだから、シーズンを通して自分たちの攻撃スタイルを
確立し、完成度を高めてほしい。
■待たれるDTの成長
ディフェンスは力を出せば2本以内には抑えられると予想していたが、ほぼ想定
していたとおりの実力だった。スター選手こそいないが、春から筒井守備コーディ
ネーターが取り組んできたデプスの構築が功を奏して、メンバーが入れ替わって
もほとんど力が落ちない。タフなリーグ戦を勝ち抜いていく上で頼もしいディフェ
ンスに仕上がってきている。
明治のWRに落球が相次いだため、課題のCBを評価するまでにはいたらなかっ
たが、DLについては課題が明確になった。DEについては、主将の金子を筆頭
に昨年から経験を積んでいる#97長塚、#94萩原、今春OLからコンバート
された#72犬飼ら人材が豊富にいて、それなりにプレッシャーも与えることが
できていた。しかし、中央からのDTによる圧力が少なかった。3強の強力なオ
フェンスを止めるためには、スタータに抜擢された#60河内をはじめとして、
DTのもう一段の成長が必要になってくる。
最後にTDを許したことは課題だが、守備は幸先のいいスタートを切ったと言え
るだろう。これから対戦するチームにはプレーメーカーが多く、常に一発TDの
驚異をひめている。昨年、屈辱の全シリーズTDを奪われた日大をはじめとして、
今季のユニコーンズディフェンスがどのようなプレーを見せるのか、秋が深まっ
ていくのを楽しみに待ちたい。(共同通信社 松元竜太郎・平成17年度会員)

【春オープン戦】VS 日本体育大学

2015年4月11日(土)  慶應義塾大学 対 日本体育大学
17:00 Kick Off  @日本体育大学世田谷キャンパスグラウンド
天候 曇り
        1Q   2Q     3Q     4Q     計
慶應     10    0       7      7     24
日体      0     0       0      0        0
得点経過
1Q   2:47 慶應 #5(QB2年小田)→#22(WR3年井上翔) 7yd Pass
                TFP成功(K#11 3年手塚)  <K7-0N>
       6:06 慶應 K#11(手塚) 36yd FG成功  <K10-0N>
3Q   11:41 慶應 #18(QB3年山口)→#9(WR4年寺園) 5yd Pass
        TFP成功(K#11 手塚)  <K17-0N>
4Q    9:24 慶應 #29(RB3年李) 63yd Run
        TFP成功(K#26 3年池辺)  <K24-0N>
STARTING MEMBER
Offense
RT#77   簗瀬 武史(2年)
RG#78  小野島 洋輝(3年)
C#59   浅原 宏太郎(3年)
LG#51  清野 武尊(4年)
LT#71    高瀬 智正(4年)
QB#5    小田 裕太(2年)
TE#48    黒田翔太(3年)
WR#9   寺園 貴文(4年)
WR#17  姜 勝大(4年)
WR#81  八木 雄平(4年)
RB#29    李 卓(3年)
K#11   手塚 太陽(3年)
Defense
DL#69  岸 佑亮(2年)
DL#72  犬飼 和真(2年)
DL#97  長塚 大(3年)
DL#90  金子 陽亮(4年)
LB#42  井本 健一朗(2年)
LB#50  染矢 優生(2年)
LB#56    菅原 大源(3年)
DB#1  兵頭 宣俊(3年)
DB#13  杉山 慶(3年)
DB#21  金野 雄一郎(4年)
DB#22    松崎 泰光(4年)
P#77    簗瀬 武史(2年)
***************************************
日体大戦ゲームレポート
                                        H17卒  松元竜太郎
【戦評】
2015年の春季オープン戦で慶応大は日体大と対戦し、24―0で勝った。
前半、1QにTDパスとFGで慶応は10点を先制する。その後は両チームの
守備が奮闘してパントが続き、膠着状態のまま前半が終了。
後半に入ると3Qに#18QB山口から#9WR寺園へのTDパスで加点。4Q
には#29RB李がだめ押しの独走TDランを決めた。守備はラン中心の日体大
の攻撃を粘り強く抑えて完封した。
■番号変更で大慌て
金子主将体制となった新チームの初戦、相手は同じくTOP8の日体大だ。昨秋
は49―9で完勝しており、現時点でのチームの仕上がりを見るには絶好の相手
だった。
しかし、春の初戦というのは取材する側にとってとても難しい試合となる。そう、
新人が入ったり番号変更が行われているため、誰が誰だか選手を認識するのが大
変なのだ。昨季大ブレークした#19WR田邊や#81WR八木らに加えて、#
9のWRの動きがいい。この選手はこの試合でパントリターナーとしても好リター
ンを見せた。しかし、#9は昨季主将のDB三津谷君がつけていた背番号。昨年
の慶応高校の主将だったWR松岡とも思ったが、彼はもう少し身長が高かったと
記憶している。いったい誰だろう。
答えは4年生の寺園だった。昨年はレギュラーの座を下級生に譲りローテーショ
ンでの出場のみだったが、この日は4Qにゴール前でスクリーンパスをキャッチ
してTDを決めるなど、堂々たる活躍だった。
慶応のWRはアウトサイドにはエースの田邊に柴田、八木ら人材が豊富にそろっ
ている。寺園に加えて#16坂本、#17姜らがインサイドのWRとしてさらに
成長してくれれば布陣は盤石だ。この日の起用では寺園は中と外の両方プレーし
ていたが、ぜひインサイドを極めて昨季副将の志水君のような頼れる存在になっ
てほしい。
番号変更の話題でもう一つ。3Q、寺園へのTDパスを決めたのは「#18」の
QBだった。18番と言えば昨年までエースの高木翼君がつけていた背番号だ。
受け継いだのは3年生のQB山口だった。
やはり新チームの最大の課題は「ポスト高木翼」だろう。学生界ナンバーワンと
の評価もあった彼の穴を埋めることはできない。しかし、新しくエースとなるQ
Bがどれだけ試合を作れるかがユニコーンズにとって重要となる。日体大戦を見
た限りでは、エース候補は3人、#4江守、#10麻和、山口だ。昨シーズンは
年間を通して高木君が試合に出続けていたため、じっくり彼らのプレーを見るの
は初めてだ。簡単に三人の特徴をまとめると、まず江守は小柄だが機動力がある。
ポケットワークもなかなかいい。この日もスクランブルから二度ほどロングゲイ
ンを奪っていた。麻和はこれといって特徴は見あたらなかったが、安定感のある
バランスタイプ。山口はサイズがあり、とても自信を持ってプレーしていたよう
に見えた。これも「#18」を背負っているという自覚の表れなのではないかと
思う。
この日、QBが投げたパスはショートパスばかりで、ミドルレンジのパスはかな
り少なくロングパスは皆無だった。だから、肩の強さやパスの精度についてはま
だ評価することはできない。オフェンスラインも日体大の守備フロントに勝って
いたので、プレッシャーを受けたときの対処の様子もあまり見ることができなかっ
た。
彼ら3人がこの先どんなに成長したとしても、昨年のように60点、70点取る
爆発的なオフェンスを構築することは難しいだろう。やはりエースのRB李を生
かしながら、いかにランで時間をコントロールしてドライブできるかが大事になっ
てくると思う。そういう意味では今週末の学生王者関学戦はQBが猛烈なプレッ
シャーに襲われることになる。誰が出場するかはわからないが、その中でどれほ
ど平常心を保って確実なプレーを遂行できるのかに注目したい。
■楽しみな犬飼の成長
「今日は全員を出場させた」と試合後に筒井守備コーディネーターが言ったとお
り、とにかく守備選手がめまぐるしく代わった。筒井コーチによるとある程度軸
となる選手は見えてきている中で、さらに多くの選手にチャンスを与えようとい
う試みだ。
守備は昨年の主力選手がかなり残っており、さらなる飛躍が期待できるシーズン
だ。逆に言うとオフェンスに昨季のような得点力が期待できない分、守備がふん
ばらなければ試合に勝つことはできないだろう。さて、各ポジションを見ていこ
う。
まずDLは#90金子をはじめとしてDEはいい。LBは昨季一年生ながら主力
として活躍した#4工藤や#50染矢がいる。ライト君と江川君の抜けた穴は大
きいがきっと若手を中心にがんばって埋めてくれるだろう。DBも#1兵頭、#
22松崎のSFコンビが残り安定感は抜群だ。
では守備の課題はどこかというとずばりDTだと思っている。昨年は望月君がん
ばっていたが、今年は重量級のDLはほぼいない。当然DTが機能しなければラ
ンもパスも止まらない。昨年以上のレベルが求められるユニコーンズ守備にとっ
てここが最大のネックであり、秋までに何とかしなければならない命題だと思っ
ている。
そんな状況の中、輝くものを感じさせる選手がいた。OLからコンバートした2
年生の#72犬飼だ。まだ少し線は細いが、オフェンスラインに当たり負けしな
いフィジカルの強さとラッシュの激しさは完全にディフェンスライン向きだ。こ
の日も激しいラッシュでQBサックを決めていた。まだ体重も増えそうだし、彼
がDTの柱として成長してくれればディフェンスにとって貴重な戦力となる。
■関学戦は「ラン」がキーワード
4月18日に神戸の王子スタジアムで行われる関学戦は攻守共にランに注目しよ
うと思っている。日体大戦のプレー傾向を見ても明らかだが、スタントHCはQ
Bの負担をかなり軽くしている。ロングパスをはじめとして、新QBに春からい
きなり高度なパススキームはインストールしていないのだろう。となると関学相
手にランを出せるかどうかが鍵になる。李の個人技に頼るのではなく、OLがユ
ニットとして機能してどの程度ランをだせるかをしっかりチェックしたい。
一方の関学オフェンスも状況は似ている。2年間エースを務めた好パサーの斉藤
君が抜けたため、QBは3年生の伊豆が出てくる。彼はランは得意だが、パスは
まだまだ荒削りだ。関学大の鳥内監督は春の試合でも絶対に負けないようにゲー
ムを組み立てるので、まずはRB橋本と伊豆のランを中心に確実にドライブして
点を取りにくるはずだ。そこを慶応守備がランストップできるかどうかが鍵にな
る。
関学のOLはかなり強い。昨年の甲子園ボウルでは慶応が完敗した日大を相手に
中央のラン攻撃で粉砕した。さらにライスボウルでは社会人の富士通相手にもト
ラップブロックなどをうまく使って途中まではランをしっかり出していた。
つまり、日本トップレベルの関学のラン攻撃を慶応がどこまでしのげるかが秋を
占う上でも注目となる。
正直なところ、昨年期待していたような王者相手の勝利という結果は現時点では
難しいかもしれない。しかし、秋に向けて希望を抱いて帰りの新幹線に乗れるよ
うな内容を新生ユニコーンズには期待したい。(共同通信社 松元竜太郎・平成
17年度会員)

【秋リーグ戦】VS 早稲田大学

11月23日(日)慶応大―早稲田大@横浜スタジアム
        1Q   2Q   3Q   4Q    TOTAL
慶応大学    3     7   7    14     31
早稲田大学  10    7    7    0     24
【得点経過】
1Q4:59 早稲田 K#16 32yd FG成功 <K0-3W>
1Q10:49 慶應 K#15(2年手塚) 23yd FG成功 <K3-3W>
1Q11:48 早稲田 #30 (2yd Run)TFP成功(K#16) <K3-10W>
2Q4:30 早稲田 #7( 7yd Run)TFP成功(K#16) <K3-17W>
2Q8:30 慶應 #26(LB4年松下) 12yd Fumble Return TD
     TFP成功(K#15 手塚) <K10-17W>
3Q1:16 慶應 #18(QB4年高木翼) 20yd Run TFP成功(K#15 手塚) <K17-17W>
3Q9:39 早稲田 #7→#28 (25yd Pass)TFP成功(K#16) <K17-24W>
4Q7:58 慶應 #18(QB高木翼)→#86(WR1年柴田) 10yd Pass
     TFP成功(K#15 手塚) <K24-24W>
4Q10:06 慶應 #29(RB2年李) 32yd Run
     TFP成功(K#15 手塚) <K31-24W>
【STARTING MEMBER】
Offense
RT#78 小野島 洋輝(2年)
RG#51 清野 武尊(3年)
C#75  鶴長 伸之(4年)
LG#57 清水 憲久(3年)
LT#71 高瀬 智正(3年)
QB#18 高木 翼(4年)
TE#88 岩澤 忠尚(4年)
WR#7  志水 秀彰(4年)
WR#19 田邊 翔一(2年)
WR#86 柴田 源太(1年)
RB#1  高木 康貴(4年)
K#15  手塚 太陽(2年)
Defense
DL#53 萩原 周平(1年)
DL#97 長塚 大(2年)
DL#99 望月 洸(4年)
LB#4  工藤 勇輝(1年)
LB#26 松下 慶太郎(4年)
LB#54 ライト 太一(4年)
LB#56 江川 輝(4年)
DB#1  兵頭 宣俊(2年)
DB#9  三津谷 郁磨(4年)
DB#13 杉山 慶(2年)
DB#22 松崎 泰光(3年)
P#10  弘世 頌一朗(2年)
【戦評】
関東TOP8の最終節で慶応大が早稲田大と対戦し、31―24で逆転勝ちした。
慶大が秋のリーグ戦で早大に勝つのは16年ぶり。この結果により、慶大は5勝
2敗の3位でリーグ戦の全日程を終えた。
慶応のキックオフで試合開始。ディフェンスは#97DL長塚などが好守を見せ
るが、反則で前進を許し早稲田にFGで先制される。オフェンスは#18QB高
木翼から#88TE岩澤へのパスなどでテンポよくゴール前に進むが、攻めあぐ
ねてFGの同点止まり。
続くキックオフで早稲田がビッグリターン。これを早稲田がきっちりTDランに
結びつける。2Q、さらに7点を追加されて、慶応は3―17と最大14点のリー
ドを許す。慶応はQB高木のパスを中心に再びゴール前に迫るが、チップしたボー
ルをインターセプトされて追加点を奪うことができない。
ここで守備が奮起。#4LB工藤のタックルでファンブルしたボールを、#26
LB松下がリターンしてTD。10―17と7点差に迫る。
後半に入ると慶応オフェンスはQB高木のパスに#1RB高木康貴のランプレー
を交えて、敵陣に入る。WRの好ブロックもあり、高木のスクランブルで同点に
追いつく。早稲田もテンポよくドライブし、最後はスクリーンパスでTDを決め
て、24―17と慶応を突き放す。
4Q、慶応オフェンスはギャンブルをクリアして、レッドゾーンまで前進する。
最後は第4ダウンのパスを高木が#86柴田に決めて同点に追いつく。さらに守
備が早稲田の攻撃をパントに追い込むと、オフェンスは#81WR八木へのスク
リーンパスなどで敵陣に入る。#29RB李が個人技で決勝のTDを決めて、熱
戦となった「早慶戦」を春に続いて制した。
■危機救ったアグレッシブな守備
2Q、慶応ディフェンスは早くも正念場を迎えた。オフェンスは順調にドライブ
していたが、反則や不運もあって2度のゴール前のチャンスを生かせなかった。
3―17とリードされた状況で追加点を奪われれば、試合の大勢が決まりかねな
い。
第3ダウン5ヤードのパスの場面。空いたWRを見つけられない早稲田の#7Q
B坂梨が、たまらずポケットから逃げる。#4LB工藤が急襲してファンブルを
誘発。#26LB松下がこぼれたボールをリカバーすると、リターンTDを決め
てモメンタムを一気に引き戻した。
試合の分岐点となったこのプレーには、守備全員の力が結集されていた。まず、
DB陣の完璧なカバーでパスを投げさせない。さらにDL陣が圧力をかけてQB
をポケットの外に追い出し、最後はLBが仕留めた。
早稲田のOLは強い。正直に言うと、この試合ではランが止まらなくなる可能性
もかなりあると思っていた。だが、ディフェンスは#97望月らを中心に、LO
S上で力強く対抗した。法政が121ヤード、日大が129ヤード奪われた早稲
田のラン攻撃をわずか99ヤードに抑えて、試合の主導権を渡さなかった。
■「ゾーン」に入ったオフェンス
試合時間残り3分、24━24の同点の場面で早稲田がパントを蹴った。この時
点で慶応の勝利を確信した。
この日のオフェンスは良い面と悪い面が交互に表れた。早稲田の強力なフロント
に対してランは出ないと思っていたが、ОLが予想以上にがんばって#1高木康
や#29李の走路をこじ開けた。一方で不要な反則を犯すなど要所でミスが出て、
得点チャンスで決めきれなかった。肝心のパスプロテクションでは、春季以来の
Cで起用された#75鶴長を中心に、早稲田のDLと一進一退の攻防を続けてい
た。
17━24とリードされて迎えた4Qのドライブでも、早稲田ディフェンスは簡
単に前進を許してくれない。2回のギャンブルをフィールドにいる11人全員が
高い集中力を発揮して、何とか乗り切った。勝負のパスをキャッチしたWRは、
今季最も成長した#19田邊と#86柴田だった。
このドライブを同点TDで締めくくった瞬間、慶応のオフェンスが本当に一つに
なったのを感じた。「もうここから先は彼らの攻撃は止まらないなだろう」。ラ
ストドライブでは繰り出すプレーが次々にゲインを生んで、最後は#29RB李
が緩急をつけた鋭いカットバックで守備を6、7人抜き去り、慶応ファンで埋まっ
たスタンドを歓喜の渦へと変えた。
■二つの「1位」
関東学生リーグは全日程を終了し、リーグの個人記録で慶応の選手が二つの項目
でトップに輝いた。QBの高木翼とPの弘世頌一朗だ。
高木はパスを211回投げて154回成功。1813ヤードを稼いで、16個の
TDを積み重ねた。パス成功率は73パーセントでQBレイティングは164。
どれも素晴らしい数字だが、彼のプレーを見ていて最も優れていると感じたのは、
強いリーダーシップと勝負強さだ。第4ダウンのギャンブルなど、勝負どころの
パスをことごとく決めた。キャッチアップを強いられた、法政戦と早稲田戦での
パフォーマンスは圧巻だった。
一方の弘世は16回のパントを蹴って、陣地を通算で690ヤード挽回した。最
長63ヤードを含む平均43ヤードは立派な数字だ。今後さらに彼に期待したい
のは、「インサイド20」だ。弘世のパントは飛距離、滞空時間ともに素晴らし
いのだが、飛びすぎてタッチバックになってしまうことが多い。コントロールパ
ントの技術を磨いて、敵陣20ヤード以内にボールを止められるようになれば、
慶応はフィールドコントロールで大きな優位を保てるだろう。
さらにランキングは2位だが、Kの手塚太陽もリーグ戦で6本のフィールドゴー
ルを決めて、チームに大きく貢献した。弘世と手塚はまだ2年生。二人が順調に
成長してくれれば、慶応のキッキングチームの未来は明るい。

【秋リーグ戦】vs中央大学

11月9日(日)慶応大―中央大@横浜スタジアム
    
       1Q	2Q	  3Q	  4Q	   TOTAL
慶応大学	7      7	 10	   0	   24
中央大学	3        7        0      7      17

【得点経過】
1Q8:23 中央 K#95 29yd FG成功 <K0-3C>
1Q10:26 慶應 #18(QB4年高木翼)→#19(WR2年田邊) 15yd Pass
     TFP成功(K#15 2年手塚) <K7-3C>
2Q3:35 中央 #12→#11(15yd Pass)TFP成功(K#95) <K7-10C>
2Q7:23 慶應 #29(RB2年李) 2yd Run TFP成功(K#15 手塚) <K14-10C>
3Q2:16 慶應 K#15(手塚) 29yd FG成功 <K17-10C>
3Q6:56 慶應 #18(QB高木翼)→#19(WR田邊) 26yd Pass
     TFP成功(K#15 手塚) <K24-10C>
4Q0:06 中央 #12→#3(1yd Pass)TFP成功(K#95) <K24-17C>


【STARTING MEMBER】
Offense
RT#75 鶴長 伸之(4年)
RG#78 小野島 洋輝(2年)
C#77  浅原 宏太郎(2年)
LG#51 清野 武尊(3年)
LT#71 高瀬 智正(3年)
QB#18 高木 翼(4年)
TE#88 岩澤 忠尚(4年)
WR#7  志水 秀彰(4年)
WR#19 田邊 翔一(2年)
WR#86 柴田 源太(1年)
RB#1  高木 康貴(4年)
K#15  手塚 太陽(2年)

Defense
DL#90 金子 陽亮(3年)
DL#97 長塚 大(2年)
DL#99 望月 洸(4年)
LB#4  工藤 勇輝(1年)
LB#26 松下 慶太郎(4年)
LB#54 ライト 太一(4年)
LB#56 江川 輝(4年)
DB#1  兵頭 宣俊(2年)
DB#6  大倉 夏輝(4年)
DB#9  三津谷 郁磨(4年)
DB#13 杉山 慶(2年)
P#10  弘世 頌一朗(2年)


【戦評】
関東TOP8の第6節で、慶応大が中央大と対戦し、慶大が24―17で勝った。
慶大のリーグ戦成績は4勝2敗となり、早大と並んで3位につけている。
慶大は最終節で早大と対戦。この試合に勝てば3位、負ければ4位で今シーズン
を終える。

慶応のキックオフで試合開始。前節の日体大戦同様に守備が好調な立ち上がりで、
中大オフェンスをパントに追い込む。慶応の攻撃は#18QB高木翼のパスで
ゴール前に迫るが、中大のLBにインターセプトされて自陣まで返される。この
ピントを守備がFGでしのぐが、中大に3点を先制される。

続く慶応オフェンスは高木のパスが好調。最後は#19WR田邊にTDパスを
通して逆転する。第2Qには両チームがTD1本ずつを決めて、14―10で
前半を折り返す。

後半に入ると、慶応は#15K手塚のFGで3点を追加、さらに高木から田邊へ
この日2本目のTDパスが決まり、中大を突き放す。追いすがる中大は粘り強く
ドライブすると、4Q開始早々にTDパスを決めて1本差に迫る。

ここから慶応はラン主体の攻撃に切り替えるが、中大ディフェンスがこれをシャッ
トアウト。#44LB菅原ら慶応守備も粘ってパントの応酬が続く。中大はツー
ミニッツオフェンスでレッドゾーンに迫るが、最後はゴール前1ヤードでタイム
アップ。慶応が接戦を制して4勝目をあげた。


■エースの条件
#19WR田邊が帰ってきた。2つのTDパスをキャッチするなど、勝利に大き
く貢献した。2本ともが縦のロングパスで、DBを置き去りにして決めたものだ。

決勝点となった3QのTDパスを振り返ってみたい。敵陣26ヤードまで攻め込
んだ慶応オフェンス。ここでQB高木はケイダンス(セット、ハット、ハットと
言ってプレーを始めようとする)により、中大守備がブリッツを入れることを察
知する。WRが1対1になることが分かると、すぐに作戦を変更して、田邊にT
Dパスを通した。

この素早いオーディブルには高木の田邊への信頼が見て取れる。「1対1できっ
と勝ってくれるだろう」。こういうWRがいると、QBは自信を持ってプレーを
組み立てられるし、思い切って奥に投げ込める。つまり、このTDパスは田邊の
スピードと春から積み上げてきた勝負強さによる信頼が生んだのだ。彼は高校で
はフットボール未経験の2年生だが、既にエースWRの条件を兼ね備えている。


■ディフェンスの驚異的な粘り
14点差がついた3Q終盤、中大オフェンスがゴール前に迫る。何としても
TDを決めたい中大は、ランで押し切ろうとする。ゴール前1ヤードの攻防を
慶応ディフェンスは5プレー連続で制し、最後は6プレー目に中大がプレー
アクションパスでTDを決めた。

中大OLと慶応の守備フロントにそれほど力の差があるわけではない。守備全員
が一丸となって、気迫で止めたという感じだった。1ヤードの状況を何回も連続
で止めるということは、簡単ではない。最後はフェイクパスを決められたが、
中大のオフェンスコーディネーターに「ランではTDを取れそうもないな」とあ
きらめさせたということだ。この場面での守備の気迫と集中力は賞賛に値するだ
ろう。

この日のオフェンスは高木が2つのインターセプトを奪われたのをはじめとして、
決して調子が良くなかった。特に7点差に迫られた4Qは、2連続で3rdアウト
となるなど、守備に負担がかかった。この日活躍した2年生の#97DL長塚を
筆頭に、若いディフェンス陣がこの試合を最後まで守りきったのは、大きな自信
につながったのではないか。


■見たかった「幻のラストプレー」
最後まで守りきったと書いたが、実を言うと最後は少し消化不良でゲームセット
となっている。

試合時間残り14秒。7点差を追う中大オフェンスは、第4ダウンのギャンブル
を3回成功させて、ゴール前19ヤードまで前進した。ここでハドルを組んでい
る最中に時計が動き出す。中大は残り1秒でかろうじてプレーを開始したが、
ポストパターンのパスをキャッチしたWRを、慶応のSFがゴール前1ヤードで
タックルして、試合が終わった。

なぜこのような事態が起きたのか。中大は直前のプレーがアウトオブバーンズだ
と思ったのだ。だから、ゆっくりとハドルを組んでいた。審判の判定はインバー
ンズで、レディ・フォー・プレーの合図と共に時計が動き出して、ラストプレー
トなった。試合終了後に中大は審判の出したシグナルについて抗議をしたが、判
定はくつがえらなかった。

つまり、中大は最低でもあと2回はプレーできると考えていたのだ。結果的にラ
ストプレーとなったサインは、必ずしもTDを狙ったものではない。中大のQB
はロングパスの精度は低かったが、ミドルパスを必死につないでドライブしてきた。
何度もギャンブルをクリアした勢いがあった。このモメンタムをつかんだオフェ
ンスに対して、慶応の若い守備陣が守りきることができるのかをとても興味深く
見守っていた。中大がゴール前1ヤードでファーストダウンをとって、スパイク。
本来はあるはずだった最後の勝負のプレーの行方を見てみたかった。勝負の世界
に「たられば」は禁物だが、そんなことを考えた。

【秋リーグ戦】vs日本体育大学

10月26日(日)慶應大―日体大@アミノ

1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
慶應大学 21 14 14 0 49
日本体育大学 0 0 0 9 9

【得点経過】
1Q 4:11慶應#18(QB4年高木翼)→#7(WR4年志水) 5yd Pass
TFP成功(K#15手塚)<K7-0N>
1Q7:42慶應#18(QB高木翼)21yd Run TFP成功(K#15手塚)<K14-0N>
1Q11:16慶應#6(RB3年田中英)34yd Run TFP成功(K#15手塚)<K21-0N>
2Q11:17慶應#18(QB高木翼)→#23(WR4年畑)8yd Pass
TFP成功(K#15手塚)<K28-0N>
2Q11:48慶應#18(QB高木翼)→#16(WR3年坂本健)4yd Pass
TFP成功(K#15手塚)<K35-0N>
3Q2:51慶應#29(RB2年李)28yd Run TFP成功(K#15手塚)<K42-0N>
3Q11:37慶應#29(RB李)31yd Run TFP成功(K#15手塚)<K49-0N>
4Q10:06日体SAFETY<K49-2N>
4Q11:43日体#16→#19(8yd Pass)TFP成功(K#12)<K49-9N>

【STARTING MEMBER】
Offense
RT#75    鶴長 伸之(4年)
RG#78   小野島 洋輝(2年)
C#77       浅原 宏太郎(2年)
LG#51    清野 武尊(3年)
LT#71     高瀬 智正(3年)
QB#18    高木 翼(4年)
TE#88    岩澤 忠尚(4年)
WR#17   姜 勝大(3年)
WR#81   八木 雄平(3年)
WR#86  柴田 源太(1年)
RB#1      髙木 康貴(4年)
K#15   手塚 太陽(2年)

Defense
DL#53  萩原 周平(1年)
DL#95  佐藤 寛哲(2年)
DL#97  長塚 大(2年)
LB#26  松下 慶太郎(4年)
LB#50  染矢 優生(1年)
LB#54     ライト 太一(4年)
LB#56  江川 輝(4年)
DB#1    兵頭 宣俊(2年)
DB#21  金野 雄一郎(3年)
DB#22    松崎 泰光(3年)
DB#24    吉村 奬太(3年)
P#10     弘世 頌一朗(2年)

【戦評】
関東TOP8の第5節で、慶応大が日体大と対戦し、49―9で勝った。これで
慶大のリーグ戦成績は3勝2敗となり、早大と並んで3位につけている。

慶応のキックオフで試合開始。慶応ディフェンスは日体大の最初の攻撃を3つで
パントに追い込むと、オフェンスは#18QB高木翼が確実にパスを決めて前進
する。最後は#7WR志水にアクロスパターンのパスを決めて先制。

その後、ディフェンスはこの日初めてスターターに起用されたスピード派の
1年生DL萩原らフロントがプレッシャーをかけ続け、4シリーズ連続で
ファーストダウン更新を許さない。

オフェンスも#29李、#1高木康、#6田中の3人のRBが走りまくって、
TDを重ねる。高木は1Qに投じた11本のパスを全て成功させる完璧な立ち上
がりを見せる。

その後は不用意なパスをインターセプトされる場面があったが、3Qまでは攻守
共にほぼ完璧な出来で49―0と大量リードを奪う。4Q終盤にオフェンスのミ
スからセーフティーで2点を献上。試合終了間際にもTDを許して、最後はやや
後味の悪い展開になったが、49―9の大勝で3勝目をあげた。

■途切れなかった集中力
法政と日大に敗れて、甲子園ボウルへの道が絶たれたユニコーンズ。モチベーショ
ンが心配される試合だったが、選手たちは最高の集中力を見せてくれた。

まずディフェンスについて、日体大の攻撃で最も警戒すべきは#16QB辻の
オプションだった。法政、日大相手にもかなりゲインを奪い、TDランも決めて
いる。しかし、法政相手に既にオプション対策を実行している慶応ディフェンス
は、これをきっちり止める。DLが押し込み、#54LBライトをはじめとした
LB陣が次々にタックルを決める。#1DB兵頭の上がりも素晴らしかった。兵
頭はこの試合インターセプトも決めるなど、ボールへの嗅覚も鋭い。まだ2年生
だがこれから守備の中心選手になっていくだろう。前回ご紹介した#4工藤と#
50染矢の1年生LBコンビに加えて、慶応高校でベストアスリートとして活躍
したルーキーのDL萩原も上々のデビューを果たした。萩原については、「太り
にくい体質だから、大学ではDBをやったらいいんじゃないか」と言う高校コーチ
がいた。DBとしてもプレーできるほどのスピードを持ったDLなのだ。彼の今
後の成長に期待したい。

この日のディフェンスは終了間際にTDを決められたこと以外は、完璧な出来だった。
交代選手も自分の役割をしっかり果たして、層の厚さも見せた。各ポジションで
若手が多く活躍していることからも、ディフェンスの未来は明るいだろう。

■不安残る「ポスト翼」
4Q、ディフェンスがゴール前1ヤードで日体大の決死のギャンブルを阻止して、
完封をキープした。続くオフェンスは#18QB高木翼に代わって、3年生の#
4江守が出場。そのファーストプレーでエクスチェンジミスが起こり、セーフティー
の2点を献上することになった。

この時のスコアは49―0。試合は既に決まっている。しかし、もしも接戦であ
れば、このミスはきっと致命的なものになっていただろう。フットボールはオフェ
ンスとディフェンスの信頼関係で成り立っている。この日初めて迎えたゴール前
のピンチを、ディフェンスが必死に凌いだ。オフェンスとしてはこの奮闘に応えて、
最低でもパントはきっちり蹴らなければならない場面だ。しかし、結果は1プレー
目でミスによるセーフティー。最悪の結果だ。この後、終了間際にTDを奪われ
たが、これはオフェンスのミスがもたらしたと言っても過言ではないだろう。

このエクスチェンジミスが誰のせいなのか分からないし、そこは重要ではない。
問題は今年のチームは春からずっと、QB高木が抜けた瞬間に全く別のチームに
なってしまうということだ。ランが出ない、パスが決まらないのはしょうがない。
それよりも、ファンブルをはじめとした初歩的なミスを犯して、自滅する光景が
続いている。今年のチームは高木という学生界トップレベルのQBがいて、彼の
能力で局面を打開してきたことも多い。一からチームを作り直す来季、自分たち
を見つめ直して大きく成長しなければ、再び甲子園を狙えるチームはできないだ
ろう。

■ロスを突破さえすれば
法政戦、日大戦と完璧に封じられたRBの李。彼はここまで5試合で360ヤード
を稼いでいるが、そのほとんどは立教戦と日体大戦で走ったものだ。明治、法政、
日大相手にはほぼ完封されている。日大戦のゲームリポートで「李は壁に向かって
ぶつかり続けた」という表現をした。つまり、どんなにRBが素晴らしくても、OL
が走路を切り開いて、ロスを突破させなければその走力は生かされないのだ。残念
ながら法政、日大相手にはそれができなかった。

この日は違った。彼は一度ロスを抜けることさえできれば、素晴らしい走りがで
きるランナーであることを再び証明した。40ヤード4秒4の快足を生かして、
ロングゲインを連発する。1対1では負けないし、当たりにも強い。何より、ボール
セキュリティーがしっかりしているところが、RBとして最も信頼できる理由だろう。

先週末の関東高校大会、早慶戦を見ていて、明るい兆しを感じた。慶応高校のO
Lがかなりサイズアップしているのだ。結果として試合には僅差で負けてしまっ
たが、力強いブロックを連発して、ランナーの走路を切り開いていた。
彼らが大学に入ってさらに成長してくれれば、エースの李を生かす力強いランオ
フェンスが出来上がる。そう思った。(共同通信社 松元竜太郎・平成17年度
卒)

【秋リーグ戦】vs日本大学

10月11日(土)慶應大―日本大@アミノ

1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
慶應大学 14 14 14 21 63
日本大学 0 7 0 13 20

【得点経過】
1Q4:11日大#18→#22(7yd Pass)TFP成功(K#11)<K0-7N>
1Q11:46日大#34(1yd Run)TFP成功(K#11)<K0-14N>
2Q3:06慶應#18(QB4年高木翼)→#7(WR4年志水)11yd Pass
TFP成功(K#15 2年手塚)<K7-14N>
2Q5 :39日大#46(2yd Run)TFP成功(K#11)<K7-21N>
2Q7:01日大#18→#22(13yd Pass)TFP成功(K#11)<K7-28N>
3Q4:29日大#18→#89(24yd Pass)TFP成功(K#11)<K7-35N>
3Q8:57日大#18→#89(5yd Pass)TFP成功(K#11)<K7-42N>
4Q2:03日大#10→#11(16yd Pass)TFP成功(K#88)<K7-49N>
4Q5:04日大#10→#11(2yd Pass)TFP成功(K#88)<K7-56N>
4Q6:08慶應#18(QB高木翼)→#84(WR3年寺園)15yd Pass
TFP成功(K#15 手塚)<K14-56N>
4Q9:40日大#10→#87(12yd Pass)TFP成功(K#88)<K14-63N>
4Q12:00慶應#18(QB高木翼)→#19(WR2年田邊)14yd Pass<K20-63>

【STARTING MEMBER】
Offense
RT#75    鶴長 伸之(4年)
RG#78   小野島 洋輝(2年)
C#77    浅原 宏太郎(2年)
LG#51    清野 武尊(3年)
LT#71     高瀬 智正(3年)
QB#18    高木 翼(4年)
TE#88    岩澤 忠尚(4年)
WR#7     志水 秀彰(4年)
WR#19   田邊 翔一(2年)
WR#86  柴田 源太(1年)
RB#1       髙木 康貴(4年)
K#15       手塚 太陽(2年)

Defense
DL#69  岸 佑亮(1年)
DL#95  佐藤 寛哲(2年)
DL#97  長塚 大(2年)
DL#99  望月 洸(4年)
LB#4    工藤 勇輝(1年)
LB#26  松下 慶太郎(4年)
LB#54     ライト 太一(4年)
DB#1    兵頭 宣俊(2年)
DB#9    三津谷 郁磨(4年)
DB#22     松崎 泰光(3年)
DB#24  吉村 奬太(3年)
P#10      弘世 頌一朗(2年)

【戦評】
関東TOP8の第4節で、慶応大が日本大と対戦し、20―63で敗れた。この
結果、優勝候補は全勝を守っている日大と法大に絞られ、2勝2敗となった慶大
が優勝する可能性はなくなった。

日大のキックオフで試合開始。反則により慶応は敵陣からの攻撃開始となるが、
日大守備の出足が鋭くパントに追い込まれる。続く日大オフェンスは最初のプレー
でQB高橋からWR岩松へのロングパスが成功。その後も順調にドライブして、
最後も岩松へのパスでTDを決める。

1Q終盤に追加点を奪われ0―14となった慶応は、2Qに反撃開始。この日も
ランが全くでない状況が続くが、#18QB高木翼が次々にパスを決め、最後は
エンドゾーン右隅に投げ込んだパスを#7WR志水がダイビングキャッチ。1T
D差に迫る。

しかし、守備に立ち直る気配がない。オフェンスが自陣でインターセプトを決め
られたこともあり、2TDを追加され28―7となる。前半終了間際にゴール前
まで前進した慶応オフェンスは、第4ダウン8ヤードの状況で早くも勝負のギャン
ブルに出る。しかし、このプレーがゴール前1ヤードで止められて前半終了。

後半になっても流れは変わらず、日大オフェンスは次々に得点を重ねる。結局ディ
フェンスは9シリーズで9TDを奪われた。オフェンスも日大の堅守に攻めあぐ
み、日大守備が2本目に後退した4Q終盤に2TDを返すのがやっとだった。

■攻守に完敗
完敗。それ以外の言葉が出てこない。負け試合ではたいてい、「あそこでこうし
ていれば」とか、「なんであんな戦術を使ったんだ」とか「たれらば」がつきま
とうものだが、ここまで完璧に打ち負かされると、そんな感情は一切沸いてこな
い。

選手やコーチが日大戦に向けてどのような見通しで臨んだのかは知らないが、私
は法政戦以上にいい試合ができると考えていた。現に試合前の見どころでは、慶
応のランはある程度出る、守備も終盤までは十分に持ちこたえられると書いてい
た。

その見通しは完全に甘かった。ランは13回でー5ヤード。守備も全シリーズで
TDを奪われ、大量63点を失った。敗因は何だったのか。ビデオを分析したわ
けではないので細かいことは分からないが、最大の理由は「1対1の勝負」に勝
てなかったことだ。そして、これはスタントHCが日頃から選手たちに言い続け
てきたことでもある。

まず、攻守のライン戦が完敗だった。オフェンスラインは法政戦と同様にロスを
コントロールされ、#29RB李は、常に壁に向かってぶつかり続けるしかなかっ
た。パスプロテクションはかなりがんばっていたが、前半ラストのパスなど、勝
負どころのプレーであと一歩のふんばりが足りなかった。

守備ラインも同様だ。この日は4-3(4DL・3LB)体型で臨んだたが、ラン
をずるずると出されて、パスでもほとんどプレッシャーをかけられなかった。

実はこの日のLBは想定できる最高の布陣だったと思う。法政戦で1対1の状況
でキャリアーをタックルし続けた、#54ライトを常にランが展開されやすいス
トロングサイドに置き、WRが多いサイドにはこの日が復帰戦となった元DBの
#26松下慶太郎を配置した。日大のパスを守る上で、彼以上の適任者はいない。
中央にはスピードのある1年生の#4工藤と#50染矢がローテーションで出場した。

しかし、ロスを支配されているので、ランでもパスでもLBがうまく機能しなかっ
た。スキルポジションの攻防でも日大が勝っていた。WR陣は志水を中心にQB高木
とのコンビネーションで対抗していたが、日大の#9CB森の個人技にやられた。
その証拠に、慶応が4Qに奪った2本のTDは、森に代わって出場した選手が守る
ゾーンに、次々にパスを通してドライブした結果だった。

DB陣も日大WRのスピードについていくことはできなかった。しかし、DBは
攻められるべきではないと思う。パスを通されながらも、最も警戒すべき一発T
Dはよく防いでいた。ドライブされることは分かっていたので、辛抱しながらど
こかでフロントがプレッシャーをかけて止めなければならなかったのだ。最後ま
でその光景は見られなかった。

この試合で唯一の収穫は、工藤と染矢の1年生LBコンビの活躍だろう。まず秋
からMLBの先発を務めている工藤は、まだまだ荒削りでミスも多い。しかし、
ディフェンスが勝負をかけるブリッツのサインで、ことごとくロスタックルやサッ
クを決めているのだ。この日も後半最初のドライブ、日大の第3ダウンショート
の場面で、ロスタックルを決めてFGに追い込んだ。

染矢は春にも少し紹介したが、U19日本代表に選ばれた期待のホープである。
LBとしてはサイズがないのを懸念していたのだが、高校時代と比べて一回り大
きくなっていた。さらにスピードには磨きがかかっている。4Q、日大WRのジ
ェットモーションからのランプレーに対して、ものすごい勢いでタックルに仕留
めたプレーは秀逸だった。LBというのは40ヤード走の速さより、瞬間的
に加速して、トップスピードでキャリアーに襲いかかる能力が要求される。染矢は
その能力が抜群に優れている。このまま順調に成長すれば、慶応史上に残る
ラインバッカ―になるかもしれない。残りの3試合、この二人のプレーが楽しみだ。

今季の慶応の目標であった、「日本一」への道は絶たれた。64年ぶりの甲子園
ボウル出場を期待して応援していたファンやOBの方々は、さぞがっかりしてい
ることだろう。しかし、最も悔しいのは当然ながら選手たちである。春先から本当
に厳しい練習を乗り越えてきたのだ。さらに言うと、スタントHC体制でも1年目
より2年目の今季の方がはるかに厳しくなっている。それらは全て、日本一という
目標を達成するために行ってきたのだ。その目標が途絶えてしまった。

しかし、大敗翌日の法大―早大のスタンドには、早稲田をスカウティングする慶
応の主力選手たちの姿があった。おそらくこれは強制されたものではなく、「残
りを全勝して、最後に早稲田に勝ってシーズンを終わろう」という彼らの心意気
だと思っている。期待が大きかっただけに落胆するのも仕方ないのだが、そんな選
手たちを見ていると、今季は最後まで彼らの戦いをしっかり見届けなければなら
ないと思った。(共同通信社 松元竜太郎・平成17年卒)